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【検証:近未来交通地図】Special027-2 ゆいレール4つの視点 (2003/11/12 09:12:40)
下記内容は予告なしに変更することがありますので、予め御了承下さい。 |
既に管理人様からも備忘録がアップされているところですが、私も拙「志学館」に下記の一文をアップしました。どうか御笑覧のうえ、また皆様の参考の一助となれば幸いです。
以久科鉄道志学館 軌道系交通の最先端〜〜ゆいレール http://www.geocities.jp/exyna_institute/ue/00.html |
2003・11ゆいレール&那覇都市交通調査オフ備忘録 ../report/048.html
その1 「街のランドマーク」
■なめらかな外観
ゆいレールの魅力は、なんといってもなめらかな外観にある。特に前面形状のやわらかさは秀逸で、見る者の目をなごませる安心感がある。例えば、鋭角的なデザインを多用して力強さや近代性をイメージさせる多摩モノレールの方向性と比べ、ゆいレールのあたたかみは好対照というべきであろう。両者のデザインに優劣があるわけではないが、いわゆるポスト・モダン、近代性のさらに先にあるものを追求したゆいレールのデザインは、むしろ野心的と評するに値し、それゆえかえって斬新さが伴っている。敢えてはやりの単語を使うならば、サステナブル<持続可能で安定的>なデザインといえよう。
那覇空港−赤嶺間にて |
柴崎体育館にて |
ちなみに、参考文献によれば、車両デザインのキーワードは「優・涼・景・清・軽」の5つだという。
優:強い日差しに映える色彩を用い、乗客に対する明快なサイン性(情報伝達を持たせるデザイン) 涼:亜熱帯の日差しを緩和し、涼しさをつくりだすデザイン 景:モノレール特有なパノラミックにうつろう市内の景観を取り入れ、室内に開放感をつくりだすデザイン 清:雨の多い土地柄ならではの清掃性を配慮したシンプルでクリーンなデザイン 軽:太陽の日差しがつくりだす陰影や色彩により圧迫感や威圧感を軽減するスマートなデザイン
モノレール第105号(平成15(2003)年10月)『沖縄都市モノレール開業』より |
沖縄といえばあらゆる場所に「シーサー」を置いて鎮守となす風習があり、ゆいレールにおいてもその例外ではない。各駅に鎮座しているシーサーにはやさしげな安心感がある。ここで発想を転換して、シーサーを車両にもあしらえないものだろうか。できればFRPの隈取りをつけたいところ、少なくとも塗色でシーサーを表現したい。例えば、右の写真のように・・・・・・。この造形ではシーサーというよりもむしろブタさんではないか、という説もないわけではないが、まあ細かなことは気にしないでおいて頂ければ幸いである。
沖縄みやげの「シーサー・キティちゃん」
■まちのランドマーク
モノレールの特徴は(特殊な例外区間を除き)必ず高架軌道となり、良くも悪くも街並を睥睨する交通機関になる点にある。そのため、軌道や車両が不細工なつくりだと、街の風景を破壊することにもつながりかねない。その点、ゆいレールの造作は街によく馴染み、融けこんでいる。奥武山公園−壺川間にて
下の写真は首里城から見晴らしたものだが、急勾配を上り下りするゆいレールは、街の風景のほどよいアクセントになっている。この写真では、背後の鉄塔の方がうるさいほどだ。
高高架区間もあることから、ゆいレールから見渡す街の風景も実に佳い。特に首里から急勾配で下っていく箇所は、遠く海まで遠望でき、思わず溜息が出るような絶景である。
儀保−首里間にて
その2 「軌道系交通空白地帯でのインパクト」
■バスから一足飛びに遂げた進化
沖縄の公共交通機関といえば、今まではバスしかなかった。このバスが途方もない存在で、時代がかった老朽車、奇妙奇天烈な改造車がゴロゴロしている。特に目についたのは、中扉・後扉を埋め扉前には椅子を置いた改造車である。これは前扉のみで客扱いすることに伴う改造と見受けられ、即ち沖縄のバスは中長距離便が多く、拠点停留所以外では乗降が少ないとが理解できるのである。
バス路線がまたわかりにくい。4社併存というだけでもよそ者は困惑するし、系統設定はごく複雑、しかも行先表示が盛り沢山で内容をすぐには把握しにくい。「食わず嫌い」ではいけないと知りながら、ついに利用する気にはなれなかった。
那覇バスターミナルから旭橋駅を臨む
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■蓋を開ければ商売繁盛
これら不安は、すべて杞憂だったとしてもよいだろう。8月の開業以来、ゆいレールは概ね大入り満員が続いており、順調すぎるほど順調に利用者数を稼いでいる。筆者が最初に乗ったのは金曜の深夜、那覇空港23時過ぎの出発で、さすがにこの時間では飛行機から乗り継いでくる利用者は少数だった。しかし、途中駅からの乗車がちらほらとあり、中心部では立客まで出たのには驚いた。宿泊先最寄りの美栄橋で降りれば、あたりの雰囲気はまごうことなく「夜の街」。ハロウインの仮装をした若者を多数見かけるなど、この時間でも需要は相応にあるものと見受けた。
次いで乗った日は三連休の中日にあたり、また首里城祭など多くのイベントが催されている特需日であったかもしれない。それにしても需要は底堅くあると見てよく、那覇空港をガラガラで出発した列車でも、途中駅からの利用者が累積し、中心部ではラッシュなみの混雑を呈していた。写真で見ると混雑率換算で100%そこそこというところだが、実乗している際にはかなり混んでいるように感じた。通勤客はともかくとして、一般客は詰めこみをきらうから、混雑の許容限度はまずこれくらいだろうか。
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この日の夕刻ピーク時には積み残しも見られた。季節・曜日・時間による波動は大きいにせよ、あるいはイベント開催に影響を受ける面はあるにせよ、人口密度が高い住宅地と那覇市中心部を結ぶロケーションは絶妙なほど手堅いと評するべきであろう。導入空間がないため国際通りこそはずれているものの、現在のルートでも充分に需要を押さえている。近年の軌道系交通では稀な、大成功事例といえる。
惜しまれるのはシートの造作であろう。2両編成で混雑に対応するため、ロングシートの採用はやむをえない。堅めのクッションも、乗車時間が短いことを考えれば、まず妥当ではある。しかしながら、背もたれが低く、しかも連続していないのは如何なものか。特に「谷間」にはまってしまうと、背中を支える背もたれがなく、居心地悪いことこのうえないのである。
その3 「最先端をいくバリアフリー対策」
■まずは実見から
いわゆる交通バリアフリー法により、軌道系交通機関ではエレベーター等バリアフリー対策が義務づけられた。同法以前に開業した路線では、充分な空間を確保できないため、バリアフリー対策を採ろうにもままならないところが少なからずある。ここで、新規開業路線ではその手のいいわけは通用しない。さてさて、ゆいレールの場合はどうだろうか。筆者が乗車した列車には、偶然ながら車椅子での利用者が2名同乗しており、乗降の際にはホームからスロープがせり上がり、特段の介助なしで自力移動しておられた。同種の設備は、例えば多摩モノレールなどに先行事例があるものの、実際に使われているところを見ると、やはり訴求力がある。ちなみに、この日最大の障害はどうやら「混雑」だったらしく、狭く混んでいるホームを移動しエレベーターに辿り着くまで時間をとられていたようだ。
首里にて |
市立病院前にて |
■さりげない円み
筆者が一番感心したバリアフリー対策は上の写真である。
誘導ブロックといえばギコシャコ直角に折れるものとの先入観があったが、ゆいレールはそんな常識を軽々と打破してくれた。円弧状の誘導ブロック導入は全国的にも珍しく、軌道系交通機関ではおそらく初めてではないか。汎用品とは異なる特殊材料を使うため、材料調達にも施工にもコストを要する措置だが、それゆえバリアフリー対策にかける強い意気ごみを感じとれる。
ゆいレールは円く、そしてやさしい。■史上初の病院直結
もう一つ驚いたのは、市民病院前駅の改札を出ると、ほぼ同じレベルの通路を移動するだけで、市民病院の1階受付に行けるということだった。
モノレールのみならず、あらゆる軌道系交通機関を通じて、病院直結というのは稀有な事例であろう。バスであれば病院の車寄せに入りこむ芸当もできようが、軌道系交通機関では構造設計段階からの配慮が要る。ゆいレールは、それを成し遂げた。
市立病院前にて |
市立病院前の案内図 |
これは斜面上に立地する病院だからこそできたことで、例えば改札階が病棟階にじかにつながるのでは具合が悪いだろうから、単純な応用は難しい。しかしながら、今後の参考に資する先駆的な事例であることは間違いない。
Re:史上初の病院直結
御教示ありがとうございました
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その4 「発展を抑えかねない容量不足」
■どこまで伸びるかゆいレール
まずは右の写真を御覧頂きたい。首里にて
過走余裕の引上線であるならば、軌道桁に曲率がつくことはあっても、複線の軌道中心は直線状でなければおかしい。ところが、首里北方のそれは急なカントがついたカーブになっているのだから、実にあやしいといわざるをえない。おそらくこれは、左手の道路上を延伸する意図を蔵した構造と見て、まず間違いなかろう。
延伸計画を持つことじたいはいい。既開業区間が盛況であるように、相応数の利用者がつくであろう。そもそも、路線延伸せずとも需要が定着し、さらに伸びていく可能性をも指摘できる。ほんとうに需要が伸びるならば慶賀すべきところだが、ここでは既開業区間の容量が追いつかない懸念を敢えて呈しておきたい。ゆいレールは現在2両編成、各駅の構造からして3両編成までの増結は容易にできそうだが(ただしホーム可動柵の増設が必要)、4両編成以上になると厳しそうだ。
軌道系交通機関の特徴を、少ない労働力で多数の利用者を運ぶ点に見出すならば、最大でも3両編成という輸送単位はいかにも小さいといわなければなるまい。ホーム長を4両編成対応にしておけば、2両編成を2本つなげる芸当ができたのだから、惜しまれてならない。那覇空港にて
現状では朝ラッシュ時でも最短6分間隔での運行と、増発の余地はまだあるとしても、輸送力が小さい列車の増発はコスト増要因でもあり、あまり面白くない。また、左の写真のとおり、那覇空港にはX分岐が介在しているから、運行間隔が制約されることも忘れてはならないだろう。
大きく成長する可能性を秘めているというのに、容量不足が成長を抑え阻害しかねない。ゆいレールの弱点を指摘するならば、まさにこの点につきるだろう。■容量不足は苦難の道の証
しかしながら、不足気味の容量しか供給できていないのには、なんらかの理由があると考えるべきであろう。参考文献には次の記述があり、需要予測の変遷という観点ではたいへん興味深い。
・・・・・・(前略)
沖縄都市モノレールは、当初の特許申請から特許取得までに14ヶ年という歳月を要した。この期間は、国、県、市、モノレール会社、地元経済界、地元住民がこのプロジェクトを「収支償い得るプロジェクト」とするための苦悩の年月であったと言えなくもない。
モノレール第105号(平成15(2003)年10月)『沖縄都市モノレール開業』より「沖縄都市モノレールの開業と今後」(三由武英) |
各時点での需要予測結果が公刊・公表されているという意味において貴重な資料であると同時に、小さな輸送単位しか供給されていない理由が透けて見えてくる資料でもある。収支償わせるためには最大でも3両編成しか運行できず、しかしそれでは容量不足に陥るという、二律背反の命題がここには示されている。
ところで、3万1千人/日という需要予測を一日あたり列車数(202本)で割り戻してみると、約150人となることに注意しなければならない。この150人とは、一列車あたり座席定員65人をはるかに上回り、立席を含む列車定員165人に匹敵する。途中駅での入れ替わりがある一方、需要に波動があることを考慮すれば、相当数の列車が定員一杯ないしはそれ以上の混雑になると、最初から予想されているわけだ。
即ちこれは、恒常的な混雑を前提しなければ、軌道系交通機関の経営は成立しないことの証左でもある。積み残しは確かに「瞬間最大風速」かもしれないが、それほどの混雑がなければ経営が成立しないというならば、むしろその環境または構造にこそ検証の目を向けなければならないだろう。まして、インフラ補助がなされており、ゆいレールは車両など運行にかかる部分の初期投資しかしていないのだから。<了>
ゆいレール4つの視点−−その4補遺「開業半年後の状況」
平成12年2月4日 琉球銀行調査部 特集:県内観光の動向について
利用状況から見えるスペック不足懸念
沖縄総合事務局南部国道事務所HP ゆいレールの利用状況
モノレール半年 利用回復へバス接続急げ(02/10沖縄タイムス)http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20040210.html#no_2
その4さらに補遺
その4補遺のさらにフォロー 都市モノレール2月も予測割れ/4カ月連続(03/01沖縄タイムス)http://www.okinawatimes.co.jp/day/200403011700.html#bottom
Re:その4補遺のさらにフォロー
<ゆいレール>1日平均3万1076人(04/03琉球新報)http://www.ryukyushimpo.co.jp/news01/2004/2004_04/040403o.html
2004の強気の予想は当然
売り場面積グループ最大/DFS免税店 売上見込み額100億円超(2003/12/13沖縄タイムス)http://www.okinawatimes.co.jp/day/200312131300.html#no_4
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2007.01.28 Update | ||
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