トップページ企画一覧BBS活用ガイド>道路板過去ログ
powered by ロリポップ!
【検証:近未来交通地図】<road to 〜 当世道路研究>
(過去ログ-道路公団民営化編-No.507)
下記内容は予告なしに変更することがありますので、予め御了承下さい。
当サイトの全文、または一部の無断転載および再配布を禁じます。

backindexnext
今時こんな羊頭狗肉
 投稿者---エル・アルコン氏(2003/06/23 19:30:32)
 http://6408.teacup.com/narashinohara/bbs
─〔民主党マニフェスト〕数あわせの議論にすぎない...
 └「借り替え」が意味する莫大な国民負担
  └新幹線と在来線の関係で良いのでは?
   └収益と債務の勘定を分ける弊害
    └必要なものを見極める目が求められる
(以上前ページ)

─「道路」は政局にならず
 └Re:「道路」は政局にならず
  └「政局」は望まず、国民的議論に高めて欲しい
   └「政局」の道具からの脱却

前ページより沖縄道

 

「道路」は政局にならず
 投稿者---551planning(2003/11/10 01:07:55)

 11/09(日)、第43回衆議院議員総選挙の投開票が実施されております。この投稿段階で総ての票が開いてはいませんが、まずは解散時勢力関係における「政権交代」にはならない状況です。
 民主党自体は解散時を大きく上回る議席を確保するに至っておりますが、まさに“マニフェスト”に始まり“閣僚名簿発表”につながる流れの中で「高速道路無料化」という声高のアピールがなされてきたわけですが、他方「藤井道路公団総裁更迭問題」での石原国交相の“ブレ”という一見致命的にすら思われた事象もあったにも拘らず、結果的に争点のひとつとはなれど「政局」には至らなかったという印象を強く受けました。

 「高速道路無料化」の実現可能性、その仔細を見れば…ということは当スレでも示されているところ、ただし争点という意味では「道路特定財源の使い方の問題」、毎年9兆のうち2兆を借金返済で残りの7兆で各種道路維持・建設を賄うべしとのシンプル化した民主党のアピールは、TVでの党首討論等での連立与党の反論が的を射ていない印象を強く持たせるなど、個人的にはなかなかに面白い展開だと思っておりました。
 ただしそれを踏み外したのが閣僚名簿発表ではなかったかと感じています。すなわち、まさに本論の下敷きになっている「日本列島快走論」の山崎養世氏の登用は当然至極として、それは「道路公団特命大臣」格であるべきで、国交相としてではなかったのではないか、と。まぁこれはまさしく石原現大臣にも云えるところではあるのですが…。

 では翻って連立与党側はというと、「民営化」という大枠のみの提示に留まっているところ、まさしく今後の動向こそがということになるわけですが、その中で野党としての民主党はじめとした対応がどのようになるのかがまさしく問われてくると当方は考えております…ただそのときにも「政局」となり得るかは微妙と考えてはおりますが。

Re:「道路」は政局にならず
 投稿者---エル・アルコン氏(2003/11/10 14:47:34) http://6408.teacup.com/narashinohara/bbs

 総選挙というのは本来国の政権与党を決める大一番であり、いかにマニフェストだ公約だと並べていても、その総合として政権を任せるに足るかどうかというバランス感覚がまず働くわけです。
 そこに、少々ミスや疑惑が多くても政権党として戦後のほとんどの時期においてその座にある自民党と、マニフェストの形で政権公約を明示したにもかかわらず、躍進とは言えども連立与党の絶対安定多数を許した民主党という「結果」が現れるわけです。

 今回、民主党は「高速道路無料化」が含まれるマニフェストに対し、全公認候補に忠誠を誓わせたわけですが、自民党の候補(落選)がマニフェストにある郵政民営化に叛旗を翻したように、候補者、そして支持者ともども政策の細目まで総て一致しているとは限りません。逆にこれまで新聞紙上などでのアンケートを見る限り政策論点に対する意見がどの候補も判で押したように一致していたのが共産党であったことを考えると、個別論点における対立はある程度許容されているほうが、多様な意見の支持を集める真の民主主義といえます。

 その意味で、「高速道路は民営化がいいが民主党に...」「郵政は官営がいいが自民党に...」という支持形態も当然あるわけで、総合政策の支持の結果として政権与党の政権公約に従い個別政策が実行されていくにしても、支持者が個別政策に対し無条件の支持を行ったと考えるのは早計でしょうし、今後の民営化のスケジュールにおける見直しや変更を妨げるものではありません。
 例えば1986年総選挙で、自民党が過去最高の304議席を獲得した際の個別政策に国鉄の分割民営化があったわけですが、その支持は冷戦末期における当時の自民党(中曽根政権)の政治運営という総合判断に向けられたものであり、国鉄分割民営化という事象の個別国民投票ではないのです。

***
 余談ですが、民主党の「閣僚名簿」の発表はインパクトというより「底の浅さ」を与えた感があります。
 選挙戦も後半になると、マニフェストが手段ではなく目的になった感があり、駅頭での連呼も本来マニフェストの「中身」を訴えるべきところ、「マニフェストの民主党です」とマニフェストの「存在」を訴えるにとどまっており、こうした部分も有権者の投票行動に現れたのではと思います。

 ちなみに、山崎養世氏の「国土交通大臣」については、森前首相がまさに「国交省の仕事は高速道路だけじゃないんだが」と皮肉ってましたが、551さんのご指摘の通り、石原大臣その人こそ噛み締めないといけない評価なわけで、小泉内閣の後見人を自認する前首相としては久々の?失言かもしれません。

「政局」は望まず、国民的議論に高めて欲しい
 投稿者---551planning(2003/11/10 16:07:54)

 ちょいと前投稿に言葉足らずの感があったので、補足がてら返信をば。

 総選挙というのは本来国の政権与党を決める大一番であり、いかにマニフェストだ公約だと並べていても、その総合として政権を任せるに足るかどうかというバランス感覚がまず働くわけです。

 総合政策の支持の結果として政権与党の政権公約に従い個別政策が実行されていくにしても、支持者が個別政策に対し無条件の支持を行ったと考えるのは早計でしょうし、今後の民営化のスケジュールにおける見直しや変更を妨げるものではありません。

 先ず当方の「政局」の解釈としては、政治的局面、いわば政権(与党・派閥)の揺らぎを示すものと考えておりますが、その意味で今回の高速道路問題は対立軸のひとつとしては明確だったものの、結果としては政局に至らずということであります。また個人的には「政局になってはならない」とこそ思っておりました。これは現連立与党支持ということではなく、限られた時間であった事により道路なり年金なり経済なり憲法なりがそれぞれ明確な論点とはならなかったこと、すなわち「マニフェスト」なるオブラートにひっくるめられた選挙戦に対する感想であるとともに、まさしく二大政党制への移行と位置付けられた結果を踏まえた今後の政治運営の過程で、政治的重要論点として国民的議論に昇華させて頂きたいとの意を込めての想いであります。

 その意味において今回の結果を「バランス感覚の結果」と評するには躊躇いを覚えます。個人的には今回の選挙結果が、長らく「与野党」という色分けがなされてきたところから準二大政党制への過渡期が明確になったことについて積極的に評価する一方、4割もの有権者が棄権したことで、政権チェック機能たる「野党色」が打ち出せなかった政党の衰退と共に組織力の強い政党の堅固性が強く現れたことについて率直に云って複雑な思いを抱いています。

 個別論点における対立はある程度許容されているほうが、多様な意見の支持を集める真の民主主義といえます。

 基本的には当然受容しうるところ、こと選挙の段にあっては特に比例制をとる以上、そのときの手段・方法は確かにポイントとなりましょうが、政党としての主張にシンプル化を強いる事も必要と考えます。実際判を押させた民主党と比して暗に事実上の「踏み絵」をさせた自民党(総裁)の対応は伝えられているところですし。

 余談ですが、民主党の「閣僚名簿」の発表はインパクトというより「底の浅さ」を与えた感があります。

 当方も余談ながら、やはり地方の首長たる御仁が国政を併せて担うということが短期的な行政機構形態の中で可能なのかということひとつとっても、顔見世的なイメージしか与えなかったと当方は思いましたし、一方で世襲議員の消長も伝えられるところでその象徴的な御仁の落選もまた感じ入るところ、その点では「バランス感覚」の結果と思います。すなわち悲しいかな、国政レベルでの政党と人材との推し量りはなかなか難しいということが云えようかと…当方自身含め有権者としての「選挙への姿勢」がまだまだ育っていない事に加えて、繰り返しになりますが若年層ではそれが棄権行動に直結している現状を強く憂うべきと考えます。

…ちょいと総論が過ぎました。道路問題に話を戻すと、自民党は政権公約として『道路関係4公団民営化推進委員会の意見を基本的に尊重し、2005年度から4公団を民営化する法案を2004年の通常国会に提出する』としていますので、もはや国民的議論をするに残された時間はわずかしかありません。今後の展開を注視するとともに、まさに【検証:】ではエル・アルコン様を中心に民営化論について鋭く言及頂いたところでもありますので、改めて道路問題については自身も勉強していきたいと考えております。

「政局」の道具からの脱却
 投稿者---エル・アルコン氏(2003/11/11 13:39:14) http://6408.teacup.com/narashinohara/bbs

 道路公団等民営化の問題にしてもそうですが、本来個別の政策、公約についての実施にあたっては、議論を尽くしたうえで、よしんばそれが国民世論に背を向ける形での実施であっても、与党が責任と自覚を持ったうえで実行するべきです。

 当然そこでは最終的な利害の対象になる国民の側も「お任せ」にしないで、議論に参加していく必要がありますし、そこに選挙公約を吟味して、投票する「参政権」の重みと責任があるのです。

***
 ところが現実はと言うと、こうした個別論が脚光を浴びるのはまさに「政局」絡みのときであり、個別論の是非ではなく枝葉末節レベルにおいて野党や与党の非主流派が噛みつくのが関の山です。
 そしてマスコミもそうした政局絡みのときは個別論の問題点を与党(主流派)の失政として論うのですが、それはあくまで与党批判の一環に過ぎず、「嵐」が過ぎたらそこで指摘された個別論の問題点の是非を検証することも無く流してしまうわけです。
 そうした点では国民の判断基準をサポートする「知る権利」に対してマスコミが寄与していないことが問題であり、国民の権利と乖離した「報道」にどれほどの自由が認め得るのか、という議論も出来ます。

 こうした個別論の議論において気になるのは、短絡的な感情論です。
 道路公団等の問題においては確固たる理由も持たずに「赤字だからケシカラン」「田舎の高速道路は無用」と言うステレオタイプの議論です。
 これまでの「検証」における議論でも、高名な評論家や大学教授レベルでも事実誤認をしていたり、論理破綻を起こしているのでは、と思しきケースがあることを指摘していますが、いわんや市井の住民においておや、されどそうした声もまた民主主義においては同じ一票と言うことです。

 そうした誤認を解くのも国民的な議論であり、そのうねりの中で単純なステレオタイプの意見やためにする意見と言うものは自然と淘汰されていきます。
 現実に昨今の諸問題における世論動向を見ますと、いわゆるマスコミ誘導型の世論ではなく、明らかに自分で考えている面が多々見受けられるわけで、国民の意識と取り組みが重要なのです

タダほど高いものはない  投稿者---エル・アルコン氏(2003/09/05 17:50:28)
 http://6408.teacup.com/narashinohara/bbs

 9月4日の大阪朝日夕刊は、1面トップで阪神高速、首都高速の新線を、これまでの通行料収入によって償還する方法を止めて、2004年からは国や自治体が負担する、つまり道路財源を直接投入して建設するようになると報じています。

阪神・首都高の新線 国・自治体が直接建設へ(09/04朝日)http://www.asahi.com/kansai/…

 いままでも採算が望めない地方の道路において、ベース部分は道路財源、舗装や料金所は公団と言ういわゆる「薄皮方式」での整備はありましたが、それも道路公団等四公団の民営化議論の中で、引き継ぎ拒否が確実ということで今後はそうした整備手法が望めなくなっているようです。

「儲からない路線だけは国民負担」が始まった log524.html#6

 一方で採算は取れそうな都市部でも、均一制の都市高速の場合、収入はその区間だけではなく全体で負担するので、路線の伸びと通行量の伸び如何では採算が取れないわけで、今回の措置もならば全部直轄でと言う流れのようです。

***
 さて、引用したwebでの記事には書いてませんが、紙ベースの記事では、道路財源による整備ゆえ、無料となる見通しとあり、一見ありがたい話のようにもみえますが、よく考えると問題点が山積しています。

 今回の対象は阪神高速が淀川左岸線と大和川線、首都高速が中央環状品川線とありますが、これらに共通するのは都市高速道路のネットワークの根幹を構成する路線ということです。
 例えば阪高大和川線を例にとってみますと、4号湾岸線の築港八幡町JCT(仮称)から分岐し、14号松原線の三宅中JCT(仮称)に合流するルートです。つまり、湾岸線神戸方面から西名阪方面へ、今までは渋滞の名所である16号大阪港線阿波座から環状線を経由するという非常にしんどいルートだったのを、都心を通ることなく西名阪方面に抜けられるということで非常に高い効果が望めます。特に来年度に予定されている伊勢湾岸道と東名の接続により、名阪ルートのバイパス効果が高まるだけに、大和川線への期待も高まります。

 ところが大和川線が「無料」で整備された場合、何が起こるでしょうか。
 既存の阪神高速は「有料」です。ということは大和川線と他の阪高各路線の接点には必ず料金所が設置されます。また、阪高〜大和川線〜阪高のコースもあるので、阪高への入口のみならず、出口にも乗継券発行所が出来るはずです(神戸地区のように最初の入口で乗継券交付は困難では)。
 大和川線と松原線の関係でいうと、西名阪から来たとき、三宅中JCT(仮称)の先に大和川本線料金所があるため、西名阪〜大和川線の場合は料金所無しでスルー出来そうな気もします。
 しかし、松原JCTから三宅中JCT(仮称)の間は3km弱ですが、一方で7号北神戸線の西宮山口JCTから西宮山口南のように同程度の距離で料金を徴収している区間もあることから、三宅中JCT(仮称)に料金所が出来るでしょう。

 このように本線TBが建設されると流動はかなり阻害されます。開通の頃には利用はETC専用となっている可能性もありますが、それでもTBでの減速など不安要因はあります。
 また、この区間だけ無料となったとき、東西間の一般道路が必ずしも十分とはいえないエリアであり、かつ高速道路規格の「走りやすい道」だった場合、大和川線に集中して来る懸念があります。
 この時、高速道路ネットワークとして整備したはずの大和川線が、地域流動により容量が逼迫して、広域流動の改善に役に立たないという事態も予想されます。

 これは首都高もそうで、中央環状線はいわゆる「三環状」のもっとも内側で各高速道相互間の流動を流す役割を持っています。この時池尻から大井まで無料区間が介在した時、中央環状線に本線TBが出来ますが、今の中環の四ツ木や船堀橋にTBがあったと考えたら背筋が凍りますし、大崎以南で車線が狭く蛇行している山手通りの代りに使うクルマが流入してパンクしても洒落になりません。

 今後予定されている都市高速道路の対距離制料金導入への対応も絡むと、必要以上の集中を招く可能性が強いです。

***
 それでも「無料」は嬉しいじゃないか、と言われそうですが、実はたいして嬉しくも無いのです。

 実は無料の高速道路というのはもう44年も前からあるわけです(着工からだと半世紀)。ご存知の通り銀座地区を走る東京高速道路でして、首都高速の案内では「会社線」「KK線」と呼ばれている区間です。もちろん土橋から新京橋とか、西銀座から新橋といった区間を無料通行出来ますが、大半は都心環状線や八重洲線との乗り継ぎ利用です。有料の首都高ネットワークの中の離れ小島のため、白魚橋、西銀座、汐留の3料金所を本線上に設け、料金徴収並びに乗継券の授受を行っています。
 なお余談ですが5月29日から汐留と白魚橋ではETCのノンストップ乗り継ぎが可能になっており、残る西銀座も手渡し精算で対応しており、年内にノンストップかが完了する予定です。

 この区間を走る時、汐留などの本線TBでの乗継券の授受について鬱陶しく思う人が大半でしょう。そしてKK線が無料だからメリットがあると感じている人はどれだけいるでしょうか。
 今回の「無料」区間も同じではないでしょうか。大和川線、淀川左岸線、そして中央環状品川線だけで完結する流動以外の大多数の人にとって、例えETCであっても煩瑣な思いをするだけです。
 財源の違いから来る収益の配分の問題は公団と国や自治体が知恵を絞ればいい話で、通過する利用者総てに影響する安易なパッチワークは、まさに「タダほど高いものは無い」となりそうです

高速道路政策論争で抜け落ちているTDMの観点
 投稿者---エル・アルコン氏(2003/10/25 16:50:17)
 http://6408.teacup.com/narashinohara/bbs
─根幹有料道路における料金でのTDM実効性担保は

本質的には望ましい姿ではない

 高速道路を無料化、もしくは値下げすることで移動や物流が活発になるという議論があります。その最たるケースとしてアクアラインや本四架橋が槍玉に上がるわけで、政党党首が視察して「使われてない」と批判するなど、高速道路の政策論争に絡んでにわかに注目を浴びています。
 その反論として、メンテナンスコストなど維持管理費の捻出はどうするといったものがありますが、ここで忘れられている視点があることを主張したいです。

***
 それは、有料道路がTDM(交通需要マネジメント)に寄与している部分に付いてです。アクアライン、本四架橋とも、高い通行料がネックとなり自家用車やトラックの利用が伸び悩んでいることは周知の事実ですが、一方で全国的に見ても屈指の高速バスの普及地域であることは案外と知られていません。

 例えば明石海峡大橋ですと、高速舞子に停車する便だけで日に200往復以上、高松系統など通過便を含むと300往復以上のオーダーになります。
 アクアラインもそうで、10月に京成バスが木更津、君津線で25往復の増発を敢行したのは記憶に新しいですが、羽田リムジンを含めるとこちらも200往復クラスとなるわけです。
 先日、神戸新聞のコラムで、金曜深夜の東浦BTに着いた最終便からP&Rなどに散る乗客の様子を引いて、明石大橋の通行料の障壁を訴えていましたが、0時過ぎに2台口で運行する需要が自家用車に転移したら神戸や大阪の道路事情はどうなる?という発想がありません。

 不思議なのは各メディアとも、交通渋滞対策でのバイパスなどの道路建設には、それが外環道のように喫緊の問題であっても慎重で、公共交通を使うことで対応しようというお題目を唱える反面、こちらはせっかく公共交通シフト、しかも新規需要の掘り起こしも実現したベストの形態を事実上批判しているに等しく、その矛盾はもっと指摘されるべきでしょう。

 意図的に自然地形と有料道路を使ったTDMを実施して成功した例としては、神戸の新神戸トンネルにおける箕谷駐車場と急行64系統(三宮−新神戸駅−箕谷−神戸北町)がありますが、アクアラインや本四架橋もまた、期せずして自然地形と有料道路が組み合わさり、かつP&Rが発達(袖ヶ浦BT、高速金田、東浦BTなど)することで理想的な発達をしています。
 もちろん新神戸トンネルのように広域流動への配慮をあまり気にしなくて良い道路と違い、アクアは圏央道の一部、本四は四国・淡路島と日本各地との架け橋であり、通過流動の取り込みもまた重要なので、その妨げとなっている高い通行料金の問題はどうしても避けては通れません。

 このあたりは二律背反気味で悩ましいのですが、アクアの場合は環状部の外側へ向かう流動は安くし、都内方向への放射路線として利用する場合は高くするとか、本四も明石大橋であれば、阪神間−淡路島、徳島のように近距離利用はバス転移を図るべく高くするというような戦略的な料金設定や、乗り換え、積み替えが有り得ないトラックだけ大幅に安くするといった対策もあるのですが...

根幹有料道路における料金でのTDM実効性担保は本質的には望ましい姿ではない
 投稿者---とも氏(2003/10/28 19:37:50)

 ともです。

 明石海峡大橋にしろアクアラインにしろ、確かに料金抵抗がいわば「ロードプライシング」効果を生みバス利用者の飛躍的な増加につながっている事実はあります。
 しかし、本質的に望ましい姿かといえば少々疑問に感じます。

 たとえば、明石海峡大橋の場合、仮に橋を渡るのに1000円程度になったとしても、バス利用者がこぞって自動車に転換するというのは考えにくいです。
 対都心という交通行動であれば、自動車利用選択は渋滞や定時性から必然と下がり、むしろ郊外拠点でのパークアンドライド選択に傾くという考え方は可能です。

 たとえば、首都圏における常磐道高速バスや東総地区への高速バス、福岡の近郊高速バスのように、多頻度運転が成立する高速バスも数多くあります。
 これらは並行高速道路は決して高い料金ではなく、むしろ都心部の自動車アクセス性の低さが利用につながっていると見ることも可能です。

 これは明石やアクアラインでも同様でしょう。明石海峡大橋を渡って垂水から第二神明、あるいは布施畑から北神戸線というルートをたどった場合、その先の神戸市内での自動車アクセス性の低さは言うまでもありません。
 アクアラインでも川崎浮島に入って、そこから先は慢性渋滞の首都高速です。

 であれば、むしろ料金を下げることでの選考性向上は微々たるもので、実はその先のアクセス性にこそ難があると考えることも可能ではないでしょうか。

 そう考えた場合、料金値下げは一つの活性化策ではないか?そんな気がします。

 ただ、問題も当然あります。いくら転換がさほどではないとはいえ、転換は生じましょう。その受け皿は必須であるはずです。また、都心の駐車場を高額にして郊外では格安にするような工夫も考えられましょう。
 そういった総合的な策を講じることを前提に、高速道路料金低下を考えるのならばそれは一つの考えではないか。そう感じます。

 まとまりませんが。ではでは

〔公団民営化問題〕高速道建設、「区間別評価」が示す改革への「不安」
 投稿者---エル・アルコン氏(2003/12/04 19:49:13)
 http://6408.teacup.com/narashinohara/bbs
─しっくりこない新直轄方式
 └一部訂正
 └序幕が開いて出てきたものは...

 11月28日に、「道路関係四公団民営化に関する政府・与党協議会資料について」と題した資料が発表されました。

http://www.mlit.go.jp/kisha/kisha03/06/061128_2_.html

 いわゆる新直轄方式と、新会社による建設の線引きにも擬せられるわけですが、この評価、そもそも評価自体に矛盾があります。

 すなわち、評価の前提として、いわゆる「9342km」の全線開通がありますが、それを前提にして各高速道路の「区間別」評価をする意味が無いのです。
 つまり、区間別評価をすることで建設の有無を決めたり、進捗に大きく差が出た場合、区間開業で終わったり、区間開業の期間が非常に長くなるわけで、区間別評価の結果による区間別の着工により得られる効果は、区間別評価によるものと大きく乖離する可能性が強いのです。

 少なくとも高速道路間を結びネットワークを構成する道路については区間別評価は意味が無いわけで、それどころか事業の中止や遅滞により、既開業区間の足を引っ張る「マイナスの評価」も考慮する必要があります。
 その典型が第二東海自動車道(伊勢湾岸道)の豊田JCT−豊田南間。さすがにどの評価手法でも高得点であり「A」評価なんですが、東名の豊田JCTと東名阪の四日市JCTを結ぶ最後の1区間である同区間について、建設を止める選択肢があり得るかどうか。1区間の中止・遅滞により全区間に与えるダメージは、その1区間の中止で「セーブ」出来るコストをはるかに上回るといえます。

***
 そうした根本的な問題に敢えて目をつぶって各路線の評価を見てみましょう。

 まず、東関東自動車道(東京外環道)の三郷−高谷JCT。首都圏にとって喫緊の道路といえるわけですが、事業評価は然程高くなく「B」判定です。ところが同じグループの東関東自動車道(館山道)の君津−富津竹岡を見ると概ね10ポイント以上の差をつけての「A」評価です。
 建設コストの問題が果てしなく足を引っ張った格好ですが、常識で考えて外環道と館山道の末端の評価で後者が群を抜いて高いということは有り得ないわけで、この一点を取ってもこの評価手法が果たして妥当か、道路整備において「採算」という尺度を導入することで、こうしたおかしな事態が起こる、という警鐘とも言えます。

 もっとも、概ね妥当な評価もあることは確かで、先の伊勢湾岸道は別格として、概ね高評価だったのが北関東道の各未開業区間であり、第二東海自動車道(第二東名)も巨額の建設費が云々される割には評価が高いです。
 また地域事情等を考えた時、冬季の安全通行の確保という特殊事情を抱える北海道横断自動車道(道東道)の夕張−十勝清水間や、地形に難があり国道の輸送力が厳しい近畿自動車道(阪和道)のみなべ−白浜や勢和多気JCT−尾鷲北の評価もまずまずです。
 そのほか北海道縦貫自動車道(道央道)の七飯−国縫、近畿自動車道(舞鶴若狭道)の小浜西−敦賀JCTや東九州道の西都−門川など、ネットワーク効果や、地域の主要都市へのアクセスも評価されています。

 もっとも、ちょっと低いんでないかい?という区間もあるわけで、政令市・仙台をはじめとする東北への複数ルート確保の意義がある常磐道の富岡−亘理の各区間が「B」「C」評価の境界をさまよっていたり(推進委方式の方が高評価という意外な結果ですが)、高速交通自体が不足しているばかりか、国道の水準も必ずしも高くないのに「D」評価の日本海沿岸東北自動車道(日本海東北道)の温海−鶴岡JCTというケースもあります。

***
 今回の「評価」ですが、総論部分で根本的矛盾を抱えているうえに各論でも評価の妥当性が問われる面もあるわけで、あまり一人歩きさせたくないしろものです。
 さらに、区間別評価により新直轄と新会社に割り振った場合、税金という強いバックボーンがある新直轄の整備のほうが早くなるということも考えられるわけで、コストと効果を秤に掛けて決めるはずの道路建設のプロセス自体が歪むわけです。

 そうした問題点を考えた時、今の「改革」が本当に国民のためになるのか。
 話が具体的になり、空虚な美辞麗句が一つ一つ消えていく度に問題点が山積みになっていく不安があります。

しっくりこない新直轄方式
 投稿者---Tom氏(2003/12/25 22:35:39)

 新直轄方式・・やはり何ともしっくりきません。

 まず第一に、なぜ採算性の低い路線を税金で建設し、しかも通行料を無料にするのかという点。通行量の多い区間は有料で、しかも渋滞を余儀なくされている実情からすれば、とても納得のいくものではありません。
 第二に、これらの区間がどうして必要なのか、具体的な説明がないことです。また、これらの区間について、どのように工費を縮減していくのかも全くもって不透明というのも問題でしょう。

 ハイテク分野のように、一気にコストを50%以上縮減しろというのは難しいのかもしれませんが、財政も厳しい以上、工法についてもよりローコストになることを主眼とした新工法を開発し、せめて現状の高速道路建設費から3割程度は削減させるよう努力すべきだと思います。

 また、もし地方が渋滞などがない地域でも欲するのであれば、地方税である自動車税を該当地域については増税するなどある程度、地域の負担も増やすべきでしょう(これなど新直轄を建設する地域のナンバーに増税すれば済むので比較的簡単です)。高速バス利用者に高速利用税を賦課するのもひとつの方法でしょう。

 該当地区では一般国道の整備をやめ、高速道路のみ整備する、というのならばわからなくもないですが、渋滞などの問題がない地区にまで全額国費で高速を整備するのはどうかと思います。

一部訂正
 投稿者---Tom氏(2003/12/26 11:33:02)

 今朝の新聞見た上での訂正です。
 建設費については1/4が地方負担、また工費も盛土の多用などで3割は削減するようです。
 北海道あたりだと、一般国道を連続立体化しただけのようなイメージですね。
 重複するバイパス整備を止めるのであれば意外と評価できるものなのかもしれません。
 広域農道の整備などとの二重投資防止をチェックしていく必要があるでしょうね。

序幕が開いて出てきたものは...
 投稿者---エル・アルコン氏(2004/01/07 16:29:53) http://6408.teacup.com/narashinohara/bbs

 結局というかなんというか、これまで指摘してきたことが具体的な姿をあらわしたわけです。

 大都市から地方への道路網はこういうことになりそうです。

大都市 <> 【既開業区間】
民営化会社経営
<> 地方
拠点都市
<> 【採算性が高い区間】
民営化会社建設
<> 地方
中小都市
<> 【採算性が低い区間】
新直轄で建設
<> 地方末端

 通常であれば大都市から順に開業するわけです。まあ工事の関係や用地の関係で多少の前後はあるでしょうが、基本はそうです。
 ところが今回の「新直轄」では、民営化会社が積極的な建設をしない限り、本来後回しになるはずの区間から建設・開業するという方針転換になることが明らかになりました。
 民営化会社の経営だけを取り上げれば正しい経営判断でしょうが、道路整備の効果、そして道路整備に費やすコストを民営化会社の分だけにとらわれないで見た場合、これほどの無駄はありません。

 例えば今回の新直轄対象区間の中に、近畿自動車道尾鷲線の紀伊長島−尾鷲の区間が入っています。
 新直轄の選に漏れた勢和多気から長島の区間には荷坂峠の区間を含み、高速道建設効果は高いはずです。しかし、採算が取れない区間の高速道としての整備を諦め新直轄としたことで、採算性が悪く、かつ平野部で建設効果が低い区間が先に完成するのです。
 同じ直轄工事でも、尾鷲の先、難所の矢の川(やのこ)峠をパスする尾鷲熊野道路のような事業であれば効果も高いのであり、そう言う区間、つまり荷坂峠のような区間に資源を集中すべきなのに、この結果では話になりません。

 しかも建設は新直轄ですから税金、専ら道路財源です。無料開放ですから建設資金の直接回収はありません。一方で民営化会社所管の道路はどうなるのか。事業収入は債務返済に全額充当するのであればまだ分かりますし、それが終わったら新直轄区間同様に無料開放されて、道路財源によって維持管理されるというのであれば理屈もつきますが、そうでしょうか...

***
 道路整備はどうあるべきか、と言うグランドデザインを欠いた議論のなれの果てが今回の新直轄といえます。そして民営化会社のスキームが具体化した時に、21世紀の日本の道路がどういう姿になるのか、利用者、道路特定財源の納税者として歓迎出来るものなのかがはっきりします

〔公団民営化〕「近親憎悪」が覆い隠す本質論  投稿者---エル・アルコン氏(2004/02/15 00:36:12)
 http://6408.teacup.com/narashinohara/bbs

  文藝春秋2004年3月号のトップは、「『道路公団』裏切りの民営化」と題して、民営化推進委を辞職した田中元委員長代理と松田元委員の対談を掲載しています。「柱」に「小泉総理、石原国交相、猪瀬委員に問う」とあるように、政府の最終決定に民営化推進委の意見が活かされていない、それというのも猪瀬委員の、という流れでの対談になっています。もっとも、さすがにその批判は穏当かつ理性的であり、櫻井よしこ氏のように感情的とも言える猪瀬氏批判とは一線を画しています。

***
 さて、委員の意に沿わない結果になるからといって委員を辞任したというと、結局は一昨年の「意見書」答申直前に委員長を辞任した今井元委員長と本質は変わらないわけで、そう言ってしまえばまさに「引かれ者の小唄」になってしまうわけです。
 そもそも「民営化推進委」というのは、「特殊法人改革」における道路公団等四公団の業態変更案の一つに過ぎないはずの「民営化」についての検討をするに過ぎない組織であり、その意見を尊重するとは言っても国鉄再建監理委のような業務監察的な機能や形態決定権は持っていません。ですから「意見書」が必ずしも100%反映されるとは限らないわけです。

 さらに、民営化の原理原則に拘って実現可能性の無い意見をまとめるのか、それとも実現可能性のある「落とし所」を示すのか、なかなか難しいところです。そう考えると、民営化の概念では然程差が無いスタンスですから、今回の田中元委員長代理、松田元委員と猪瀬委員は同じコインの裏表というか、柵を挟んで至近距離で罵り合いをしているに過ぎないともいえます。
 実際、猪瀬委員は新会社が利益を追求することを容認するよう小泉首相に「直談判」して要求を勝ち取っていますが、そもそもの発端である特殊法人の改革から説き起こせば、放漫経営の是正や負債返済の明確化の達成こそが本旨であり、民間会社に改組して出資者だけに還元する側面が大きい「利益」を追求する必要性は実は無いわけで、結局は目的と手段の意図的混同という面では同根といえます。

 もっとも猪瀬委員が「利潤追求」で「馬脚」なら、田中元委員長代理は「語るに落ちる」を地で行っており、対談で政府の最終決定はアクアラインにおける「東京湾横断道路会社」と資産を買収して債務を引受けた道路公団のスキームに瓜二つと言っています。
 田中元委員長代理は、最終決定における「新会社」を建設決定だけすることから「湾横会社」、「保有機構」を返済を担当する「道路公団」に準えていますが、何のことはなく、儲からない資産を切り離されてピカピカになる「新会社」と、返済のあての無い資産を負担する「国・国民」の図式ともいえるわけで、そもそも無理がある話なのです。

***
 結局、この国の道路行政、道路整備をどうするのかという基本部分の議論が無いままに「民営化」ありきで突っ走ったツケが「新直轄」のような今よりひどいスキームを「民営化」と引き換えに生む破目になっています。周回遅れで来ている郵政民営化が、あたかも道路公団等民営化を反面教師にするように、ユニバーサルサービスや地域金融の在り方など郵政三事業の基本を議論して、公社化はしたものの「民営化」しないことも念頭に置いた議論になっていますが、今一度ここまで立ち返れないものでしょうか

〔公団民営化〕お菓子の搭と瓢箪から駒
 投稿者---エル・アルコン氏(2004/03/29 21:40:25)
 http://6408.teacup.com/narashinohara/bbs

─民営化法案・参考人質疑やぶにらみ

 道路関係四公団民営化関係4法案が3月9日に閣議決定されました。
 まあ、今の流れだと法案が出来て覆ることはまずないので、これで決まるのでしょうが、結局「公団民営化」とは何だったのか、と言う思いが先にたちます。

 そもそも特殊法人の改革の話だったのに、民営化ありきでスタートして事業体という「器」の話に終始したため、実際に道路整備と言うものをどうするのか、と言う視点で考えた時、「新直轄方式」などどう考えても今よりも無駄が発生しそうなスキームが入りこんむというような奇怪極まるものになりました。

 そんなこんなで各法案を個別に評価する気力もないのが実情ですが、目に付いたところ、また、瓢箪から駒かもしれないと言う指摘をしましょう。

●地域分割と債務負担の怪
 本州三社分割で、「三島会社」を作らず北海道は東日本、四国・九州は西日本に含め、分割を最小限にしたことはまあいいでしょう。ただ、旧国鉄の分割民営化で、本州三社の分割において、首都圏を擁する東日本、東海道新幹線を擁する東海と、関西圏や山陽新幹線があるものの基盤が弱い西日本のバランスにやや難があり、負債返済と資産のバランスがアンマッチだった前例に学ぶどころか、東名、中央、東名阪に名神や北陸の一部まで擁するガリバー会社を作ったことは不可解です。

 第二東名、第二名神の建設含みということでしょうが、その資産・負債は取り敢えず「機構」に属するわけですから、既存の超優良高速道路の収益と、今後が楽しみな新路線(不安材料はただ建設に伴う負債だったわけで、それから解放されるのです)の収益も確保出来るわけです。
 もちろん見合いのリース料=債務返済は群を抜いて高そうですが、それでもリース料と維持管理料にバランスする料金設定となることを言いかえれば、収益の範囲内で返済するという、よほど副業その他でヘマをしない限り「絶対に赤字が出ない」スキームと言えるわけで、並行在来線を尻目に収益の範囲内で返済するだけの整備新幹線とウリ二つです。

 そうなると、「中日本」は、東海道メガロポリスの高速道路を一手に握り、かつ負債からも切り離されるわけで、話が出来過ぎているのではと疑いたくなるような感じです。

●プール制からの訣別といえば聞こえがいいが
 高速自動車国道とネットワーク型有料道路の一体管理の反面、両者の相互補助は行わないそうです。
 業務を一体として行う必要がある路線網と謳いながら、両者を分ける理由が不明というか無茶苦茶で、例えば京葉道路と館山道の経理を分けることが正しいかどうか。また、山陽道と広島岩国道もそうでしょう。伊勢湾岸道と名港トリトン区間、高松道と高松東道路区間、数えればきりがないですが、常識的には一体管理して返済計画を策定するべきケースをどう扱うのか。

●国などの出資は瓢箪から駒
 当初50%超とされた国や自治体の出資は1/3以上となりましたが、これに対しては民営化の実を失うものという批判が強いです。

 もっとも、批判者の言は裏返せば、「道路収益を自由に出来ない」ということに他ならないわけで、「北海道開拓使官有物払下事件」じゃないですが、金の卵と分かっているだけに利害がもろに出ています。
 もちろん、本来公共物そのものである道路に関して、足下は負債返済(といっても収益範囲だが)に汲々とするとはいえ、基本的に赤字が帰属するわけでもなく、「民営化のインセンティブのため」と理屈をつけて、本来これも負債返済にすべて回すべきはずの副業収入も一部がどうも新会社に属しかねないわけで、公共物による収益の帰属が公共に帰さない可能性が見えて来ています。

 さて、ここで注目したいのが国や自治体の出資です。出資すると言うことは配当の権利を有しますから、これにより公的セクターが新会社の利益配当を受けることになります。
 また、株主として経営に参加することで、新会社の経営について公共性を担保したものにする余地が残ります。

 さらに、今回の出資について、一歩進めれば、新会社の沿道の自治体に路線長に応じて割り当て、引き受けさせることも考えられます。
 これにより、「地元の路線」に対する経営参加が可能になりますし、新会社が機構と協議して建設をする際、株主として「地元の責任」を負うことにもなります。
 つまり、自治体の出資により、これまで国に陳情して整備を進めて来た形態を改め、整備をすること、また整備をしたらその結果に責任を負わせるということが可能になります。

 あとは、一定期間経過後は公的セクター内で譲渡が可能にしても面白いでしょう。
 譲渡した自治体は売却益を得る代りに発言権を失うわけです。

民営化法案・参考人質疑やぶにらみ
 投稿者---エル・アルコン氏(2004/04/20 21:06:11) http://6408.teacup.com/narashinohara/bbs

 道路関係四公団の民営化法案に関する衆院国土交通委員会の参考人質疑があり、20日、民主党推薦の参考人として元大蔵省財務官の榊原英資氏が登壇したそうです。

(04/20朝日)http://www.asahi.com/business/…

 この件に関して民主党は、先の総選挙におけるマニフェストを「強化」した形で、首都高と阪神高速の無料化を含む高速道路の無料化を打ち出しましたが、首都高と阪高の収入を織り込んだ先のマニフェストですら、以前の議論※で明らかな通りキャッシュフローが回るかどうか疑義があるわけで、今回、当時の民主党の資金収支計画によれば5000億円、しかしながら実際の両公団の料金収入は約4400億円の料金収入すらない状態で、どうやってキャッシュフローが回るかと考えれば、年間5000億円、新規路線建設を一切しなくても3000〜4000億円の「増税」になります。

今時こんな羊頭狗肉 h-log506.html#4

 ちなみに13日の参考人質疑では、今や袂を分かった猪瀬直樹氏、田中一昭氏が火花を散らしましたが、両者とも民主党の無料化案は一蹴している点で唯一意見の一致を見ているのが印象的です。

(04/13日経)http://www.nikkei.co.jp/sp1/…

***
 さて、榊原氏の質疑というか批判ですが、道路公団は債務超過であると言う、まあ会計基準次第でどうとでも読める部分という手垢の付いた批判とともに、新会社が政府保証で資金を調達すると言う点について、「無責任体制を維持することになる。民営化とはいえない」としています。
 金利変動リスクについては確かに元財務官らしい批判ですが、これもそれだけの超長期のスパンでの金利政策は、政府の経済政策と経済成長に収斂すると考えれば、批判される余地はあるが、スタグフレーションに陥らない限り最悪の結果にはなりにくいとも言えます。

 で、問題は政府保証による調達への批判ですが、政府保証債による資金調達では民営化といえない、という批判、一見ごもっとものように見えますが、そう断言されますと、道路公団等の民営化のお手本とされる国鉄の分割民営化を否定する話になります。
 そう、経営基盤が安定するまでの間、JR東日本ですら政府保証債を発行していたのです(民営化初年度の昭和62年度の発行額:525億円、2年目の昭和63年度の発行額:479億円)。
 このあたり、起債の監督官庁であり、債務保証の主体である大蔵省出身にしては、脇の甘い発言といえます。

2005.07.20Update

backindexnext
Copyright © 1998-2006 Unlimited Liability Company 551planning. All rights reserved.

Powered by ロリポップ!アフィリエイトはエーハチネット