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【検証:近未来交通地図】
(過去ログNo.136)
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京都交通…驚いた「更生法申請」
 投稿者---551planning(2004/01/19 13:29:34)

─Re:京都交通…驚いた「更生法申請」
 └なんとなく頷けてしまった・・・
 └コトデン、九州産交、京都交通、そして奄美交通
  └ついに地方公共交通淘汰の時代がやってきた?・・・
  └京都交通・奄美交通
   └奄美交通の場合は
    └奄美交通・その後の展開
     └奄美交通の行方はいかに
      └いわさき側の真意は?
       └ご都合主義としか思えない…
        └狭い空間だとはっきりする官民住み分け論の矛盾
       └共倒れの可能性も

 うーん、驚きました。京都交通が事実上倒産です。ただし路線運営は当面現状のまま、再建を目指す由。

京都交通が会社更生法、負債総額83億円(日経01/19)http://www.nikkei.co.jp/…
京都交通が会社更生法申請 150路線は事業継続(京都01/19)http://www.kyoto-np.co.jp/…
客数落ち込み1年で3億円減収 京都交通・川本社長が会見(京都01/19)http://www.kyoto-np.co.jp/…
住民の足どうなるの 京都交通利用者に広がる危機感(京都01/19)http://www.kyoto-np.co.jp/…

 まだ速報段階で仔細不明な点が多いものの、主要エリアである『府北部で採算の取れる路線がなかった』という同社社長の言葉が重く響きます。さらにはJR山陰線電化による影響を指摘する記事もあります。確かに当該地域は近年北近畿タンゴ鉄道(宮福線)や山陰・舞鶴・小浜線等の鉄道整備が進められてきた「稀有な」地域でもあります。
 そう考えると以前紹介された京都市内路線への参入もある種資金繰りへの「最後の賭け」的側面があったのかもしれません。ともあれ、京都北部の沿線自治体には重い課題となりそうです。

京都交通女性専用バスは「一線」を越えるのか log132.html#3

Re:京都交通…驚いた「更生法申請」
 投稿者---wataru氏(2004/01/19 18:16:45)

  京都新聞の記事を見る限り、給与の遅配が数年前に既に起こっていたというのは驚きです。それほど経営状態が悪化しているのなら、それらしき風評がもっと広範囲に広がっていても良さそうなものですが…まあ、給与遅配についてはあくまでもその時限りで、那覇交通のように恒常化してはなかったとも取れますが。
 あと、些細なことですが、民事再生法ではなく「会社更生法」という処理方法を取ったのには、何か特別な理由があるのでしょうか?
 このへん知識がないもので、それぞれの法律の違いを御教示いただければ。

 さらに、それほどまでに経営が悪化していたにもかかわらず、各社で行われているいわゆる「分社化」が全く行われなかったのも不思議といえば不思議です(労働組合がとんでもなく強かったとか?)。

 以上、ニュースをパッと見ての思いつき的な感想で恐縮ですが。

なんとなく頷けてしまった・・・
 投稿者---World's Uniquest Railway Enthusiast氏(2004/01/19 22:18:21)

 こんばんは。WUREです。

 前にも書きましたが、山間部のバスが好きなので、京都交通には亀岡・能勢の路線を中心にだいぶ散財した記憶があります。それだけに今回の倒産は信じられない・・・といいたいところなのですが、同社の路線構造やバス停の雰囲気(+バス停に残る遺構)、バスの様子(若い車両でもくすんで見える印象がある)などを勘案すると頷けてしまうのが悲しいところです。

 主要エリアである『府北部で採算の取れる路線がなかった』という同社社長の言葉が重く響きます。

 京都交通のメインラインといえば、京都から9号線を通って亀岡、園部、舞鶴に向かう路線で、国鉄のサービスが悪かったからこそ存在意義があったとも言えます(国道9号線には往時をしのばせる巨大な待合室が所々にあります)。市街地のバスサービスは亀岡と京都市西部(桂地区)で行っていましたが、亀岡は人口10万人程度の都市だし、桂地区も市バスが主流で京都交通のシェアはごくわずかでしたので、府北部どころか「どこで稼いでいたの」という疑問はあったものです。

京都交通時刻表 http://khobho.jp/mite/sinjitop.html
市バス時刻表
http://www.city.kyoto.jp/kotsu/busdia/hyperdia/ka.htm

 国鉄と並行する中距離幹線ルートをドル箱にして、JR化後の列車増発による利便性向上で利用客が激減した会社というのはあちこちにあるような気がするのですが、経営はどうしているのでしょう(マイナーな例で申し訳ないのですが、滋賀県の草津市から草津線沿いに路線を持っていた滋賀交通なども似たような例で、路線車を全盛期の5分の1にする大リストラと代替バス運行受託者(滋賀バス)となることで細々と生き長らえています)。

 京都新聞の記事を見る限り、給与の遅配が数年前に既に起こっていたというのは驚きです。それほど経営状態が悪化しているのなら、それらしき風評がもっと広範囲に広がっていても良さそうなものですが…まあ、給与遅配についてはあくまでもその時限りで、那覇交通のように恒常化してはなかったとも取れますが。

 ご存知の方も多いと思いますが、京都交通では一昨年ぐらいから、期間限定(第二弾が昨年の9月28日までとのことですが)で土曜休日に限り運賃半額というかなり思い切ったサービスを行っていました。サービスといえば聞こえがいいのですが、実際乗ったときには、京都市内からの直通利用客の取り扱いが曖昧で危なっかしい印象を持った記憶があります。飲食店などでの期間限定の半額サービスは却って客離れに繋がるからご法度という話もあり、資金確保のための苦肉の策ではと当時から思っていたのですが、一般利用客はどう思っていたのでしょう?。

 さらに、それほどまでに経営が悪化していたにもかかわらず、各社で行われているいわゆる「分社化」が全く行われなかったのも不思議といえば不思議です(労働組合がとんでもなく強かったとか?)。

 私の意見も素人考えなのですが、京都市内の路線が少なかったから分社化のメリットは少なかったのでは、と勝手に想像しています。
 また、もう一つ気になる点として、亀岡市のコミュニティバスを除くと代替バスや市町村自主運行バスの受託が少ない点があります。元々の営業エリアである日吉町、京北町、美山町(後者2つは元JRバスの営業エリアとも言えますが)は自治体の自家用バス(80条バス)による代替運行で、もしかしたら京都交通の経営姿勢が少し関係している?と疑ってしまうのですが、詳しい事情をご存知の方がいたら教えてください。

WURE

コトデン、九州産交、京都交通、そして奄美交通
 投稿者---551planning(2004/01/19 20:05:20)

 花やしきも破綻ですかぁ…今日は本当に骨身にしみる寒さです。
 当方も感想主体にて。

会社更生法  経営権は原則喪失、手続が煩雑で再建まで年単位の時間を要する
民事再生法  経営権は原則存置、手続が簡便化され再建まで迅速な処理が可能

ということになりましょうか(識者フォローを期待!)。2000年4月に施行された民事再生法は株式会社以外でも選択可能で、経営者と従業員の区分が薄い中小法人の円滑な再建に寄与する意図があったところ、時流を受けて大企業が更正法よりも簡便・迅速な処理を目当てに選択する事が目立つ結果にもなりました。交通関係で云えばそごうショックに飲み込まれたコトデングループ(蛇足ながら現ことでん…ひらがなとカタカナでこうも印象が違うものかと)が記憶に新しいところです。この状況を踏まえ、2003年4月から改正会社更生法が施行、手続の簡素化や経営権の存置条件拡大など実質的に民事再生法に近づいた内容になりました。

帝国データバンク http://www.tdb.co.jp/tosan/teigi.html

 その意味で今回の措置を見ると、まだ水面下の様子が伝わってこないところからすればミスリードになるかもしれませんが、率直に云って経営陣としては沿線自治体に下駄を預けた格好となりましょうか。民事再生法での自力再建は勿論、会社再生法で乗合バスメインの事業としてスポンサーを探すということももはや現実にはままならないであろうところからすれば、苦渋の決断であろうとまさに最悪の結果という深刻な事態と云えましょう。
 ここで想起されるのが産業再生法適用の九州産交ですが、こちらは事業拡大の末の行き詰まりだがバス事業と不動産事業で何とかなるという「ソフトランディング」、勿論環境は全く違うとはいえ、遅まきながらライバルの鉄道の強化で主力事業が行き詰った京都交通から見れば羨ましい限りでしょうか…。一方、佐多岬ロードパークでも物議を醸したいわさきコーポレーションの奄美交通「事業放棄」という事態を見れば、京都交通の再建に向けた選択を前向きに受け止めたい気もします…。

いわさきが奄美交通を9月末清算(南日本01/10)http://373news.com/…
奄美交通撤退問題 地元市町村が出資拒否 路線維持に対策協を発足(毎日01/17)http://headlines.yahoo.co.jp/…

Re:2つの「私道」の話題から ../highway/log532.html#12

ついに地方公共交通淘汰の時代がやってきた?・・・
 投稿者---TAKA氏(2004/01/19 23:38:32)

 管理人様今晩はTAKAです。
 私も未だ色々勉強不足な点があるので、感想主体で行きたいと思っています。

 花やしきも破綻ですかぁ…今日は本当に骨身にしみる寒さです。

☆この頃は本当に気温も景気も骨身にしみる寒さです。「景気は回復基調」なんて政府は言っていますが私は全然そんな感じはしません。景気が悪いのは私の廻りだけかもしれませんが・・・そんな事言っている政府なんて何もしてくれませんから・・・
 只私の予想ですがこれから3月に掛けて毎年恒例のバタバタ倒産が又始まるかもしれません。銀行が業務損益でプラスになる分此処で決算前の見込みのない企業や実質破綻企業の整理や不振企業の債権放棄等が行われる可能性がありますね?花やしきもその一環でしょう。只新聞記事を読む限りちょっと状況は複雑みたいですが・・・

「浅草花やしき」の経営会社が事実上倒産(讀賣01/19)http://news.www.infoseek.co.jp/…

※「会社更生法」「民事更正法」の内容に関しては、私も管理人様の回答されている物以上のは良く分かりません。此処はやはり私も識者の解説に期待させて頂きます!

 その意味で今回の措置を見ると、まだ水面下の様子が伝わってこないところからすればミスリードになるかもしれませんが、率直に云って経営陣としては沿線自治体に下駄を預けた格好となりましょうか。民事再生法での自力再建は勿論、会社再生法で乗合バスメインの事業としてスポンサーを探すということももはや現実にはままならないであろうところからすれば、苦渋の決断であろうとまさに最悪の結果という深刻な事態と云えましょう。

☆ついに地方交通を担う民間企業の経営不振による会社整理が始まりましたね・・・。望ましいことではありませんが投げかけられる意味は大きいと思います。
 地方交通機関を担う民間企業の法的整理に関して「京都交通」は「コトデン」「九州産交」に続く形ですが、「コトデン」「九州産交」は本業の交通業とかけ離れた関連企業(コトデンそごう等)の失敗が経営不振を招いた例ですので、それらの不良債権を切り離して債権放棄の上資産売却すれば本業の交通業は生き残れる可能性のあるパターンです。この様な例は破綻まで行かなくても過去には「京成」も当てはまるのですから珍しい物ではありませんし、地方公共交通全体から見れば深刻な問題ではありますが、絶望的な問題ではありません。
 只今回の「京都交通」の場合そうではありません。本業のバス事業の不振が会社経営破綻の原因です。これでは管理人様の言われるとおりスポンサーを見つけての再建も難しいです。そうなると事業存続=地方バス公共輸送の維持自体が困難であると思われます。京都府北部地域はこの頃鉄道整備が進んだ事によりバス需要が離れた可能性が高いとは言え、過疎地域である為公共輸送機関を利用する客が減って民間営利企業が運営するには困難な状況になってきているというのが実情でしょう。これは奄美交通の解散に関しても同じ事であると思います。

☆さて此処で最大の問題は”営利企業たる民間企業に不採算の地方公共交通を維持させるという事にはもう限界が来ている”という問題です(まあ株主優先資本主義とか利益至上主義とか言われる私の考えが覿面に現れていると言えますが・・・)。もう今の時代会社の経営が苦しくても銀行が助けてくれる訳ではありませんし、国が銀行みたいに巨額の公的資金をバス・鉄道企業ににバンバン投入してくれる訳ではありません(新生銀行で帰ってこなかった約5兆円の我々の税金の50分の1が地方公共交通機関維持に毎年投入されていればどれだけ良くなるか・・・)。又地方自治体も奄美交通の例を見ると冷たい状況であるのではないでしょうか?こうなったら誰が地方公共輸送を維持するのでしょう?
 少なくとも”営利企業たる民間企業”にそこまでを要求するのは酷な話です。民間企業は慈善団体ではないのですから・・・。そうなると公共セクターが関与するべきであるというのは必然の話になりますが、そこには財源の話もあります。それを何処から調達するか・・・。銀行救済みたいに気前よく国は出してくれないでしょうからね?
 運営の方法にしても既存運営業者に公共セクターが出資及び補助金を投入する第三セクターというやり方もありますし、既存運営企業にさらなる補助金を投入し収支均等を目指すと言う道もあります。又運営の行き詰まった運営企業を買収して公営化するという方法もあります。又既存運営業者は路線を公共セクターに譲り運営受託業者として運営を受託しその差額を公的セクターが主体するという方法もあります。まあ正直言えば運営方法はその場所場所により千差万別ですが、それに先立つ財源は考えなければならないでしょう。

 どちらにしろ民鉄のローカル鉄道の廃止問題やバス路線の廃止問題等は既に進んでいます。その中で”営利企業たる民間企業に不採算の地方公共交通を維持させるという事にはもう限界が来ている”と言う問題は避けては通れない問題です。今回の京都交通とて「営業は続ける」とコメントされていますが、将来が保証されていないのは明白です。スポンサーが見つかっても不採算路線の廃止が進むことは間違い有りません。
 まずこれにどの様に対応するか?まず地方自治体が問われる重大な問題だと思います。只この破綻は対岸の火事ではありません。地方公共交通維持問題全体に投げかけられている問題と考えた方が良いのではないでしょうか?

京都交通・奄美交通
 投稿者---3京新聞氏(2004/01/20 02:24:39)

 お久し振りです。今回で2回目の投稿になります。
 私も感想主体になってしまいますが・・・(花やしきはちょっと驚きました)。

会社更生法と民事再生法

会社更生法と民事再生法 http://www12.tok2.com/home/kimkim/economic/74.htm
第155回国会において成立した新「会社更生法」について〜 新しい会社更生手続の概要 〜
http://www.moj.go.jp/HOUAN/houan15.html

 私も全く詳しくないので識者ではないですが、何となくうろ覚えであったことも含めて。民事再生法は経営権も存続し行いやすいが担保回収の制限とかはなく、一方で会社更生法は経営権は存続せず手続きも面倒だが担保回収の阻止など全体として債権者に対して制約を課すことができるようなものだったと思ってました。色々なページを見る限りでも、大体そんな感じがします。多分、京都交通が会社更生法を申請したのも切り売りを避ける為だったのではないかなと思います。・・・やっぱり、この辺識者のコメントが欲しいです。

 一方、佐多岬ロードパークでも物議を醸したいわさきコーポレーションの奄美交通「事業放棄」という事態を見れば、京都交通の再建に向けた選択を前向きに受け止めたい気もします…。

 それはとても同感であります。

 (いわさきの動きは)ちょっと唐突すぎる嫌いはあると思います。地元が出資を拒否したのも、そんなところがあるのかなと。確かに出資額=債務額では嫌悪感を覚えるでしょうし。それにしても、最近のいわさきコーポはやや性急過ぎる感じがします。山川〜根占航路にしても、市町村側にも落ち度があるとはいわさき側も二転三転しているような印象を受けます。それだけ、切羽詰っていることの証なのでしょうけれど。

山川−根占航路 3セク準備会を解散−早期再開は困難に(南日本03/09/10) http://373news.com/…

奄美交通の場合は
 投稿者---wataru氏(2004/01/20 15:02:47)

 当初の京都交通の話題とはかなりそれますが…
 奄美交通(いわさきコーポレーション)に対する地元の反発は、当該企業が純然たる「地元資本」の会社ではなかったということもあるのではないかと。
 同時に、これまでに地元の同業者をその資本力で潰して一社独占に近い状態を作っておきながら、今さら何を言うのかという感情もあるのではと推測しますが。

奄美交通の行方はいかに
 投稿者---No.15氏(2004/04/09 19:18:29)

 No.15です。
 2度目の投稿です。よろしくお願い致します。

 奄美交通の清算と新会社設立をめぐって二転三転しています。

赤字バス路線は廃止へ?奄美交通(04/01南海日日)http://www.nankainn.com/…

 よく分からない構図なのですが、ほぼ一括して岩崎バスに譲渡するということでまとまりつつあった所に、いわさきが1/3出資する新会社を作り黒字路線のみを引き継ぐ、としています。
 廃止届けを出した路線の行く末については具体的に触れられていません。
 いわさき社長のコメントを読んでも、条件さえ整えられれば新会社が引き継ぐのか、それとも行政が主体的に運行することを期待しているのか、読み取れません。

 受け皿を作るように発言し、受け皿が出来かけたところで新会社設立を発表するとは、真意がつかめません。

いわさき側の真意は?
 投稿者---3京新聞氏(2004/04/10 00:25:11)

 No.15さん、私も投稿回数が少ない方なのでよろしくお願い致します。

 奄美交通の話が出てきましたが少しコメントします。この話を見て思ったのですが、いわさきの交通に関する撤退話は二転三転したりして、揉める傾向があるように思います。私は詳しい状況は分かりかねますが、いわさき絡みでは山川・根占航路のときも二転三転したような印象を受けます。

廃止示唆→存続協設立(廃止撤回)→廃止表明(廃止)→3セク作るなら協力→3セクへの協力白紙撤回

という流れでしょうか。自治体側の対応にも問題があるのでしょうが、それにしても真意が掴めません。

↓関連記事(といっても主に社説ですが)
http://373news.com/2000syasetu/2002/sya020726.htm
http://373news.com/2000syasetu/2002/sya020929.htm
http://373news.com/2000syasetu/2002/sya021027.htm
http://373news.com/2000syasetu/2003/sya030813.htm
http://373news.com/2000syasetu/2004/sya040111.htm
http://373news.com/2000picup/2003/09/picup_20030910_2.htm

↓山川町のサイト内にある航路廃止前後の経過説明
http://www.town.yamagawa.lg.jp/ferry/torikumi.htm

ご都合主義としか思えない…
 投稿者---551planning(2004/04/14 14:27:17)

 奄美交通問題ですが、鹿児島県知事の戸惑いの弁が出ていますね。

奄美交通問題「企業だけの問題でない」/須賀知事−公共性担う責任指摘(南日本04/12)http://373news.com/…
奄美交通バス路線問題 知事「当惑している」(毎日04/13)http://headlines.yahoo.co.jp/…

 知事が『報道で知った』というのもアレですが、いわさき側の対応の異常さを如実に示しているとも云えます。その意味で同社グループの公共交通事業の整理について『すべてを県に頼られても困る』という言葉は、いろいろな意味で重いです。『支援できるものは支援するという気持ちは十分ある』と続くことに救われますが、まさに全県で見た対応において末端や島嶼交通の比重をどのように考えてゆくべきか、その際の町村レベルでの行政関与におけるサポート体制のありかたが問われているということでしょう。

***
 いわさき絡みで云えば、鹿児島中央駅バスターミナルの乗り入れ問題はどうなったのでしょうか?こちらは経緯だけ見ると筋が通った主張を展開しているようですが、タテマエホンネでいくとどうなんでしょ…早いこと現地が見たいと思っている礼儀知らずのおさぼり管理人でした。

新幹線鹿児島中央駅バスターミナル、2社が乗り入れ拒否(読売03/06)http://kyushu.yomiuri.co.jp/…
東口バスターミナル 横断歩道問題こじれる(朝日03/11)http://mytown.asahi.com/kagoshima/…
JR鹿中央駅東口新ターミナル バス3社の乗り入れ開始−大きな混乱なし(南日本03/12)http://373news.com/…

狭い空間だとはっきりする官民住み分け論の矛盾
 投稿者---エル・アルコン氏(2004/04/20 11:56:17) http://6408.teacup.com/narashinohara/bbs

 奄美の混乱には、公共・公益事業の「民営化」における弊害が顕著に、そして教科書的に現れています。

 奄美大島のバス交通という公共・公益事業において、これまで黒字路線、赤字路線含めて一手に担っていた企業が、黒字路線だけに傾注したいという話であり、赤字路線については民間が担うのではなく福祉的側面から自治体が経営すべきというのがいわさき側の主張と見ます。
 確かに民間で出来るものは民間でやるべきという昨今の潮流からすると、いささか順序が逆ながら、総撤退ではなく黒字路線は引き続き(法人は変わりますが事実上一緒ですね)運行するわけですから、広い意味では流れに即した形態といえます。

 通常なら、切り離された、もしくは既存事業者が手を上げない「赤字路線」についても、状況によっては行政の支援を前提に運行を受託する事業者が出てきているのも事実であり、「本土」の多くの地域で見られるコミバスその他の形態となっています。
 しかしながら、そうした受託企業にしても、他エリアでの交通事業やその他事業との連携によるメリットがあるわけで、言ってみればそのエリアだけのミクロで見れば不採算でも、全体では収益に寄与しているわけです。

 ところが奄美大島は本土から離れた独立したエリアであり、経済等が自己完結した空間になっています。
 こうなると話は違うわけで、赤字を自治体支援で埋めてトントンであっても他との連携で収益が期待出来る可能性が極めて低くなります。収益源がないのですから、他で稼げませんし、合理化も限界があります。
 経済全体のパイの大きさを活かして、「小さな」赤字をリカバリーするスキームが取れないケースにおいて、公共・公益事業の展開を極大化するためにはどうしても収益源となる黒字路線、事業を確保しておかないと話にならないわけです。

***
 官と民との住み分け、といっても、奄美のように経済圏がごく狭い場合、もしくは「住み分け」が極度に進行した場合では、民間が握る黒字事業と公共セクターが維持する赤字事業に峻別されるわけで、公共セクター側には収益を改善する方策が事実上無くなります(合理化には限界がある。そのうえで収益を改善するには赤字事業の縮小しかないわけで、公共・公益事業の提供と根本的に矛盾する)。

 もちろん黒字企業への課税による間接的な補填も可能ですが、例えばいわさきの場合、奄美の収益見合いの税金は国税である法人税であり、地方税である法人住民税、事業税で還付されることになりますが、まず納付の時点で他の営利事業との通算になるうえに、奄美が徴税主体になるのは一部なので、奄美の収益×実効税率での回収が不可能です。
 その意味では内部補填の原資と合わせて二重の意味での「持ち出し」になります。

***
 ではこの部分をどうするかというと非常に悩ましいですが、あるレベルでの地域独占を前提にして、どうしても収益が上がらないがサービスは必要な区間に対する公的補助を織り込んだ上で、事業者を募るという公設民営の形態しかないでしょう。
 バスの場合は軌道系と違い車両以外の資産がないですが、路線や営業権を無形の資産として、公的セクターに帰属させるわけです。

 もちろん受託者として応じる事業者が無いケースもあるでしょう。
 そのときは受託条件を甘くするか、公共セクターが直営するかのいずれかになります。
 要は、チェリーピッキング(クリームスキミング)による黒字と赤字の泣き別れを如何にして防ぐかであり、これの徹底により、効率的かつ極大化された交通サービスの提供が可能になります。

***
 ただ、これは赤字路線の維持に充分な内部・外部の補填が期待できないようなケースに限られるわけで、大都市圏のように複数事業者による競争原理の発揮の方が望ましいケースがあることは言うまでもありません。
 そういうエリアで地域独占を前提にすると、こんどは独占の弊害が顕著になるわけで、そのさじ加減が肝要ですし、今後の交通行政の要諦のありかでもあります。

●利用者不在のメンツ争いとしか思えない

 バスターミナルの平面図や新聞記事(ウェブ版)での写真を見る限り、この位置の横断歩道の設置がなぜここまで揉めるかがいまいち理解できません。
 ターミナルの出入口はそのままナポリ通りとの三叉路に附属して十字路になっているわけで、電車通りとナポリ通りの間の右左折、電車が駅前に入るための横断により、ターミナルへの出入りが出来ない時間帯が必ず発生します。

 ならばその時間帯を横断歩道の通行に充てるだけであり、そもそもターミナルへの出入りが出来ないバスがとやかく言う謂れはありません。実際、報道によると市電の横断に充てられる時間は20秒、横断歩道の青信号は30秒であり、横断歩道の設置がターミナルの出入りを著しく削ぐ物とは思えません。
 そしてターミナルへの進入と横断歩道が干渉するとすれば、電車通り側が青信号で同時に横断歩道を青にした場合に限られ(実際には10秒以上割かれることは無いのでは)、かつ郡元方面からターミナルに入るケースに限られるはずですし、そういう信号制御が可能な構造でしょう。

***
 さて、この手の駅前広場の整備において一番問題なのが、一般道路の交通と分離されているはずのバスターミナルへの出入りが歩道橋や地下道を経由することです。それでも歩道橋や地下道が駅改札と同一平面だったり、メインの商業施設への出入りの動線に重なっている場合は抵抗感が無いのですが、鹿児島の場合は、地下道経由が無駄な動線と言う感じがします。
 こうなると、ロータリーに柵を設けていてもあちこちから横断する「不心得者」が後を絶たないのは残念ながら全国共通の事象ですし、それを咎めるのは簡単ですが、目の前のバスしか来ないロータリーを横断していけないのはなぜと言うのが人情と言うものです。
 実際、市や県警が事前に意見聴取をした結果の設置であるわけで、四方八方から無謀横断をされるくらいなら、横断箇所を限定して認めるほうが安全対策としては優れています。

***
 本題にたちかえって、なぜここまでこじれているのか。
 どう贔屓目に見ても横断歩道の設置により安全が損なわれていないうえに、ターミナルへの出入りを支障しているとも言い難いわけです。強いて言えば市電の移設のほうがよほど交通の阻害になっているといえるわけで、邪推すれば市電移設が遠因の鞘当てともいえます。
 もしくは県バス協会のメンツが潰された、と言うレベルの話にも見えるわけですが、いずれにしろ市や県警が「地元の声」をバックにしているうえに、反対の根拠に些かの疑義がある状態では、よほど具体的な理由を説明しない限り、子供のケンカのようにしか見えません。いわんや、協会トップが経営する事業者「だけ」がへそを曲げている状態では、社会的規範となることすら求められる公共企業の行動として説得力に欠けるのではないでしょうか。

共倒れの可能性も
 投稿者---No.15氏(2004/04/28 02:49:21)

 どうやらまたしても話がこじれる方向に動くようです。

全路線運行、地元業者で−奄美バス対策協が要請へ(04/27南日本)http://373news.com/…
奄美バス撤退問題 対策協、全路線の引き継ぎ確認−−地元の会社に要請へ(04/27毎日)
http://www.mainichi-msn.co.jp/…

 現在、名瀬市内のいわゆる市内線の運行は、市北部が岩崎バス、それ以外が奄美交通という構図、名瀬〜龍郷町方面の長距離路線は2社の競合状態です。
 またかつてANKが就航していた経緯で、空港線に岩崎バスも2往復のみですが参入しています。

 このままで行くと、2社の関係が逆転した上で競合が拡大する状況になります。
 すなわち、これまで奄美交通のみが運行していた名瀬市西部〜南部の市内線と、大和村、瀬戸内町方面の路線までもが競合状態に陥ることになります。

 かつて(と言っても10年ほど前ですが)林バス産業という会社が名瀬市内線を運行していた頃、名瀬市郊外の開発と併せて、激しい路線開設競争が行われました。
 両者は運行頻度でも競争を行い、市内線は2〜3分の高頻度で運行されていました。
 しかし、結局林バスが奄美交通に事業を売却し、撤退しました。

 以上を踏まえると、奄美大島のバスが再び激しい競合状態に陥る可能性が無きにしもあらずであると言えます。
 規制緩和による自由化は、競争をさらに容易にさせます。体力勝負の競争に陥った時、奄美大島のバスは果たしてどうなるのでしょうか。

『調査研究』を行なう新交通博物館の可能性
 投稿者---World's Uniquest Railway Enthusiast(2004/02/16 23:19:52)

−「交通博物館」コンセプトの存置を
−日本の鉄道趣味的研究が、未曾有の危機にある中で・・・
 └Re:日本の鉄道趣味的研究が、未曾有の危機にある中で・・・

 こんばんは。
 もうご存知の方も多いかと思いますが、交通博物館のさいたま市移転計画が発表されました。

JR-E 交通博物館の移転について http://www.jreast.co.jp/press/2003_2/20040206.pdf

 新博物館の特徴は、敷地が大幅に拡大される(4万平方メートル―単純に考えれば200メートル四方という事だが)ことと、『運輸関係の博物館としては初の総合的な調査研究』を行なう事にあるとの事。

<鉄道博物館>さいたま市に移転オープン JR東日本(毎日02/16)http://headlines.yahoo.co.jp/…

 コンセプトを見る限り、ここでいう調査研究とは、「交通史」や「産業考古学」にかかわるもののようで、現代交通の話とは若干異なるとは思いますが、今後の鉄道発展を考える上で、過去の話を総括する事は重要であると思うので、ぜひぜひ頑張って欲しいもの。これだけの費用を(建物だけかもしれないとはいうものの)かけるということは、やり方次第では、将来の交通論の展開にそれなりの意見を与えるものが作れるのではないかと私は思うのですが、このあたり、皆さんのご意見は如何でしょうか。

 本当は他人事のように言っていないで、ボランティアに名乗りをあげるとか、寄付をするとかする必要があるのかもしれませんが・・・

WURE

「交通博物館」コンセプトの存置を
 投稿者---551planning(2004/02/17 00:25:47)

技術

暮らし
   終わりの無い技術革新。
   ドラマティックな人間力。
   私たちのライフスタイルの変化。

日本と共に歩んできた鉄道の「今まで」と「これから」

鉄道博物館 http://www.railway-museum.jp/

…いろいろと想像を掻き立ててくれますね。ただ、新施設は「鉄道博物館」となるようです。“JR他社や私鉄等を含めた、日本の鉄道界全般を代表する博物館として育てることも視野に入れ”て行くとは頼もしい限りですが、一方で「交通博物館」としての機能には区切りがつけられる由。

交通博物館、さいたま市に移転・JR東日本(日経02/16)http://www.nikkei.co.jp/…

 メディアの関連記事をさらっと見る限りに内容では日経にイッポンをあげたいですね、細かく書いてくれていますが、“航空機や自動車、船舶などに関する展示品は、他の博物館に貸し出すとしている”ということで、全部の引継は確かにままならないでしょうが、交通史から見た鉄道の評価をどのように表してくれるかに期待したいです。
 確かに船舶であれば船の科学館、航空であれば航空科学博物館、自動車は…ぱっと思いついたのは某社のものですが、こちらは結構各地にあるようですね…とそれぞれあるわけですが、その総本山というべき施設が交通博物館だったのかなと。といっても交通博物館にしてもそのあたりのカテゴリーの扱いがどうであるかといえばいささか疑問視されるところはありますが(といっても当方も最近とんと行っていないし、かつて子供の頃にはそういった部分をすっ飛ばしていたがために印象が薄いゆえ、ということも多分にありますが)、ともあれひっくるめた価値観の提示が受け継がれる事を望むものです。

 さて、現在の交通博物館は、交通科学館・梅小路蒸気機関車館・青梅鉄道公園と併せ交通文化振興財団の管理ですが、新鉄道博物館は東京ステーションギャラリーや旧新橋停車場を管理する東日本鉄道文化財団の管理となるそうで、それぞれの役員構成を比して判るように、後者はJR-E色がかなり強くなることの影響がどうなるかも注目です(…ふと脳裏を過ぎったのは、分割民営化後に青梅の0系が緑色になったということですが、改めて管理体制を見るとその経緯に?とも思ってしまうところですが…ま、あくまで管理というところがどうなるか。なお、蛇足ながら新鉄道博物館には実物の221型車両が展示される由)。ちなみに、碓氷峠鉄道文化むらの管理は地元主体の碓氷峠交流記念財団だそうで。勉強になりました。

日本の鉄道趣味的研究が、未曾有の危機にある中で・・・
 投稿者---コホナオスマカムラサキ氏(2004/02/22 02:51:24)

 はじめまして。コホナオスマカムラサキと申します。よろしくお願いします。
 (ハンドルネームは近く変更予定)

 交通博物館の移転で新たに作られる「鉄道博物館」では、「調査研究」も行う、とされています。
 しかし、この話については、私は疑問を持たざるを得ません。
 恐らく、ここで対象となる「調査研究」とは「学術研究」のことであると思いますが、もう一つの重要な研究である「趣味的研究」については、鉄道博物館が一企業の施設である以上、極めて制限されるものではないかと考えます。
 即ち、民間企業の唯一にして最大の目的が利益追求である以上、何らかのリターンが得られる研究に対しては開放すれど、リターンの得られない「趣味的研究」については、あまり本腰を入れないのではないかと思います。

 また、利用者のマナーの悪さも問題になるでしょう。
 図書館では本の勝手な持ち出しが多いと聞きますし、古い鉄道雑誌の写真が切り抜かれていることは非常に多いのが現実です。
 もはやこれはモラルの問題ですが、日本人のモラルがもはや永久に向上することがない現状では、「趣味的研究」の制約は仕方ないことなのかもしれません。

 ただ、日本の鉄道趣味的研究が、今、未曾有の危機に瀕しているのも事実です。
 現在の鉄道趣味的研究を支えている人は、かなり前からこの世界で活躍している人々ですが、果たして、どれだけの後継者がいるのでしょうか?
 特に若年層の鉄道趣味離れは深刻で、このような状態が続けば、10年後には鉄道趣味的研究は細々と続けられる程度にまで衰退します。
 そのためには、「趣味的研究」を少しでも支援するような環境が必要とは思いますが、リターンの得られないものに対して、民間企業がやることは目に見えています。

 この2つの難しい問題を、どのように解決するのか、残された時間はありません。

Re:日本の鉄道趣味的研究が、未曾有の危機にある中で・・・
 投稿者---World's Uniquest Railway Enthusiast氏(2004/02/22 23:50:35) http://homepage3.nifty.com/tract/

 コホナオスマカムラサキ様、こんにちは。
 最初の書き込みがはしがき程度だったので、もう少し話を深めたいと思います。

 交通博物館の移転で新たに作られる「鉄道博物館」では、「調査研究」も行う、とされています。
 しかし、この話については、私は疑問を持たざるを得ません。
 恐らく、ここで対象となる「調査研究」とは「学術研究」のことであると思いますが、もう一つの重要な研究である「趣味的研究」については、鉄道博物館が一企業の施設である以上、極めて制限されるものではないかと考えます。
 即ち、民間企業の唯一にして最大の目的が利益追求である以上、何らかのリターンが得られる研究に対しては開放すれど、リターンの得られない「趣味的研究」については、あまり本腰を入れないのではないかと思います。

 最初に書いていたときには、「交通」も「鉄道」も区別しなかったぐらいで、この辺りには触れませんでしたが、私自身は学術研究でかまわないと思います。
 他の分野の学問研究でも、実用的ではない研究を行って学術的な評価を受けているケースは多数あり、特段趣味にこだわる必要はないかと思います。逆に、学術的研究と同じ対象を『(趣味なので)引用明記なし、孫引き、思い込みも可。』で行うものが「趣味的研究」と認識されているような風潮があるのが気になりますが(但し、あくまでもこれは私の認識で、この辺は研究と評論の線引きも関係するのでしょうが)。
 ただ、同じ学術研究でも、他でもやっているような研究をそのまま持ち込むのか、交通博物館としてのオリジナリティを出すのかという違いがあって、前者の形式でお茶を濁すのではないかという懸念は当然あります。これはコホナオスマカムラサキさんの問題意識にもある程度通じるのではないかと思います。

 ただ、日本の鉄道趣味的研究が、今、未曾有の危機に瀕しているのも事実です。
 現在の鉄道趣味的研究を支えている人は、かなり前からこの世界で活躍している人々ですが、果たして、どれだけの後継者がいるのでしょうか?
 特に若年層の鉄道趣味離れは深刻で、このような状態が続けば、10年後には鉄道趣味的研究は細々と続けられる程度にまで衰退します。
 そのためには、「趣味的研究」を少しでも支援するような環境が必要とは思いますが、リターンの得られないものに対して、民間企業がやることは目に見えています。

 私は、自分が若い(と思っている)せいもあり、この点楽観的です。ネットを漁ると、旧客や昭和30年代の鉄道を扱ったサイトが出てきますが、定年後の趣味で運営しているのかな、と思いきや、若い人が運営していて驚く事もしばしばですし。ただ、先ほど言ったような趣味的研究のいい加減さや、以前記したような数年熱中して飽きる層が大半、という傾向は変わらないのでは、という風には考えていますが。

鉄道趣味、特に「アマチュアの交通論」としての問題の再定義 log115.html

 そのためには、「趣味的研究」を少しでも支援するような環境が必要とは思いますが、リターンの得られないものに対して、民間企業がやることは目に見えています。

 私自身は、企業が音頭をとるのではなく、趣味人が活動を盛り上げる必要があるのではないかと考えております。どうも日本の趣味界では「庶民だから金は出せない。」で済まされる雰囲気があるような気がしてなりません。「庶民でもなけなしの金をはたいて。」が本来の姿だと思うのですが。私が趣味で調べているアメリカには多数の鉄道博物館がありますが、その多くは、鉄道愛好家の活動が原点になっています。このあたりは日米の企業の文化貢献に対する税制の差異や、所得格差などがあって一概にはいえないのですが、普通の人であってもそれなりの活動や研究成果(書籍)に対してはお金を投じるべきではないのかとは良く思います。

この2つの難しい問題を、どのように解決するのか、残された時間はありません。

 鉄道趣味界の問題は自らの問題、そう思い近年は書籍にHOモデラー級の資金を投入したり、引用文献などに気を使ったサイトを作成したりしているのですが、買う本が洋書ばかりだったり(日本の趣味界にあんまり利益がもたらされない・・・但し、「買いたい」と思う本がないのも現実で・・・。)、いざ引用を付けようとすると意外に面倒だったり、アップロード後に間違いがゴロゴロ出てきたりで、有言実行には程遠い状態なのでありますが。

●補足・・・趣味的研究と学術研究の違いに対する認識

 本論壇では、両者に違いがあると考えた上で、趣味的研究の先行きを憂えた意見が多いように思いますが、私は両者にそれほど違いがないものと考えています。
 たしかに日本では両者は事実上区別されているように思いますが、目を海外に転じると一級の学術書として通用しながらも、(歴史、模型双方の)趣味でも通用するような書籍が結構見られます(カリフォルニア大学のGeorge W. Hiltonとイリノイ大学のJohn F. Dueが1960年に記したThe Electric Interurban Railways in America や、スミソニアン博物館の元学芸員であるWhite, John H., Jr.が記したThe American Railroad Passenger Car などはその典型でしょうか。どちらも、確か 引用に基づいた格調高い考察と、しつこいと思えるくらいのデータがちりばめられた本である)。
 両者に格差が存在するのは、資金不足で細かい部分まで研究が進められない研究者側と、明らかに努力不足な趣味人の両方に至らぬ点があるせいと考えております。それゆえ、先行きが懸念されるのは趣味の研究のみならず、学術研究でもそうであると思うのですが(以前、角本良平氏が「交通学 130年の系譜と展望」という本で似たような事を述べられていました)。

WURE

2004.11.02 Update

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