【検証:】過去ログSpecial

【検証:近未来交通地図】Special203-3
川崎縦貫高速鉄道の可能性を探る

 本投稿は、川崎縦貫高速鉄道の賛否について、【検証:】掲示板でもお馴染みの、とも様とかまにし様 、串間様の対論を中心に、読みやすく構成させて頂いたものです(なお一部文面を編集しております)。

朝ラッシュ・南武線実乗記と川崎縦貫鉄道の可能性
なぜ川崎縦貫が必要か

川崎市の地下鉄に関するアンケート結果
世紀の愚策となるであろう結末

需要予測についての疑問
市民部会の川縦批判手法を批判する
横浜市との連携ができないか
川崎縦貫高速鉄道線のルートを検証する

下記内容は予告なしに変更することがありますので、予め御了承下さい。
当サイトの全文、または一部の無断転載および再配布を禁じます。



川崎市の地下鉄に関するアンケート結果
 投稿者---串間氏(2003/06/10 09:11:38)
川崎市の地下鉄に関するアンケート結果
└川崎市民の判断と川崎縦貫の行方
 └アンケートの意味は・・・
  └論点の「紛れ」を惜しむ
   └Re:論点の「紛れ」を惜しむ
下された市長の判断
 └記者会見から読み取れたアンケートの意味
  └川崎縦貫の教訓

 とりあえず、お伝えしておきます。川崎市の地下鉄に関するアンケート結果が公表されました。

建設延期 中止 推進
40.0% 32.9% 15.8%

ソース:朝日新聞6月10日朝刊、地方欄(神奈川県)

 市のほうも発表されました。こちらは極めて詳細に出されています。
 とりあえずリンクだけ。

抜粋 http://www.city.kawasaki.jp/16/16gyosys/home/kensyou/research/research.html
調査結果全文 
http://www.city.kawasaki.jp/16/16gyosys/home/kensyou/research/report.pdf

 この結果を踏まえて、最終的な決定は6月16日に出ると報告されています。
 なお、最も建設の恩恵を受ける宮前区ですら建設推進が25.8%にとどまっており、私的には着工は極めて難しくなったと感じられます。
 市長は予定通りの着工は難しいとの判断を示したようです。あと、この”延期”をどうとらえるか。見直しを考えろというものなのか、時期がたったら着工すべきと考えるのか、いろいろな読み方ができます。実際に川崎商工会議所の佐藤朋佑氏は「延期と推進を合わせると、5割以上の市民が何らかの形で着工すべきという判断を示した」と言っています。

川崎市民の判断と川崎縦貫の行方
 投稿者---かまにし氏(2003/06/10 15:08:57)

 かまにしです。

 串間様、先の川崎縦貫論ではいろいろとフォローをいただき、こちらも非常に勉強になりました。特に、現地の詳細なレポートなどは、個人的にそれほど土地勘のないエリアだっただけに、非常に参考になりました。

川崎縦貫線関連 実走レポート special204-2.html

 とも様をはじめ、皆さんとの議論を通じて、個人的な結論としては、建設自体は行なうべきであるとの判断に達したものの、財政再建団体への転落目前の財政状況を考えれば、「今すぐに」作る必要があるかはきちんと問わなければならないと考えます。とはいえ、一般的に一度予算としてついた事業を(しかも国などからの補助金をもらっている段階で)見直そうとすることは難しいとはいえ、そういう意味でも今回、川崎市がいったん市民の声に基づいて、建設そのものを見直そうとしたことを、個人的に高く評価しております。

 また、この板での論点であった「HRTとしての整備の必要性」や「南武線との関係」などが、川崎市のアンケートの中にも含まれており、これらの論点に関する議論を市民が共有しないことには、なかなか事業に理解を得ることも難しいのではないかと思います。

 ただここでの議論を通じて、僕自身も川崎縦貫鉄道に関する視座が変わったのも事実であり、実際にこの事業が「川崎市のためになる事業」であることは確かだと思うので、そういった議論が市民の間に浸透していけば、長期的には理解は得られるのだろうとも考えております。

 今後ともよろしくお願いいたします。

アンケートの意味は・・・
 投稿者---串間氏(2003/06/11 01:47:16)

 こちらこそ、丁寧な返答をありがたく思っています。
 6月16日の結果をもって、再びこの話題について議論を行えることを期待しております。この問題はかなり奥が深そうです。そのときは私も積極的に参加しますので、かまにし様やとも様を始め、多くの方と話ができればいいなと。
 ただ私としての立場は縦貫鉄道反対です。しかし現在の南武線の限界を考え、別の形での軌道系の開通を望むものです。これについては、後々議論しましょう。

 アンケートの結果について気になった点も多くありました。そのひとつ、多くの市民が地下鉄の計画の「詳細」を知らなかったという点です。
 実際、これ(川崎縦貫高速鉄道線)については、私自身がここに参加するまで深く考えたことがないことでした。実際に計画について知ってはいたものの「こんなものを作る価値などない」というのが個人的な感覚だったため、興味すらわかなかったのです。何せ多摩区民には、何のありがたみもない地下鉄ですから。
 しかし、実際に掘り下げてみれば想像以上に現状は厳しいものでした。南武線はパンク状態、パンク状態の道路を満員のバスが走る・・・等々、想像以上のものがあったということです。

 しかし、やはり現状の建設に関しては疑問が多く残ります。それがもうひとつ、アンケートの中でも出てくる「財政難」の問題です。地下鉄を建設した場合は、市民サービスにメスを入れることを宣言しています。
 「住民投票」ではなく「アンケート」の形をとったのは、費用が30分の1で済むからであり、涙ぐましいほどの経費節減が見て取れます。川崎市の財政状況の厳しさに関しては想像以上の物があり、これについてもここでの議論を見ることがなければ、知ることもなかったでしょう。
 その他の事業については全て3年間の凍結(全ての計画を再検討することが目的)が宣言されており、地下鉄を特別扱いするのか、というのも今回のアンケートの中の一つにあったと言えるでしょう。
 他にもありますが、長くなるのでこれぐらいにしておきましょう。

 住民の声に耳を傾け、その結果を参考に市長が最終決断を下す。建設計画に対する認知と言う面では問題を残しましたが、重要な議題に対してこのような形がとられたことは私としては歓迎しています。
 ではこれで。

論点の「紛れ」を惜しむ
 投稿者---和寒氏(2003/06/12 06:23:12) http://www.geocities.jp/history_of_rail/

 串間様。
 日頃から串間様の高論と議論に対する姿勢には感服していたところですが、さらに詳細な情報を提供して頂きまして、ありがとうございます。アンケート調査結果はようやく印刷し終えました(50ページ以上ある大部なものです)。
 読むのはこれからですが、実は一連の議論を通じて感じていた違和感を、調査結果のサマリー版からも感じましたので、その点を記したいと思います。

 アンケートの根幹となる設問は、 「地下鉄事業に対する賛否」 であり、その回答としての選択肢は、

  • 予定どおり地下鉄の建設を進めるべきである

  • 財政状況が良くなるまで着工を延期すべきである

  • 地下鉄事業は中止すべきである

  • よくわからない

となってます。
 この設問と選択肢は、実は二つの異なる設問を包含していることがわかります。即ちそれは、

  1. 社会基盤として地下鉄(川縦)が必要か否か

  2. 投資対象として地下鉄(川縦)が適格か否か

であり、それぞれに対する選択肢は、

  1. 必要、不必要

  2. 適格、適格だが現時点では負担が過重、不適格

となります。ここで実際の回答のうち、「予定どおり」は「必要かつ適格」と理解しても紛れがないのですが、「延期」「中止」は「必要で適格だが現時点では負担が過重」なのか「必要だが不適格」なのか「不必要かつ不適格」なのか、分離することが困難です。
 これは即ち、川縦を論じるうえでの「紛れ」「ねじれ」そのものに見えます。

 私が思うに、川崎市はまず、財政的裏づけを抜きにして、単純に川縦が要るか要らざるかを問うべきでした。その段階で「要らない」となれば、川縦は「ほんとうに要らない」のです。
 「要る」という意見が大勢を占めるならば、そこから財政的裏づけの設問を展開するのです。ここでは様々なオプションがありえますが、例えば「当面の負担は重くても30年後に負債を完済できるならばOK」なのか、「都市装置として重要だから運営費補助を出してでも(つまり負債完済困難であっても)建設推進すべき」なのか、あるいは「川崎市民の負担が極小である限りにおいて投資可」、逆の表現をすれば「川崎市民の負担が重いのならば投資不可」なのか。

 そのような一連の流れを構成する議論であるべきところを、一緒くたに一問の設問に集約してしまう。そこにかえって「紛れ」が生じる余地があり、その点が惜しまれるアンケート調査であったと思います。
 おそらくこの調査結果に対しては、様々な解釈が成立してしまうでしょう。その意味においても「紛れ」含みであり、いかなる解釈をもってしても牽強付会にならざるをえません。つまり、この調査結果をもって導こうとする結論は、どのようなものであっても不透明感を与えてしまいかねず、議論の「紛れ」「ねじれ」が再生産され続ける予感すら覚えるのです。

 ともあれ6/16にどのような「決定」がされるか。注目したいと思います。

Re:論点の「紛れ」を惜しむ
 投稿者---串間氏(2003/06/12 22:13:05)

 和寒様のおっしゃったことには、私も違和感を感じておりました。

 以前、アンケートを見て自分ならばどう回答するかを考えたことがあります。
 以下の設問が重要です。繰り返しになりますが再掲します。アンケートの設問を見たい方はまたになりますが、下記サイトをご覧ください。

http://www.city.kawasaki.jp/16/16gyosys/home/kensyou/enquete.pdf

問12 このような、事業の効果や財政状況への影響を考慮した上で、地下鉄の建設について、あなたはどうしたらいいと思いますか?

1 予定どおり地下鉄の建設を進めるべきである
2 財政状況が良くなるまで着工を延期すべきである
3 地下鉄事業は中止すべきである
4 よくわからない

 私の考えは・・・現状を考えると川崎市丘陵部にはなんらかの軌道整備が必要。しかし、現状の計画には賛成できないし、現在の財政状況では建設などもってのほかだ・・・となります。
 で、1,4は却下。しかし、2,3のどちらにするか、早速迷ってしまいます。仮に「2」の選択肢がない場合、私は「3」を選びますが。
 結局答えずに先送り。あとの設問をそれぞれ見てみます。

問15 問12で「2」と答えた方

3 需要予測・整備計画・路線ルート・新駅位置など、一定期間のあとにもう一度事業計画を見直してから、事業を進めるべきだと思うから

問16 問12で「3」と答えた方

2 財政状況が厳しい中で多額の借金をしてまで、地下鉄事業を進めるべきではない
3 地下鉄建設よりも優先的に充実させて欲しい市民サービスがある

 この3つが私の中で合致する選択肢になりますが、この中で自分の考えをもっとも反映しているだろうと思われる、問15の「3」を答えたい。というわけで問12の「2」を答える。
 確かに変です。

 実際の回答のうち、「予定どおり」は「必要かつ適格」と理解しても紛れがないのですが、「延期」「中止」は「必要で適格だが現時点では負担が過重」なのか「必要だが不適格」なのか「不必要かつ不適格」なのか、分離することが困難です。
 おそらくこの調査結果に対しては、様々な解釈が成立してしまうでしょう。
 この調査結果をもって導こうとする結論は、どのようなものであっても不透明感を与えてしまいかねず・・・

 確かにおっしゃられるとおりです。
 最終決断は市長が下します。もちろん、アンケートを重視するということは確かなようですが・・・。

[市長記者会見記録 2003年4月21日] http://www.city.kawasaki.jp/25/25koho/home/kisya/pdf/030402.pdf

 では、その市長の意図することは何か。
 前回の川崎市市長選(2001年10月)、無駄遣いといわれた川崎市の地下鉄に関して、ある程度争点となりました。現職の候補のみが「推進」、残りの候補は「見直し」「凍結」を掲げて選挙を争いました。結果は、現職の無駄遣いによって急速に悪化した川崎市の財政の建て直しを掲げた、阿部氏が当選を果たしています。
 市長は早速、「川崎市行財政改革プラン」を掲げ、目下実行中のようです。

http://www.city.kawasaki.jp/16/16gyosys/home/gyoukaku/plan_0.htm

 この中から見て取れることは、現状の市民へのサービスを維持するが、民間に任せられることは任せ、サービスの効率化をはかるというものです。そして、高度成長時代から続いている無計画な開発をこれ以上進めないことを宣言しています。つまるは住み良い環境を作ることが目的なのでしょう。

 前市長の残した負債はあまりにも重いものでした。地下鉄の計画と共に、万福寺(新百合)の森や犬蔵の段々畑に開発の手が入りました。積み重なった借金も尋常ではないものでした。
 向ヶ丘遊園に関してはほぼ確実に保全されることが決まったと言ってよい状況となりました。管理は市民ボランティア。財政難の川崎市らしいですが、私は素晴らしいことだと思っています。

 そして、川崎縦貫高速鉄道線。
 川崎市の形を見ていただければと思いますが、臨海部で広い敷地を持ち、中央でくびれ、北部に向かって大きく広がっています。この中で北部は無計画に開発が進められて(幹線道である尻手黒川道路ですら新百合ヶ丘の近くまでつながったのは最近です)住民が増え続け、南武線から遠い丘陵部では交通が不便になって現在に至っています。同様に東海道線以南の地域もそれなりに不便を強いられています。
 交通の不便さについては住み良くする為には必要ですが、市の負担が4000億円を超えるとは、あまりにも厳しいと言わざるを得ません。仮に敷設した場合、市民サービスは確実に削り取られてしまうでしょう。
 市長はすぐさま「凍結」とするのではなく、計画の見直しを行いました。結果900億円を超える事業費削減とともに、小田急多摩線との相直、急行連絡駅を宮前平駅にする、などの利便性向上が達成されています。他の自治体も見習っていただきたいものです。
 そして「アンケート」を行いました。

***
 以下は私の勝手な推測になります。
 市長は本当は建設をしたくないはずです。なにしろ現在の財政状況を考えれば、負担はあまりにも過大です。だからこそ、今回のようなアンケートにしたのではないか、と。
 建設推進派の議会や商工議会所を納得させるには、もはや市民アンケートしかない。
 そこで、「2」の選択肢を入れることで「事業は必要かつ適格」な意見のみが「1」を選ぶようにして、「2」を選ばせようとした。もっとも、「事業が必要で適格だが現時点では負担が過重」「事業は必要だが不適格」とする人のほとんどが「2」を選んだ可能性はかなり高いですが・・・。
 市長は建設という最悪の結果を避けるため、保険としてこのような設問にしたのではないか、と。「凍結」が多くなれば、少なくとも当面の危機を回避できる。そのためにアンケートを利用したのではないか、と。

 あまりにも強引な推論で申し訳ありません。アンケートを作ったのが市長であるかも全然分からないのに、あまりに強引な話を致しました。お許しください。
 確かに問題はあります。しかし、仮に前市長が再選されていた場合、アンケートも行わずに事業を進めていたことだけはほぼ間違いないのです。結局のところ、最終決定権は市長にあるのです。だから、アンケートが行われたことを歓迎したいのです。確かに惜しむべき点はありますが・・・。
 どちらにしろ、発表される結果を待つしかないようです。

 えらく交通論からはなれた話題をしてしまって申し訳ありません。ただ、川縦を話題とする上で外せないと思い書かせていただきました。
 ではこれにて。

下された市長の判断
 投稿者---串間氏(2003/06/16 22:43:29)

 とりあえず報告です。各紙の夕刊を騒がせているはずなので、ほとんどの方がご存知とは思います。但し、肝心の市のほうで発表がなされていないので、吟味はまだまだ無理ですが。

毎日 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030616-00001026-mai-soci
日経 http://www3.nikkei.co.jp/kensaku/kekka.cfm?id=2003061602703
讀賣 http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20030616ic04.htm
朝日 
http://www.asahi.com/national/update/0616/007.html

 市長は5年程度の延期を明言していますが、5年後に財政が好転しなければ中止になる可能性も示唆しています。これは事実上中止に等しい判断といってよいかと思われます。
 国土交通省も、このような大幅な延期に対しての対処を決めかねているようでありますし、私の見る限り5年後に財政が好転する兆しはほとんどない。となれば、導き出される結果は明らかではないかと。

 とりあえず、Webの方は消えるのが早いですから、一応URLを紹介しておくということで。
 では失礼致します。

記者会見から読み取れたアンケートの意味
 投稿者---串間氏(2003/07/03 00:26:24)

 ようやく市長の記者会見の様子が発表されました。

http://www.city.kawasaki.jp/25/25koho/home/kisya/pdf/030607.pdf

 この内容を読んで、アンケートの意図が初めてわかったような気がします。とりあえず、以下の引用部分を読んでいただけますでしょうか。以下はそのままの引用です。

記者



市長:
 従前から、宮前区のアンケート結果を非常に注目なさっているというご発言がありましたが、今回の宮前区の中止が推進を上回ったということについては、今回の決定にどういう影響を与えていらっしゃいますか。

 このまま推進の15.8%というのは、かなり厳しい条件の中で、あちこちの事業に影響を及ぶという前提で、では、それでもやるのですかという、だから、最悪の場合に将来財政再建団体になると。そうすると、福祉の上乗せ分や何かみんな落とさざるを得ないと、そういうような厳しい状態がいずれ出てくると。あるいは、その前にそういうことを防ごうとすれば、増税が必要だったり、いろいろなことが出てくるのだけれども、あの15.8%というのは、そこまで覚悟されたということなのですね。ですから、それは15.8%というのは、すごい貴重なご意見だと思っているのですが。しかし、宮前区で中止よりもそっちの方が少ないというのがやはり、まだ覚悟ができてはいないという感じになってしまうものですからね。ですから、今、このままゴーというわけにはいかないな、こういうことですよね。
 ですから、推進、推進と言うのはいいのだけれども、そうすると金がなくなった場合に、一体どうするのかということを、簡単に言えば、やはり皆さんに考えてもらわないといけないと言うことなのですよ。

 市長がアンケートに託したもの。それは、痛みに耐えてでも建設する意思があるか否か、と言う点だったのだ、ということがこのコメントから読み取ることができました。ようやくこのアンケートの意味を読み取ることができたという気が私はしています。
 今回の結果は、やはり財政状況に尽きた、ということです。

 にしても、この記者会見をもっと早く公開して頂きたかったのですが。

川崎縦貫の教訓
 投稿者---かまにし氏(2003/07/03 01:56:40)

 かまにしです。

 市長がアンケートに託したもの。それは、痛みに耐えてでも建設する意思があるか否か、と言う点だったのだ、ということがこのコメントから読み取ることができました。

 なるほど。ただ、和寒様らがおっしゃっていたように、やはりアンケートの手法や具体的な内容についてはまだまだ考える余地はあったとは思います。ただ、市長自身はこのような見識で、今回のアンケート結果を見ていたという点については、きちんと評価しなくてはならないですね。

 改めて川崎縦貫鉄道のプロジェクトとしての特性について考えてみました。川崎縦貫鉄道は広域的な流動に資する部分(★1)と、沿線の交通空白地域の救済(★2)という2つの側面があり、それを川崎市の税金で(★3)作るというプロジェクトです。

 そもそものきっかけは宮前区の住民らによる建設要請であり、★2の交通空白地域の救済の側面が強かったわけですが、冷静に需要予測などの分析をかけてみると、実は★1のように広域流動にも十分に資するだけのプロジェクトであったんですね。しかし、それを★3のように財政難の川崎市が税金で作るため最悪の場合、地下鉄建設が市政の運営に命取りになる可能性もあり、それを周知させるためにこのようなアンケートを取ったのでしょう。

 だからこそ今回のアンケートは、地下鉄による広域流動の改善の恩恵を受けると同時に、場合によっては犠牲者にもなりうる川崎市の全域を対象としたと言えそうです。ただし市長はきちんと、交通不便地域というハンデを抱え、地下鉄を当初から望む声が強かった宮前区の結果には、より強い関心を払っていたということですね。

 ただし世間一般には、川崎縦貫鉄道のプロジェクトとしての特性である「広域的な流動に資する部分」の認識がかなり誤解・歪曲されて伝わっていた部分も見られました。

 確かに、本来は最初から「地下鉄ありき」で考えるのではなく、その地域におけるニーズを汲み取ってどのような交通サービスが最も求められているのかを組み立てなければならないのだと思います。その結論がコミバスであるなら、コミバスはやはり必要なのだと思います。ただ、地下鉄・基幹バス・コミバスなどにはそれぞれの特性があり当然、向き・不向きもありますから、その点をきっちり踏まえる必要があります。

 現地の道路条件を考えれば、地下鉄は数少ない選択肢という印象は正直あります。しかし、今後は地下鉄以外の選択肢も探っていく必要があるのかもしれません。あるいは和寒様がおっしゃるように、川崎市内だけではない広域的な流動に資することが明らかになる以上、川崎市の税金を使う以外の財源も考慮に入れるべきなのかもしれませんね。

 長々と続いた「川崎縦貫シリーズ」もそろそろ収束に向かいつつあるのでしょうか?それとも、まだまだ展開は続くのでしょうか?ひとまず、このくらいで失礼します。

【川縦論】世紀の愚策となるであろう結末
 投稿者---とも氏(2003/06/17 00:18:45)
 
 http://town-m.vop.jp/
世紀の愚策となるであろう結末
└Re:世紀の愚策となるであろう結末
└多摩区川崎市民としては・・・
└シンプルに見えて「混ぜ混ぜミックス」な話
 └「延期」という名のボディーブロー

(以下次ページ)
  └PIの典型的失敗例なのかもしれない
   └Re:PIの典型的失敗例なのかもしれない
    └PIに関連して

    └Re:PIの典型的失敗例なのかもしれない
     └御返答
      └Re:御返答
      └需要予測はそんなに甘いモノではない
       └知る者と知らざる者
       └アンケート調査を深度化できないものか

 今回の川崎市の判断。正直納得できない。私は一番やってはいけない判断をしたと考える。
 中止なら中止、縮小なら縮小、実施なら実施。なぜそうではなく「延期」なのか。

 確かに、財政再建団体転落寸前の今そんな大規模事業はできないというのはわかる。
 しかし、なぜ財政面ですべてを決定するのか。それが理解できない。
 事業の必要性が無いから中止。これならいい。規模が大規模すぎるから再検討。それもいい。

 でも、とりあえず延期。それは単なる先送りに過ぎない。たとえば「1年いや2年の間に再検討を行ってそのうえで実施するかしないかという判断をする。そのための延期」というのならそれはそれでもいい。
 しかし、今回の中でそういう話は無い。公共事業を止めたと喜んでいる向きもあるが、それは単なる自己満足、いや行政批判の流れの中での単なる「土建国家」「公共事業」アレルギーでしかない。

 このままということは今の川崎市北部の交通状況も放置されたままということだ。それが許される状況と果たしていえるのか。
 「延期する、しかし北部の交通対策として早期に違う対策を検討をする」ということもいえないのか。

 採算面などの懸念もあるのであろう。しかし、鉄道というものはそもそも簡単に償還が終わるようなものではない。そんなことは鉄道事業を検討してきた市当局はわかっているはずである。というかそんなことは計画に携わる人間のほとんどが知っている基本だ。見た目の採算性が悪くても財務状況をよく見ると優良企業である例は多い。償還は鉄道だけではなく社会資本すべてにかかる問題である。しかし、その理解をも得ないままに、単に市の財政云々だけで話を進めるというのは行政として本来的な顧客である市民のニーズ・要求にこたえているとはいえない。

 少なくとも延期であれば「計画や土地利用や流動や商業状況などから当面の必要性が無いという理由」が無くてはならないのにそれも無い。単に財政だけで延期というのは計画論として言語道断である。
 この地下鉄、PFIでもBOTでも本当に成立しなかったのか。その検証すらないままに中止という判断がされ、それがあたかも英断のように伝えられる現状は解せない。無い袖は振れない。それは当然だ。しかし、本当に袖は無いのか?。川崎市が全額出資すべき事業なのか?そこも含め考えなくてはならないのにそういう議論が見えてこない。

 こう書いては推測の域を出ないし、勝手な妄想なのかもしれないが、このままずるずると中止になっていくような気がしてしまう。いやそれを狙っているのではないかと。一応、賛成と延期も結構多かった。思ったより中止が少なかったと。では延期をしてそのまま中止を・・・であろうか・・・。
これは私が疑念を持ちすぎなのか。

 そもそものアンケートのやり方からして答えには中止が多くなるのは明らかである。
 分けて考えてしかるべき「地下鉄そもそもの必要性」もしくは「交通対策の必要性」と「財政面での課題」を一緒に聞く形というのは恣意的にアンケートを実施したと考えられても致し方あるまい。

 その疑念を振り払うには川崎市、議会その他関係機関自らのしっかりした説明が必要である。それを期待したい。くれぐれも、全線で計画決定だけをしておいて、一部でしか事業がされていない南武線の連続立体交差のようにならないことを願う。

 まとまりませんが。では

Re:世紀の愚策となるであろう結末
 投稿者---かまにし氏(2003/06/17 01:23:00)

 かまにしです。

 個人的には、問題の市民アンケートの結果からして、「計画どおりに建設」という判断を下すのは難しいだろうと踏んでいたので、「延期」そのものについては「やっぱりな」という感想です。ただし、問題は「5年」という異例の長期間にわたる延期で、むしろ「延期」という結論そのものよりもこの長さに関して、各方面から予想外との反応があるようですね。

○市の財政状況
 個人的には、このままの制度のもとで川崎市の財政状況が好転するかは別としても、今回の延期理由の1つとして挙げられている地方への財源委譲をめぐる「三位一体改革」によって、市財政のキャパシティが増える可能性はあり、その行方を見極めるのは確かに一つの判断ではあると思います。

○「5年」
 とはいえ、やはり「5年」という時間は中途半端に長く、そして今回の経緯から考えて5年後に再着工という話に本当になるのかは疑問です。また、事務局の維持経費や既に国からもらっている補助金等の行方を考えても、「5年延期」という判断は、実質的には中止ではないかと思えてしまいます。

○今後、川崎市が行なうべき対応は…?
 とは言いつつも、賽は投げられてしまいました。市民アンケートにおいても「中止」ではなく、「延期」が最大多数を占めた以上、そのような判断をした市民の中にも建設自体は望む人々がいるものと思われます。まずはこういった細かい潜在的ニーズの把握が不可欠であると言えるでしょう。

 また、何も川崎市交通局の事業として行なうのではなく、第三セクターやあるいは民間事業者を絡めた「投資の外部化」という方法もとれるはずです。絶対数が多くないとはいえ、川崎市北部の交通不便地域に住民が実際にいる以上、川崎市はこれらも選択肢に入れて、市にとって最も負担の少ない手段を今後も模索すべきだと言えましょう。

 いずれにせよ、とも様がおっしゃられているように単なる「先送り」による実質的中止は、「延期」という結論の中に建設そのものを望む声が含まれている以上、許されないことだと僕も考えております。川崎市は市民の細かいニーズを改めてとらえ直し、引き続き市の負担を極小化できるスキームや代替手段を考慮に入れつつ、柔軟に対応していくべきだと考えます。

 ひとまず失礼いたします。

多摩区川崎市民としては・・・
 投稿者---串間氏(2003/06/17 10:51:29)

 どこにレスをつけるべきか迷いつつ・・・。

 多摩区川崎市民としては実はほっとしています。このまま作ったら、市の財政状況を考えれば、行き先は明らかです。ですから、個人的にはこの決断は妥当と考えています。
 しかし、本来は必要であるということは私もわかっています。だけに、皆様がコメントされた「第三セクター」方式などでの建設ができなかったのか、という点です。なぜ検討をしなかったのか、は非常に疑問の残る点です。
 ともあれ、これによって着工まで最低でも5年、その後の建設期間を考えて8年、つまり最低でも13年間もの長い間、軌道のない交通地域として残ることになります。となれば、いち早い救済措置が必要であるのは言うまでもないでしょう。

 特に言えることは、最寄り駅から遠い住民ほど建設を望んだと言う点です。つまり、現状のバスのサービスに対して不満があるからに他ならないはずです。
 現在のバスのサービスは酷いです。混雑路線はほとんど団子状態になっていますし、補完路線はダイヤがばらばらでとてもじゃないが使えない。低レベルなバスサービスを提供しているからこそ「地下鉄が必要だ」という声が出てくるのです。そこを受け止めなければならないでしょう。

 今回の決断から私が望むことは、バス路線の再編・新設、小型バスの導入がまずひとつ。使える道路は全部使うぐらいの覚悟が必要と考えます。今のバス網は面展開と言うよりは、むしろ線に近い状態です。これを改善していかなければならないでしょう。
 もうひとつはラッシュ時の交通規制とバス待避のスペースを作ること。バスのスピードアップと混雑緩和を目指します。
 もうひとつは南武線の混雑緩和。駅の橋上化、8連化、立川寄りに出入口が集中する構造の是正とホームの拡張、本数増、などなどです。

 これらの施策を行った上で5年後に再び真っ向からアンケートを行うべきと考えます。それでも必要な事業ならば、作らなければならないでしょう。
 どちらにしろ、このままのサービスでよしとするならば、それは行政の無責任と評さざるを得ません。

***
 地下鉄の必要性すらないと思われる方に・・・
 東京近郊で人口が密集していながら、ここまで道路も鉄道も不便な地域は早々あるものではありません。自転車を走らせようにも、丘陵地による勾配で自由に行き来するのすら困難ですし、二車線の道路は歩道が狭かったり無かったりします。関東平野の他の地域とは明らかに異なるのです。
 採算性の問題はあるでしょう。しかし、それを言い出したら、今建設されている鉄道でそれを満たすものがあるでしょうか。

 川崎市の財政が痛まないのであれば、私はほぼ無条件に賛成する意志があることを付け加えておきます。
 そして川崎市の財政が大きく痛む以上、ほぼ無条件に反対する意志があることを付け加えておきます。

 乱文失礼致しました。

シンプルに見えて「混ぜ混ぜミックス」な話
 投稿者---和寒氏(2003/06/17 08:17:35) http://www.geocities.jp/history_of_rail/

『整備新幹線方式』も視野に〜〜鉄道整備で私鉄WG提言」

 鉄道の整備と運営を一体的に行ってきた私鉄の鉄道経営モデルを転換する提言を私鉄大手のワーキンググループがまとめた。・・・・・・整備リスクを分散する上下分離を基本とした上で、公的主体が国費などで施設を建設・保有し、私鉄は受益の範囲で線路使用料を払って既設路線と一体で運営する公設民営の「整備新幹線方式」も含めて国と連携した整備を進めるという考え方で、設備投資資金を運賃で回収するという従来のシステムからの転換を目指す。民間経営の大都市鉄道の整備に国家プロジェクト的国費支援が可能かなど、実現には難しい問題も控えているが・・・・・・

交通新聞 6月12日付記事

 とも様がやや激した論を呈されているが、私も似たような感覚を持たざるをえない「決断」であったと思う。
 詰まるところこのたびのアンケートで読めるのは、「川崎市交通局川崎縦貫鉄道線」は当面延期してしかるべき、ということだけしかない。例えば「第三セクター会社川崎縦貫鉄道」ならば事業が成立する可能性もある。その選択肢がありえるならば、アンケート回答者はどのように答えたであろうか。
 手許の財政状況が厳しいというのは理解できる。だから市の特別会計となる「市交」で大事業を興すのは当面難しいというのもわかる。しかし、市の会計からは切り離した「3セク」ならばどうなのか(必ずしもいわゆる「3セク」でなくともよく、要は市が初期投資にかかる債務を抱えず、出資金と補助金で会計処理できる形態でありさえすればよい)。
 冒頭に記したオプションだってありえるのだ。私鉄への直接補助は難しくとも、市が出資する会社に対してはハードルが低いはずだ。

 No.1751にも記したとおりだが、このアンケート結果からは川崎市(民)の意志がよく見えてこないのである。かような調査にもとづく決断が「英断」とされているならば、やはりそれは解せないと評すべきであろう。

 こう書いては推測の域を出ないし、勝手な妄想なのかもしれないが、このままずるずると中止になっていくような気がしてしまう。いやそれを狙っているのではないかと。一応、賛成と延期も結構多かった。思ったより中止が少なかったと。では延期をしてそのまま中止を・・・であろうか・・・。
 これは私が疑念を持ちすぎなのか。

 本来は推測がすぎるでしょうとたしなめなければならないところだが、しかし私もそのように邪推せざるをえない。「延期」の狙いはおそらく「北千葉急行」への道である。鉄道事業が潰れるだけならばいい。不幸なのは、交通状況が改善されない沿線住民の方々である。

 このままということは今の川崎市北部の交通状況も放置されたままということだ。それが許される状況と果たしていえるのか。
 「延期する、しかし北部の交通対策として早期に違う対策を検討をする」ということもいえないのか。

 ということであれば大問題である。住民の福利を考えてこその行政であろう。財政だけが市政だけではない。沿線交通状況の改善にどのようなビジョンがあるのか。問いたいところだ。

「延期」という名のボディーブロー
 投稿者---エル・アルコン氏(2003/06/17 13:07:43) http://6408.teacup.com/narashinohara/bbs

 今回の「延期」は、ある意味玉虫色の決断とも言えます。
 不要という声が多数であれば迷わず「中止」と言えば良いんです。そして必要性は感じたとしても、逆立ちしても無理な事業であれば「出来ません」といって中止すれば良い。

 しかし「延期」というのはなぜか。明らかに必要とする声が多数派になってしまった。これが無視できないわけでしょう。実際、昨今の公共工事「不要」論の流れの中で、まがいなりにも「必要」とカウントできるほうが多数派になってしまった意味は非常に大きいでしょう。逆立ちしても出来ない、というべきなのか、石にかじりついても実現します、というべきなのか。結果が先送りと言うわけです。

***
 問題なのは和寒さんが指摘した「北千葉線」化することです。
 「北千葉線」(本八幡−新鎌ヶ谷−印旛日本医大。新鎌ヶ谷−小室は北総線と並行。小室以東は北総・公団線として開業)は当初、免許取得者である千葉県が煮え切らないままズルズルと計画だけ温存し、2000年暮れに計画を断念した後も、沿線の市川市や鎌ヶ谷市は諦めずに事業化を模索しています。

 こちらはある程度のルート選定がされ、用地確保が始まってからの「中断」ということもあるんですが、「沿線」の開発には北千葉線計画が微妙に影を落としています。つまり、北千葉線が通ったら、ということをある程度考えた計画を余儀なくされるわけです。

 川崎市が川崎縦貫鉄道の沿線で都市計画決定をしているかどうかですが、もししていたとすると、「沿線」住民は建て替えすらできなくなるわけで、その状態が最低5年続くわけです。四半世紀そうなってしまった外環道千葉区間、いや、ひどい場合は半世紀にわたる新橋の環状二号(マッカーサー道路)のように、時代から取り残されかねないわけです。

 さらに、「北千葉線」計画が生きている限り、他の交通手段の整備を検討するわけにも行きません。
 道路交通も「北千葉線」が出来れば改善されるはず、と言う縛りがかかります。川崎縦貫も同じ経過を辿りかねません。それどころか、「北千葉線」のように交通事情が逼迫していないのであればまだ救いもありますが、川崎縦貫沿線は明らかに逼迫しています。
 向こう5年間、川崎縦貫計画と矛盾しない計画か、対症療法的な対策しか取れないというしばりをかけてしまった。その点こそ「延期」の最大の問題点でしょう。

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2004.11.02 Update


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