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【検証:近未来交通地図】Special034
〔神戸・東灘くるくるバス〕市バスに挑むコミバス発進
(2004/02/23)

 本投稿は、【検証:】掲示板でもお馴染みの、エル・アルコン様より当BBSに御投稿頂きました文章を、読みやすく構成させて頂いたものです(なお一部文面を編集しております)。

下記内容は予告なしに変更することがありますので、予め御了承下さい。
当サイトの全文、または一部の無断転載および再配布を禁じます。


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 この2月21日から、神戸市東灘区の六甲山腹にある住宅街を対象とした、都市再生本部の「全国都市再生モデル事業」として、「くるくるおでかけネットワーク」調査事業が始まりました。

みなと観光バス http://www.kobe-minato.com/kurukuru/kurukuru.htm

 NPO法人、コミュニティ・サポートセンター神戸(CS神戸)が受託・主催し、みなと観光バスのマイクロバスをチャーターして、JR住吉駅から渦が森(渦森台)、住吉台の両住宅地へ2系統のコミバス「くるくるバス」を走らせて、交通環境の改善を検討していく事業です。
 21日から2月29日までは無料。3月1日からは200円となり、3月一杯の試行です。

***
 この渦が森、住吉台は標高200〜300メートルに位置し夜景の名所としても知られていますが、JR住吉など平野部が海抜数メートルということもあり、標高差は半端じゃありません。渦が森へは阪神御影、JR住吉からの市バス38系統が毎時4〜6本、またJR甲南山手、JR本山からの31系統も毎時2〜4本あり、中腹の住吉山手、鴨子が原へは阪神御影、阪急御影からの19系統が毎時4〜6本カバーしており、表面的には交通事情は悪くないようにも見えます。(鴨子が原から渦が森へは急勾配になるためバスはルートを分けている)、ただ、住吉台はバス便が全く無く、渦が森へのバスを途中の赤塚橋や渦森橋で降りて「300段階段」などに代表される山道をのぼるしかありません。そして自転車やスクーターは事実上使えませんから、クルマかバスしかないので、バスの役割が大きくなっています。

 渦が森もバスは表面上はありますが、このバス系統、停留所間隔が妙に長いです。JR住吉の次の東灘区役所前を出ると住吉川に沿って登り一方で、白鶴美術館を過ぎると半端じゃない勾配が続きますが、それでも住宅が途切れないというのに500メートル程度のバス停間隔では厳しいです。坂道発進の都合があるとはいえ、神戸市バスの場合、渋滞や信号停車でこの程度の坂道発進はザラであり、特に公団住宅とその上に一戸建てエリアが続く渦森台に入っても渦森台2丁目、渦森台3丁目、渦森台の3個所では疎に過ぎます。

●前夜の印象(神戸市バス38系統〜31系統:阪神御影〜渦森台〜JR本山駅前)

 「くるくるバス」運行開始直前の19日夜に市バスで渦森台に行ってきたのですが、さすがに市交側も危機感を持ったのか、阪神御影、JR住吉、住吉台入口の赤塚橋に調査員が出て乗降をチェックしていました(ちょうど引き上げ時間帯のようで渦森台エリアの存否は確認できず)。
 阪神御影とJR住吉からの乗客が半々程度で、立ち客が出るレベル。もっとも阪神御影からの乗客は上下の直特からという感じが無かったのが特徴です。

   まとまった降車は赤塚橋以降の各停留所。ちょうど谷間のような渦森橋が多いのが意外でしたが、住吉台と渦森台に挟まれたエリアの住宅街があるようです。気づいたのは降車客が押し並べて坂下方向に歩くこと。中間地帯の住民だと、坂の上側まで乗って降りるという生活の知恵でしょうか。
 コープこうべの店がある渦森台2丁目からの乗客には驚きましたが、終点(4丁目に位置する)まで乗っており、坂道を考えたら乗るんでしょうね。

 渦森台終点で少し夜景を眺めて31系統で折り返しましたが、乗ってきた38系統が「東灘区役所前(止め)」の標示を出して下っていきました。魚崎車庫入庫の都合のようですが、31系統にも岡本2丁目(止め)があり、いずれも山は下るが最寄り駅に着く前に店仕舞いという意味の無い系統です。おまけに車庫入りの都合で、終点の降車停留所が通常便と異なっており、全く使いようが無いわけです。

 神戸市バスは深夜バスの設定が無く、この38系統も22時を回ると終バスという早仕舞いが特徴ですが、渦森台側から見ると22時台にある3本がすべて区役所止めで、21時台で「下界」に降りる公共交通が無くなっているわけです。
 隣りのJR六甲道から出る36系統鶴甲団地行きも、最終近くなると折り返しの回送の便を考えて終点の1個手前(実際にはループ区間なので2つ先の鶴甲3丁目まで乗れる)の鶴甲二丁目止めになっており、運行するなら乗客不在、もしくは回送すれば良いのに使えない営業による無駄と全く理解不能な運行です。

●くるくるバス試乗(渦森台ルート)

 さて22日の日曜日、両ルートを試乗しました。
 13時前にJR住吉に着くと、市バス、阪神電鉄バス、神戸フェリーバスの乗り場から出ると聞いてましたが案内が見えません。よく見るとバスベイの最先端に蛍光色のプレートに「くるくるバス」と手書きのポールというか何というかがありました。背の高さはカラーコーン並みで、ちょっといくら何でもという感じでした。

 確か0分が住吉台行き、30分が渦森台行きと思って待っていたら、現れたご婦人が時刻表を見て、「あれ?13時は無いですね」と一言。住吉台は13時、渦森台は12時半が抜け目になっており、これにはもう一人の待ち人の女性もびっくりです。

 気を取り直して13時半に乗るべく乗り場に来ると、今度はもう6人くらいが並んでいます。「バスサポーター」のたすきをしたボランティアの方がチラシを配り、果ては呼び込みまでしていたのには驚き。後で別のボランティアの方に伺うとこの方は今回の社会実験の代表である大阪外大の教授のようです。停留所やバス車内の案内には神戸大(旧商船大)、関西学院大、神戸高専、甲南女子大のボランティアがあたっています。

 住吉の折り返し時間は6分間ですがちょっと遅れて到着。後部にリフトを持つ座席定員16人のマイクロバスですが、2人のボランティアを除き、私を入れて14人で出発です。車内は見事に高齢者、しかも老婦人一色です。東灘区役所前までは38系統と一緒でしたが、ここから山手幹線に入り、阪急御影から甲南病院、鴨子が原3丁目を経由する「直登コース」で渦が森へ。阪急御影で若い女性2人が乗りましたが、結局降車は渦が森エリアばっかりでした。

 乗り合わせた老婦人がくるくるバスへの期待と不備な点を問わず語りに話してきてましたが、そのうち皆がバスへの感想と意見を言うようになり、ボランティアの2人は聞き手に徹してます。停留所の位置がまだ掴みきれていないので、「XX棟は」「XXさんのところは」と非常にローカルな話題が飛び交い、あそこが近い、いやこちらではと意見交換に花が咲きます。
 渦が森エリアは市バスの3個所に対し、都合9個所の設置。8の字+αのパターンで経路を違えて上り下りしています。市バスが15分程度で走るのに対し、30分近くかかりますが。木目の細かさで勝負という感じです。

 渦森台の一番てっぺんである4丁目の展望公園入口が終点ですが、最寄りで降りるため乗り通しが多いです。若干早く着いたようですが、完全な住宅地なのでバスが待つわけにも行かず、一回りして時間調整してました。

●くるくるバス試乗(住吉台ルート)

 そのまま2丁目のコープ前まで乗せてもらい、歩いて鴨子が原3丁目から市バス19系統で下りました。普段は甲南病院先回りの時計回りで鴨子が原、住吉山手を回りますが、朝8時台は神大付属小、中の利便を図り逆回りで付属先回りの運行です。もっとも、そうしないと御影に下りる通勤客と付属への通学客が重なって収拾が付かなくなります。
 その19系統は阪急御影から真っ直ぐ阪神御影に下りるためJRに乗れません。10人ほどの乗客の行方が興味深かったですが、阪急駅で1人、JR駅に近そうなポイントで1人と、阪神駅への客が多かったです。

 15時の住吉台ルートは16人。リフトなしの車両で座席定員は20人程度です。渦森台ルートとうってかわって若い女性、母子連れが中心です。このあたり、まがいなりにも市バスがある渦が森と違い、公共交通が皆無だったことも影響しているのでしょうか。年齢層に大きな隔たりがあるとは言え、どちらも女性がほとんどというのも興味深い結果ですが。

 赤塚橋までは38系統と同ルート。そしてバス通りと別れて住吉台に入るといきなりの激しい急坂。ローに落としたエンジンが唸り、エンジンやブレーキの負荷を考えると運行の難しさがうかがえます。道が狭く、かつ渦が森のような大規模開発でないせいか、渦森台より急峻なイメージを感じます(実際には渦森台のほうが高い)。それと、家々に大型の四駆が目立つのも、流行というより実用目的なのかもしれません。
 住宅街を上り詰めたところの大型マンション、エクセル住吉台前が終点ですが、こちらも住吉台内が循環運転のため乗り通しが多いです。

 最初は下りて赤塚橋まで歩くつもりでしたが、ルートが違うことと小雨が降ってきたのでJR住吉まで帰りも乗せてもらうことにしました。同朋保育園前の乗降が多く、県営住宅を抜け、バス通りに戻ります。
 JR住吉が東行きで入るため、山手幹線から御影中町経由でJR住吉に戻りました。(渦森台ルートも同じ)こちらは17分程度の行程でした。

●試乗を終えて

 19日の時にも市バス車内で、調査員を見て「くるくるバス」が始まるから、と評している人が何人かいましたが、22日はすでに「くるくるバス」の名称がすんなり出てくる利用者もおり、住民の関心は相当高いようです。特に2月12日の神戸新聞、また直後に朝日(神戸版)にも記事が出ており、知名度はあるようです。
 乗客から、無料で申し訳ないのか、乗務員やボランティアにお菓子や飲み物の「差し入れ」というほのぼのとしたシーンも見られましたし。

坂の町、高齢者に優しく NPO法人が循環バス(02/12神戸)http://www.kobe-np.co.jp/chiiki/…

 ただ、JR住吉の「停留所」を挙げるまでもなく案内がやや不案内で、途中停留所は電柱や街路樹に括り付けたり、果ては民家の塀に直張りで、それも停留所名を明記したものではなく時刻表と地図のついたチラシのカラーコピーです。
 乗客からは、車内や停留所配付のチラシの時刻表や地図が分かりづらいという声があり、一部には見やすいバージョンも出たようなので、その辺の配慮が必須です。
 乗客を見てると、特に渦森台ルートは「新しいバスを試す」という感じで、話に聞いたバスが何処に止まるのか、というチェックの目が光ってました。逆に言うとこの無料期間にどれだけ周知するか、そして乗って「良かった」と思わせるかが全ての鍵でしょう。
 その意味で、試乗時の車内のように何処に停まるのかがいまいち分からないという声は早期に吸収、改善が必要です。

 バス停の設置も市バスよりは細やかですが、もう少し、という部分もあります。特に渦森台ルートの往路、2丁目コープ前に寄せたために団地内を回ってバス通り(渦森会館前)に復帰しますが、復路にある渦森台二丁目Aが無いとか、住吉台ルートの場合は往復とも通るのに復路しか停まらない同朋保育園前(皮肉にもここの乗降が多かった)、落合橋とか、チラシに経由を謳いながら停車しない白鶴美術館前とか、粗が目立つのも事実です。

●複雑な思い

 ボランティアの方に聞くとどうも準備不足が否めないとのことでしたが、住民の関心を考えると、3月の有料運行の帰趨が興味深いです。特に3月は運行時間帯が2月の8〜18時から7〜20時に拡大され、さらにJR住吉→阪急御影→鴨子が原→渦森台→住吉台の深夜便が22時半と23時半に出るなど、運行形態も本格的になりますので、また見に行こうと思います。
 今回のこの社会実験、市バスのサービスを補完というよりも、停留所の設置や深夜便など、市バスの不備を突いた対抗とも言えます。
 もっとも、本来はせっかく市が運行しているのですから、福祉行政などの側面から市が自ら行っていて然るべき話であり(そういう時こそ「交通振興バス」の出番では?)、「市バスを補完するコミバス」が期間限定ながらもNPO主導で実現したことには複雑なものを感じます。

 実際、マスコミ報道では、敬老パスで市バスになら無料で乗れるのに、近くから乗れるなら200円でも利用したいという高齢者の声が掲載されましたし、今回乗りあわせた方の声でも、歩くのが大儀なときは結構タクシーを利用せざるをえないようであり、「無料パス」という運賃政策より優先されるものがあることに気が付かなかったのか、という感じです。
 いかにも泥縄という感のある市交の「調査」を見る利用者の目も、「何を今更」という感じでしたし。

 ただ、住吉台ルートの車内に21日の渦森台ルートの利用者数が出てましたが、10往復で105人だそうです。22日の朝日(神戸版)では立ち客の出た車内の写真を載せ、「2路線盛況で発進」とあり、試乗時の様子では同時間帯の市バスが15〜20人前後の乗客だったことを考えると、時間帯によっては健闘だが、どうしても客足が伸びない時間があるようです。
 ニーズはあるがこれをいかに利用に結び付けるのかが今後の恒久運行への鍵であり、その意味でJR住吉駅頭での「客引き?」も涙ぐましい努力といえます。
 本来、交通が不便な地域の対策を考えるべき市を相手に回して、事業化が可能なレベルの実績を残すべく営利の権化のように振る舞わざるを得ない姿は、今の地域交通の持つ複雑さを映しているといえましょう。


無料期間の成績はまずまずでは
 投稿者---エル・アルコン氏(2004/03/01 18:33:49)http://6408.teacup.com/narashinohara/bbs

 いよいよ3月1日から有料運行が始まりましたが、それに先立つ28日に無料運行での定着ぶりを見てきました。

 JR住吉を16時半に出る渦森台行きは18人の乗車。先日と異なり母子連れなど年齢層が下がってましたが、女性中心であるのは一緒でした。
 山手幹線から阪急御影に向かう途中の西村珈琲店前で乗降、阪急御影でも乗降があり、22人になり補助席が出されました。先日と違い甲南病院や鴨子が原で都合10人の降車があり、上手に使われているようです。
 車内の「前日の利用者数」を見ると、住吉台線が200人強、渦森台線が220人強とあり、1便あたり10人を超えています。実際には片輸送の傾向が強いため、利用者側の感覚としての乗車率はいつも正座席が埋まるレベルというものではないでしょうか。
 ただ、累計欄が両線とも400人台と言うのはおかしく(27日が200人強、21日も100人強乗っており、試乗した22日を含む22〜26日の5日間で100人程度になってしまう)、集計の精度はどうなっているんでしょうか??

 渦森台2丁目のコープ前で降り、渦森橋まで下ってから三百階段を直登してエクセル住吉台に向かいます。六甲山腹の住宅の限界地のためイノシシが当たり前のように出る地域ですが、階段では猫が何匹もひなたぼっこしているだけでした。階段自体は4分ほどで登りきりましたが、最後はひざが笑い出す有り様で、これを毎日通勤、しかも帰り道でと考えると力が抜けます。

 エクセル住吉台から帰り便に乗りましたが、13人で到着し、2人降車の2人乗車。こちらは今度は先日より年齢が上がった感じですがやはり女性中心。ただ、JR住吉から乗り通した11人は総て同朋保育園前で降りており、双方向に停留所がいるでしょう。
 そして赤塚橋で1人乗せてJR住吉に戻りました。

***
 毎時1本でほぼ片輸送の形態で、往復平均1便11人であれば立派な成績と言えます。
 特に28日の試乗では、現在直通するバスが日中毎時1本の37系統だけというJR住吉−阪急御影間、また直通が無いJR住吉−鴨子が原地区での利用が目立っており、上手く移動ニーズを掴んでいるようにも見えます。

 ただ、有料化でどうなるか。エクセル住吉台停車中に回数券を車内発売してましたが、1人が「朝買いました」と言っただけで無反応であり、気掛かりです。私も無料期間に何度も乗車しており、支援の意味も込めて2,000円券を買いましたが、ナンバリングは0009番で、もう一台のバスやコープこうべの3店舗での販売もあるだけに速断は出来ませんが、ちょっと売れ行きが芳しく無いように見えます。

 もっとも、有料運行は1ヶ月間だけであり、最低でも12枚2,000円というのはちょっと買いづらいかも。6枚1,000円にしたほうが良かったのでは。
 また、渦森台2丁目でバスを降りたら、コープの向かい、登り方向に向かう車線でタクシーが数台客待ちをしており、平地ならわずかな距離でも660円払って、という人がそれなりにいることがうかがえるわけで、有料化した途端に散々というのは考えづらいのですが、どうでしょうか。

 そして有料化に伴い朝7時台の運行と、深夜便の運行が始まります。
 深夜便は渦森台の上には入らず、2丁目からバス通りを下り赤塚橋から住吉台に入りますが、意外なのはそのままJR住吉まで客扱いすること(22時30分、23時30分発で23時15分、0時15分着)。タクシーに乗ることを思えば、一回りした落合橋あたりでも使えますね。
 ちなみに深夜便の料金は400円で回数券は2枚。ただし5000円のサポート券(無記名持参人式定期券)は追加料金無く乗車可能で、今月に(対回数券比較)16回以上深夜バスに乗るのならサポート券がお得なようです。

 このあたり、深夜便の利用状況も含めて、もう少しウォッチしていきたいと思います。

有料実験スタートにみる明暗
 投稿者---エル・アルコン氏(2004/03/05 17:13:50) http://6408.teacup.com/narashinohara/bbs

 3月1日から有料運行が始まったくるくるバスですが、公式サイトにある乗降者数の表がようやくスタートしました。

http://www5e.biglobe.ne.jp/~hatsuden/joukou.htm

 見て驚いたのは、無料期間中は概ね拮抗していた感のあった渦森台線と住吉台線で大きく明暗を分けていること。両線とも12往復運行で、4日までの4日間で渦森台が1便平均3.4人、住吉台が9.4人と3倍近い差になっています。住宅街と市街地という片輸送になりやすい路線形態を考えると、住吉台線はピーク方向で見れば平均15人程度はキープしているイメージで、このまま推移すれば福祉対応なんてものではなく、商業化も充分可能なものではと思います。
 一方の渦森台線ですが、やはり有料になると市バスが頻発するので、狙い乗車まではおよばないと言うところでしょうか。ただ、無料だから乗ったけど、というのはちょっとつれないと言う感じです。

 さて、このデータでは端折られている深夜便(JR住吉22時半、23時半の2便)ですが、ちょうどその時間帯に住吉を通りがかる機会がありましたので見てきました。
 結論からいうと、ちょっと苦しいスタートと言うところで、3月1日の22時半は7人、3日の23時半は5人(遠目なので若干見誤りはあるかもしれません)と、渦森台経由住吉台という「両効き」のコースを考えると少ないです。
 ただ、22時半の場合は18分に最終の渦森台行き市バスがあり、大阪方面ですと快速電車を1本早くすれば間に合うだけに、ちょっと効果が薄い時間です。それを考えると23時半の少なさには驚いたんですが、その時間帯、住吉駅北口のタクシー乗り場を観察したところ、電車1本につき10台出るかどうか、というレベルであり、深夜帯の需要自体が少ないのかもしれません。くるくるバスが出るのは南口の2号線沿いなんですが、バスの発車直前に下り快速が来るのですが、バスへの乗り継ぎどころか南側に出てくる人も閑散という感じで、六甲ライナー方面が若干賑わう感じでした。
 ちなみに三宮など神戸市街ですと、飲んだ帰りなら中心街からそのままタクシーに乗ってもこのエリアなら2,000円台後半でしょうから、電車+タクシーやバスというのは案外選択されないかもしれません。

***
 まだ1週間、といっても社会実験は1ヶ月だけですからもう1/4が過ぎたと考えるべきですが、足元の実績を見て見えてきた結果と問題点を挙げるとすればこういうところでしょう。

●渦森台線
 同じ値段で広い意味で同じ区間を走ってもなかなか難しい。特に敬老パスが使える層にとっては市バスならタダということで逃げられたか。
 あとは渦森台でのバス停もちょっとニーズとずれている感じがするし、鴨子が原ではバス停が少ない。鴨子が原や阪急御影からJR住吉という市バスの直通が無い、もしくは少ない区間など、市バスとの差別化を前面に押し出した集客策が欲しい。
 場合によっては渦森台内の利用は100円とするなど細かい需要を拾う必要も。

●住吉台線
 合格ラインに達しているが、住吉台地区内でのバス停配置に工夫が欲しい。上下とも通るのにJR住吉方向しか停留所が無い同朋保育園前は午前中はJR住吉行き、午後はエクセル住吉台行きに停めると言った流動に即した対応が必要では。

●両線に共通する事項
 JR住吉発のみ東灘区役所前に停車しているが、JR住吉周辺で一方向きで回って折り返す運行形態のため、区役所への足が無い。JR住吉から区役所は天井川である住吉川へ向かっての上り坂である。
 両路線とも東灘区内を走っているわけで、区役所(および区民センター、本局である東灘郵便局)へのアクセスに難があるのは拙い。

●深夜便
 もともとの需要が少ない可能性もあるが、深夜便があることで遅くまで遊んでも大丈夫という安心感を与えることで需要を開拓する方向性が必要。
 あとは、無料運行時や、日中便とは全く異なった客層がターゲットであり、そういう層への周知が徹底していない懸念もある。主婦や老人層には知られているが、サラリーマン層は実は知らない可能性も。

 運行時間が5分ほど伸びるが、現行の渦森台2丁目からバス通りを赤塚橋に向かうのではなく、いったん3丁目あたりまで上がるほうが良いのでは。2丁目だと住宅街の一番下である。

●その他
 もう少し広報・宣伝活動を積極的に行うべきでは。
 また、サイトの情報も、メディアで伝えられたCS神戸の中の「くるくる発電所」のさらに内部に潜んでおり、しかも時刻表が無いなど分かりにくい。
 その点、運行を受託したみなと観光バスのサイトのほうが専用のコーナーを設け、時刻表も掲載するなど分かりやすい。

 あと、無料運行開始時には当地の新聞に比較的大きく掲載されたが、恒久運行ではなく社会実験なのだから、フォロー記事が欲しいです。

***
 このまま行くと、住吉台線はうまく行けば継続運行が可能なレベルに持って行けるかもしれませんが、渦森台や深夜便はちょっと厳しいかもしれません。
 深夜便は乗合タクシーでの対応も考えられますが、距離的にはそんなに離れていないため、通常のタクシーに対する価格優位性を取りづらい問題があります。

 住吉台は公共交通そのものが無く、急な坂道や「三百段階段」のような階段道でバス停にアクセスするしかないエリアですから、これまでの結果も頷けます。
 前も書きましたが、本来NPOではなく市がきちんとフォローすべき問題であり、もし市の直営が無理であれば、みなと観光のような業者に業務委託を早い時期にすべきでした。

 ちなみに神戸市の広報番組(サンテレビ、現在は放送終了)に「神戸リポート」という番組がありましたが、2001年7月15日の放送でこの渦森台、鴨子が原、住吉台のまちづくりを取り上げており、まちづくり協議会で「坂の街を木目細かく巡回するコミュニティバスの運行が必要」という課題があげられているとあります。

http://www.city.kobe.jp/cityoffice/15/020/medium/report/2001-7/koube2001-7.html

 神戸市の広報番組で、神戸市条例に基づく公的組織である協議会で課題として上げられている、と謳われたにもかかわらず、今回NPOによる社会実験が始まるまでフォローが無かったのは、諸般の事情はあるでしょうが、事実として残ります。

訂正および若干の雑感
 投稿者---エル・アルコン氏(2004/03/06 23:50:55) http://6408.teacup.com/narashinohara/bbs

 今日、住吉周辺に用事があったのでクルマで向かったついでに、昼から断続的に吹雪となった沿線を走ってきました。

 鴨子が原から渦森台へ上がり、住吉台を一回りしたんですが、途中甲南病院の下で渦森台線とすれ違いましたが、側窓のスモーク&装飾のせいで乗車数は分かりませんでした。一方で38系統は結構乗ってる感じ。19系統は5〜6人といったところでした。

 渦森台4丁目を一回りして、3丁目から渦が森小学校の裏手を回ってみましたが、渦が森幼稚園のところで右折できず(スクールゾーンとして諸車通行止)、焼が原との境を下りて渦森橋の少し上のところでバス通りに出てしまうため、結局は渦森会館から中を通る現在のルートがベストのようです。

 住吉台ですが、まずはお詫びと訂正ですが、上り便(「登り」の意)に無いと書いた同朋保育園前ですが、下りの少し下にありました。ですからエクセル経由で、ということはないようです。ただ、そこからエクセルまでの間、住宅街が続くのに停留所が無いのは勿体無いです。
 もっとも、坂道への設置は再起動の問題もあり難しいのは確かです。実際、鴨子が原3丁目の信号で待ったとき、さてスタートというとき後退しないように踏み込んだらいきなり空転してしまい、運転の難しさを痛感しました。

***
 住吉台から赤塚橋に下りる際、親子連れが何組もバス通りとの道を行き交う姿を見ましたが、現実に坂を上り下りしてバスに乗っている人がいるわけです。コミバスが無くても市バスに乗ることは間違いなく、赤塚橋や渦森橋でのサービスで良しとする見方も出来ますが、今日のような荒天を考えると詮無い気持ちです。

 あと、何とかならないのか、と思わされる話をエリアの知人から聞いたのですが、住吉山手、鴨子が原、住吉台のエリアの小学校は渦が森小学校だそうです。
 住吉山手あたりですと通学路に指定されているのは赤塚橋付近まで降りて、バス通りの対岸にある道路を通り、渦森橋付近から登るという難路です。知人は甲南病院の近くで最近分譲されたマンション住まいですが、価格帯や間取りからファミリー層が多いのですが、校区と通学路に驚いており、高学年はともかく、低学年はどうやって通っているのか不思議です。
 このあたり、スクールバスの運行というような対応も考えられるわけで、「くるくるバス」のような地域対策が出来ないものでしょうか。

検証記事と今後の課題
 投稿者---エル・アルコン氏(2004/03/22 20:15:08) http://6408.teacup.com/narashinohara/bbs

 試験運行も2/3が過ぎようとしたタイミングでようやく検証記事が出ました。

くるくるバス、細かいルート好評 東灘で試験運行(03/17神戸)http://www.kobe-np.co.jp/chiiki/kobe04/0317kb19490.html

 渦森台線と住吉台線の「明暗」とその分析は概ね私が感じたものと同じですが、渦森台線の「苦戦」は敬老パスというよりも市バスのフリークェンシーのほうが大きいのでは。というのも、先日たまたま平日午前に手続関係で東灘区役所と東灘署をはしごした際に、38系統のバスを東灘区役所前→JR住吉駅前→中御影と利用したのですが、その際にJR住吉での降車時の様子を見たところ、車内の半分以上が高齢者に見えたんですが、意外と敬老パスの利用が少なく、逆に昼間割引回数カードや定期券の利用が目につきました。

 このあたり、昼間割引カードは割引率が高く、普通区均一定期券は普通区ならどの系統でも乗れる(JR住吉まで乗ったあと、三ノ宮からまた別の系統に乗れる)など、価格競争力や付加価値があるわけで、このあたりも苦戦の理由でしょう。

 なお、NPOのサイトの乗降数を見ると、両線の明暗もさることながら、住吉台線の利用が特徴的です。
 つまり、平日の利用が休日の倍近くに達しており、朝7時頃、夜8時前まであることから、通勤通学利用といった都市近郊路線の「王道」の利用が付いたということでしょうか。

http://www5e.biglobe.ne.jp/~hatsuden/joukou.htm

 記事では「本格運行の実現は乗客数次第」とありますが、少なくとも住吉台線は実現へのハードルをクリアしたのではないでしょうか。時間帯によっては「増発」してフリークェンシーによる誘発効果があるかというような「試験」も考えてもよさそうです。

くるくるバス深夜便に試乗して
 投稿者---エル・アルコン氏(2004/03/28 00:01:08) http://6408.teacup.com/narashinohara/bbs

 いよいよ社会実験も残りわずか。輸送人員を見ると渦森台線も危機感からか3桁をキープするようになり、平日は両線で400人台を確保しています。
 無料時期に何回か乗った後、見ることはあっても乗る機会が無かったのですが、昨夜、念願の深夜便に乗ってきました。

 23時15分頃にバス停に行くとバスも人もいません。さすがにこれは、と思いつつ見てましたが、定刻に若干遅れてバスがついても乗客無し。最初の乗客が来たのを機にバスに乗車しましたが、住吉台までで降りてしまっては帰れないので(小一時間歩けば帰れるが...)一周する旨を添乗している方に告げました。
 大阪方面からは20分頃の普通、そして26分の快速を受けるのですが、出足は鈍く、定刻23時半に少し遅れての出発も私を入れて9人でした。
 乗客が乗る際に一人一人挨拶してましたが、乗客の中には4月以降の運行を聞く人もいました。どうやら本格運行については運行主体等の問題もあり未定のようですが、バスの無い住吉台、JR住吉にダイレクトに出れない鴨子が原など、「1ヶ月間の夢」で終わらせたくないところでしょう。

 この時間、後は23時41分発の阪急御影から乗るくらいでしょうが、いちおう全停留所で乗務員と添乗員が停車・通過を確認。その阪急御影からは5人が乗車しましたが、甲南病院、鴨子が原での降車が多く、市バス19系統の深夜バス的な使われ方のようです。
 発車間際に駆け寄ってきた人がいましたが、住吉山手に最近出来た分譲マンション&一戸建ての専用バスと勘違いしたようです。子細は判りませんが、現地に住む知人が「専用バスがある」と言っており、この時間にあるのならたいしたものです。深田池のところで日本交通のマイクロとすれ違いましたが、それでしょうか。

 急坂を上がるに連れ夜景が広がります。甲南病院、鴨子が原3丁目の降車が多く、羽渦森台コープなど渦森台エリアは1人だけ。住吉台は同朋保育園が目立ちました。
 ミニコープからは事実上回送で、添乗員の方と少し話しましたが、深夜便がやや少ないものの、2便で30人はキープするようになったこと。日中便は乗ってるが、急勾配路線で運行コストが嵩み、ハードルが高いなど特徴もあるようですが、少なくとも日中の住吉台線はこれで無理なら何を求めるのかと言う感じです。
 結局駅まで乗らずに駅北口の有馬道商店街北口に当たる東京三菱銀行前で降り、バスは山手幹線を去っていきました。

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 住吉駅で見ていると北口からタクシーに乗るのは1列車に10台程度。渦森台、住吉台でもそんなに多く見かけず、深夜需要自体が少ないようで、本来終バスが1時間伸びたら左党は見逃さないはずなのに伸びない理由を垣間見たようです。
 もっとも、JR住吉で帰りの上り電車を待ってると、0時22分の最終姫路行き快速に乗る人も20人ほどおり、駅周辺の様子を考えると六甲アイランドから最終の六甲ライナーで来たようであり、また、遅れの快速から最終0時26分発の六甲ライナーに急ぐ乗客も多かったです。さらに0時32分の普通大阪行きはかなり混んでおり、摂津本山では100人は降りるなど、卒業・異動のシーズンで深夜需要は多いのです。
 結局、需要に応える交通機関があれば「もう一軒」に応じ、なければ後ろ髪を引かれつつ中座しているのでしょうか。周知と定着で充分目があるような気もします。

「ありがとう」で終わらせないために
 投稿者---エル・アルコン氏(2004/04/05 22:26:08) http://6408.teacup.com/narashinohara/bbs

 くるくるバスの試験運行は結局「予定通り」3月31日で終了しました。
 くるくるお出かけネットワークの乗降者数の記録ページには、「現在、くるくるバス本運行の早期実現を目指して、取り組んでおります。」とありますが、今後どうなるか、掛け値無しの交通不便地域もあるだけに気になります。

http://www5e.biglobe.ne.jp/~hatsuden/joukou.htm

 さて、上記ページには9日間の無料運行、31日間の有料運行の数字が出ましたが、渦森台が無料2,188人、有料3,369人。住吉台が無料2,268人、有料7,406人となりました。
 渦森台の伸び悩みは意外でしたが、住吉台の数字は終日全期間で各便(上り下り別で勘定)の乗車が約10人と堂々たるものです。特に最終日の31日はお名残乗車も多いでしょうが552人と、平均で20人を超えており、座席定員16〜20人のマイクロバス使用の路線と言うことを考えると立派と言えます。
 これで継続運行にならないのですから住民もなぜ、というところでしょうが、都市再生事業の社会実験という位置付けですから、本運行に至るには、免許や各種審査などが必要なのでしょう。
 とはいえ、今後の「定着」そして「普及」を考えると、1台で回せて終日利用平均が10人超の路線なんか、探してもなかなか発掘できるものでは無いわけで、早期の本運行の実現が望まれます。

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 さて、今回の社会実験を振り返ってみましょう。

 地元での認知度はかなりあり、直前に地元紙への掲載もありました。
 そういう中での運行開始ですが、最初の9日間を無料のお試し期間にしたことは、周知を図るうえでも良かったと思われます。

 ただ、有料運行になり、渦森台と住吉台で明暗を分けたことは示唆に富んでいます。
 結局、コミュニティバスといえども、利用者が利用しなければ意味がないわけで、今回のケースですと、計画にゴーサインを出した総務省、受託したCS神戸、運行担当のみなと観光バスとともに、肝心の住民がそのバスを利用するかどうかが総てなのです。

 その意味で、住吉台は尻上りに利用を伸ばし、渦森台は有料化とともに激減し、最後に何とか数字を整えたわけで、住吉台はこのバスを育て、渦森台はこのバスを育てなかったと結論付けても過言ではないでしょう。もちろん、渦森台(および鴨子が原)は市バスもあり、値段が一緒なら利便性が高い市バスに流れるのは必然ですから一概に住民を責められませんし、受託者側も、市バスとの差別化をもっと大胆に図るべきでした。

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 今後の行方ですが、取り敢えず需要が確実な住吉台を軸に定期運行の実現を進めるべきでしょう。
 あとは運行コストをどう負担するか。「山岳路線」ゆえ車両への負荷が高く、コストがかさむため、それをどうまかなうか。また、社会実験中はボランティアの添乗員がいましたが、まあ欲をいえばきりが無いですが、一般路線化となれば、案内テープや運転手による対応というのは充分許容範囲でしょう。

 このあたりは、同じみなと観光バス運行の阪急岡本駅南−六甲アイランドのバスがどう成立しているかが参考になるでしょう。時間帯によっては乗ってるんでしょうが、今回の住吉台線ほど平均して乗っている様子でも無いわけで、収支を償っているのは280円というやや高めの運賃なのか、六甲アイランドあたりの広告料が下支えしているのでしょうか。
 そう考えた時、例えば200円ではなく、「登り賃」として250円程度の運賃設定にするとか、住吉駅近辺の商業施設(六甲ライナーつながりで六アイ関係でも良いでしょう)から広告料や協賛金を頂戴するといった「資金計画」も考えるべきです。

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 日曜日、雨上がりの渦森台、住吉台を桜見物がてら回ってきました。
 数日前まであった「バス停」も無く、運行継続を求める類の掲示も無く、あの運行が嘘のよう、何事も無かったかのようでしたが、唯一、住吉台の街角に自治会名による「くるくるバス、ありがとう」の看板が出ていたのを見て、救われる思いでした。

 無料、有料あわせて延べ15,000人強の利用者を得た「くるくるバス」という社会実験。「ありがとう」だけで終わらせるには惜しい成果であり、これからがスタートと信じたいです。

2004.11.14 Update


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