【検証:】過去ログSpecial

【検証:近未来交通地図】Special033-2
伊豆、箱根に見る
近郊行楽地の苦悩と展望
伊東線・伊豆急行再活性化策を探る・続編≫

 本投稿は、【検証:】掲示板でもお馴染みの、エル・アルコン様のレポートを中心に、読みやすく構成させて頂いたものです(一部文面を編集(一部文面を編集しております)

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伊豆、箱根に見る近郊行楽地の苦悩と展望
 投稿者---エル・アルコン氏(2004/01/08 13:39:09)
 
 http://6408.teacup.com/narashinohara/bbs

うまく魅力を生かせれば
 └Re:うまく魅力を生かせれば
  └西伊豆へはおクルマで?

▽前ページより

●伊豆・箱根の位置付け

 少なくとも箱根全域、東伊豆に関しては日帰り観光地としてのウェイトが高いでしょう。
 首都圏から100km前後のこのエリアで宿泊を伴う観光をターゲットにするとしても、実際に何回か首都圏を発地としてこのエリアに泊りで出掛けた経験で言うと、はっきり言って時間を持て余します。
 とはいえ滞在型リゾートとするには、現在の受け入れ体制(観光設備など)は基本的に立ち寄り型がメインであり、抜本的に作りかえる必要があります。
 また、遠隔地からの集客を図るにしても、中京圏、関西圏からをターゲットにしても絶対数が限られます。

 それでも箱根の場合は早い時期から日帰り需要をターゲットにしていますが、東伊豆、熱海あたりはその転換が遅れているせいもあってか苦戦の印象が強いです。

●宿泊需要に重きを置くべきか

 典型例が中間地点の熱海です。かつての新婚旅行のメッカも新幹線の開業で素通りの危機に立たされたわけですが、高度成長の流れに乗って、都心から新幹線で手軽にこれる地の利を活かして社員旅行に代表されるような大型団体をターゲットにすることで逆に発展しました。ご存知無い方もいるでしょうが、かつて土曜が休日で無かった時代、会社は所謂「半ドン」であり、そこから午後の列車で繰り出して一泊と言うレジャー形態があったのです。
 土曜が休日になっても、金曜夕方の新幹線で繰りこむことが可能な熱海にはそれでも地の利があったんですが、社員旅行と言うようなスタイルが絶滅の危機に瀕するに至り、そう言う需要が激減したのです。

 本来、交通が良くなったことで明らかに日帰り圏に入った場合、受け入れ側もそれに応じた変革が求められるのですが、伊豆、箱根は熱海に代表されるように「奥座敷」的な側面に基づくある意味特殊な需要に支えられて宿泊観光を王道としてきた面があります。
 しかしバブル崩壊、デフレ不況の足下で、消費性向も高くても良いものか、激安指向の二極分化になったとき、受け皿足り得なくなってしまったと言うところでしょう。

 そう言う意味では宿泊需要はあります。伸びる余地もあります。でも絶対数は確実に減ります。箱根ななら強羅花壇とか、ごく限られた一流施設は今後も伸びるでしょうが、箱根全体の数、また、宿泊施設以外に落ちるお金は確実に減少するわけで、アクセスや観光施設としてはそういう限られた層をターゲットにすることが収益につながるか疑問です。

●「東西戦争」に見る観光開発の鍵

 「箱根山決戦」を鳥瞰すると、箱根登山と伊豆箱根の域内交通では箱根登山の圧勝であることは間違いないでしょう。しかし、宿泊関係、観光施設で見ると痛み分けという感じです。
 ただ、全国に目を転じますと、西武系の観光開発にある共通点があることに気が付きます。つまり、鉄道、バス会社を手中に収めたり、広い道路を付けると言ったアクセス面の整備が整っていることです。

 箱根にしても小涌谷から早雲山、箱根町から湖尻への道路を自前で整備し占有していたからこそ黎明期の競争が出来た訳ですし、西武の開発の礎となった軽井沢にしても、千が滝の別荘地に立派な道路を作るなど、最初から一貫しています。
 逆に東急・小田急系が箱根で生き残ったのも早雲山から湖尻桃源台へのロープウェイを作ることでアクセスと回遊ルートを確立したことが大きいわけで、アプローチとしてのアクセス、域内交通としてのアクセスを握ることは重要です。

 一方で東急の全国展開を見ますと、リゾート地としての開発、ホテルは目にしますが、足付けはどうでしょうか。そこの連携、重視がいま一つのように見えますし、それがデベロッパーとしての東急を如実に顕している気がします。
 箱根での東急・小田急系の「勝利」も、その交通網が必ずしもアクセスではなく、登山電車からケーブルカーにロープウェイ、遊覧船と乗って楽しい「箱根ゴールデンコース」という「観光施設」であるからといったほうが正しいかも知れず、そう考えると、西武は箱根で小田急の軍門に下ったと言うより、奥志賀の自社施設への足付けに自社開発でなく五輪対応で整備された道路を利用したように、整備された小田急系の交通網を利用すると割りきったと言うべきでしょうね。

●伊豆に戻って

 箱根の場合、アクセスの小田急、施設の西武が手を握ったことでなかなか手強いものがあります。
 しかし伊豆、特に東伊豆はどうでしょうか。「東西戦争」の結果、東急による伊豆急行開業となり、小田急系の東海バスとあわせて東急系がアクセス関係を手中に収めた格好になっています。

 しかし、箱根と違って伊豆のアクセスはそれ自体は地味な鉄道とバスです。そこにアクセスの活かしかたの上手い下手が現れたとも言えます。
 熱海、網代、伊東、川奈、伊豆高原、北川、熱川...とそれなりの観光地、温泉街が下田まで並んでいますが、結局は駅前を起点にした狭い展開しか出来ず、箱根のような回遊性はもちろん、一直線上に並んだ各地のはしごをすることも少ない状態です。
 道路交通が貧弱と言っても、小田原の早川口や熱海の和田浜という名だたるポイントである程度コントロールされていますし、逆にそういうポイントがあるからこそ鉄道で来て、域内をバスで移動すると言う回遊コースの価値も上がるのですが、現実は東海バスが第二会社を作って再建を余儀なくされるような危機的状況です。

●音頭の取り手と取り方

 首都圏在住当時、東京駅頭などで観光キャンペーンをこまめに打っていたのを見ていた感じでは地元のまとまりを感じ、房総あたりの取り組みに歯軋りをしていたんですが、なかなか結果として結実しないようです。もちろん地元のコンセプトの転換(日帰り重視なのか、高級化なのか、滞在型を目指すのか)が遅れているため首都圏在住者のニーズとの隙間が目立ってきているせいでもあります。

 結局、太宗を占める首都圏在住者が何を求めているか、が鍵であると考えた時、JR東日本を音頭の取り手にするのがベストでしょう。もちろんJR東日本沿線の他観光地との兼ね合いもあるでしょうが、動向を掴みやすい事業者が主導することで、効果的な商品設計その他の対策が取れます。

 取り方としては、まずJR西日本の「駅プラン」のような日帰りでの食事+入浴パックの展開が考えられます。この商品は域外では馴染みがないかもしれませんが、長浜、赤穂あたりだと新快速、小浜、白浜、篠山、城崎あたりだと特急利用で、宿泊客がいない日中の時間帯に宿泊施設で食事をして入浴休憩が付くという商品です。当然JR西日本が音頭を取って各宿泊施設に持ちかけて出来た商品ですが、京阪神から概ね100〜150km圏とまさに伊豆あたりに該当するエリアをターゲットにしています。

 あとはターゲットをもう少しコンパクトにした回遊型商品の設定。現状のそれは便利でお得ではありますが、やや広域に過ぎ、そのせいで割高感を感じます。そしてそこで伊豆急行や東海バスの活性化を図ることが必須になります。

 箱根における小田急もまさにこのポジションでしょう。こちらは交通特化ではありますが、箱根フリーパスと言う超定番商品を武器に、首都圏という需要地での取り込みが徹底しています。
 もちろん「ロマンスカー」というブランドの相乗効果もあるわけで、これを考えるとJR東日本が参考にすべき点も多いですし、「スーパービュー踊り子」や「リゾート21」はその重要な武器になり得ます。

●地元の問題

 結局利用者のニーズがまずありきの問題であり、伊豆は泊るもんだと思ってもそう思われなくなったらそれまでです。さらに、利用者にどうアピールしていくかも問題でしょう。
 さらに、アクセスに問題があるのなら、地元が足を用意すると言う姿勢も必要です。無名の温泉地が相当長距離の送迎サービスを無償、または実費程度で行っているのもそうでしょう。一時期西伊豆の航路であった都心からの接続バスサービスとか、丹後半島の夕日が浦温泉のようにエリアの宿泊施設での宿泊、日帰り利用を対象としたツアーバスの設定とか、北海道旭岳温泉のような宿泊者へのバス料金サービスとか、地元サイドからのアクセス確保・提供もそうですし、旅行代理店が自社商品の販促で事実上無料の送りこみをしているのもその変形でしょう。

<近畿ツーリスト>片道100円バスで日光、鬼怒川に(毎日01/06)http://headlines.yahoo.co.jp/…

 伊豆の場合はそれなりに売り込んではいますが、まだ「遠くで手招きをしている」だけのようでもあり、まだまだ「顧客本位」とは言えないのではないでしょうか。
 それでも上記の旅行代理店との提携や、熱海で老舗旅館がB&Bスタイルに転換するなど新しい動きも見えて来ていますので、次の一手をどう打つかと言うところでしょうね。


うまく魅力を生かせれば
 投稿者---Tom氏(2004/01/13 17:37:55)

 Tomです。

1.伊豆は日帰り圏か宿泊圏か

 距離的には勿論今や日帰り圏といえます。
 しかしながら、旅行者が宿泊するか日帰りでとどまるかは観光地そのものの魅力やどのようなものが提供されるかにもよると思います。
 で、現状はというと、以前のような会社の慰安旅行や町内会の旅行などが多々あった当時の、その種の団体をメイン顧客としてすえていた頃の設備そのまま、もしくはその延長線上の施設が未だ多いことが、個人旅行客を伊豆から遠ざけていると思います。
 パプルの際、会社が経費で落とせた接待旅行向けの超豪華旅館及びそれに「右へ倣え」をした多くの旅館の超強気な価格設定(特にハイシーズンは一室2食付で10万以上とか・・4〜5人までの定額で)が多くのユーザーに「伊豆は高い」という認識を深くさせてしまった面があります。特に航空運賃において割安なものが多く出てきた昨今では運賃込みの2泊3日では北海道と近接することもあります(例えば川湯温泉と知床のウトロ地区に宿泊してもグレードの高いホテルでオフなら2人で4万程度、プラスレンタカーSクラスとバーゲン運賃なら10万ちょっと・・。道内は7〜8月以外は価格が安い)。

 とはいえ、「温泉」「海の幸」という売り物があり、自然を生かしたレジャー(ダイビングやサーフィン等)も可能な土地柄でもあるので、売り込み方によっては十分宿泊圏としての魅力を出すことは可能だと思います。
 TAKAさんやエル・アルコンさんのご指摘では宿泊観光には不向きといわれていますが、不向きなのは宿泊を決心させる魅力ある施設が不足していることが原因だと思います。
 今の消費者の性向は「安さ志向」「質志向」に二分化しており、うまく「質志向」の層を取り込めれば宿泊需要の掘り起こしはできると思います。

2.旗振り役は 〜やはり鉄道会社系列が表に立たざるを得ない〜

 これはJRや伊豆急といった鉄道会社だけが音頭を取って何とかなるものでもないと思います。
 やはり、ホテルなどを運営する組織、レジャー施設を運営する組織と交通機関が連携し、如何にうまく伊豆地方の魅力を出していくかにかかっていると思います。
 交通機関単独では、JR化後SVOを出したり、伊豆急も「リゾート21」シリーズを投入したりとそれなりに努力していますが、受け入れ側の施設とのリンクがうまく取れていない気がします。
 とはいえ、最初から地元資本まで全て巻き込むのは難しいでしょう。  
 そう考えれば最初はJRや伊豆急、及び伊豆急の親会社の東急が協力してまずは自社系列の施設の見直しをはかり、また同時に地元資本グループにも情報はマメに流して伊豆ブランドというものを作っていく方向になると思います。
 伊豆をどのような観光地にして、どのように既存の設備を改修し、あるいは新設していくかを最終的にはエリア全体の観光業者が考える必要があると思います。地元観光業者にも他力本願ではない姿勢が求められます。  

3.交通機関として

 JRや伊豆急、東海バスに求められるのはどの層をターゲットにするかということ。
 SVOについてはコンセプトが明快ですが、踊り子がやや不明確な感じを受けます。
 踊り子についてはライナー列車との共用もあり、専用車両の投入は難しいかもしれませんが、投入が噂される車両については今の踊り子からもう少しはリゾート需要に気を配ったものにした方が良いかと思います。
 また、安さを求める日帰り顧客層についてはアクティーとリゾート21の接続を考えれば良いでしょう。
 このエリアは、道路の改善の見込みがしばし立っていないだけに、うまく鉄道事業者がその条件を生かせぱ利益を上げていくことは可能だろうと思うのですがいかがでしょうか。

Re:うまく魅力を生かせれば
 投稿者---エル・アルコン氏(2004/01/13 18:36:56)  http://6408.teacup.com/narashinohara/bbs

 確かに魅力ある宿泊施設があれば、と言う気はします。
 そう言う意味で伊豆に関して言うと、びゅうプラザあたりで見かける民宿パックは魅力的ですが、それ以上のクラスが総じて弱いです。
 そうですね、ゴルフなら川奈のような名の通ったコースという感じでしょうか。
 もっとも、そっちのほうも伊豆方面は格式の割に高いイメージがつきまといますが。

 あと、これは感覚的なものですが、東伊豆の場合は下田までの街道筋に面しているわけで、温泉場自体に落ち着きが感じられないと言うイメージがあります。このあたりが「奥座敷」的な印象を醸し出す箱根との違いでしょうか。もっともこれは西伊豆も条件は一緒ですが、交通量が段違いですからだいぶ印象が違います。
 逆に西伊豆はもう少しアクセスを考えてほしいもので、松崎方面が蓮台寺からライナーバスで抜ける新ルートができたのはいいんですが、ベースの修善寺ルートが弱いです。ノーマル「踊り子」から延々とバスと言うわけですから。

西伊豆へはおクルマで?
 投稿者---551planning(2004/01/28 22:49:12)

 ネタ出し程度で恐縮です。

 クルマでのアプローチにはいい話、なんでしょうか?

県が無料化検討 西伊豆スカイライン・西伊豆バイパス(静岡01/28)http://www.shizushin.com/…

 「伊豆市」が誕生するとも知らなかった当方ですが、記事では新市民交流がメインとしての言及になっているところ、地域振興にも触れられている点で、観光面への効果も期待できるものなのでしょうか?

2004.11.14 Update


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