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(過去ログNo.)

中国バス「DREAM SLEEPER」の“位置付け”とは。

投稿者---551planning (2012/08/19(Sun) 11:38)

その唐突感から、ネット世界の片隅で昨日夕方からわっと盛り上がったこのネタ。

同社では広島・西条・福山~町田・横浜間に夜行高速乗合バス「メイプル・ハーバー」を運行していますが、08/29から増便という形で1台に14席単独2列シートというデラックスシート車両「DREAM SLEEPER」が投入されることに-『ご乗車くださるお客さまに最高の眠りと上質なリラクゼーションをお届けすることをメインコンセプトとして誕生した、新発想の高速乗合バス』は『ひと晩かけて長距離を移動する高速乗合バス…その間に感じるストレスを少しでも和らげたい、安全に目的地までお送りする間、心安らぐひと時を過ごしていただきたいという強い思い』を開発の端緒に、『バスという領域を超え、これまで採用されてこなかった、さまざまファシリティを敢えて導入することで、移動しながら”心地よい眠り”を手に入れるという新時代の乗りもの』を提案、『人と乗りものの新しい関係、それはやがて高速乗合バスの新しいスタンダードとなるでしょう』と自身たっぷりです。

確かにそのファシリティ、いろいろ考えられているようで…なんといっても注目は座席、パーテーションおよびカーテンで仕切られた空間は4列仕様の3倍、3列仕様と比較しても2.5倍に。エグゼクティブシート10席に加え、NASA理論から着想された浮遊感を感じながら「深眠」できるというアッパークラスのゼログラビティシートを前列4席に配置していますが、『どちらのシートも「快眠」が標準装備です』とここでもアピール。サイト写真的にはシンプルなデザインでホールド感が気になるところですが、ちなみに昭和西川のムアツクッションが全席に採用されているそうですが…だったら愛称から先ずなんとなく想起した「トゥルースリーパー」を使ってみたら面白かったかも?(いかん、深夜TVショッピングの刷り込みが激しいなぁ)。
トイレ&パウダールームを装備するほか、床全面カーペットで車内はスリッパ履き替え。さくら色LEDにウェルカム・アロマにイオン発生器ナノイーに快眠音楽4チャンネルマルチにアメニティグッズ(ゼログラビティシート標準、エグゼクティブシート利用者には有料販売も)に…等々、まあ盛り沢山となっております。話によれば両備の「SAIBUS」「SOLARVE」を開発したチームが関与しているそうですが“水戸岡デザイン”ではないそうで。

***
夜行高速バスにおける個室スタイルは、弘南バス「ノクターン」のスーパーシート(6席:1995/12~)が長らく孤高の存在でしたが、西鉄「どんたく号」試行から「はかた号」以降本格導入されたフェイスカーテンも画期的だったところ、波及効果がさほどなかったのは残念ながら防犯面の影響もあったのかなと…その後、座席の高機能化については乗合系が先鞭をつけたもののツアー系の積極展開もあって今やかなりの水準にまで至っていますが、個室スタイルとしてはWILLER「コクーン」(トイレ無し19席:2010/07~)やイルカ交通「和(なごみ)シート」(トイレ付き20席:2011/04~)などのチャレンジを経て、“現代の寝台特急”を標榜する海部観光「マイ・フローラ」(トイレ付き12席:2011/04~)が業界を震撼させたものの、やはり高速ツアー系の動きに終始してきたような。
その系譜から「DREAM SLEEPER」を見ると、いよいよ高速乗合バスにおける個室シート戦略の狼煙だ!というよりは、どうしても二番煎じについ見えてしまって…確かに、サービスとしての志向性は首肯するところ、導入路線がどうなのかなぁと。

メイプル・ハーバー

「メイプル・ハーバー」は1997/12の登場、当初は中国JRバスとの共同運行で、事実上前身となる「赤いくつ号」(広島・三次~町田・横浜)の絡みもあり横浜側は神奈中がサポートしています。2005/10~2006/05には中国バス単独で昼行便「弥次喜多ライナー」を運行という、ある意味同社の迷走ぶりを象徴するような半ば伝説的?な話もありましたが、その撤退直後に私的整理→両備グループ傘下入りという局面を経て、2007/10から中国バス単独運行化(中国JRバスは広島側サポート)、そして2011/09~/12には4×9列シート新車を投入し格安路線を狙ったことも。
実は当方、この4列便の終了直前に乗っておりまして…近年はほとんど長距離夜行バス自体を回避していたところ、行程的な要請に加え、新車というのがヒュンダイ・ユニバースと来てコワイもの見たさがあったというか。乗車前に下記ブログを読んでいたのでイロイロと覚悟を決めつつ乗ったものの、案外寝られたなという印象。ちょうど定員の半分で2列を専有できたのが大きかったですが、乗客は壮年層中心、横浜出発後いきなりシウマイ臭が漂ったりワンカップや紙パック酒(しかも1L)がどんと置かれたり…という展開もあったり。
車両面では、シートピッチや独特の座席はさておき、荷棚がハットラック式となっているものの天地方向に狭く実用的でない上、扉のビビリ振動音が耳についたほか、路面状況を直接拾う乗り心地も若干気にはなったところ。ユニバースの仕様上トイレはユーザー設置となる様子、後部構造の影響もあってトイレと化粧室が左右に独立し中央最後部に洗面台が付くという独特な構成。化粧室(といっても座席1つ置かれた密閉空間)のブルーライトや段差注意の足元LEDの紅い灯りもなんだかなぁと思われた次第でしたねぇ。中国バスでは2010年から貸切と昼行高速路線にユニバースを投入、2次投入車も昼行便仕様(故に運賃箱や運賃表示器用モニタを装備)としたものの車両性能面確認や運行戦略面等で実験的に長距離夜行便に入れてみた-ということなのかと思いましたが、その延長線上が同じユニバースでの「DREAM SLEEPER」になったとしたら振り幅スゴ過ぎですね。

で、「DREAM SLEEPER」は『忙しいビジネスマンや時間を有意義に使いたい方々』をターゲットとしている様子、『ファーストクラスの快適性と高速乗合バスならではのコストパフォーマンス』でサポート…とのことですが、運行は通常便の30分後続行スタイルで、途中休憩(横浜行龍野西SA/広島行足柄SA)も通常便と同設定。肝心の運賃は横浜・町田~広島間で通常便が片道11,700円/往復21,060円のところ、エグゼクティブシートで片道12,000円/往復21,600円、ゼログラビティシートで片道14,000円/往復25,200円となっており、通常便だと値段が異なる西条・福山についても同額の様子。海部観光がマイ・フローラと3列便の価格差を1.3倍としているのと比べるとお得感があるというか、その意味ではエグゼクティブシートが狙い目かとも思われつつ、『座席指定される場合、座席指定料別途500円いただきます』ともされているのはなんでしょうね。
新横浜~広島間はのぞみで片道通常18,240円(福山17,170円)、フライトでは片道20,000円弱も広島空港の立地を考えれば価格競争力はあるなと…ただし始発は20時台、頑張れば最終のぞみも掴まえられるところからすれば、広島ベースで見た時に東京往復スーパー早特きっぷ往復26,000円(福山同額)との勝負ではどうでしょうか。固定客確保も課題と思われますが価格設定は早割・学割どころか小児設定もない1本のみ、通常便で展開のポイントカードも非対応…当面は新しモノ好きが食いつくと思うものの、なにかしら乗ってみたいと思わせる工夫(例えば通常便のポイントカード達成でアップグレード等)があってもとは余計なお節介かな?

そもそも、フラッグシップを狙うなら東京行こそと考えるのですが…中国バスとしては三原・尾道・府中・福山~新宿間に「エトワールセト」を、両備グループで見れば倉敷・岡山~東京間に3系統(新宿/東京・上野/品川・浜松町)を有しており、毎日往復体制を単独で組める以上どこかに話を持って行っても良かったのでは? 『DREAM SLEEPERは、中国バスのプロドライバーによる「快適で安全・安心な旅」をお約束します』という特設サイト最下部の一文からしても“ウチは高速ツアーバスとは違う”という強い自負が垣間見える一方で、継続性という観点からだと貪欲さというか老舗事業者の保守的側面を見るような気がするのですが…まぁ「メイプル・ハーバー」がここまで残ってきているところからも、下手なリスクを追わずに済む手堅い需要の上に勝機を見出しているということなんでしょう。
中国バスとして、両備グループとして「DREAM SLEEPER」をどのように位置付けて今後を見据えているのか、個人的には非常に気になるところ-これまでも地域公共交通のために数々の言葉を残してきた小嶋社長・グループ代表CEOがどのように表現するのか、楽しみにしております。

「Jr.プロデュース」の先を読む?

投稿者---551planning (2012/08/22(Wed) 17:17)

というわけで語って頂きましょう!

『今までの高速乗合バスは(中略)基本的にはバスのハード面の改良』だったため『勢い運賃勝負の様相が強くなった』、『運賃競争に拍車をかけたのがツアーバスの出現で、ついには似て非なる存在として、安全を損なう業態が生まれて』しまった-『ドリームスリーパーの開発コンセプトは「快眠」』、『移動すること自体を楽しんでいただこう』『世界で唯一のトータルな乗り物の価値を再発見していただこう』と開発責任者を担ったのは両備HDの松田敏之専務。『私が当初予想した以上のコンセプトと出来栄えで、以下の彼の思いを読んでいただくことが、最も開発の心が伝わるでしょう』ということでアツい想いが伝わってくる文面が掲載されています。情報では“水戸岡デザイン”ではなくなったとのことでしたが、松田氏の友人の某有名クリエイターが無償で総監修している由。『プロダクトデザインが、モノのデザイン。と言う概念は旧い。デザインとは、企業そのもの、ブランドそのものをかたち創る作業であり、文化をかたち創る作業でもある』と語っておられます。
『この世界で初めての五感による眠りとリラクゼーションを追求した移動空間の概念が、きっと乗り物の新しい感覚と価値を創造してくれる乗り物の革命になるでしょう』と自信を見せる小嶋代表、『そして、再生して6年目、幹部と乗務員の懸命な努力で、今では10万キロ当たりの有責事故率0.05レベルという日本一とも言える安全性を誇る中国バスの乗務員が、安全・安心な心地よいバスの旅で皆様を目的地までお送りします』と締めくくっています。

両備グループは西大寺鉄道を祖とし、2代目社長となった松田与三郎氏以後、松田家が創業家的立場にあります。壮三郎氏が西大寺鉄道の終焉を見届け、息子の基氏・堯氏兄弟が両輪となりグループを支え、基氏の娘婿である小嶋代表が今をときめく「地方公共交通の再生請負人」となっているわけですが、敏之氏は小嶋代表の次男で、基氏の養子に入っているんですね…実父同様銀行マンからの転身だとか。まだ33歳、お若い! ちなみにグループ現社長の松田久氏は堯氏の息子さんなんでしょうか。
ちなみに敏之氏は2008/05開設のグループ東京事務所所長を務めていましたが、確かにその後首都圏でのM&Aが活発化しており、ハロー・トーキョー(2008/12)、イースタンエアポートモータース(2011/05)、ニッコー観光バス(2012/04)と次々傘下に収め、羽田空港で社章をつけたクルマを見かけることも増えた気がしていますね…。

おっと話が逸れましたが、要は「DREAM SLEEPER」にはグループの威信が掛かっているといっても過言ではないと改めて感じた次第。であるならばこそ何故中国バスからだったのか。そして両備岡山系統への投入はあるのか。『このバスが完成できたのは、携わっていただいたメーカー様方の献身的なご協力があってのことと感謝しています』と云うところからも、ヒュンダイユニバースの更なる展開はあるのか-いやいや興味は尽きませんが、ではお前は乗るのかいと云われると…。

なぜ中国バスだったのか-それは「再生の証」

投稿者---551planning (2012/08/31(Fri) 20:48)

とのことです。

『過激な労使紛争で(中略)お客様からはストばかりして役に立たないバス会社』『「燃える高速バス」というキャンペーンをマスコミに貼られて、窮地に陥ったバス会社』だった中国バス。両備傘下となって『全国でもトップクラスの安全なバス会社』となったとはいえ『まだ自信と誇りを取り戻すまでに至っていません。そこで、その再生の証として、この夢のあるバスの開発をプレゼントしたかったのです。世界一のバスを開発し、運行できる会社になったんだという自信と誇りを取り戻させたかったのです。』
『開発責任者の松田専務自らがお客様とご一緒して、お客様の本音の声をたくさん聞いてくることが出来ました。その声を更に高速乗合バスの運行に活かして、世界一の高速乗合バスを目指します』との由ですが、やはり戦略性というか路線ニーズとしてはどうなのかという点が気になるところ…その未来については初便乗車のこちらにて一端でも熱く語って頂けようかと思っております。

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イルカ交通は「和(なごみ)」から「雅(みやび)」へ。

投稿者---551planning (2012/08/23(Thu) 20:18)

東海北陸道全通直前の2008/04から高岡~名古屋間「きときとライナー」で高速乗合バスに参入したイルカ交通。2クラス制で望むなど意欲的な姿は【検証:】でもリポートしていますが、2010/04からは金沢・富山~東京間で「ドルフィンライナー」を開始、こちらは夜行便で高速ツアーバスでの運行に。当初は4列車で隔日運行となっていたのを、2011/04から4列のうち片方の座席を交互配置として縦10列20席設定とした独特なスタイルの和(なごみ)シート車両を追加投入していました。
同社では車両後部に大型化粧室を設置していることもあり、個室感覚を打ち出した「和」はシートピッチに難あり…との話も聞かれていたのですが、このたび09/07から2×6列12席設定の「雅」に変更することを発表-端的に云えば、海部観光マイ・フローラに類似したタイプとなります。

「和」はネット予約で9000円、電話予約だと8500円とコレも独特な料金設定だったところ、「雅」は現時点で電話予約のみ11000円。ただし催行日は現時点で9月のみの発表、金沢・富山発が月・金、東京発が火・土という週2往復のみの設定となっているのは注意が必要かと。


ご意見は【検証:】常設板までお気軽に!

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