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【検証:近未来交通地図】Special030
函館サミット探訪記
(2003/10/2〜5)

 本投稿は、【検証:】掲示板でもお馴染みの、くるりん様のレポートを中心に、読みやすく構成させて頂いたものです(一部文面を編集しております)。

下記内容は予告なしに変更することがありますので、予め御了承下さい。
当サイトの全文、または一部の無断転載および再配布を禁じます。



 こんにちは。いつもお世話になっております。
 さて、私、今月初めに行われた第6回路面電車サミット函館大会に行ってまいりました。思い起こせば8月18日に函館の事務局から私宛に来た案内状、すべてはここから始まったわけで。

第6回路面電車サミット2003 in 函館 公式ホームページ http://www.donan.net/shiden/

● 迷った芸術ホールへの道

 10月2日、函館上陸。白鳥71号で降り立った私は、路面電車がテーマなサミットなのですが、会場の芸術ホールに行くのにあえてバスに乗ろうとしました。ご存知のとおり、交通局のバスはすでに函館バス(株)に移管されており、その状況も見たかったのもあり、早速駅前のバスターミナルへ。
 ところが、バスターミナルへ行ってマップを見るに、芸術ホールは駅前から出ておらず、近辺の棒仁森屋前から出ているとのこと。諦めて五稜郭公園前まで市電で向かうことに(あとでわかったことですが、路線バスは朝・夕のみしか芸術ホールに立ち寄らないそうです)。
 さて、五稜郭公園前電停についてまず感じたのは、駅前に比べて人の賑わいがぜんぜん違ったこと。バス停には駅前に比べ多くの市民が待っており、同じ中心市街地でもそこそこの雲泥の差があったように感じました。のちにタクシーの運転手に聞くと、駅前より美原(昭和)地区や七重・上磯両町に近い五稜郭は中心市街地衰退の中でいまだ賑わいを持続しているとのことでしたから、まだ期待できるのではないかと空想した次第。
 問題は電停から歩いて芸術ホールというとき。それが大変でした。重い荷物を引っさげて10分、コンビニの店員さんに教えられて裏道を歩いてやっと到着しました。芸術ホールって不案内ですね。ついでながら、このようなコンベンションが行われるのにもかかわらず、案内人がいなかったのも残念な限り。
 14時、ようやくサミット初日の幕が切られました。

● サミット本編初日

 さて、芸術ホールへ入ると、この「検証」でも書き込まれた岡山RACDA代表の岡氏に早速声をかけられ数分雑談。本当はこっちから質問しようにも、やはり予想通りなことに向こうからの質問攻めといったところでしょうか。
 今回のサミット、聞いた話では参加者は前回の熊本サミットを大きく下回る100人程にとどまった模様。先日に道東ながらも地震があり、加えて各地域から行くのに不便である由があったからではとの事務局の話。それでも全国路面電車愛好支援団体全部と全国路面軌道全国協議会のうちの7割くらいの事業者がそろってよかったとは思いました。また、路面電車のないところの団体で見かけられたのは私の知る限りでは残念ながら金沢の団体のみにとどまったこと、この「検証」で話題になった浜松の団体が来ていなかったことを記しておきます。

※[修正]路面電車のない町での参加団体で修正。よく見てたら第三分科会で東京都中央区の街づくり協議会のメンバーがパネラーでいました。金沢以外にもいたようです。また、参加者100人は函館外からです。

 14時前、歓迎アトラクションとして民謡披露があり、その後本編が始まりました。おのおのの挨拶があり、各都市による報告があって(この活動報告は、おそらくニュースでも流されているような、あるいはこの「検証」でも紹介されているような内容ばかりでしたので省略いたします)、最後に国土交通省の道路・鉄道両局のお役人による基調講演(これも中身はここの常連各氏にはわかるようなことばかりなので省略)と続いて、16:10ころ終わった次第。
 その後、部分低床車とパトカー塗色の貸切電車に乗車して、駅前のホテルに移動と相成ったわけです。ただし、私は荷物を宿に入れるため、タクシーで移動したために、残念ながらこちらには参加しませんでしたが。
 そのかわり、宿のあった五稜郭(ちなみに私は宿の斡旋をあえて受けませんでした)からバスに乗ることにしました。地理に不慣れなのを承知で、1本(14系統)乗り遅れたあと来た39系統に乗車、するとこの道をたどってきてびっくり。実はずいぶん前に廃止された函館市電の走っていた跡をたどるコースだったようです。いい収穫でした。電車廃止後は4車線の道路となっています。
 そういえば、西武デパートがなくなったということは知っていましたが、ではバス停名はどうなったか知りたかったのですが、函館バスによると、しばらくは名称変更しないとのこと(車内で張り紙あり)。また、発着機能のある西武前についても残すこととなったようです。
 さて、バスの話に戻りますが、残念ながら、車内の客は5人も乗っていませんでした。しまいには函館駅前終点で振り向くと、私一人という、地方ならではの光景になりました。ほかの時間の入りようはわかりませんが、これでもこの39系統、函館空港からですが、毎時1〜2本ほどはあるようです。

 さて、夜の会場であるハーバービューホテルでは、代表者会議が開かれるとのこと。個人の身分で来ている私には本来なら用無しではありますが、傍聴だけさせてほしいと議長氏にお願いしてみると、快く認めて頂きまして見物させていただきました。この席で、全国路面電車愛好支援組織に全国鉄道利用者会議と福井のROBAの会、ならびにLRTさっぽろの加盟承認と、第8回サミットの開催が2006年長崎に決まりました。また、来年の7回開催の高知からの報告で、期日を10月22日(金)〜24日(日)になったとの話もありました。
 で、あとはウェルカムパーティで初日終了。そこで意外なことを知ったのです。ついにあの岡山RACDAに専従職員がついたようで・・・。やはり先駆者は違いますね。終了後、私は宿に戻りましたが、一部の人は、岡山RACDA岡会長の手引き(?)により2次会へと行ったようです。お疲れ様です。

● サミット本編2日目

 翌10月3日、時間を間違えた私は1時間前に集合場所に到着。その集合場所は函館山ロープウエイの山麓駅。実は午前中、市内視察という一連の行事に参加させていただきました。・・・といっても、観光地をただ案内して頂いているくらいなもの。もちろん、これを見透かしているサミット参加者もいて、この視察、欠席者もそこそこいたように見えます(あの岡氏に至っては大沼公園に行って、後に人々を驚かしていましたが)。この視察で驚いたこと・・・函館山でみぞれに出くわしたことでしょうか。やはり北の大地ですね。写真がないのが悔やまれますが(苦笑)。

 さて、舞台を国際ホテルに移して午後の行事に。3つの分科会に分かれてのパネルディスカッションということになりました。分科会の内容は次のとおり。

 さて、終了後は、一部の人がオプショナルツアー(後藤軒(夕食)と函館山)に行った以外は思い思いの夜を過ごすことに・・・。私は、数人の参加者有志で地ビールのパブでビールと北の大地に舌鼓・・・で2日目終了。話の中身は・・・酔っ払って忘れました(笑)。

● サミット本編最終日

 最終日、午前中だけですので、さっさと公民館に。報告・挨拶などが淡々と行われ、途中で今回の宣言が発表され、5項目によるものでした。要約すると、

  1. 環境問題のための路面電車の役割強化

  2. 地域経済と街づくりの強化

  3. 福祉問題のために、バリアフリー車両の導入・改良促進

  4. LRT導入促進のための調査・研究と国・自治体によるさらなる支援の要望

  5. 今回の大会の成果を今後の活動に反映ならびに路面電車の日等での積極的なイベント企画を行う

ということでした。
 このとき初めて知った不届きなことですが、函館の路面電車って90周年になったんですね。
 10:30、定刻よりずいぶん早く、終了。来年は高知です。

● サミット後の午後

 サミットは終わりました。しかしながら、私が函館を去るまでもうしばらく時間があるので、暇つぶしに函館線とバスを乗りつぶしに行くことにしました。
 その前に、前述の公民館を下って、電車で駅に行こうとすると、ハイカラ号が・・・。当然、類は友を呼ぶが如く、参加者が集中して乗車。函館駅前で下車します。
 さて、宿を移りました(10月5日は早朝から帰途に就く)ので、さっさと宿に荷物を預け、函館駅前に。実はこのあと森に行って18時ころまでに函館に戻ろうとして、藤城並びに砂原まわりの列車に乗車しようと考えていましたので、時間を逆算したところ、結局15:24発の北斗15号となったために少々時間が空いてしまいました。そこへ知り合ったとある参加者に、函館バスが1日にダイヤ改正を行って時刻表を配っているとの情報を入手、早速窓口に行ってゲット。どこへ行こうか考えたら、ちょうど5系統が入線してきたのでこれに乗って、深堀町まで乗ることにしました。

 さて、2日に乗った39系統もそうですが、この5系統は函館市バスからの移譲路線ということで、しかも路面電車とまったくかかわらない路線ということで、どのような路線なのか楽しみでした。時刻表には路線全体では毎時3本は用意されているようで、また、ノンステップバス(この函館には結構あるんですね。全台数はしりませんが、10台以上見かけました)も走っている路線のようでした。私が乗ったのは普通のツーステップのバスでしたが。
 ルート的には、昭和橋まで電車と併走、そこから閑静な住宅街へと入っていきます。途中、交差点で曲がりながらも全体的に平坦で、十数分後に深堀町到着。乗客は数人とまあ昼間の路線バスはこんなもんかなという程度でした。帰ってきたのち、函館出身の知人に聞いたら、この路線はさらに住宅街へと入っていくそうです。終点は日吉営業所です。
 で、深堀町から湯の川まで電車で行って折り返し、函館駅へ行ったのですが、やはりバスと電車では乗客数が違う。絶えず電車には客が乗り降りする、鉄軌道の偉大さに改めて感服した次第。電車に乗っている最中にこの函館バスの時刻表を眺めたら、この10月で千代田ならびに清川・文月各方面の廃止も掲載されておりました。これも帰宅後に知人に聞いたらかなりの閑散路線だったそうです。
 これ以外にも時刻表をめくると、次のようなことがわかって来ました。

  1. 市内・近郊のバスはよほど辺鄙なところさえ行かなければ基本的に毎時1〜3本はあるとみてよい。特に市バス移管後は1社による運行において、美原・昭和地区へは系統も多くバラエティに富むように見えた。

  2. 駅やバスターミナル発着も多いように見えるが、五稜郭(電停前)や西武前発着が昼間を中心に非常に多いこと。タクシー運転手いわく、現在の函館最大の歓楽街は五稜郭になってしまっているとのこと。

  3. 上磯、七飯、大野といったベッドタウンへの路線が間に合わない状況のように見えたこと。また、藤城あたりまで毎時1本近い本数が確保されていること(実はこの辺で驚いた。理由はこの後北斗15号で知ることになる)。

 さて、所定の時間になったので、函館駅から北斗15号に乗ることにした。ご存知の通り、特急・貨物ならびに普通列車の一部は急勾配を避けるため作られた通称藤城線を通ります。そこへ行ってみたかったのと、帰りに砂原周りを通りたかったというのが、今回の森行きの目的です。
 特急は定刻に発車。五稜郭通過後はぐんぐんスピードを上げていく。途中でいよいよ藤城線へ・・・ん、だんだんなんか住宅街が・・・そうです、この藤城、新興住宅街が広がっていたのでした。前述の知人いわく、そこは函館新道や函館江差道開通前からそれを見込んでできた住宅地とのこと。なるほど、バスが毎時1本来るのにはうなづけます。それにしても、帰りもそうでしたが、渡島大野以南は本州の平野とそれほど変わらないですね。乗客もそれないに多いし(気動車2両で立ち客がでるほどでしょうか)。ベッドタウン、おそるべしといったところでしょうか。

 16:02森着。では旅人恒例のいかめし購入の儀式(?)も済まして駅を見渡すと、バスの時刻表が・・・おぼろげに私は見ましたが、運賃が列車よりバスのほうが安いように見えちゃいました。未確認が故、これ以上書きませんが、もしそうだとしたら、競争があるんだろうなあという気がして、砂原周りの列車発車が近くになって、ホームから駅前を見渡すと、函館行きのバスがいました。乗客は1人だけでした。ここでも鉄軌道とバスの差を痛感。
 再び列車に乗って砂原を回って函館に戻ります。大沼まではいかにもローカル線といった感じで一人こそなりませんでしたが、数人のみで淡々と進んでいきます。大沼から駒ケ岳回りの乗り換え客を拾って峠を越え、渡島大野に入ると乗客がとたんに増えてきました。そして七飯あたりで立ち客が発生。夕方というのもありますが、北の大地でもそんなことがあるのかとここでもベッドタウン、恐るべし(こら)という感じでしょうか。
 函館着後、さっさと宿に入って翌朝に備えました。

● そして離道

 さて、滞在最終日、早朝5時に起きて朝市に向かいます。日曜日でしたが、店はやっており、1種類海鮮をのっけた丼を朝食にして、7:00発のスーパー白鳥10号に乗車、グリーン車にも座ってみて、気持ちよかったのですが、私は同じ号車の指定席。さて、発車後、逆かぶりつきを青函トンネルまで楽しむことにしました。上磯を通過後は駅周辺を除いて北海道らしくなってきました。やはり途中途中には貨物列車が通過を待っていました。ということは、上磯〜五稜郭間は単線がネックになってかなり逼迫しているのですね。できるかわからない新幹線ができるまでそのままなのでしょうか。特急もスピードダウンですね。2日に白鳥71号に乗車してても思うのですが、いくら無人で普通列車の本数の少ない北海道でもほかの鉄道輸送体系でがんばっているんだなと改めて思った次第。
 青函トンネルを抜けても、やっぱり貨物列車と津軽線列車が退避・交換しているところを目に付けても、津軽海峡線は地方交通線だなと実感した次第。8:51に青森に着きました。

● 路面電車を中心とした検証再考

 今回、探訪をしてみて、改めて気づいたのは、函館西武がなくなっても函館の中心市街地自体が完全に駅前〜どっく方面から五稜郭に移行している状況がみてとれ、また、周辺町村の人口が減っているところの多い北海道の中でも函館は七飯・大野・上磯と複数の町が人口を増やしている稀有な都市圏であることでした。また、前述しましたが、いつできるかわからない新幹線という見えない在来線淘汰の波も感じる中で、市電があり、江差線の一部区間という電化設備もある状況下で、ではいったいどうあるべきなのか、あえて私なりに再考してみました。まあ、限られた時間の中で函館都市圏を回りきれるはずもない中で、あえて感じた部分と市民から漏れてきた言葉などをかすかに拾いつつの話ですし、第二分科会でも取り上げられてはいるそうですが、当方別の分科会出席でしかなく、また、ほかのツールをとりあげないなどの批判などは重々承知の上ですが。

※ちなみに私は新交通系に関してLRT一辺倒という考えではありません。できればガイドウェイ・基幹バスとの組み合わせでいくべきというのが個人的な考えですが、まあ、個々それぞれの町の都合もありますので・・・。

1、函館空港方面
 こちら、過去ログにおいて川島氏の案としてあって議論になったようですが、今回、函館を訪れたらどうも市民の間では、美原地区とならんで(それ以上かもしれない)こちらの延伸案が出てくるようでありました。なるほど、函館バスの市営バス移管分の路線図を見る限りでは湯の川団地や空港団地といったバス停を見かけるなど、多少の集客力は見えてきてもおかしくないように見えます。前述のとおり、路線バスより鉄軌道系の存在感はかなりのものがありますから、路線バスの毎時1〜2本運行(+従前からの函館バス運行2系統分計毎時1本ほど+空港リムジン)ということは、鉄軌道系の運行によって大化けする可能性も否めません。

2、美原・昭和方面
 今回訪れて意外な収穫だったのはこちらで、市民や函館の団体あたりから出てくる待望論が空港よりも同格もしくは下だったように感じたことでした。これは意外と重要で、市営バスという安定的に近い運営から函館バスという一営利民間企業に移管されたことで、本来であればこちらの方面の市電延伸待望論がもっと強くあってしかるべきでしょう。しかし、その逆のように見えたことで、果たして今後の議論がどうなっていくのか、注目すべき点です。
 渡島支庁所在地や産業道路および大型スーパー点在の中で果たしてこの方面の動きが今後の函館公共交通の巨大震源地にならなければよいのですが。

3、函館・江差線乗り入れ
 新幹線がいつできるかわからない中、完成した後での江差および函館線渡島大野以内切捨てがくることが予想される中(報道であったかどうかは失念しましたが)、過去ログにもあったかと思われますが、3線にしてでの乗り入れは効果ありかなという気もします。バス路線も大野・藤城および上磯までが近郊の守備範囲で、上磯方面の場合は、五稜郭発着が別に毎時1本あるわけで。まあ、新幹線ができたとしても、貨物列車は当分残ると思われるので、思い切って新幹線停車駅が予想される木古内へも・・・という手を使うのも一つかなと感じます。その場合、運転間隔によっては上磯〜五稜郭間複線化という問題も発生しますが・・・。場合によっては藤城線活用による藤城の新興住宅地への路線というウルトラCも考えられます。

【LRT】函館市電、川島令三氏のLRT化案 log330.html

 いずれにせよ、妄想の域を出ないわけで、結局結論は説得力のある過去ログに行き着くのかな・・・という気がします。私の説得力のない文章だからでしょうが。
 う〜ん、本当は函館あたりはもっと何かいいヒントがありそうな都市ですから、滞在期間を延長すればよかったんですけれど、なにぶん会社から休みを特別にもらっていくくらいですから、リベンジするくらいの覚悟はいるでしょうね。
 

 結局なにか物足りない探訪記になりましたが、この辺で終わらせていただきたく。ただ、この函館以外にも、実は移動の時だけでも感じたいくつかの点があるので、別の場所で書き込もうかな・・・と検討中です。

 それではこの辺で。


函館都市圏と公共交通
 投稿者---551planning(2003/10/13 23:13:48)

 くるりん様、サミット出席報告ありがとうございました。
 当方も参加したかったのですが、招待状?が来るというのも凄いですね。岡会長から質問攻めというのも!(ある意味想像できたりしますが…?)
 内容については…ですかね?正直サミット1週間を経てネット上で(雰囲気含めの)詳細が伝わってこなかったこともあって気には掛けていたのですが。公式サイトも付属的なところに終始していた事もあったので果たしてどうだったのかと…なるほど、伝わってこないわけだなぁ、といっては怒られそうですが。
 まぁ導入議論ありきのネットワークという存在が出来たことで、既存事業者の連絡会的なところから始まっているサミットとの棲み分けが今後進んでいくのかもしれませんね…まぁ当方両者とも参加した事はないので実際のところは判りかねますが。

第6回路面電車サミット2003 in 函館 公式ホームページ http://www.donan.net/shiden/

 ともあれ、今秋は今後も各種イベントが目白押しですし、それらを通して改めて現状と課題が見えてくるかもしれませんね。というわけで【検証:】では「交通関連イベントカレンダー」を開設しましたので、御活用賜りたく存じます(って宣伝でした!)。

交通関連イベントカレンダー http://g3.gaiax.com/~member/calendar.cgi?planning@genie

***
 さて、改めて御提示頂いた函館市電の可能性論、以前は2年前に議論していましたか。【検証:】では久々に海峡のきらめきを見たというわけですね。

【LRT】函館市電、川島令三氏のLRT化案 log330.html

 当方は昨年夏、スカイターン試乗時に足を伸ばしてまさに駆け足で巡ったのですが(主目的だった部分低床車には出会わず終い、結局収穫は最後の「海峡」乗車とYS&ツインオッターチェック…)、先ず函館駅前の「地盤沈下」進行振りが気になったのは確か、郊外の状況を見る時間はなかったものの少なくとも市電ルートが需要動線とは合致していない事は認識せざるを得なかったかなと。ただし運行本数もかなりあり、利用者もそれなりについていることも実感できたのは良かったかなと思ったものです。

 さて、空港の往復には函館帝産のリムジンバスを利用したのですが、R278漁火通りを海伝いに快走します。駅前ハーバービューH前から20分ほどで空港に到着しました。空港へはくるりん様御紹介の函館バス路線93系統と北都観光の観光循環路線が入っていますが、空港利用客にはどちらもちょっと使いづらいかなと。
 その意味で、市電湯の川からの延伸をどのように考えるべきかとすれば、空港利用客以外の利用確保が最大の課題になろうかと思いますね。観光拠点は(湯の川温泉を置いて)函館駅前で揺るぎないところ、直行需要のほうが勝る気がします。かつ本町(五稜郭公園電停)方面からの直行ルートがないことが現状での潜在性を物語っていようかと…こう見えても以前は空港延伸論者だったのですが。

函館バス http://www.hotweb.or.jp/hakobus/welcome.html
北都観光 
http://www.hokto.co.jp/s_hako_junkan.htm

 他地域の可能性については、やはり当方も現地を見てからと致したく…ただひとつのポイントとしては、現状において函館駅前の寂れはあろうと観光およびビジネス拠点である事は事実、さらに本町付近の商業集積、あるいは将来的な渡島大野地域の発展と拠点分散化が進む中で、正直云って既存路線のジリ貧化は否めないところ、何も「座して…」というわけではないのですが、まずは函館駅前周辺地域の観光路線化の推進による魅力向上(単に再開発云々とできないところが正直辛い…)、新幹線を見据えた市域デザインをもとにしての市電の位置付け再検討が肝要かと。
 観光路線としては中途半端、ただ拠点間流動の位置付けができれば活性化は不可能ではないと見ます。日常需要確保としては過去ログでも挙がっているP&R等の活用が求められるところ、これは産業道路を巧く使いたいところでしょうね。その上で新幹線前提としては本町から北上して五稜郭公園内を通り、亀田からJR五稜郭駅への延伸、その先は「富山港/吉備」方式もあり得るのでなかろうかと。無論その頃にはバッテリートラムが、ということにもなっていましょうし…って都合良く話を進め過ぎかな?

 私事ながら、函館市電にはちょっとした思い入れもありまして。なんせ当方の苗字の付いた電停があるもんですから…まぁそれは置いといて、函館バス移管とともにLCSA100とか元町地区での小型バス路線の仕掛けも試していますし、小回りの効く路線展開の動向に注目しているところもあり、余計に市電の硬直性が気になってしまうのですが…うーん当方も巧く纏まりませんで。皆様の御意見を伺いたいところですね!

大阪でもLRTに関する講演が・・・「どうしてできないLRT」
 投稿者---KAZ氏(2003/10/27 11:39:34)
 
http://www5b.biglobe.ne.jp/~ktnh/mono/
大阪でもLRTに関する講演が・・・「どうしてできないLRT」
└東京ではコロキュウム「わが国へのLRTの導入は可能か?」

 どうもです。最近はLRT関係の講演も色々と行われておりますが、大阪でもありましたので軽くご報告をば。

 10月10日の夕刻より行われましたのは、土木学会関西支部主催で「どうしてできないLRT」と銘打たれたもので、100名ほどが参加しての結構大規模?なものでした。パネリストは都市交通研究家の服部氏とRACDA代表の岡氏、そしてコーディネーターとして兵庫県の本田氏という面々で、国内の軌道事業者の現状とRACDAの活動を通じて感じられる軌道線運行や改良への支障などを語り合うというものでした。土木学会主催なのでもっと技術的な話もあるかと思いましたが、時間不足から意見交換もほとんどできず現状報告が中心となりました。

 まず本田氏の挨拶があり、その後は服部氏による国内事業者の現状報告や簡単な海外事例の紹介があり、収支の推移から三グループに分けられる(若干の伸び・現状維持・ジリ貧)ことがグラフで示され、現在国内で実施されている軌道や車両改良の事例が紹介されました。ここで軌道事業者に対しての補助制度についての話があり、黒字であるが故に近代化補助が受けられないとか、今後は街路事業としての補助制度を使った改良可能性があるという報告がありました。また岐阜で大掛かりな交通実験が予定されているが各方面の意見相違でかなり規模が縮小してしまったという報告がありました。

 現状報告が中心の服部氏に対し、岡氏はRACDAの活動を中心にして市街地活性化とLRTの関係、そして軌道事業に対する各方面の認識などの話となりました。RACDAの活動実績とあわせて商工会議所との連携で地元での活動をスムーズに行っていることや、RACDA以前からの都心活性化に対する運動(京橋朝市やホバー就航運動など)、そして市・県・国など行政とのパイプ作りなどが説明されました。岡氏が強調されていたのは「まちづくりツールとしての選択肢のひとつがLRTだ」ということ。都心活性化なら商工会議所をはじめとした地元財界の協力は不可欠で、また行政面でも実務レベルでの根回しとトップに対しての積極的なアプローチ、そして国政レベルでの検討を推進するといった総合的な活動をしなければ新しい事例を生み出すことはできない、という旨の内容でした。
 しかしそれらを総合的に行ったRACDAの活動をもってしても全面的な協力体制を作りあげるのは困難で、都心空洞化化を問題視しない郊外選出の議員や新しいことを嫌う警察・行政実務担当者をどう動かすか、そこが一番の問題になっているとの報告がありました。また環境団体がLRTに対してさほどの興味を示さないことも紹介され、バリアフリーや環境負荷軽減という面でのアピールが難しいことが示されました。

 その後はフランスのコンサルタント会社が海外での活動実績を紹介し、続いて意見交換となったのですが時間がかなり押しており、2〜3件の意見発表があった程度でお開きとなり、その後は懇親会で、ということになりました。

 簡単ですが内容のご報告まで。やはり新規モードを生み出すのは難しいようですね・・・。

東京ではコロキュウム「わが国へのLRTの導入は可能か?」
 投稿者---551planning(2003/10/27 15:20:25)

 交通関連イベントカレンダーでも紹介していましたが、去る10/24(金)に運輸政策コロキュウム「わが国へのLRTの導入は可能か?」が東京で開催され、当方も参加してきました。

交通関連イベントカレンダー http://g3.gaiax.com/~member/calendar.cgi?planning@genie

 開始15分ほど前に到着すると、場内は結構な混み様!なんとか入口側の端の席を見つけて座り、辺りをキョロキョロ…ほとんどがスーツ姿の男性で、年齢層も比較的高めです。会費は1,000円で缶ビール(かウーロン茶)とおにぎりセット?の軽食が出ました。

 会は18時過ぎにスタート、運輸政策研究所(運政研)中村英夫所長(武蔵工業大学教授、そして御存知道路四公団民営化推進委員)の司会のもとでスタート、講師として伊東誠運政研企画室長が今夏御自身での欧州視察状況を踏まえた現状説明と将来展望・提言をという形態で1時間半、その後コメンテーターとして大田哲哉広電社長が最近視察を行ったというストラスブールについての補足的説明、および質疑応答が30分ほどで計2時間の内容でした。
 率直に云って素人ながら特段目新しいな、という内容はありませんでしたが、まあ講師からも議論のネタにしてねチックな返答があったりしましたので深く掘り下げるのはこれから、という感じでした。ただ、広電社長のストラスブール近況報告…ラッシュ時の飽和状態やモール内での店舗競争の激化はよくよく注目価値ありかとも思いましたね。それと質疑応答はなにぶんにも刺激的?でした…。
 メモ程度と簡単ではありますが、以下に纏めてみます。

●発表

 1 LRTとは
    狭義 路面電車のサービスをグレードアップした軌道系交通機関
        段階的なグレードアップが可能で、各段階で機能できる
        地下、地上、高架の専用軌道を、時として道路上を走行
        見た目も素晴らしい経済的で環境に優しい

    広義 これを核とした、総合的な交通とまちづくりのシステム
         →「システム」という考え方こそきわめて重要

 2 路面電車/LRTの概況 (外国/日本)
    交通サービスの特性
      速達性・定時性 輸送力の拡張性・柔軟性
    都市規模と軌道系機関
      欧州では都市人口30〜100万人で主力機関として成立(地下鉄等の相互補完あり)
        →日本でももっと多くの都市で軌道系機関が整備されて良い
    LRT整備の経緯
      70年代後期から北米で、欧州でも80年代から90年代に本格化
      アメリカでは450km新設整備、フランス・スペインで各150km弱
      ドイツで新設は50km程度(旧来トラムの更新が主のため)
    都市別輸送人員との関係性
      欧州では50〜100km・年100万人規模が主、日本の30km弱・30万人程度と異なる
      (ただし輸送効率は日本が秀でる)
    表定速度
      欧州では平均15km(日本の倍)、専用軌道の有無でも大きく異なる

 3 欧州の事例分析
    ストラスブール 25.2km 都市圏人口45万人
     幹線型、トラム内独立運行、トランジットモール
      自動車依存、大気汚染解消(旧来の伝統的建築物を酸性雨から保全)
      専用軌道整備、高利便性新型車両、バスサービス(乗継)改善、P&R促進と都心部駐車規制
 
    カールスルーエ 63.3km(直通286km) 都市圏人口64万人
     ネットワーク型、直通運行、トランジットモール
      路面区間DC500v、鉄道区間AC1,500v
      地方鉄道買収や貨物線運転などから直通運転を展開

    シュツットガルト 113.8km 都市圏人口230万人
     ネットワーク型、独立運行、地下化(速達性向上)
      旧来のトラムを更新、都心部地下化、郊外は専用軌道(全95.7km、内トンネル19km)
      ベンツ・ポルシェ本社ある都市で公共交通優先策を実施

    チューリッヒ 109km 都市圏人口55万人
     ネットワーク型、独立運行、トランジットモール
      高路線密度、密な停留所間隔、複数系統高頻度運行(市民の95%が停留所300m内に居住)
      「チューリッヒ・モデル」(LRTサービスの届かない地域をレンタカー等でカバー)
      70%が専用レーン化、軌道環境・優先信号システムの徹底整備、イメージ戦略、顧客重視

 4 LRTを支える制度
    ドイツ  鉱油税を基とした多角的助成制度、近距離輸送責任の州への移管
    フランス 「交通権」規定→交通負担金(事業所課税)、大気汚染法に基づく環境整備、助成

 5 わが国へのLRT導入の課題と対策
    最低限の交通サービス特性を備えること
      速達性確保
      走行空間と環境確保(専用軌道・一部立体化・優先信号)
      車両性能の向上(併用軌道40km制限、加減速性能の現実的緩和)
      乗降時間の短縮(車両、電停、運賃制度)
    総合的な交通マネージメント
      既存鉄道、バスとの乗継円滑化 自動車・自転車との連携   
    まちづくりとの連携
      トランジットモール、公共施設、沿線空間の高質化、土地利用規制
    補助制度の拡充
      車両費低減、各種財源確保
    合意形成

     → ≪提案≫LRTモデル都市
        特定都市をモデルに広義LRT実現(1,2都市)
        実現のための施策パッケージを集中的実施
        LRTの身近な評価=良いものを見せる
        施策の試行錯誤
        自動車抑制に対する理解促進
        全国に広めるため国による積極支援

●コメント

 ストラスブールの詳細分析
   市長による積極的な推進
   P&R、低運賃→ラッシュ時混雑化、車両大型化や頻度運行で対処
   LRT軌道整備における優遇措置(沿線商店街への補償)
    →現在では利便性向上で高質化、賃料アップで小規模店舗撤退も

●質疑応答

 中村「御大」の軽妙な仕切りで煽るもののやはり最初はなかなか質問出ず。調査コンサルの方がモデル都市実現可能性について質問の後、曽根悟工学院大教授が車両価格低減化や運賃システムで質問を展開、中村御大に『それこそ曽根先生がお詳しいのでは…』との切り返しで盛り上がる。中でも違反時科料が3倍の根拠は?とのところでは和久田康夫氏が振られて、『明治以来の鉄道営業法での規定であり、ひとくちに法律改正といってもなかなか手出しできない…』との回答。広電社長も、警察権力絡み前提である現状、権限委譲といっても…との回答で、「いつぞや函館で(西友の)返金騒動を見てチケットキャンセラ等については触れない事とした」との言も?!

 高松良晴埼玉新交通専務からも車両導入について広電社長に御下問『ウチはどうやればクルマを50年持たせられるか…』との言にはゼック?このあと斉藤粛浜松大学教授が『12月にシンポをやるが、祭りで架線が引けないので燃料電池でどうにかと思っているが現状を知りたい』との質問があり、それこそ担当のJR総研宮本岳史研究員より架線レス電車開発中との話が。

 中村御大が『そういえば宇都宮の方も来られていると思いましたが…』と振るも、参加の栃木県企画部員と宇都宮市総合政策部員の方からの返答は無し…と、橋本昌史帝京平成大教授が、自身が座長である富山港線路面電車化検討委と万葉線を挙げて県市の連携が巧く出来ている例もあると紹介、また内田敬之全国路面電車ネットワーク事務局長がネットワークの重要性を訴えておられました。

 このあと2,3の質問があるもここで時間切れ、コロキウムはお開き、会場では懇親会が開かれたもののさすがに居座る図太さもなく、退散させて頂いた次第です…。

●参加者

 まぁ当方のような素人には既に挙げたとおりのビックネームで「引いてる」ところもあったわけですが、会場で最後に紹介された参加者名簿をざっと見てみると…西尾源太郎氏、宇都宮浄人氏、鶴通孝氏等の名前も拝見できました。また所属としては国交省関係(北海道局が目を引きましたね)はさておき、地方自治体では東京都、栃木県、富山県、札幌市、横浜市、宇都宮市、世田谷区、大田区、北区の諸担当者が、また団体系では前述の路面電車ネットワークのほか、交通ビジネス研究会や横浜にLRTを走らせる会が参加されていました。このほかJRや大手民鉄、製造業や建設業などからの参加もあり、総勢150名を遥かに越える会でありました。

 なお、本会内容についてはおいおい運政研サイトで紹介されるものと思われます(数ヶ月ほどかかるようですが)ので御注目の程。

2004.11.14 Update


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