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【検証:近未来交通地図】<road to 〜 当世道路研究>
(過去ログ-道路公団民営化編-No.506)
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道路公団の「債務超過」について
 投稿者---エル・アルコン氏(2002/10/03 13:31:02)
 http://6408.teacup.com/narashinohara/bbs
─Re:道路公団の「債務超過」について
 └Re:道路公団の「債務超過」について
  └Re:道路公団の「債務超過」について
  └Re:道路公団の「債務超過」について

 3日の日経と朝日は、14年3月末のJHのB/Sが、JH自らが民間基準による試算の結果債務超過に陥っているという記事を掲載しました。
 減価償却の計上と、資産取得時の金利や補償金の資産計上からの除外により資産が目減りしたことが主因ですが、報道を見る限り以下の疑問もあります。

  1. 「債務超過」額の差異
     朝日は7兆円、日経は5兆円とありますが、新聞社(記者)によって2兆円も差異が出る根拠は?
  2. 減価償却費の計上方法
     定率法で計算してます。もちろん間違いではないのですが、収入構成や負債の償還構成との整合性を考えると、資産だけ早く償却しているきらいも無くは無いです。もし定額法で計上した場合はどうなんでしょうか。
     そもそも経年による収益性の劣化といった価値の減少を考慮する必要性が薄い道路資産に対して減価償却の考え方を導入すること自体への疑いがありますが、そのうえでより早く資産価値を減少させる定率法を採用することが妥当かどうかという問題があります。
  3. 資産計上について
     固定資産計上時に取得費用(含む建中金利)を算入することは会計上問題無いはずです。
     資産の水増しをしろといってるわけではありませんが、減価償却費の問題と合わせて、水増しとは逆に必要以上に資産を圧縮している計算に感じます。固定資産の額を抑えることで固定資産税の計上を最小限にする意図はわかりますが。
    ※逆に費用として落とすことで期間損益から法人税を計算するときに問題になるのでは?
  4. 資産譲渡の問題
     側道部分など自治体に無償譲渡した部分の除却も今回の資産圧縮の原因ですが、企業会計による決算を行う前提であれば、本来有償譲渡もしくは貸与となるはずで、途中でのルール変更により問題になる部分については注記すべきです(無償譲渡先にこの部分見合いの負担をさせるべきとなる)。
  5. 損益との整合性
     14年3月期決算では、企業会計方式による最終損益(減価償却費の計上と利払を済ませた後の数字)は4750億円の益になります。
     「JHの財務は悪化してきている」という前提において、フリーキャッシュフロー(FCF)はもちろん、最終利益を出しているが今後は危ないという議論のなかで、債務超過になるロジックがいま一つ分りません。
     取得資産以上の借金をしているのか(特に国費建設との按分案件で資産と負債の負担比率が泣き別れになっているのか)、自治体への無償譲渡分が巨額なのか、ということです。

***
 14年3月期のJH決算書によると、道路資産は建設仮勘定を含めて約40兆円。その他資産1兆円で資産合計は41兆円。一方で見合いの固定負債は27兆円で、負債勘定に償還準備金10兆円が計上されており、ネットの資産は30兆円となります。以上合わせた負債合計は39兆円、資本金2兆円を合わせた41兆円でバランスしています。

 朝日の記事を見ますと、資産と負債から建仮見合いの5兆円を控除し、道路資産35兆円を18兆円と再評価し、負債サイドの償還準備金10兆円を控除するかわりに資本金2兆円を足して、資産18兆円、負債25兆円で債務超過7兆円となっています。
 一方日経は資産23兆円、負債総額28兆円で5兆円の債務超過としていますが、これは建仮と見合いの負債を計上し、償還準備金を控除しています。
 当たり前に考えれば、資産23兆円/負債28兆円+資本金2兆円+当期未処理損失▲7兆円で、債務超過というのなら▲5兆円、▲7兆円なら繰り越し損失というべきですね。

 で、この繰り越し損失ですが、通常は最終赤字の発生により計上、増殖していきます。
 ところが企業会計ベースでも損益では減価償却費、利払も含めた最終損益で利益を計上しており(14年3月期で4750億円)、通常なら発生するはずが無い部分です。
 結局無償譲渡を含めた資産の除却が悪さをしているということでしょうか。

 なお、JHは14年3月期の決算につき、企業会計ベースでも約6兆円の資産超過という説明をしてきました。これは資産35兆円(建設仮勘定を含む道路資産34兆円、その他1兆円)、負債28兆円、資本金2兆円、その他5兆円(剰余金4兆円)という構成でした。
 資産の差額は減価償却累計額が5兆円、除却累計が1兆円となり、それとバランスしない償還準備金が剰余金という形になっている計算です。
 今回、減価償却累計額及び除却合計を含む資産評価の減少が17兆円ということですから、実に11兆円が定率法採用及び建中金利などの不算入、無償譲渡などで減少したことになります。

***
 なお、注意しないといけないことは、これはあくまでB/Sの話ということです。債務償還の原資となるFCFについては14年3月期で約1兆円ありますし、3250億円ある管理費部門のコスト削減や、いわゆるファミリー企業の収益(特にSA、PAという道路事業に密接に関わる収益事業)を加味すると1000億円程度の上積みが可能でしょう。

 道路公団等の問題が「特殊法人改革」なのか「債務削減」なのか、はたまた「民間上場企業育成」なのか、その意図する目的に応じて今回の試算結果は捉えられ方が異なります。固定資産を極力圧縮(その価値を極力、かつ早期に無価値化する)する試算が必要なのはどういうスキームなのか、今回の試算で外部負債もFCFも変わらないということは、何が変わって何が変わらないのか。そこをきちんと見分けないといけないということです。

Re:道路公団の「債務超過」について
 投稿者---通りがかり氏(2002/10/04 00:11:00)

 素人の雑感なのですが、どうも民営化という言葉が一人歩きして、“手段”ではなく“目的”になっているような気がするのです。

 民営化の方針そのものは、去年の行革断行評議会で審議され、年末の閣議決定へ影響が及んだのですが、あまりにも安易に民営化という方針を決めてしまったように思うのです。その審議会では国交省のさまざまな試案に対し、30年で国税投入なしに民営化できるといった猪瀬レポートを比較して民営化方針を決定したようです。しかしながらこのレポートの試算は税金を考慮していない、民営化で調達金利が上がることも想定していない、減価償却を行っていない等問題の多いレポートです。実際に現委員会試算で30年などとても無理だと思います。

 最近、民営化した場合の問題点がいろいろとわかってきましたが、昨年の閣議決定があるので「はじめに民営化ありき」で、問題点に目をつぶり民営化しようとする。民営化が手段でなく目的のように思えます。

 近々委員会で固定資産税について解釈を統一することになっていますが、おそらく非課税にはならないでしょうし、そうすらばかなり試算にも影響が出ると思います。無理ならば「民営化しないことが妥当」という結論も恐れずやってもらいたいものです。

 もちろん今公団が抱えている問題は解決せねばなりません。
 素人の考えなのでこれでいけるかどうかわかりませんが。

  1. 現行料金を3割下げます。交通量が1.2倍になれば0.7*1.2=0.84なので15%・・3,000億円ほどの減収になります。
  2. 3,000億円入れれば今年ベースで建設はできるはずです。
    ここまでの状態で債務が増やないことを条件にします。また、新線の償還は路線開通後50年とします。
  3. 経営合理化で管理費20%・・1,000億円を目標に経費節減
  4. ETC化の促進・・・公団が中心となり、車載機を月々1,000円の2年リース、終了後は3,000円程度で買取みたいなシステムを導入します。渋滞解消や、料金収受経費の削減ができます。また先ほどの3割引をETC限定にすれば普及率も各段にあがるかと・・・

 3、4で経費浮いた分微妙にですが債務は減少します。さらに新規建設が終われば、年1兆円くらいは返していけるでしょう。

 かなり楽観的な案かも知れませんがいかがでしょう

Re:道路公団の「債務超過」について
 投稿者---とも氏(2002/10/04 11:58:29) http://town-m.vop.jp/

 ともです。
 かいつまんでになりますがご容赦ください。

天下りやファミリー企業の問題
 できればプロパーの人をもっと役職につけ、官庁出身者は10年在籍しないと役人につけないようにするとか。
 ファミリー企業はごちゃごちゃさわぐより、入札を透明化し、さらに第三者の評価委員会とかを作る

 これは民営化どうこうとは全く関係の無い話であって、民営化したから解決できるというのは幻想にすぎません。
 天下りは天下りとして厳しく監視をすればすむ話です。官庁出身だって優秀ならば登用する仕組みにしなければ逆に役人のレベル低下が生じます(すでに問題にはなっている)。
 入札透明化の第三者評価委員会もいいのですが、何をどうやって客観的に評価するのか、そこがポイントでしょう。委員会自体は公共事業の改善項目ですでに設置の方針は示されていませんか?

建設費・料金の問題
 現行料金を3割下げます。交通量が1.2倍になれば0.7*1.2=0.84なので15%・・3,000億円ほどの減収になります。

 現行料金が3割減少して交通量が1.2倍になるという根拠を考えなくてはなりません。
 移動の原資から考えると車の流れそのものが変化するという前提を置くか、単に一般道路の交通量が減少するとなるかで全く異なります。また、路線条件や地域条件を加味しなくてはならず、一概にそれでOKとはならないでしょう。
 仮にフリー走行可能な高速道路があったとして1.2倍の交通量になるとその交通量が道路の有する交通容量に近くなれば必然的に速度が下がり、速達性という高速道路のメリットが無くなります。この場合、一般道からの転換は生じませんし、走行台キロの変化が起きなければ高速道路の交通量は減少し、ある一定レベルで拮抗します。その時点でアクセスを含め一般道路との比較において費用対効果が見いだせなければならず、仮に3割料金が安くなっても料金低減を上回る時間損失が生じれば意味がありません。
 よって下げればいいというものではないですから、対策は吟味する必要があります。

 経営合理化で管理費20%・・1,000億円を目標に経費節減

 経営合理化で管理費を20%削減といっても何を削減できるのでしょうか。
 仮に「ファミリー企業ではない企業」が維持管理を受託したとして、高速道路のメンテナンス基準を満たすには現状でも相当ギチギチの価格になっているでしょうから、それをどうやって下げるのか。10%程度ならできなくはないでしょうが。20%も低下させるとなれば管理水準の引き下げ、修繕回数の減少、道路機能の低下を前提にするしか無いと思います。

 ETC化の促進

 ETCの導入によりきめ細やかな料金設定が可能になるほか利用促進や料金所管理費低減などのメリットがあります。進めることは否定しません。
 しかし、これは民営化や合理化とはまったく関係の無い話であって、ETC施設整備にかかる費用をどう捻出するのか(今のスペックでは普及率が格段に上がった場合対応しきれないケースも考えられる)、そこを考えなくてはならないでしょう。逆に公団ではなく、TDMなどを視野に入れ国策で進める方がよっぽど早いと思いますがいかがでしょうか。

 まとまりませんが。ではでは。

Re:道路公団の「債務超過」について
 投稿者---通りがかり氏(2002/10/04 23:13:31)

 ご返答ありがとうござます

天下りやファミリー企業の問題
 これは民営化どうこうとは全く関係の無い話であって、民営化したから解決できるというのは幻想にすぎません。
 天下りは天下りとして厳しく監視をすればすむ話です。官庁出身だって優秀ならば登用する仕組みにしなければ逆に役人のレベル低下が生じます

 前半についてはまったく同意見で、この意見は民営化うんぬんとは関係なく、公団の問題点を改める為の方策として述べています。後で述べますが、私は問題点を解決した上で組織形態としては公団のままか独立行政法人化すれば良いと思っています。
 後半に関してはまったく意見が違います。役員、すなわち経営陣の半数以上が外部からくる企業というのは異常だと思います。経営に責任を持たせる意味や、いわゆる渡り鳥対策として、国交省の高級官僚がいきなり役員に天下って来られるようなシステムは改めるべきだと思います。またこのようなことではプロパーの勤労意欲を殺いでしまいます。確か本当にやる気があり優秀な役人が公団に再就職しようとする際の弊害にはなるかも知れません、しかし現状に比べればかなり良いはすです。私の案どおりでないにせよ、明確に数字で天下りに規制をかけておくべきだと思います。

 入札透明化の第三者評価委員会もいいのですが、何をどうやって客観的に評価するのか、そこがポイントでしょう。委員会自体は公共事業の改善項目ですでに設置の方針は示されていませんか?

 まず最低限やってほしいのは入札条件や結果の完全公開。道路公団はいろいろ理由をつけてこれをやっていません。きっちり公開されれば、明らかに不自然な談合や随意契約はできなくなるでしょう。仕事を適切な価格で引渡せるようにしていけば、ファミリー企業も不要なものは淘汰されていくでしょうし、安く受注できるよう企業努力をしていかねばなりませんから。
 第三者委員会というのは、別にすべての事業を評価させるために作るのではなく、談合や手抜き工事、請求額の水増し等行われた場合の処分権限を公団から第三者に委ねてほしいのです。
 実は、これは道路公団の現場監督が、某ファミリー企業の手抜き工事を発見し、入札停止処分にしようとしたが、裏から手が回って処分できないという話を聞いたからです。ファミリー企業のうち必要性が高いものもあるでしょうし、一概にすべてが悪いとは思いませんが、身内に対して厳正な監査ができるかは疑問です。

 現行料金が3割減少して交通量が1.2倍になるという根拠を考えなくてはなりません。仮に3割料金が安くなっても料金低減を上回る時間損失が生じれば意味がありません。よって下げればいいというものではないですから、対策は吟味する必要があります。

 実は文を読んでいただいた段階である程度おわかりいただけてるかも知れませんが、3割引、交通量1.2倍というのはそれほど自信のある数字ではありません。また私に推計能力もありません。
 ただ、ほとんどの人が高速料金は高いと思っているでしょうし、高いから利用されないというケースはかなり多いと思います。
 民営化しなければ、税もかかりませんし、減価償却等民間企業会計の制限から逃れられますから、借金の返済は効率的にできるはずです。建設をやめれば30年でいけるはずです。これを50年にすれば15-6兆円のお金が捻出できます。道路族と言われる方々はこれをすべて建設費用にまわそうとしますが、これを割引の原資にあてようと言うのが私の主旨です。
 今の料金で30年で償還するというのも考えの一つでしょうが、現役世代にもメリットを、ということで50年一杯で償還計画を立てて適当額を割り引くというのが私の考えです。不採算路線の建設も必要でしょうが、これを黒字路線の上がりを中心に建設すべきではなく、国費を入れて作るべきです。
 また、交通量の増加についても、3割引程度ならそう深刻にはならないのではないでしょうか?首都高や阪神高速は例外的に対処するとして。

 経営合理化で管理費を20%削減といっても何を削減できるのでしょうか。20%も低下させるとなれば管理水準の引き下げ、修繕回数の減少、道路機能の低下を前提にするしか無いと思います。

 これは民営化委員会に出席したアナリストの試算によります。
 根拠は委員会の8.23付資料の中にコストの削減可能性として試算が出してあります。ちなみに委員会試算ではこの20%は前提条件のようになっており、猪瀬委員はファミリー企業を絞ることで50%のコストカットができると言っています。私もこれはいくらなんでも無茶だとは思いましたが。実は先ほどの3割引、交通量1.2倍ならば、50年より早く償還が終わります。コスト削減が10%程度でも50年には間に合うかと。

 ETCの導入によりきめ細やかな料金設定が可能になるほか利用促進や料金所管理費低減などのメリットがあります。進めることは否定しません。
 しかし、これは民営化や合理化とはまったく関係の無い話であって、ETC施設整備にかかる費用をどう捻出するのか、そこを考えなくてはならないでしょう。

 投げやりな言い方かも知れませんが、私は民営化だろうが公団だろうがどちらでも良いのです。高速が利用しやすくなれば。そのために民営化という手段が必要ならばそれでいいと思いますが、私は妥当でないと思っています。理由は

  1. 公団そのものはキャッシュフローがあるのだから、負債を増加させなければ金利が急上昇しない限り倒産(?)の恐れはない
  2. 天下りやファミリー企業等の問題は民営化しなくとも本気で取り組めばやれる
  3. 民営化すれば、いくら否定しても営利事業として展開される可能性はゼロにはならない
  4. 赤字路線の解消や渋滞対策など非効率な事業もやる必要がある
  5. 税や減価償却等考慮の必要がない
  6. 民間で大規模に道路経営やっている会社はないわけだから民業圧迫にはならない

 以上の理由から独立行政法人でやったほうが良いように思っています。

 ETCに関しては民営化にはほとんど関係ないですね。コスト削減の部分だけです。ですから国策として進めることでもかまいません。無料配布するわけではないですから、回収すれば国庫にも迷惑はかからないと思うのです。誰かが主導して大々的にリース事業を展開すれば、かなりのメリットがあると思います。

 長文失礼しました。

Re:道路公団の「債務超過」について
 投稿者---通りがかり氏(2002/10/04 23:39:59)

 TDMなどを視野に入れ国策で進める方がよっぽど早いと思いますがいかがでしょうか。

 すみません、不勉強なものでTDMの意味がわかりませんでした。よろしければご教授ください。
 ついでに民営化すれば不利になる点として、調達金利が上がってしまうこともあります。

 全然話は変わりますが、エルアルコンさんが以前本四公団の債務処理で民間に債権放棄を求めないことに異議を唱えておられました。私も同意見で、少なくとも金利は破綻のリスクと引き換えに高くなっているはずなので、金利分は放棄すべきと思っていました。ですが今日発表された民営化委員会の議事録を見て意外な盲点(?)が明らかになりました。
 特殊法人・・・本四公団は法的に破産する能力が無いようなのです。
 債権放棄と言うのは、破産されて債務全額が紙くずになるより、適当な債権を放棄して会社を存続させた方が良いから行われるものです。
 本四公団に破産能力がないとなれば、民間金融機関に債権放棄を行うメリットはありません。道義的に責任を追及して、自主的に債権放棄を求めるしかありません。これはかなり難しいでしょう。
 縁故債等、国の保証はついていないのですが、本四公団が破産できないとすれば、国の保証つけてるのと同じことですね。

 ちなみに「民間金融機関に債権放棄は求めない」の一文は今井委員長の強いプッシュで入ったようですね。「これを書いておかないと、今後本四公団が資金調達に困難をきたすことになるので書いておきましょう」と。
 さすが経団連会長??深読みしすぎかな

民営化と民間所有
 投稿者---エル・アルコン氏(2002/10/21 13:03:36)
 http://6408.teacup.com/narashinohara/bbs
─誰のための民営化?
 └信長の遺産に挑む蛮勇

 「民営化」について、一番懸念しているのは、「お上(かみ)」と「民(たみ)」というような単純な二元論で語っている、考えられている面はないかということです。

 例えばこの9月6日に行われた第16回の推進委の議事録を見てみますと、こういう議事録を目にすることが出来ます。

○川本委員 
 1つだけ思いますのは、民営化なので、所有者が民に移っていくということが大事だと思います。道路は公物だとか、私物化するとか、私はその辺の概念がちょっと、全部プライバタイズだからというふうに、それを私物化するのかと言われると、それは時代錯誤のように思います。

***
 私物化というとネガティブなイメージがありますが、結局「民」の所有ということは、所有権絶対と私的自治の観点から、「公」ではない「私」の権利のもとに置かれる事に他なりません。
 そして、そこでいう「民」は必ずしも「国民」を意味しません。いや、国民と全く別の存在であることすら有り得ます。単純な二元論に裏打ちされた「民」という耳障りの良い言葉で語っていますが、ここでいう所有者は「株主」に過ぎません。

 その所有、運営、収益について、所有権を「民」に移すということは、「株主」の私権の管理化に置くことに過ぎず、いかに公共性があるからといって、規制緩和の考え方を同時に徹底した場合、国家権力は「民事不介入」の原則がある以上、不法行為がない限り、独禁法のような極めて例外的な強行規定を持つ法令のほかに介入できるケースはありません。

***
 「民営化なので」、というのは理由になってないことはいうまでもなく、よしんば「民営化推進委員会」という委員会が民営化を前提にして語るとはいえ、その根本の部分の理由すら持たないことに重大な疑義を抱かざるを得ません。

 もちろん、委員会全体がそう言う風潮ということではなく、川本委員の発言を受けた今井委員長の発言を見れば、問題意識は委員会に存在するのです。

○今井委員長
 その点は、もう一回みんなで議論したいと思うんですけれども、私はフランスでもイタリーでも、最後の帰属は国になっているんです。道路が国以外に帰属している国はないというふうに、私は理解しているんです。
 では日本は、なぜ民間が持たなければいけないかというのは、逆に言うとそっちの方から立証しないといけないというふうに思っているんですけれども。

誰のための民営化?
 投稿者---通りがかり氏(2002/10/25 22:59:44)

(4)貸付料及び料金制度
 事務局から、貸付料及び料金制度について論点資料を提出し、これに関連し、委員からの要求資料も紹介し、説明を行った。これをめぐって論議が交わされ、主な意見は次のとおり。

  • 貸付料は、長期安定的なものとし、定額方式とすべき
  • 新会社のコスト削減努力及び関連事業を含む増収努力の成果は、新会社に帰属させるべき。その使途については、返済、建設、資産の買取資金等会社の裁量に委ねるべきではないか。
  • 料金決定については上限のみ規制し(認可)、その範囲において新会社の主体的判断に委ねるべき(届出)。
  • 料金引き下げを政府の方針として打ち出すことは可能と考えるが、法令上明記することには無理があるのではないか。
  • 道路料金から大きな利潤をあげることは不適当と考えるが、一定の利潤を得ることまで否定することはどうか。

 10月22日付民営化委員会の議論。
 民営化が手段でなく、営利企業を作るための目的であることがはっきりしてきたような・

信長の遺産に挑む蛮勇
 投稿者---エル・アルコン氏(2002/10/28 18:37:18) http://6408.teacup.com/narashinohara/bbs

 確かに。
 もう一度「民営化推進委員会」がどういう経緯で何を目的に設立されているかをおさらいして欲しいです。それでもまあ猪瀬委員あたりでもそこは自覚しているようのは救いですが、ハナから勘違いしている委員や「応援団」があまりにも多いです。

***
 今朝の産経「正論」欄の屋山太郎氏の論文など「応援団」の典型で、今井委員長の資質にケチをつけるために、日本経団連の奥田碩氏の発言をさも自分がその場で聞いたかのように引用?してます。
 まあ、中村委員に「国交省の代理人」、猪瀬委員に「道路族と結んだ」というレッテルをつけて紹介するようでは論文のレベルが知れると言うもので、低レベルな応援は「贔屓の引き倒し」にもならない典型です。

 語るにも及ばない論文ですがついでに紹介すれば、「生活道路なら民営化になじまないかも知れないが、料金を払う特定の人(車)が通る道路は公物にする必要はない」とくると開いた口が塞がりません。
 そこを通るクルマを狙い撃ちにして料金を取っているに過ぎないのに、有料道路を通るクルマを特別な存在としているのでは、まさに手段と目的が混同するのもむべなるかなです。

***
 一部の観光道路を除いて我が国の道路は無料通行が原則です。有料道路はその建設費の回収の為の方策であり、今回の民営化推進委の議論も、中間報告まではその原則は外していません。

 ちなみに、幹線交通路で営利目的での料金徴収ということになれば、冗談と思われるかもしれませんが、我が国においては織田信長から豊臣秀吉に続く安土桃山時代に木戸銭目的の関所が廃止されて以来の歴史的な政策転換になります。
 江戸期の箱根や新居の関ですら、営利目的ではなく治安上の検問所に過ぎず、それすら明治初年には廃止されていますし

債務超過で無いと困る理由でもあるのか?
 投稿者---エル・アルコン氏(2003/05/16 11:39:37)
 http://6408.teacup.com/narashinohara/bbs
─4300億円の当期利益で6.4兆円債務超過が増加するというのは?
「財務諸表」やぶにらみ
 └「会計方式」は決まっていたのではないのか?〜朝日社説の「怪」

 5月16日の朝日新聞は、道路公団が6000億円の債務超過を隠していたと報じています。
 確かに民間同様の会計基準による財務諸表作成については民営化推進委に対しその存在を否定してきていたため、推進委の法的根拠と権限を考えると財務諸表自体の隠蔽については公団側の責は免れないところです。

朝日 http://www.asahi.com/business/update/0516/022.html

 ところが記事内容を見て、疑問点があります。というか、他紙の記事とトーンが違います。

讀賣 http://www.yomiuri.co.jp/business/news/20030516i201.htm

 確かに単純に言いますと負債>資産であれば債務超過ですが、バランスシートの右側には資本の部がありますから、通常は資産28.7兆に対して、負債27.4兆、資本2兆(うち欠損金0.7兆)となり、債務超過とは言いません。
 ところが記事では資本は返済しないといけない、と言う理屈をつけて負債の部に算入し、負債が29.4兆なので0.7兆、端数の関係か6000億円の債務超過という趣旨の記事になっています。

 どうもこの新聞は過去の報道を見ても、道路公団を意地でも債務超過にしたいようですが、「民間会社並みの会計基準で」わざわざ試算した数字を使うのであれば、出資金を総て負債項目にするような過少資本どころか「無資本」という「民間会社では絶対に有り得ない」会計状態で判断することがどれだけ無意味かくらいは分かってもらいたいものです。
 ちなみに建前上は計画路線を総て建設して償還が済んだら無料開放されます。つまり道路公団等四公団は、高速道路建設のための特定目的会社であり、全部の道路が開放された時点で解散となります。つまりこの時点で出資金は償還されるわけで、だから返済しないといけないとなるわけです。
 ちなみに道路公団法とその附則には、国の出資金という表現はありますが、負債として認識すべき根拠は見出せません。

***
 読売の記事では、建中金利及び補償費等の資産算入が通る見通しという話ですが、確かに建中金利の算入については可能だが実施例が些少という面はありますが、ごまかしなどで無いことは留意すべきです。また資産の見直しにおいて、補修費ではという部分や自治体払い下げ部分の計上の問題もありますが、もともとキャッシュフローだけの経営を行ってきた事業者にバランスシートを重視せよといい、過去の取引を咎められても対応のしようが無いわけです。国家機関として払い下げを行ってきた(高速道路も無償開放されるのだから当然ということだったのでしょう)部分のアンバランスを問うのであれば、会計上(キャッシュベースは不要)、国による補償を計上してバランスさせるべきです。

 それにしても、キャッシュフローとそれによる返済(=国家・国民負担の極小化)が、特殊法人問題としての最優先課題のはずなのに、非キャッシュ部分の重視、つまり、「企業」としての外見を重視する議論はやはり違和感を感じざるを得ません。
 読売の記事でも、債務超過とされる阪神公団も単年度でのキャッシュフローは生んでおり、「企業」としての体裁を整えるのなら財政投入が必要ですが、「返済」を重視するのなら不要です。まさにそこに「民営化」議論の持つ本質的な矛盾が潜んでいます。

4300億円の当期利益で6.4兆円債務超過が増加するというのは?
 投稿者---エル・アルコン氏(2003/06/16 14:00:19) http://6408.teacup.com/narashinohara/bbs

 民営化推進委の猪瀬直樹委員が連載する週刊文春のコラム「ニュースの考古学」6月19日号(12日発売)において、昨今マスコミで話題になった、道路公団の「改革派」が「左遷」された事例について、興味深い視点により斬り込んでいますが、その中で気になる内容がありました。

***
 2002年10月3日、朝日と日経は道路公団の02年3月期決算を民間基準による試算では債務超過に陥っているという報道をしました。これについては当時私も下記のスレで批判しています。

道路公団の「債務超過」について log518.html#2

 そして今回の記事では、01年3月期の試算で債務超過という評価です。

 さて、猪瀬氏のコラムで指摘された問題点ですが、今回、政府出資金を資本ではなく負債計上にした場合ではありますが、01年3月期の段階で「6000億円の債務超過」という数字を出しています。
 ところが、昨秋の報道は、政府出資金の扱いを負債にしたベースで、02年3月期で7兆円の債務超過というものです。
 紛いなりにも当期純利益を計上している状態で(民間基準で01年度は4300億円あまり)、01年度の1年間に6兆4000億円の「損失」がどうやったら出てくるのか。少しでも経理をかじった人間なら開いた口が塞がりませんし、民間企業並みの00年度と01年度の比較貸借対照表、比較損益計算書として並べて見せてもらいたい数字です。
 ちなみに両者とも問題となっている資産計上方法に差はないはずで、しかも01年3月期の試算では建中金利は不算入にするなど、厳しい基準での作成とあり、その点からもおかしいのです。

 丸いなんとか切り様で四角とは言いますが、おなじ新聞社による記事での「矛盾」としか言いようの無い内容を目の当たりにして、「数字」が重要な論点になっているこの問題において、どういう意図を持って二つの記事を出したのか、強い疑念を禁じ得ません。
 場当たり的に矛盾した数字を出したのであれば、整合性のチェックを怠った新聞社の不勉強を笑うだけですが、いわゆる「為にする記事」であったとした場合、悪質な世論のミスリードであり、両記事の背景と分析について読者に説明が求められます

「財務諸表」やぶにらみ
 投稿者---エル・アルコン氏(2003/07/28 00:27:38) http://6408.teacup.com/narashinohara/bbs

 道路公団の「財務諸表」を巡るドタバタは見苦しいの一言と言わざるを得ない状況になっています。一つ言えることは公団側の対応が稚拙に過ぎることで、内容以前に企業情報開示という流れが見えていないようで、これではよしんば公団側が正しいという事態であっても、それを適切に伝える姿勢に欠けているとしか言いようがありません。

***
 さて、この騒動を見ていて気になる部分があります。先に、年間損益の増減と乖離して1年間に兆円単位で債務超過が増減している報道を批判しましたが、今回もそういう疑問点が湧いてきたのです。

 まずは7月18日の大阪朝日。1面左に「道路公団の『債務超過』諸表、総裁直属組織が作成」と出ています。6月9日に発表した「資産超過」の諸表とは異なり、債務超過であった諸表がその1年前に作成されたという内容です。全社的作業で取り組んでいたとあり、総裁答弁との齟齬を指摘してます。11面には財務諸表作成の主な経緯という表もあり、2002年1月から3月にかけて監査法人と計算方法について打ち合わせ、4〜6月にかけて集計、計算して7月上旬には取りまとめたということです。

 ところが7月24日の同じ大阪朝日は4大監査法人が、国土交通省が指示した道路公団の財務諸表(6月9日発表分)の外部監査を拒否したという記事を1面で報じています。「会計基準あいまい」とあり、監査法人側が道路公団が財務諸表を作成した基準が「会計基準は中間整理の状態で明確な会計基準といえない」として批判し、さらに8月中に監査を終了せよという条件に対し、「公団の全ての資産について調べるのは最低でも3ヶ月は必要」と期間の短さも指摘しています。

 まずここで疑問なのは、会計基準が曖昧ゆえ外部監査が出来ないのであれば、その責めは公団ではなく公団が設けた「財務諸表準備委員会」にあります。もちろん公団が設けたからには最終責任は公団にあるのですが、ことの特殊性、専門性を考えると、加古宣士早大教授以下のメンバーへの批判となります。言い換えれば、実務者である4大監査法人が加古教授を批判したというわけであり、実務と学会の対立という例の無い事態で、ことの真意を掘り下げるべきでしょう。

 さらに、プロが最低でも3ヶ月かかるとした固定資産の調査。18日の記事では監査法人と打ち合わせをしたばかりの付け焼き刃の面々が3ヶ月以内で終わらせたことになっています。固定資産の計上などに携わったことがあればすぐ分かる話ですが、あれだけの膨大な資産、そうそう簡単には出来ません。ざっくりベースの試算であれば、プロジェクトチームを組まずとも、民営化委員から「手許の試算」で出てきたり、他にも様々な「試算」が世間に流布していますが、そういういわば「言われなくても判っている」ようなレベルで「存在した」というべきでしょうか。

 確かに公団は批判するに値する対応を世間にしています。しかし、それを批判する側の内容はどうでしょうか。素人に判りづらい分野だけに気になります。

「会計方式」は決まっていたのではないのか?〜朝日社説の「怪」
 投稿者---エル・アルコン氏(2003/11/14 10:29:53) http://6408.teacup.com/narashinohara/bbs

 14日の朝日新聞社説は、「公団新総裁−近藤氏を孤立させるな」と題して、民営化と改革を強く応援しています。

 さてその社説の中で非常に気になる部分があります。

 混乱の原因となった公団の財務諸表問題も、解決を急がなければならない。どんな企業会計方式をとるのが新会社発足に向けてふさわしいかを決め、資産をすみやかに査定して財務状況を確定する。これが、分割民営化には欠かせない基礎となる。

 同紙は過去しきりに「公団は債務超過である」ということを主張しており、公団側が資産超過とする財務諸表を発表しても、「債務超過のデータが隠されていた」といった報道を繰り返してきました。
 公団の「公式発表」は間違いで、債務超過とする「隠されていたデータ」を推すからには、公団の会計方式について確固たる意見がある、いや、疑う余地のない基準がその時点でない限り、その可否を断定することは出来ないはずです。

 ところが、今朝の社説では、その可否を判断する会計方式はこれから確定させないといけないという御説です。あれだけ債務超過であると力説し、ゆえに藤井総裁の解任も止む無しという世論をリードした面もある主張の根拠が、未確定のもの、まあぶっちゃけ「あるスタンスでの基準」だったと言うことに他なりません。

 これが、あるべき会計方式は確定しているのだからと言う前提で、「企業会計基準に従い正しい財務諸表を速やかに取りまとめるべき」とまとめるのならまだ筋は通っていますが、そうならなかったところに、ただでさえ素人には分かりにくい会計論において世論をミスリードした疑義がいよいよ強まるわけで、先に「為にする記事」とした批判は益々免れ得ないものになります

今時こんな羊頭狗肉
 投稿者---エル・アルコン氏(2003/06/23 19:30:32)
 http://6408.teacup.com/narashinohara/bbs
─〔民主党マニフェスト〕数あわせの議論にすぎない...
 └「借り替え」が意味する莫大な国民負担
  └新幹線と在来線の関係で良いのでは?
   └収益と債務の勘定を分ける弊害
    └必要なものを見極める目が求められる

(以下次ページ)
「道路」は政局にならず
 └Re:「道路」は政局にならず
  └「政局」は望まず、国民的議論に高めて欲しい
   └「政局」の道具からの脱却

 民主党が次期総選挙の「マニフェスト」に高速道路の即時無料化を掲げる意向を明らかにしています。
 しかし、現在の債務の負担や維持費などのランニングコストはどう賄うのかといったことを考えると、にわかには信じられない話で、政権を目指す責任政党の政策として成立し得るのかという疑念を抱かせるものです。

 そこで民主党の政策の中身を報道の範囲で見ると、「即時無料化」という言葉に2つのウソがあることが分かります。つまり、料金は無料化されるが、代わりにオーナードライバーに「自動車保有税(仮称)」という税金を課して、それを充当するとあり、これまで従量料金だった高速料金を、利用頻度にかかわらず頭割りにするだけの話です。これは収入や資産に応じて課税する近代税法の原理から、中世の人頭税的な発想に逆戻りする発想ともいえます。
 まあそれでも負担の一部を均等割りとする、つまり事実上ドライバーの支出である道路財源からの繰り入れとなるという意味合いであればまだマシなんですが、全額を「看板の付け替え」で賄おうとするところに無理があります。
 もう一つのウソが、首都高と阪神高速は渋滞や環境を理由に有料制を維持するということ。目的はともかく、「即時無料化」と言っておいてその内実はドライバーの負担には変わりないというわけで、人心を惑わす内容です。最近は「即時」ではなく「3年後」とか言ってますが、同じことです。

 ちなみに、「自動車保有税(仮称)」ですが、1台平均年間5万円で、大型10万円、普通車が5000円の傾斜賦課だそうですが、首都高や阪高が有料だとすると、JHの高速道路を年間5000円相当利用しないと「増税」になるだけです。これが均等5万円にでもなったら、「有料のほうが良かった」とぼやくドライバーが続出しかねません。5万円といってもピンと来ない方に申し上げますと、東京から関西に年2回帰省し、あと2〜3回はレジャーにいけるだけの金額であり(ETC前割利用を前提)、結構乗ってるイメージでもようやくトントンなのです。

 既存債務の返済にしても、高金利の財投資金を、金利2%程度の30年国債に切りかえるとしてます。
 これも考えてみればあちこちに無茶が噴き出す話で、まあ足下のマーケットなら2%でも良いかもしれませんが、42兆円もどうやってマーケットが消化するのか。超長期のポジションがそんなに膨らんだポートフォリオを組めますか?さらに、財投の借り換えとなると、郵貯その他財投の原資が逆ザヤになりますが、これは生保の予定利率引き下げのように貯金者に付け回すのでしょうか。普通はそう言うのは「デフォルト(債務不履行)」と言いますが...

***
 「マニフェスト」を検討して感じたのは、結局選挙ではお馴染みの「毛バリ」にほかならないというところでした。

〔民主党マニフェスト〕数あわせの議論にすぎない...
 投稿者---エル・アルコン氏(2003/09/24 14:19:04) http://6408.teacup.com/narashinohara/bbs

 民主党の「高速道路無料化」のマニフェストが各方面で論議を呼んでいます。
 焦点となっているのは当然その財源ですが、以前は「自動車所有者への一律課税」だったものが、今回の報道では変わっているようですが、本当に可能でしょうか、朝日新聞では年間収支が出ているので、これをもとに検討してみましょう。

高速道債務を60年で返済 民主マニフェスト案(09/22朝日)http://www.asahi.com/…

民主党の道路公団債務60年完済方法の年間収支(単位億円)
【財源】 【支出】
国直轄道路事業費半減 7,000 借入金の元本返済 6,000
公団廃止で特会補填不要 1,000 借入金利息支払い 9,000
道路関係補助金1割減 2,000 道路維持管理費 4,000
首都、阪神道の料金収入 5,000 新線建設費 1,000〜2,000
公共事業費 5,000〜6,000    
  約21,000   約21,000
朝日記事より転載 (551planning)

 本四関連がどうなるかが不明ですが、取り敢えず本四は分けて考えてみましょう。
 本四を除いた三公団の外部負債は36兆7500億円あまりです。
 年間6000億円の返済で60年賦ということはこれをざっくり36兆円としているようです。まあ年間120億円あまりの誤差になりますが、まあこれは良しとしましょう。

 ついで利払が年間9000億円とあります。
 元本均等払いですから60年間の平均残高は約30兆円、これで考えると平均金利が5%という計算です。60年の長期国債など出せませんから、現行最長の30年債として30年後借り替えとしましょう(30年債のマーケットを36兆円も拡大するという論点は置いときます)。
 今の30年債が利回り1.7%ですから、まあ2%として、本当は初年度7200億円からスタートし、30年目で3720億円の利払になります。借り換え時に5%以内で発行できればどの年でも利払額が年間9000億円を超えることは無いですし、31〜60年目の平均残高で考えれば10%の利回りまではOKです。
 こう考えるとまあこれもクリアします。

 次に維持管理費です。
 現状の三公団の道路管理費が4193億円ですから、見積の4000億円では足りません。
 ただ料金徴収関係のコストが減少する反面、維持管理費は経年とともに増加しますので、コストダウン効果を見込んだ大甘の査定で4000億円で良しとしましょう。

 新線建設費ですが、1000億円〜2000億円、これでどれだけ作れるのかと言う議論はともかくとして、それだけにしましょう。

 年間の資金運用額はこれで2兆円〜2兆1000億円です。

 では調達サイドです。
 首都高と阪高の収入を5000億円と見積もっていますが、現在の両公団の営業CFがそれぞれ950億円と350億円の1300億円しかありません。このうち、利払と管理費用を含んでいますので、これを組み戻しても2490億円と1600億円の4090億円で1000億円の資金不足です。
 そもそも、両公団の料金収入が4416億円しかないわけで、高速料金無料化を謳いながら、このスキームを成立させるためには料金収入を2割以上増収させないといけません。単純に考えると2割以上の値上げ、減収分を見こむと35%程度の値上げをしないと回りません。

 ついで直轄事業費の半分を流用することで7000億円ということですが、道路財源の暫定税率が前提になっていますね。これを本則に戻す、また縮小するというドライバーの悲願ともいうべき部分は無視ということでしょうか。
 特会補填1000億円、補助金2000億円、公共事業費5000〜6000億円の充当ということは、結局看板の付け替えで8000〜9000億円を「高速道路無料化」の補助金とすることに他なりません。

 利払の数字に若干余裕があるので首都高、阪高の収入未達分を補えれば回ると言えば回りそうですが、冷静に考えると、JHの料金収入と削減する建設費を相撃ちにしただけで、道路財源を含む税金の充当には変化がありません。おまけに首都高と阪高の利用者が全国の高速道路の債務を負担する体裁になっており、これは著しく公平を欠きます。
 おまけに社会資本となる道路建設はピタッと止まる訳で、国のお金の使い方という意味では、首都高、阪高以外の高速道路利用者に年間1兆円の補助金をばら撒くようなものであり、全く感心できないです。
 このあたりは民営化推進委の議論のほうがまだマシでしょう。

 もちろん、無料化による交通集中による混雑や維持費の飛躍的増大という問題や、超長期国債のマーケットでの受容度といった問題もあり、形式上は組めていても数合わせ、砂上の楼閣に等しいスキームであることは論を待ちません。

「借り替え」が意味する莫大な国民負担
 投稿者---エル・アルコン氏(2003/09/25 14:48:35) http://6408.teacup.com/narashinohara/bbs

 さて、この高速道路無料化案、山崎養世氏の「日本列島快走論」が下敷きになっているようです。

http://www.yamazaki-online.jp/kaisoron/gaiyo/index.html

 民主党のマニフェストと合わせて、現在の債務を返済する要の部分が低金利での借り換えで、これにより債務の確定と利払の削減を図っています。
 しかし、よく考えてみるとそこには重大なトリックが潜んでいます。

 まず、公団の債務をそのままにすると、公団の破綻は必定であり、そうなると税金で尻拭いされるので国民負担が大変なことになる、というのは確かに正しいです。
 公団の債務の大半は政府保証債ですから、公団がデフォルトに陥った場合、国が保証を実行しますので、偶発債務が正式な債務になります。

 しかし、それを国債に付け替えると言うことを正当化する理由にはなりません。
 未だデフォルトに陥ってもいないのに、国の偶発債務から正式な債務にして、国債の残高を増加させると言うのは妙な話です。
 さらに、債務の整理と言う債務者サイドの視点でしか捉えていませんが、債務があれば債権者がいることを忘れています。

 債券を発行することで、債務者は代り金を手に入れ、期限に見合う水準の利息を払うことで、期限まで元本を返さなくて済む「期限の利益」を享受します。
 逆に債権者である投資家は、期限まで元本を投資することで、期限に見合う水準の利息収入を得るわけです。そして、その投資家と言うのは、概ね、投資を集めて運用して利益を得ることで利鞘と言う利益を得る機関投資家です。

 このとき、「借り替え」という行為が投資家にとって何を意味するか。
 元本が返ってくるのだから良いじゃないか、と思いがちですが、期限まで得られるはずの利息と言う収入が途絶えることを意味します。そして、借り替えることで金利が安くなると言う債務者のメリットは、投資家にとっては再投資したら金利収入が減ると言うデメリットなのです。
 ですから道路債券や国債のように固定金利での債務を期限前償還する場合、表面利率と足元の金利(再投資金利)の差額をペナルティとして支払う契約になっているのが一般的ですし、足元の金利と差異が出ている場合、債券価格が変化することで実質利回りが足元の金利に一致するような裁定が働くのです(足元低金利、表面高金利の場合、債券価格は額面を上回る)。

 投資家と言うのは別に大金持ちだけではなく、預貯金も一種の投資ですし、生命保険や年金も大口の投資です。「予定利率の引き下げ」という言葉が世をにぎわせていますが、金利低下により再投資時の金利収入が下がり、予定していた運用益を得られない。生保や年金の場合、その運用利率を約束しているので、金利低下による逆鞘が発生すると生保や年金そのものが行き詰まるわけです。

 借り替えにより、道路債券を保有している機関投資家はどうなるでしょうか。
 そしてその投資資金はなんでしょうか。銀行預金であり、生命保険の掛け金であり、年金でもあります。また、財投資金がメインと言うことは郵便貯金や簡易保険、また国の年金でもあるわけです。莫大な国債、地方債の発行残高がありながら、対外債務になっていない我が国の場合、実は国民が最大の投資家でもあるわけで、国の借金を負担する債務者としての面だけを強調しては片手落ちです。

 そう、公団債務の軽減は、すべてこれら運用サイドの損失という形に付け替えられるだけです。

新幹線と在来線の関係で良いのでは?
 投稿者---通りすがりの人tadachu氏(2003/11/10 01:19:39)

***
 今、総選挙の結果を見ています。このままでは「自民は政権維持できても大敗」「民主は躍進すれど政権取れず」な結果になりそうですね。単純に言えば、自民(小泉)の公約=道路公団民営化の流れになるかもしれませんね。 しかし、小泉政権が責任をとるとなれば、自民道路族の考え=現状維持・道路建設推進か、民主の公約=高速道路原則無料化の可能性もありますね。

 私が上記のようなタイトルを書いた理由は以下の通りです。
 今の高速道路は3種類あると思います。

1.建設費が償還できるレベルの交通量。もしくは単独では償還完了道路。 例:首都高・東名・名神など。
2.建設費償還は困難だが、道路は必要もしくは撤退不可なケース。 例:本四公団3道路・アクアラインなど。
3.建設費が償還出来ないレベルの交通量。かつ、平行道路のあるケース。 例:北海道の高速道路・東海北陸道など。

 これを鉄道に当てはめるとどうでしょうか?こんな感じだと思います。

1.お金を投じれば早く行ける(一応首都高も)=新幹線や特急など
2.あまり期待は出来ないが必要=在来線(特に新幹線平行線)・3セク線など
3.わざわざお金をかける必要がない=国鉄時代に廃止になったローカル線

 それを道路公団に当てはめ、今後どうしていくかを考えました。

  1. 十分民営化でやっていける。また、新しい道路も競争原理の中で「必要」なら政府の補助も含めた上で、新会社で建設する(首都圏在来線・新設新幹線のように)。
  2. 難しい。民間主導の3セクにする。可能なら民営会社(新幹線平行在来線のように)。
  3. 民営化の時点で赤字路線確定(今までの道路公団の形で運営するのは論外です。そうでなければ今までの議論がムダになります)。高速道路として運営するのは廃止!ただし、鉄道と違って最低限のレベルで車通行は可能なので、国道扱いで運営。道路の維持が出来ない場は、一定期間閉鎖し、支障がなかった場合は閉鎖。道路敷地売却。

 こんな感じでどうでしょうか?最低限必要な道路はインフラとして整備する必要があると思いますが、過度(少なくとも時速100キロを当たり前に出せる道・サービズが充実したSAはインフラとしては過度だと思います。それをいっぱい作ろうとしていたのが道路公団ですね)なインフラ整備は必要ないと思います。だからこれで良いと思います。もし、「交通量の比較を都市部と同じに見るな!(=交通量としては少なくても地域発展のために必要などの考え)」を言うなら、該当地域(道府県・市町村)が運営するのが筋だと思います。
 もしこのまま道路公団が維持され、無駄な高速道路が税金の形で建設・運営されるなら、車に乗らない全国民が税金の名で負担することになるのだから。

追伸:民主党の「完全無料化」案も道路公団維持案とそんな変わらないはず。また、今後の道路建設費は道路公団民営化後の企業&ガソリン税等自動車関連税でやるべきだと思います。

収益と債務の勘定を分ける弊害
 投稿者---エル・アルコン氏(2003/11/12 18:18:48) http://6408.teacup.com/narashinohara/bbs

 新幹線と在来線の関係というのは言い得ているようで、民営化そのものへの疑義における比喩にもなります。

 つまり、「高速道路網の整備、維持」という部分において、主要な高速道路=新幹線、その他=在来線とした場合、今の旅客鉄道会社の体制であれば新幹線の収益で(赤字)在来線の維持管理を行うことで路線網を維持すると言う内部補填が可能です。また、お互いの収益を融通することで、体質改善といった設備投資も効率的にすることが出来ます。

 一方で両者の関係が切れた場合。つまり、別経営になったケースはどうでしょうか。
 それこそ「整備新幹線」と「並行在来線」の問題と相似形になります。
 例えば盛岡−目時−八戸間の旧東北本線。JR東日本による東北新幹線は空路を圧倒するほどの好調ぶりですが、その収益は新幹線建設費用の返済とJR東日本の利益になるだけで、並行するIGRいわて銀河鉄道、青い森鉄道に還元されることはありませんし、IGR、青い森の赤字をJR東日本が面倒を見ることも無いわけです。

 東名高速が民営化されたとして、一方で採算性には疑義があるもののどうしても作らないといけない高速道路、まあシンボル的なものとして外環道としましょうか、があるという状態があることはまあ民営化論者、無料化論者、抵抗勢力(笑)の誰もが否定しないでしょう。
 このとき、現状のプール制であれば東名の収益で外環の建設費償却を賄えますが、東名と外環が別経営の場合、東名の収益と外環の負債がそれぞれの経営主体に帰属します。

 この時民営化の場合は東名に収益が残り、無料化の場合は東名はゼロバランスとなり、両者とも外環の建設費見合いの建設国債残高が残ると言う点で実は同じです(道路財源の流用の場合も国家予算の総枠内でのゼロサムなのでどこかに歪みが出て国債残高となる)。
 逆に現行公団方式のようにプール制、もしくは収益を建設費用に充当するスキームだと、外環の建設費見合いの負債は東名の収益とネットになるわけで、今の公団方式では収益>建設費なので現在の外部負債も最終的には償還出来るとしているわけです。

 結局ここのキャッシュフローが回るかをきちんとチェックすることが最重要課題なのであって、逆に現状ではキャッシュフローが回ることが明らかになってしまったからこそ、本来負債の償還においては無関係な財務諸表の非キャッシュ項目の数字を問題視しているわけです。
 おまけに減価償却費の計上が無いので「赤字」(≠「資金不足」であることに注意)という理論で攻めたら、実は営業費用ではなく償還準備金として計上されていたので、今度は「債務超過」だと、だんだん本質から外れているわけです。

***
 民営化の最大の問題は、このように必要な道路建設のために国債の増発を招く反面、民営化会社の収益が国民(=道路ユーザー)の手が届かないところで内部留保されるばかりか、配当の形で投資家のみに外部流出することです。

 民営化=外部の投資家を募るわけですから配当の実施は当然です。そして民営化会社に帰属した債務を償還したらメンテナンスおよび固定資産税などの租税公課を賄うための低廉な料金徴収にとどめ、道路管理会社に徹するとした場合、事業規模からいっても「配当の減少」どころかスタート時の仮称資本を回避するに足るだけ積み上げた資本の「減資」も視野に入るわけで、そういう会社に投資するのは非常にリスキーです。
 つまり、配当可能な事業収入を維持するだけの事業体として存続する必要があるわけですが、それが異業種への進出により賄うとしたら、投資家にとっては「道路事業」がお荷物に過ぎない不合理な会社というわけでこれも投資意欲を削ぎますから、結局は道路事業で収支(及び配当)を償うに足る料金徴収は永続すると断じざるを得ません。

 国民の側から、建設費用と通行料金の両方の負担をネットで見た場合、維持費はまあ通行料金で賄うのは共通しますが、

  1. 公団方式は通行料金によって公団の負債である建設費用を償却するので、通行料金の形で全額負担。
  2. 無料化は国債により建設費用を償却するので、国債の形で全額負担。
  3. 民営化は国債により建設費用を償却すると同時に、投資家の目に適う配当をするに足る利益水準見合いの収益を会社が続く限り通行料金の形で負担する。

というように、民営化はかえって負担が多いのです。

 ちなみに道路財源ですが、現状では高速道路の会計には基本的には注入されていません(「薄皮」高速の国費建設分は除く。また公団への出資金相当の会計には入る)。
 ですから、税法の本則よりも高い暫定税率の道路財源諸税は一般道路、また鉄道の連立化、路面電車の整備などに配分されているわけで、高速道路建設に道路財源を充当するとなると、従来の使い道を削るか、さらに増税を余儀なくされます。

必要なものを見極める目が求められる
 投稿者---エル・アルコン氏(2003/11/12 18:55:31) http://6408.teacup.com/narashinohara/bbs

 もちろん無定見にハイグレードな高速道路ばかりを作っても仕方がないのは事実です。

 とはいえ全国を見回せば、まだまだ必要だと言う区間はあるわけで、それが必ずしも採算性が保証されている区間とは限らないどころか、不採算は必至と言う区間すらあるわけです。そして道路の規格と言うものは交通量に正比例できませんから(必ず片側あたり1車線単位で増えていく。また設計速度や立体交差などの処理はほとんど変わらない)、「応分の負担」というのは不可能です。
 そうした区間においても、開通による便益を数値化して判断することは必須であり、また物流、移動の断絶を防ぐための複数ルート化など、判断材料は多岐にわたります。

 例えば「熊しか通らない...」と揶揄される北海道のローカル高速にしても、確かに現在建設中の高速自動車国道、地域高規格道のほとんどが既存国道の改良で充分と言うのは否めませんが、一方でいわゆる「ムネオ道路」として名高い道東道でも日勝峠を挟む区間のように冬季における安全通行確保という使命があるケースは最優先であってしかるべきです。
 また、有力元議員のお膝元ゆえ、と言う声が聞こえてくる日本海東北道(新潟−酒田−秋田)にしても、現実はR7での移動は話にならないし、酒田−秋田の区間なんかはJR東日本が採算重視で羽越線のダイヤを組んでいますから、特急も削減されて701系のローカル電車がメインというわけで、高速交通から見捨てられているわけで、産業誘致、村おこしというよりも救命救急体制といった生活権そのものの問題もあるわけです。
 複数ルート確保という視点では、舞鶴若狭道(敦賀−舞鶴−神戸)なんかは実績もあるわけで、阪神大震災の時、未開業区間をR27でつないで米原からの北陸道〜舞鶴道経由で東西ルートが確保されたことは深く記憶に残っています。

***
 SAなんかはまあいわゆる「ファミリー企業」がぼろ儲けしているとされているわけで、こうした収益を建設費償還の原資として拾うようにすれば問題は無いでしょう。
 それと、この手の設備はケチればいいというわけでもなく、ドライバーの休憩設備という安全面からの要請による面もあるわけで、広い駐車スペースと充分な休憩所、飲食サービスなど、一定の規模とサービスは求められます。

 このあたりは「民営化」のお手本とされる鉄道における利用者に対するホスピタリティと比較しても明らかに優れているわけで、かつ、国道沿いなどにある民間資本のドライブイン、また「道の駅」と比較しても同じことが言えます。逆に儲け主義に走って物販店をやたら充実させているSAのほうが「休憩」設備としての充実度は明らかに劣る(東名海老名、足柄、中央談合坂など)わけで、利用者としてどちらが好ましいか、また、そうしたサービスの維持目的の負担まで良しとしないのか、ということを考えたいです。

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2005.07.20Update

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