【検証:】過去ログSpecial

【検証:近未来交通地図】Special013
鉄道におけるユニバーサルサービスの崩壊と再生(1)
(2002/10/27〜)

 本投稿は、【検証:】掲示板でもお馴染みの、さいたま市民@西浦和様より当BBSに御投稿頂きました文章を中心に、読みやすく構成させて頂いたものです(なお一部文面を編集しております)。
 なお、【検証:】では掲示板投稿に限らず広く皆様からの御意見・レポート等を御紹介致します。自分ではホームページを持っていないけれど、意見が結構纏まっている…という貴方、各種ご相談に応じますのでお気軽に管理人までどうぞ!

下記内容は予告なしに変更することがありますので、予め御了承下さい。
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運賃論再び (「速達料金」の存在意義を問う) ../log085.html#22

Re:運賃論再び
 投稿者---Light Rail氏(2002/10/25 00:50:19)

 はじめまして。
 的外れな投稿ですがご容赦のほどを。

 ヨーロッパでは優等列車と地域間の快速・普通列車の類では運賃は同じ、と聞いたことがありますが、利用者はどのような感覚を持って乗っているのでしょうかね?特にスイスでは国内特急では運賃以外の特別料金は取られないで乗車可能ということです。
 100km程度の移動であれば、当然、普通・快速の類に乗ると思いますが、‘料金同じ・速い’となれば日本人の感覚からすればまず特急に足が向くのではないでしょうか?
 昨今のJRでは、ご丁寧に50〜100km程度の特急料金を値下げしてくれていますが、これとて「なるべく利幅の高い特急に乗ってもらおう」という意図がミエミエという感じです。

 上記の新快速の敦賀直通もそうですが、昨今のJR九州の福岡近郊輸送についても、地域間快速よりも特急偏重になっている気がします。

 第1講 (2002/10/27 22:22:53)

 みなさん、Light railさん、こんばんわ。

 はじめまして。
 的外れな投稿ですがご容赦のほどを。

 とんでもありません。私もこのことはどこかで話をしたいと思っておりました。

 ヨーロッパの特別料金

 ヨーロッパでは優等列車と地域間の快速・普通列車の類では運賃は同じ、と聞いたことがありますが、利用者はどのような感覚を持って乗っているのでしょうかね?特にスイスでは国内特急では運賃以外の特別料金は取られないで乗車可能ということです。

 手元の「地球の歩き方」によりますと、ヨーロッパ主要国の鉄道で特別料金(座席指定料金)を徴収するものは、各国の超高速列車では

フランス〜ベルギー〜オランダのTGV
スペインのAVE
ドイツのICEとIC/EC、メトロポリタン特急
ユーロスター(イギリス区間含む)
ユーロスターイタリア

 各国間の夜行列車では

ドイツ国内とウィーンへのCNL
スペイン〜フランス・イタリアの夜行タルゴ

があるようですね。
 かの地では超高速列車や特別寝台列車に特別料金が設定されており、ポイントツゥーポイントの列車は日本の夜行バスのような均一料金に近い設定です。これは航空との競争関係もあるかと思われます。また、この特別料金は、座席指定料金に特急料金が含まれているようなもので、TGVなどではこの料金が20フランですから日本円にして400円程度ですか。さすがに消費税20%の国です。ご指摘のスイスはICEもTGVもユーロスターイタリアも乗り入れますが、国内では特別料金なしです。観光振興の意味もあるのでしょう。また、イギリスのHSTや、大陸のかつての国際急行列車など(列車番号にDがつくような直行列車)は普通運賃で乗れるのです。
 ヨーロッパ諸国は鉄道交通に対する考え方が根本的に違うのです。ただ、超高速鉄道や列車は別料金という日本的発想も出てきているのですね。

 アメリカでは、近郊路線や地下鉄、軽鉄道と長距離(Amtrakですね)は別会社ですから、路線ごとに違う運賃制度です。ニューヨークとワシントンの間でも、超特急Acela Express、特急MetroLiner、直通快速Northeast directと運賃が違います。停車駅間ごとに決められているような運賃制度です。

 新快速と新特急

 100km程度の移動であれば、当然、普通・快速の類に乗ると思いますが、‘料金同じ・速い’となれば日本人の感覚からすればまず特急に足が向くのではないでしょうか?
 昨今のJRでは、ご丁寧に50〜100km程度の特急料金を値下げしてくれていますが、これとて「なるべく利幅の高い特急に乗ってもらおう」という意図がミエミエという感じです。

 JR分割前後の頃を思い出してみますと、JR-Eは急行型電車による列車網が張り巡らされていた北関東100km圏に、「新幹線リレー号」に用いられていた185系(当時「窓の開く特急電車」と揶揄された=もちろん急行型の後継車両)の「新特急」なる列車種別を設け、始め50kmまでの料金を割引き、後には183系の走り回る房総半島などを含めB特急料金という形で、アコモデーションのインフレで起こる「急行」と「特急」の間のカテゴリーを埋めようとしたのでしたね。
 一方JR-Wは、もともとこれも東海道山陽線の急行型電車の流用で運行されていた「新快速」を都市間直行サービスの並行私鉄への戦略的基幹列車として位置づける事となったのでした。私は当時185系も117系も転換クロスシートでしたから、「何で違うかなあ」などと思ったものでした。21世紀に近づき、185系は回転リクライニングシートにイスが換えられ、117系は223系に交代し、全く違うカテゴリーの列車種別になったわけで、これも西と東での鉄道商売に対する考え方の違いなのかもしれませんね。

◆ 若狭新快速と九州特急網

 上記の新快速の敦賀直通もそうですが、昨今のJR九州の福岡近郊輸送についても、地域間快速よりも特急偏重になっている気がします。

 敦賀や小浜へ新快速を延長するというのは、福井県でありながら近畿圏と一体化したいという若狭地方の人たちの気持ちなのだろうなと思います。「新快速」というブランドは、十分「近畿圏の範囲」を表すものとなっているのでしょう。播州赤穂から近江今津まで京大阪神戸へ特別料金なしで1時間半で行けるという価値を享受している地域があって、これに入りたい地域はまだあるでしょう。草津線沿線とか、智頭急行沿線とか…。岡山がどうかは私にはわからないのですが。
 九州の特急網と快速網の関係は、割引切符の林立で混乱が生じているのではないでしょうか。本来快速のカテゴリーとなる福岡100km圏について、久留米大牟田を除いてはバスとの競争が厳しいのでしょう。JR特急電車は頻繁に福岡へ向かうのでしょうが、むしろ180km圏からの乗客を意識しているダイヤや車内設備なのですね。100km圏でも電車を選ぶお客さんに特急料金を払ってもらって、スピードというサービスを供給するという私の解釈です。

 ユニバーサルサービス論はまだ続きそうですね。
 乱筆ご容赦。

Re:鉄道におけるユニバーサルサービスの崩壊と再生
 投稿者---かまにし氏(2002/10/28 23:46:24)

 こんばんは、かまにしです。

 九州特急網についてさいたま市民@西浦和さんが書かれていましたが、私は特急網と割引切符の関係に見られるように、ベースとなる運賃があって、競争の激しい区間については別途、割引切符によって価格訴求していくという方式でも良いのではないかと思います。この方が、特定区間のディスカウントをより強いインパクトで訴求できるような上に、これでも十分、企画切符の値段が特定の都市間輸送のデファクトスタンダード的な運賃として認識されていきます。

 また、都会と地方の運賃賃率格差はこれまでも「山手線内」「電車特定区間」「幹線」「地方交通線」とあるわけで、これらの賃率を見直していくということは必要であっても、「A駅からB駅まで何に乗っても同じ運賃」である必要性はそれほど感じないのです。

 さらに鉄道の場合、「A駅からB駅」までの乗車において、同じ特急列車であってもアコモの格差が大きい路線も多いです。例えば、JR東日本の東海道線のなんかも「踊り子」と「スーパービュー踊り子」とで、アコモの違いを理由に料金に格差をつけています。そして、実際にアコモの良し悪しで料金に格差をつけるという考え方自体も、容認されているように思うのです。

 したがって、競争の激化によっててこ入れをする都市間輸送などについては、従来のように企画切符などによって特急料金を含めた形でディスカウントをし、それ以外の区間については必要に応じて運賃賃率を柔軟に変えていけばよいのではないか、という認識です。日本の場合、都市内交通としての鉄道の分担率も高いため、この方が混乱が少ないように考えました。いかがでしょうか?

 第2講 (2002/10/30 01:34:56)

 こんばんわ。かまにしさん。皆さん。
 この話はかまにしさんとすることになりそうですね。話が飛び散ってしまうかもしれませんがおつき合いください。

◆ 割引切符の功罪

 九州特急網について…私は特急網と割引切符の関係に見られるように、ベースとなる運賃があって、競争の激しい区間については別途、割引切符によって価格訴求していくという方式でも良いのではないか…ディスカウントをより強いインパクトで訴求できる…企画切符の値段が特定の都市間輸送のデファクトスタンダード的な運賃として認識されていきます。

 JR九州や京成などの私鉄では、いろいろな回数券があるのですね。条件さえ揃えば、結構電車に安く乗れるわけです。
 この揃うべき条件というのがなかなかくせ者で、この設定を誤ると、鉄道の旅客輸送そのものの信頼を失うことになりそうです。どういうお客さんを割り引き運賃で乗せるのか、どういうお客さんが割り引き運賃で乗りたいのかという点ですね。私は、近年のJRグループは、割引切符の整理でずいぶんお客が逃げてしまったのではないかとも思っているのです。それが実質的な値上げになってしまっているという現象もずいぶん見ているような気がするからです。ただ、JRグループは幸か不幸か、国鉄時代の運賃制度を守っている部分がありますから、ユニバーサルサービスは維持されているといっていいでしょう。これを毎年再確認してくれているのが18きっぷユーザーでしょう。
 最近の割引切符の設定の傾向は、地点間の戦略的な運賃競争と言えそうですね。都市中心駅相互間の企画商品(対高速バス、対航空機)が地点間運賃のデファクトスタンダードとなっている現実があります。これに、各地の金券ショップが更に割り引き販売をしますから、同じ特急電車の隣同士の人の払っている運賃が雲泥の差になってしまっていることもありそうですね。国際線航空機では珍しくはないのでしょうけれども…。
 国鉄時代末期に設定された、並行私鉄に対抗する特定運賃区間は、線的に割り引き運賃を制度化したものですが、並行私鉄のある区間しか設定されませんから、京浜京葉多摩中京京阪神のようなJRと私鉄の並行路線がない私たちの埼玉県などでは、「逆に割高な鉄道運賃は都市圏の均衡ある開発上問題がある」と県議会で話題にされる程です。
 あまり突き詰めると、電車の運賃はどう決めたらいいのかという神学論争になってしまいそうなので、この辺にしておきますが、ある答えは私なりに用意しています。それは本稿の最後でお話しすることとしましょう。

◆ 幹線とフィーダー、基本サービスと速達サービスと付加価値サービス

 また、都会と地方の運賃賃率格差はこれまでも…とあるわけで、これらの賃率を見直していくということは必要であっても、「…何に乗っても同じ運賃」である必要性はそれほど感じないのです。
…同じ特急列車であってもアコモの格差が大きい路線も多い…「踊り子」と「スーパービュー踊り子」とで、アコモの違いを理由に料金に格差をつけています。そして、実際にアコモの良し悪しで料金に格差をつけるという考え方自体も、容認されているように思うのです。

 私は、賃率の段階は、沿線の人口密度で分けたらいいのではないかと思っているのです。もちろん内部補充の上です。年間でも累積でも数億円の赤字のために年商数千億円の企業がその部門を切るという前に、その赤字を埋める方策を完璧にしたのか、これはきちんと検証しなければなりません。必要があるのなら、地域に住む、電車に乗らない人からもお金をもらって維持しなければならない場合もあるでしょう。電車は公共施設です。従って、ベーシックなサービス、付加価値のあるサービスというカテゴリーから始めて、サービスの量や質を積み重ねることでニーズに応える用にすればいいのではないかと思うのです。

ベーシックなサービス=普通運賃
付加価値サービス=普通運賃+特別料金

の2通りから始めるわけです。

 ベーシックサービスにも速達サービスがあっていいわけで、これは「新快速」サービスや「アーバン」「ラピッド」「アクティー」とかになるわけです。
 逆に非速達サービスに付加価値サービスもあっていいわけで、これは「横須賀総武、東海道線のグリーン車」がいい例ですね。

 ここまででベーシック+非速達(普通電車)・ベーシック+速達(「新快速」)・付加価値+非速達(普通電車のグリーン車)・付加価値+速達(いわゆる特急電車)の4通りの組み合わせが出来ました。更に分けるとしたら特急電車のグリーン車と普通車という組み合わせでしょうか。
 極端な例かもしれませんが、東海道線などは普通電車〜快速電車〜踊り子号〜ビュー踊り子号というカテゴリーの分類にそれぞれ普通車とグリーン車がありますから、都合8通りの細分化ということになるのでしょうか?

 今夜はここまでにしましょう。先ほどのお約束は次項で。乱筆ご容赦。

 第3講 (2002/10/31 01:08:11)

 こんばんわ。かまにしさん。皆さん。

◆ 九州特急網と割引切符

 時刻表を見ましたら、九州で売り出されていて、全国大判時刻表に書かれている割引切符は、「2枚きっぷ」と「4枚きっぷ」というブランドのものでしたね。福岡博多を中心として、佐賀や小倉などといった都市への割引切符です。博多から佐賀へ普通に特急電車で買うと片道2500円かかるものを、「2枚きっぷ」回数券では1回券2枚で2000円となるのです。これは、博多佐賀高速バスの「1000円バス」と同じ値段になるよう設定されていることが明白です。これは採算とか賃率とかいう問題ではもう、ないでしょう?

◆ 日本と諸外国の都市の形態と都市内交通

…競争の激化によって…都市間輸送などについて…企画切符などによって特急料金を含めた形でディスカウントをし、それ以外の区間…運賃賃率を柔軟に変えていけばよいのではないか…日本の場合、都市内交通としての鉄道の分担率も高いため、この方が混乱が少ないように考えました。いかがでしょうか?

 実は、日本の都市の形態と、諸外国特にヨーロッパのそれとは大きく違うのです。日本の都市圏では、30km圏なら30km圏、50km圏なら50km圏地形条件が同じならほぼ均等に人口密度があると言っていいのですが、欧米では都市の形態が半径数キロの中心部に集中する形ですから、日本のような郊外鉄道で都心へ向かうという生活スタイルが成り立たない都市が多いのです。
 特にフランスのパリ以外の都市やドイツなどでは小都市がほぼ均等な間隔で立地し、都市内の密度と都市外の地域の密度がはっきりちがっていますから、十数キロ以上利用するような幹線鉄道旅客は「隣町へ行く」ような利用の仕方なのです。
 ですから、ヨーロッパの小都市に路面電車などが発達するのは、都市内の移動のための手段だからなのです。かの地で「各駅停車」列車に乗ってみるとわかりますが、駅間が日本より結構長い(日本なら北海道のような)ということを体験できます。このような地理的な違いというのがなかなかピンとこないですよね。
 日本の鉄道は、都市圏間を結ぶ幹線でありながら都市圏内交通も分担していることが様々な矛盾を巻き起こしていると言えそうです。

◆ 幹線とフィーダー、基本サービスと速達サービスと付加価値サービス(その2)

 前講で、賃率設定の基準として「人口密度」がひとつの目安になるのでは?と書いたのですが、これは福井や青森岩手のことを思い出したからなのです。
 京福福井の3線やJR東北本線が一旦廃止され、第3セクターに移行するという、どこかで見たような再建スキームで運行を再開するというわけですが、これはわかりやすい例となりそうです。

私鉄(元国鉄)として長らく運行されてきた鉄道が行き詰まり(見捨てられ?)、廃止される。
 →鉄道運行継続を求める地域の行政などの意見がある。
 →私鉄は主たる資本拠出をしない。
 →行政が経営の肩代わりして第3セクターを立ち上げ、運行を再開。
 →この資本は公共・地域企業・その他の出資でまかなう。
 →この出資割合は、押しつけ合いながらも公共が最大出資者となる。

 ただ、福井はフィーダー輸送路線ですが、青森岩手は幹線を引き受けるという違いがあるのです。長野でも同じような例がありましたが、これは、結果としてフィーダーになってしまった路線の運営ですから、福井に近いかもしれません。

 少しづつですが、まだ言いたいことがあります。でも今夜はこのへんで。
 乱筆ご容赦。

 第4講 (2002/11/02 01:03:53)

 こんばんわ。皆さん。かまにしさん。いろんな話をしてみます。議論対論の材料にしてください。

◆ 幹線とフィーダー、基本サービスと速達サービスと付加価値サービス(その2=つづき)

 福井と青森岩手長野を例に出しましたが、結果として、「交通の再公共化」に他なりません。
 福井の場合は京福電鉄という典型的な私鉄による運営の路線だったわけで、京都と福井にある企業の内部がどういう風になっていたか私は知りませんが、鉄道だけの収入や利益で運営していたわけではないでしょう。
 鉄道という交通機関の運営で利益をあげられたのは、まさに大正時代までで、京福電鉄も京都や福井での電灯電力販売が重要な副業だったのでしょう。
 戦後、鉄道会社の副業の業態が変化してきた中で、電力販売から不動産や流通業などへの展開があったのは、全国の鉄道会社すべてが行ってきた企業としての利益の追求として当たり前のことだったでしょう。鉄道輸送運営が企業全体で占める割合は時代と共に小さくなってきたといえるでしょう。この30年は、それが割合だけでなく絶対値も小さくなったのが地方の鉄道の現実ではなかったでしょうか。

 国鉄の方は、1980年代に入って、どういうわけか、国鉄の収支のうち、公的負担の部分だけが「赤字」と称され、これを遡って通算し何十兆円とか言われるようになったのでは?副業の展開に制限があり、非採算の政治路線を抱えていた国鉄は、収支のうち私鉄が副業で補えた部分を公的負担で補っていたはずなのに、これを「累積赤字」として政治側から労使関係のこじれ共々経営の不備として責められる事となったのでしたね。これらを捨て、新会社を設立すれば、超巨大優良企業が誕生するのは今のどこかの公団や国営事業同様予想されていたことでした。副業の解禁や株式上場による企業や投資家の利益も織り込まれ、JRは誕生したのですね。
 始め特殊法人であったJR-Eも、今年完全民営化され、すべての発行株式が市場へ放出されることとなって、ますます利益の拡大を目指すことになるのでしょう。

 その時に、資本の論理と住民の論理の妥協点として、人口密度の低い地域の路線を分社化し、第3セクターとして地方公共団体の資金を導入させて維持する方策を採ったというわけです。もともと「国有鉄道」として建設された路線ですし、まあ、考えてみれば国から地方へ一旦特殊法人を経由したとはいえ鉄道線路という土地と財産が委譲されたと言うことになるでしょうか。
 私が子どもの頃、国鉄の路線で黒字なのは、東海道新幹線と山手線と高崎線と総武線だけだということを聞いたことがあります。1970年代の話です。人口密度や利用客数の増減を考えたら、現在でも経営努力で黒字路線は増えているかもしれませんが、路線ごとの収支で収益のあがる路線は新幹線と首都圏だけとなるのではないでしょうか。ですから、本当は、JRは収益のあがらない路線を全部分社化して、公的資金で補ってほしいと考えているのではないかとも思えてくるのです。それが長野しなの鉄道であり、青森青い森鉄道であり、岩手銀河鉄道であると言えるでしょう。

 いろいろ言いたいことがあるので、ゆっくりと考えながら書かせてください。今夜はこのへんで。乱筆ご容赦。

Re:鉄道におけるユニバーサルサービスの崩壊と再生
 投稿者---かまにし氏(2002/11/04 23:03:17)

 こんばんわ。かまにしです。僕の方からも少しずつ返信をつけていきたいと思います。

割引切符の功罪

 正規運賃は別にあるけれども、割引切符が実質的な「運賃」となっているのは、まさに航空業界における「特割」があります。航空業界は正規運賃を基本としつつも、需要の大きく他社との(新幹線などの他の交通モードも含む)競争が激しい区間では、「特割」等によって正規運賃をディスカウントしています。九州特急網を活かした特急料金込みの「2枚きっぷ」「4枚きっぷ」は、まさに航空業界の「特割」を鉄道業界で大々的にやってしまった先例ではないかと思えます。また、これと同じような切符がJR北海道の都市間輸送でもありますよね。

 これらの施策をどう評価するかは見方によって異なるとは思いますが、個人的には利用者にとって分かりやすい上手ごろな値段で利用でき、また鉄道会社にとっても往復利用で自社への囲い込みができるので、相思相愛の関係が成り立っているのではないかと考えます。またこれらを突き詰めていけば、自然と特定の区間における実質的な運賃は形成されていくだろうと思います。したがって、やはり改めて運賃を再構築しなければならない必要性を、私はあまり感じません。

 先日の投稿で「割引切符が存在するから、改めて運賃を再構築する必要をあまり感じない」と発言してしまいました。これは、僕が真に言いたかったことは「運賃の再構築の必要はあるかもしれないが、現状で自分はその必要性を感じていない」という趣旨ですので、改めて訂正させていただきます。(かまにし)

 ただし鉄道業界の場合、私は以下の懸念を抱いております。航空業界の場合、需要が大きいが距離の遠い場所と、需要は小さいが距離が若干近い場合では、前者の方が運賃は安くなることも多いです。ただ空路の場合は、空港の立地条件や航路、さらには需要の大きさそのものによって、両空港間の直線距離が近い場合でも、輸送コストは同じぐらい、あるいは高くなることもあるので、実距離と運賃が逆転してしまうことも考えられるかもしれません。

 しかし鉄道に関しては、のぞみの新大阪〜小倉駅までの輸送コストが、新大阪〜博多駅までの輸送コストに比べて高いということは絶対にありません。ですから、完全に航空業界と同じような「需要が多く競争が激しい区間での割引合戦」と「需要が小さい区間での寡占」という図式には直感的に考えにくいのではないかと考える部分もあります。

 また、「需要が多く競争が激しい区間での割引合戦」と「需要が小さい区間での寡占」という現在の航空業界に見られる図式を、鉄道業界でも起こす可能性があります。相対的に需要の小さい地方間の路線や需要の大きい空港が隣接している路線はディスカウントされにくいので、割引の恩恵を享受できる需要の大きい空港に利用者が流れるといった現象です。

 これを鉄道業界にあてはめれば、地方都市において近所の小駅を使うのではなく、新幹線や特急の停まる駅まで自動車ででかけるといった図式になりますが、日本の都市は分散化傾向にあるため、こういう状況が起きれば短距離での自動車への依存傾向はさらに強まる結果になるような気がします。もちろん、中長距離で鉄道の競争力が高まればいいという考え方もできると思いますが、短距離で自動車の依存傾向が高まることが望ましいとも思えません(このあたりから以前からの議論の繰り返しになってしまいますね・・・)。

幹線とフィーダー、基本サービスと速達サービスと付加価値サービス

 おそらく今後、鉄道業界においてもある程度の需要があって競争の激しい区間では、さまざまな交通手段の選択肢と割引オプションが用意され、一方で需要が乏しい区間ではさいたまさんがおっしゃっていられるように「交通の再公共化」という流れになっていくのだと思います。

 ただ、さいたまさんがおっしゃっている「幹線とフィーダー、基本サービスと速達サービス、付加価値サービス」という分類は、あくまで結果であり事後的に決まるものではないかという気がします。地方では短距離でも本数の多い特急を利用するように、特急自体が基本サービスをも肩代わりしている部分が見受けられるようです。そうすると、やはり上記のカテゴリーの境界線を無理やり引っぱるのは少し違うのではないかと感じてしまいます。

 鉄道会社の経営が、実質的に「副業」によって成り立っていたという視点は、「言われてみれば・・・」とは思うものの、自分も見落としがちな部分でした。とすれば、鉄道経営自体が割に合わないものという感想さえ持ってしまいそうですが実際にはどうなんでしょうか?

 日本と外国との都市構造の違いについてですが、運賃論を考えるとき、ここが日本への適用の難しいところではないかと、改めて認識しました。ヨーロッパのような中心部に集中した形態が良いのか、それとも日本のように中心部に集中しつつも拡散した市街地が鉄道によって結ばれている形態が良いのか、これらについては都市論のところでも議論になりましたが、一長一短ではないかと思います。これらの都市内輸送があって、さらに東京=大阪のような都市間輸送があります。また地方都市でも多かれ少なかれ都市内輸送があるわけで、これらも含めて、どの交通モードでどのように有機的に結んでいくか、そこから「公共交通におけるユニバーサルサービスのあり方」があって、そこからどうやって運賃を取っていくかを考えなければならないのでしょう。

 それは分かっているのですが、まだそれを実現するベターな解答は見つかっていません。。。
 あまりまとまっていませんが・・・。ではでは。

 第5講 (2002/11/09 00:17:07)

 こんばんわ。みなさん。かまにしさん。
 今日はここからです。

◆ 「2枚きっぷ」「4枚きっぷ」とユニバーサルサービスの本質

 九州のこの施策は、航空機を手本にしてたのですね。特急電車が20分間隔で運行されている、博多〜佐賀や小倉〜大分などでバスを意識して行われているのですね。特急停車駅以外からの設定もあるのでしょうか?吉塚からの設定はありますね。ポイントツゥポイントの「特割」料金なのですね。

 これらの施策をどう評価するか…個人的には利用者にとって分かりやすい上手ごろな値段で利用でき…往復利用で自社への囲い込みができるので、相思相愛の関係が成り立っているのではないか…自然と特定の区間における実質的な運賃は形成されていくだろう…。
…私は以下の懸念を抱いております。航空業界の場合、需要が大きいが距離の遠い場所と、需要は小さいが距離が若干近い場合では、前者の方が運賃は安くなることも多い…空港間の直線距離が近い場合でも、輸送コストは同じぐらい、あるいは高くなることもあるので、実距離と運賃が逆転してしまうことも考えられるかもしれません。

 特急輸送というサービスのみで考えれば、ポイントツゥポイントの停車駅の設定ですから、都市中心間の電車対バスの運賃競争の結果、周辺部対周辺部の運賃が相対的に高くなるのは、利用者の絶対数から運賃を考えればやむを得ないことかもしれません。これはバスを乗り継いで周辺部から周辺部の同じ区間を移動すればこれもやはり割高となるのでしょう。こう考えれば、運賃の上での輸送の採算性は、輸送量の多寡によって決まるという経済の論理が貫徹されている事がわかります。
 この理屈で言えば、羽田〜北九州と羽田〜福岡の航空路の実勢運賃がどちらが高いかといえば、大都市発周辺着としての北九州線の方が高くなるのはあながち間違いでないかもしれません。

 しかし…のぞみの新大阪〜小倉駅までの輸送コストが、新大阪〜博多駅までの輸送コストに比べて高いということは絶対にありません。…航空業界と同じような「需要が多く競争が激しい区間での割引合戦」と「需要が小さい区間での寡占」という図式には…考えにくい…部分もあります。
 また、「需要が多く競争が激しい区間での割引合戦」と「需要が小さい区間での寡占」…航空業界に見られる図式を、鉄道業界でも起こす可能性があります。相対的…需要の大きい空港に利用者が流れる…現象です。
…鉄道業界にあてはめれば、地方都市において近所の小駅を使うのではなく、新幹線や特急の停まる駅まで自動車ででかけるといった図式…短距離での自動車への依存傾向はさらに強まる結果になる…中長距離で鉄道の競争力が高まればいいという考え方もできると思いますが、短距離で自動車の依存傾向が高まることが望ましいとも思えません。…

 そうです。ですから本来すべての駅からすべての駅への「ユニバーサルサービス」がなされなけれなばならないのです。特急の止まる駅だけを駅として他の小駅を廃止するというのなら、フィーダーを自家用車、幹線を特急列車とする輸送が成り立つのですが、こうなると特急停車駅間のみの特割運賃は成り立たなくなるのです。そして、ドアツゥドアの輸送全体とした負担は、結果として非常に高いものになってしまうことになります。この論理をかまにしさんはわかりますか?
 速達サービスが付加価値サービスであるのは、低密度地域の小駅への基本サービスがあってこその通過列車による速達サービスなのです。都市圏の鉄道が緩急接続を徹底してるのは、緊密で一定の人口密度の沿線すべての駅に距離に応じた速達サービスを保障する意味があるのです。
 それでは全国ネットのJRの賃率は、確かに公的補助や内部補助のあった国鉄時代の名残なのかもしれませんが、大都市間の速達サービスや輸送量の増量区間のサービスで得た余剰を低密度地域のサービスへ補充した結果ともいえるでしょう。
 超巨大な路線網をもつJRの路線があるのは低密度地域の方が多く、現在の大手私鉄のような都市圏での副業の発達も途上で、やはり「鉄道専業」の企業になってしまうかもしれません。せめて、沿線の小駅のある集落で交通分担率を上げ、そのような村の価値を上げる工夫や努力をしなければなりません。先の例で言えば、佐賀周辺の小駅からも博多へ行くのに割引切符を使えるような制度やダイヤにすることで、鉄道びいきを増やさなければ、消耗戦の先に見えているものは厳しい未来なのではないでしょうか。

 次回はサービスの分類についての偏見を。乱筆ご容赦。

拡散的な日本の都市圏では、きめ細かい面的サービスこそ重要?
 投稿者---かまにし氏(2002/11/27 11:17:42)

 かまにしです。しばらくご無沙汰しておりました。

 特急輸送というサービスのみで考えれば、ポイントツゥポイントの停車駅の設定ですから、都市中心間の電車対バスの運賃競争の結果、周辺部対周辺部の運賃が相対的に高くなるのは、利用者の絶対数から運賃を考えればやむを得ないことかもしれません。これはバスを乗り継いで周辺部から周辺部の同じ区間を移動すればこれもやはり割高となるのでしょう。こう考えれば、運賃の上での輸送の採算性は、輸送量の多寡によって決まるという経済の論理が貫徹されている事がわかります。
 ですから本来すべての駅からすべての駅への「ユニバーサルサービス」がなされなけれなばならないのです。特急の止まる駅だけを駅として他の小駅を廃止するというのなら、フィーダーを自家用車、幹線を特急列車とする輸送が成り立つのですが、こうなると特急停車駅間のみの特割運賃は成り立たなくなるのです。そして、ドアツゥドアの輸送全体とした負担は、結果として非常に高いものになってしまうことになります。この論理をかまにしさんはわかりますか?

 たぶん分かっているつもりです。私が並行在来線論のところで、最も気にかけていたのはまさにこの点です。

 速達サービスが付加価値サービスであるのは、低密度地域の小駅への基本サービスがあってこその通過列車による速達サービスなのです。都市圏の鉄道が緩急接続を徹底してるのは、緊密で一定の人口密度の沿線すべての駅に距離に応じた速達サービスを保障する意味があるのです。
 それでは全国ネットのJRの賃率は、確かに公的補助や内部補助のあった国鉄時代の名残なのかもしれませんが、大都市間の速達サービスや輸送量の増量区間のサービスで得た余剰を低密度地域のサービスへ補充した結果ともいえるでしょう。
 超巨大な路線網をもつJRの路線があるのは低密度地域の方が多く、現在の大手私鉄のような都市圏での副業の発達も途上で、やはり「鉄道専業」の企業になってしまうかもしれません。せめて、沿線の小駅のある集落で交通分担率を上げ、そのような村の価値を上げる工夫や努力をしなければなりません。先の例で言えば、佐賀周辺の小駅からも博多へ行くのに割引切符を使えるような制度やダイヤにすることで、鉄道びいきを増やさなければ、消耗戦の先に見えているものは厳しい未来なのではないでしょうか。

 この点については、おそらくいろいろなご意見・賛否があると思われますが、私自身はこの考え方は好きです。しかもこの考え方は、実は地方都市だけでなく大都市の都市内交通にもあてはまりますよね(緩急接続なんてまさにその象徴です。。。)

 と考えてみると、ただの思いつきなのかもしれませんが、実は空洞化した地方都市の中心部のコインパーキングが大盛況なのも、大都市圏内のとある街の駅前に放置自転車がひどいのも、本質的には同じなのではないかという気がしてきました。
 両者とも、端末公共交通が相対的に不便がゆえに、便利な地点まで自転車・自動車(個人交通手段)で移動して乗り換えるという点が共通しています。またそれによって、周辺環境(景観等も含める)に大きな負担がかかっていることも事実です。

 ただし、やはり全国どこでもきめ細かい面的公共交通サービスを鉄道が提供できるかと言えば、残念ながらそうはいかないのでしょう。となると、いかにさまざまな交通機関を組み合わせて、面的公共交通サービスをネットワークさせていくかが重要なんでしょうね。同時に、かかる負荷が極小になる手段を選びうるか、ですね。

鉄道運賃がユニバーサルサービスの一環である必要はないのでは?
 投稿者---Tom氏(2002/11/09 09:06:24)

 Tomです。おはようございます

 運賃を議論しだすと神学論争のようになってしまうかもしれませんが、簡単に私なりの考え方を。
 まず、鉄道において今のJRのような運賃面でのユニバーサルサービスが必要なのか、ということです。
 もちろん、今でも「大都市近郊」「幹線」「地方交通線」の3ステップはありますが、実情としてコストの回収すらままならない地方交通線の運賃を大都市圏の収益を移転する形態をとってまでやらねばならないことなのか?

 代替手段があるという面で通信とは異なると思うのです。
 NTTの場合は万一ユニバーサルサービスの義務付けを廃止してしまうと代替の通信手段というものは事実上存在しません。まさか山奥の人はハムを使えとは言えないでしょう。 衛星電話もあるにはありますが、コストがあまりにも違いすぎるという難点もあります(これとて、衛星通信のコストが下がればユニバーサルサービスの義務を外し、補助金移行とするかNTTグループの責任において有線通信から衛星通信に移行の上閑散地の有線サービスを廃止するという選択肢もあります)。

 ローカル線の場合はバスや自家用車、近場であればタクシーという代替手段があります。
 現状のローカル鉄道、特にJRの地方交通線の場合は「JRが大都市圏に近い低運賃だから交通弱者が利用している」に過ぎません。まだ結論が出ていないので言及するのは時期尚早ですが、東北線から転換するIGRいわて銀河鉄道の利用者からは「高くなるのならばバスを利用しても良い」という意見も出ているそうです(yahooの整備新幹線サイトから)。
 これを3セク移行の為の不満と片付けるのは簡単ですが、それを言い出すと同様の人口密度がありながらJRのない地域との格差はどうなるの?ということにもなります。むしろ、「価格次第ではバスへの移行もあり得る」のなら、いっそ地域交通を担うことをやめるというのも(極論ですが)ひとつの選択肢です。

yahoo! 整備新幹線サイト http://www.iwate-np.co.jp/kikaku/shinkansen/kita3.html

 ローカル線においては、地域の要望に基づき駅を存続している面もある以上は、拠点間を結ぶ特急のみを使う場合よりも運賃・料金が高くなる場合もあっても良いのではないかと思います。需要のある所に対し特急+割引切符という魅力ある商品を投入し、他からのシェアを奪い取って経営を成立させるというのは経営の常道でしょう。
 JRも、ローカル線の運賃はバスや3セク並みに上げても良いのではないか?弱者に対するサポートは本来別の問題であるべきかと考えます。
 また、地方の暮らしは現実には都会に比べて貧しいか?というとそんなことはないというのが一時期地方に暮らした実感です。

貨客分離の方策を考える(貨物輸送維持の上下分離は?)
 投稿者---RAH氏(2002/11/09 14:40:39)

 若干横道にはずれるようですが、東北の3セク2社については、その存在理由は99%貨物輸送のため、と言って過言ではないと思います。ローカル旅客のためならば、それこそ国道4号に路線バスをどんどん走らせた方がはるかに利便性が高い。貨物鉄道にとっては東北本線はそれこそ「代替がない」わけでして。
 極端な話、宝積寺−青森、富山−青森、渋川−宮内、久留米−西鹿児島はJR貨物の1種路線(という名の実質的国有化)にして、JR旅客各社なり3セクなりが間借りする形でいいと思います。その前提があってはじめて新幹線の青森、金沢、鹿児島への延長が可能と思いますし、そこまでしても青森、金沢、鹿児島への延長は必要かと思います(その先はいらない)。
(ちなみに宇都宮−宝積寺は烏山線、高崎−渋川は両毛線ないし吾妻線、博多−久留米は長崎本線ないし久大本線の、それぞれ実質的な一部としてJRに留保している。)

 JRにせよ他の手段にせよ、フィーダーが不便で高いと結局幹線も含めて全区間クルマで行こう、ということになりかねません。それにJR幹線では普通でもそれなりのスピードが確保されているので、代替手段もある程度のスピードが必要と思います。その点で路線バスは若干の不安定性があるのですが、国道4号の盛岡から先ってそんなに混むのでしょうか。

貨物のための実質国有化にはあまり賛成できません
 投稿者---Tom氏(2002/11/09 17:09:53)

 Tomです。 今日は仕事の合間に掲示板を見る一日デス。(休日なのに・・(T_T) )

 若干横道にはずれるようですが、東北の3セク2社については、その存在理由は99%貨物輸送のため、と言って過言ではないと思います。ローカル旅客のためならば、それこそ国道4号に路線バスをどんどん走らせた方がはるかに利便性が高い。貨物鉄道にとっては東北本線はそれこそ「代替がない」わけでして。

 もとよりJR貨物にとってはそうでしょう。
 ただし、3セクについては地方公共団体が地域住民の足として確保しているという面もあります。

 極端な話、宝積寺−青森、富山−青森、渋川−宮内、久留米−西鹿児島はJR貨物の1種路線(という名の実質的国有化)にして、JR旅客各社なり3セクなりが間借りする形でいいと思います。

 ここだけ実質国有化するとなると、全体とのバランスはどうなるのでしょうか?
 また、ピックアップされた区間の中でも久留米−八代や宝積寺−黒磯及び仙台近郊はそれなりに人口密度があり、交通弱者ではない、ある程度進んで選択している利用者も多いわけです。
 確かに、現状ではかつてJRに移管された線区と、整備新幹線建設線区との均衡を失している感があるのは確かですが、それは全体の収益性の中を鑑みて判断されたわけです。国有化すれば確かに地域の負担は減りますが、理由なき国有化では結局税金という形で国民負担に帰することになります。対北海道の貨物輸送だけを考えるならば、スピードを求めるならば航空便、安さならば船便という選択肢があるというのは以前掲げた通りです。

#もし、国策としてモーダルシフトを考える為貨物線を残すというのであれば、その他のJR貨物専用線を含めて方策を考えたほうが良いのではないかと思います。

 JRにせよ他の手段にせよ、フィーダーが不便で高いと結局幹線も含めて全区間クルマで行こう、ということになりかねません。それにJR幹線では普通でもそれなりのスピードが確保されているので、代替手段もある程度のスピードが必要と思います。

 地方では、JRは「他の地域へ旅行する手段」としてのみ捉えられているという面があります。
 駅から近い人はJRローカル列車を使うでしょうが、一般にはJRの拠点駅まで自家用車で乗りつけるという形のほうがはるかに多いです。北陸ではそういう傾向がありました(ここでの自家用車とはパーク&ライドかキス&ライド双方を含みます)。

第5の2 (2002/11/13 00:37:13)

 こんばんわ。Tomさん。かまにしさん。みなさん。
 Tomさん、加わっていただきありがとうございます。適宜引用しながらコメントします。

 運賃を議論しだすと神学論争のようになってしまうかもしれませんが、簡単に私なりの考え方を。…JRのような運賃面でのユニバーサルサービスが必要なのか、ということです。
…「大都市近郊」「幹線」「地方交通線」の3ステップはありますが…コストの回収すらままならない地方交通線の運賃を大都市圏の収益を移転する形態をとってまでやらねばならないことなのか?

 これは難しいことですね。大都市圏の収益のどのくらいまで回せるかという所があるのではないでしょうか。これは鉄道会社の宿題ですね。たとえ少ない輸送量であったとしても、本線への培養線として維持できる沿線の人口密度があるのなら簡易な形でも残した方がいいと思います。実際、新幹線の並行在来線でも、実質はLRTレベルの輸送量となっているのですから、旅客輸送が絞られたなら、貨物輸送へ転進するというのも一つの手ではないでしょうか。どこまでネットワークを維持するかという課題も出てきますね。

 代替手段があるという面で通信とは異なると思うのです。
 NTTの場合は万一ユニバーサルサービスの義務付けを廃止してしまうと代替の通信手段というものは事実上存在しません。

 NTTの場合、現在は通信事業の隆盛もあって、余裕があると言えるのではないでしょうか。それでも公共サービスとしての電報や公衆電話からの撤退などが、あまり話題にはなりませんがありますよね。諸外国では、有線電話の維持が厳しい地域や場所があるでしょう?電話線があっても、無線を使う所もありますね。
 私は国鉄=郵便=電電公社という上下一体の公企業によるサービス、自家用車=宅配便=携帯電話という上下分離の上の部分の私企業によるサービスという対立軸を考えているのです。経済成長のための国土の均衡ある発展に役だった、公企業のサービスは、役割を終えてきているという現在の風潮に疑問があるのです。

 ローカル線の場合は…代替手段があります。
…特にJRの地方交通線の場合は「JRが大都市圏に近い低運賃だから交通弱者が利用している」に過ぎません。…言及するのは時期尚早ですが…IGRいわて銀河鉄道の利用者からは「高くなるのならばバスを利用しても良い」という意見も…。
 これを3セク移行の為の不満と片付けるのは簡単ですが、…同様の人口密度がありながらJRのない地域との格差はどうなるの?…「価格次第ではバスへの移行もあり得る」のなら、いっそ地域交通を担うことをやめるというのも(極論ですが)ひとつの選択肢です。

 地方公共団体主体でも該当地域の人口密度が旅客鉄道を維持できないレベルであれば、公的補助を続けることに不安があるのなら、無理に続けなくてもいいのかもしれませんね。ただ、ここ岩手青森は旅客貨物共に通過交通があるという点が施設維持の大きな理由ですよね。確か、好摩から尻内は峠越え区間で、小さな町がいくつかあるのですが、それぞれ新幹線が止まるのですよね。青函トンネルではないのですが、3線軌道にして貨物列車も新幹線の路盤を走らせれば良かったのかも?それから、岩手の県北はJRバスのテリトリーだったはずですね。電車とバスでバスが安くなるのなら皆使うでしょう。「電車を残すならなるべく安く乗せろよ」という地域の人たちの意志と私は取りたいです。

 ローカル線…地域の要望に基づき駅を存続…拠点間を結ぶ特急のみを使う場合よりも運賃・料金が高くなる場合もあっても良いのではないか…。需要のある所に対し特急+割引切符という魅力ある商品を投入し、他からのシェアを奪い取って経営を成立させるというのは経営の常道でしょう。

 そうですね。JRから移行した3セクで更に駅を増やして増収した会社がありましたね。商売とはそういうものなのでしょう。パイの大きい都市間で値引き合戦をするのも耳目を引く宣伝になるでしょうが、恒常的に値引きするのは消耗戦です。どこでその分を儲けるか、これは商売のしようですね。なるべく定価で買ってくれる人を大事にしたいのですが。

 JRも、ローカル線の運賃はバスや3セク並みに上げても良いのではないか?

 これは、先にも申し上げた通り、人口密度との関係で決めればいいと思うのです。特にフィーダー路線については、分社化出来ない路線は路線ごとに定期外客の数に応じて運賃を決めるぐらい極端にやった方がいいのかもしれません。青森なら津軽線支線や下北線、八戸線五能線ですね。県全体としての各沿線地域の位置づけに対して交通路がどのような意味を持つのか、都市計画との関係もあるかもしれません。

 弱者に対するサポートは本来別の問題であるべきかと考えます。

 通学定期や通院に補助するという工夫をしたいですね。スクールバスや福祉タクシーとしての電車という解釈でいいかも。

 また、地方の暮らしは現実には都会に比べて貧しいか?というとそんなことはないというのが一時期地方に暮らした実感です。

 地方の豊かさの源泉は、エンゲル係数の低さかな?と思うときがあります。自家用の田畑から生み出される食物によって、どれだけ生活が豊かになるか、都会に住む若い我々には実感できないかもしれません。また、地方都市は、ロードサイドの量販店も町ごとにあり、道路の充実が購買圏を広げていますね。これと鉄道輸送をどう結びつけるか。どこかを題材にまた、話題にしたいです。
 やっぱり、幹線とフィーダーという交通流のまとまりを交通圏としてこれをどうプロデュースするかにたどり着くのです。その時に、基礎的な与件として運賃面でのユニバーサルサービスを維持しなければ、戦略的な都市間の割り引き運賃も、都市内のゾーン制運賃も恣意的に決められてしまうことになり、鉄道への信頼を失う危険をはらむ事になると思っているのです。この先アメリカなどの例をあげてみましょうか。

 こんなところで。この話も続きそうです。乱筆ご容赦。

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2004.11.14 Update


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