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(過去ログNo.)

四国東部早回りから

投稿者---エル・アルコン氏(2002/01/03 23:35:42)
http://6408.teacup.com/narashinohara/bbs

あけましておめでとうございます。
暮れの3連休に、ふと思い立って四国に行ってきました。なぜかその前にいた名古屋から夜行高速バスで徳島に入り、牟岐線、阿佐海岸鉄道で甲浦に入り、室戸岬を回るロングランのバスで高知、そして土讃線で坂出から岡山へ抜けるルートです。

○プロローグ・「オリーブ松山」

名古屋を出て徳島、阿波池田経由で松山に至る夜行バス「オリーブ松山号」は2台口で満員の盛況。車内は8割方が若い女性で、夜行高速バスは鉄道にはない夜行需要の層を開拓している様子がよく分かります。鉄道においてもそうですが、夜行がいわゆる「鉄」の乗りつぶしというので賑わったのは昔語りといって良く、若者、特に女性の観光、それもイベントなど都市観光の需要がメインで、それにこれは鉄道でも多いですが地方起点の年配者の利用が次いでおり、そうした実態に照らし合わせると今の夜行列車の運行形態や設備・料金の実態との乖離は甚だしく、抜本的に見直せばまだやっていけるという感はあるのですが。(まあ多客期以外はバスで事足りるレベルですが)

余談ですが、「オリーブ松山」をみどりの窓口で予約する際、乗降駅指定にはご注意のほど。マルスで「名古屋駅」「名古屋駅(オリ)」とかもっともらしいキーが出てきますが、これを選ぶとエラーになります。正解は「名古屋駅(東名)」で、10分以上悪戦苦闘した摂津本山駅員もこれには呆然。(オリ)ではなく(東名)とはキー設定のエラーとしか考えられませんが、ひどいものです。

○牟岐線、阿佐海岸鉄道

徳島での降車は然程多くなく、そのほとんどが迎えの車に消え、駅に入り始発列車を待つ人はほとんどいませんでした。牟岐線の始発はキハ47の2連。車内は数人というお寒い状況ですが、暖房も入っておらず冷え込みも厳しいです。
海沿いのように見えて実は海が見えるのはわずかという路線です。辿る小駅を見ると、発車時刻表のほかに、「通過列車にご注意」と特急の通過時刻が添えてあるのは細やかな気遣いですが、回送列車の通過時刻も添えてあり親切です。

牟岐に着き乗り通したのは私だけ、乗り込んだのも2人と悲惨な状況で着いた海部で阿佐海岸鉄道に乗り換えです。地域の拠点としては牟岐のほうが大きく、牟岐で系統分断したほうがいいのに海部で乗り換えは不便です。やってきたASA201号車に乗ってびっくり、出入り台付近こそロングですが、そこから片側2基ずつの転クロ、中央部は「コ」の字型のソファーです。VTRモニターも甲浦方にありますが、基本的に海部までの2駅、行っても牟岐までのミニ鉄道にここまでの車両は必要でしょうか。宍喰や東洋の交通のためとは言え、これは交付金の無駄遣いに他ならず、それこそ牟岐線で使用しているキハ47を2両ほど名義を阿佐海岸鉄道にして運行・整備は全委託するくらいの合理化はしないとやっていけない(してもきびしそうだが)レベルのはずです。

○高知東部バス(前編)

公団規格のトンネル道中ですが、だんだん海から遠ざかって甲浦終点です。高架下の待合室は立派ですがそれだけ...牟岐への徳島南部バスが待ってますが、お目当ての高知行き高知東部バスは20分ほどの待ち。何も無いので牟岐行きのバスで国道55号上の甲浦口に出ましたが、期待していたコンビニはなく空振りでした。
甲浦岸壁始発の高知行き急行(急行区間は安芸-高知)は乗客1人。このあたりの東洋町は高知県ですが、室戸市との境に延々と続く人家を見ないエリアを考えると、なぜ徳島県に属さないのか不思議なエリアです。室戸市佐喜浜で7人乗車。岬手前の大師像前で下車多く、「歩き遍路」の足になっています。

時刻表ではバスの拠点になっている「観光ホテル」ですが、う~むといいたくなる造りに驚愕。岬での乗降も無く国道を外れて室戸市街に入り、室戸営業所で乗務員が交替して出発です。
浮津二番町停留所では、荷物の便乗を知らせるのか待合所に「バス止マレ」の看板が出ており、ローカルムード満点。途中「西ノ宮」「西灘」なんてどっかで聞いた名前の停留所が続くのには苦笑です。
岬を回ると民家もそれなりにあり、乗車もこまめに増えます。2002年7月1日開業の土佐くろしお鉄道の終点奈半利では乗客19人を数えました。線路が並行しますが、奈半利川にかかる橋梁ではまだ下部工の工事中で、赤信号が点灯しているのとあわせて、進捗がまだら模様です。ちなみに田野で見えた駅は交換設備有りですが、両方とも上下共用できる構造でした。

乗客はどんどん増え、田野で24人、安田で29人となり、安芸市内に入ってとうとう立客も出る43人(座席定員40人)になりました。安芸の中心街(市役所、井の口通り)でどっと降り、安芸営業所に着いた時には21人と、安芸がこのエリアの拠点であることが判ります。バスへの依存度を見ると、高知との都市間輸送となる安芸までではなく奈半利までの開業も決して無謀ではないのかなとも思います。
ここで2度目の乗務員交替と休憩です。バスにはトイレが無く、乗務員は室戸で交替できるので乗客にとってはきつい道中です。運賃が半端でない路線ゆえ、ここで停車中に営業所職員が車内で両替のサービスをするのは便利です。

○高知東部バス(後編)

ここから急行運転です。車両は高知東部バス(高知県交通の分社)ですが、乗務員は土佐電鉄という変則運用(放送でも言っている)で、時刻表では2表に別れている両者も実は共通、というか一体運用なのです。
ここからは土佐電鉄安芸線の廃線跡と並行。自転車道と土佐くろしお鉄道(ごめん・なはり線)になってますが、橋梁や手結山トンネルにその名残が有ります。
交通量も多く赤岡のボートピア付近から4車線。いったん高知空港に寄りますが、ここで甲浦岸壁からの女性が降車。3時間以上のバス旅では徳島空港のほうが近いのではと時刻表を見ると、それでもこのルートのほうが空港には近く、高速交通網と途絶したこうしたエリアが存在するのも現代日本の一面です。

再び55号線に戻り一路高知へ。安芸でMAXとなった乗客は結局播磨屋橋到着で25人と増えませんでした。高知駅まで乗り通したのは3人と、純粋な域内移動の足のようです。
岬を越えたのは空港までの女性のほかは播磨屋橋までの佐喜浜乗車の女性1人だけで、3時間40分、3970円のロングランも区間乗車の集大成のようです。

○土讃線

帰路は阿波池田の一回乗り換えで坂出に行ける列車をチョイスしました。ワンマン表示が並ぶ中、ワンマンでないためオールロングのキハ32や54は来ないと高を括っていたらなんと32+54の2連のツーマン...(涙)
しかも直前に同じホームに池田始発列車が着くため折り返しと思っていたら、到着位置をずらして、別仕立ての編成が前方に入線したのです。到着は急行型のキハ58+28だけに悔しいのなんのって。

土佐一宮に新車両基地が完成間近。後免までは軌道強化が進み、3月と7月の改正で大きく変わろうとする寸前です。サラッと埋まった車内も土佐山田で降りてしまい、山に掛かります。スイッチバックの新改で下り特急待ちで6分、繁藤で上り特急待ちで9分、一つ置いた土佐北川で下り普通待ちで12分待ちと牛歩の歩み。上下の特急、普通が重なって長時間停車が続く様は紀勢東線の梅ヶ谷付近でも見られますが、奇しくも地形が海辺からの片峠と似ています。

ガラガラの車内から大歩危峡を眺め、阿波池田で乗り換え。キハ65+58の4連ですがトイレはなし。牟岐線にはあったのに...急行型に寛ぎ、高知で買った駅弁にようやく箸を付けました。その「鰹のたたき弁当」は保冷材付きとはいえカツオのたたきがメインという言わば「御法度」だったナマモノの弁当。味は宜しかったですが、薬味のニンニク片が後で臭って難儀しました(笑)
坂出で降りて「マリンライナー」で岡山へ。大元駅高架化・交換有効長延長による改正で4分早く着いて四国早回りのフィナーレとなりました。

 

●使えない?交通

使えなさを感じたのは室戸岬周辺。甲浦駅の素寒貧さには呆れるばかりですが、これでもバスが全部立ち寄るだけマシというのでしょうね。toden乗ったバスもくたびれ果てており、放送と連動しない運賃表に黄ばんだヘッドカバー、染みが目立つシートには座るのを躊躇した乗客も...
細かい注文といえばそれまでですが、「次は、室戸岬」という紋切り型のアナウンステープもひどく、せめて「室戸岬でございます」と言って欲しいものです。
すれ違う土佐電鉄バスも時代物の観光タイプのバスで、褪色激しい様子は乗る気も失せます。時刻表の不親切な掲載順序も既述の通りで、実際には高知-安芸の区間運転と合わせて室戸に行く便は結構あるのですが、判らないようになっています。

●気持ちよく移動するために

あと、観光路線と生活路線の兼用は仕方が無いのですが、この路線は途中競艇と競輪の場外売場を経由することからそれ系の利用が少なからず有るようです。
「客筋」を差別する訳ではないですが、結果論としてそれ系の乗客のマナーは芳しくなく、実際安芸から赤岡のボートピアまで乗った乗客が乗務員の制止にもかかわらず喫煙しようとしたり(発車後懲りずに喫おうとしたので私が制止したら、降車時に「捨て台詞」を浴びた)スポーツ紙を散らかしたりと乱行三昧で、こうした経験が室戸の、そして高知県の観光の印象を悪くすることは明らかであり、それ系の乗客がバス会社にとって重要なお得意さんであるとしても、遠来の乗客への配慮も忘れずにして欲しいものです。

また細かい話ですが、運賃も絶対的に高い上に、妙なところで細かいです。つまり、甲浦から播磨屋橋まで3930円、高知駅が3970円とここまできたら普通は遠距離逓減で一緒のところを差を付けたり、それこそ4000円ポッキリのほうが支払いも楽なのに一々両替機を通して970円を用意させられたりと有り難迷惑な30円です。

●普通冷遇施策

次に土讃線です。特急がメインで、各種商品で気軽に特急が利用できるとはいえ、200kmも無い高松-高知間で普通列車で行こうとすると恐ろしく時間がかかるのは困りものです。その特急はというと、せいぜい4両(3両が多い)のため、中村系統を中心に混雑しており、気軽に利用と言う気分にもなれません。特急に誘導するのなら、せめて着席サービスくらいは完璧にして欲しいものです。
時間もさることながら、車両が虐待そのもので、池田-高知直通がキハ54や32のワンマンや同型式2連では悲惨です。日中は高知に13時過ぎに着く245Dしかクロスシート車が来ないというのはいただけません。
確かに利用が限りなく少ないのですが、使えないダイヤと車両がリピーターならぬ「もう二度と...」という客を再生産してきた可能性はないでしょうか。

●四国の特殊性を活かせないのか

都市間輸送では特急と高速バスが覇を競っていますが、ローカル輸送の寒さが目に付いた一日でした。しかし四国の特殊性として、ローカルでの観光利用がそれなりに見込まれるということは忘れてはならないはずです。つまり、四国88箇所札所巡りの存在が大きく、今回も歩き遍路と呼ばれる歩きや電車、バスで一人(から数人)で巡るお遍路さんを多く見ました。
特にかつての観光バスによる早回りから、自分を見つめ直す歩き遍路が静かなブームになっていることを考えると、「四国88箇所」という全国区の観光?名所を回る手段としての面を押し出すことによって、公共交通のてこ入れが可能ではないかと思うのです。実際、「百名山」ブームで中高年の登山行、それもローカル電車やバス利用が無視できない規模で見られることを考えると、「88箇所」の可能性もまた少なくないと思うのです。

●交通網から見捨てられた?

甲浦から3時間以上かけて高知空港に出るのが「最速」ルートということを述べましたが、この東洋町から室戸市にかけてのエリアは非常に厳しいことになっています。
とにかく幹線道路がR55のみ。山越えのルートで高知方面に短絡するR493はありますが、東洋町のHPでもアクセスとして認められていないレベルのようです。
当然高速も高規格BPもなく(徳島-阿南間にBPはある)、高知まで112km、徳島まで92kmですからクルマでも高知が3時間弱、徳島は2時間強かかると見ていいです。
バスは先述の通り高知まで3時間40分、徳島までの鉄道も2時間かかります。

これでようやく県庁所在地に辿りつくわけで、東京や大阪となるとそこからの話です。しかも唯一大阪とダイレクトに結ぶ交通機関であった高知シーライン(フェリーむろと)は昨年末の12月9日をもって休航したため、いよいよ窮った感があります。

※もともと関西汽船系の室戸汽船が運行していたが、関汽自体が経営難であり廃止を表明。三セクの高知シーラインが引き継いだが力尽きた模様。大阪南港から甲浦を経て土佐清水まで就航していたが、土佐清水は南港-高知の大阪高知特急フェリーが延長する形で救済されたが甲浦は袖にされた。

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こうしたエリアにも当然「生活」というものは存在しますが、では今後こういうエリアにおいてはどういう「生活水準」を想定しているのでしょうか。
その絵姿をきっちり描き、他エリアとの格差を如何に克服するのか。東洋町にそれを全て求めるのは無理です。交通面におけるこうした退出問題の深度化(=規制緩和による退出の平易化)、そして整備の見なおしを訴えるのであれば、それにともなう「見捨てられた」地域のあり方を国や高知県が示せない限り、ある種の棄民政策と言われても仕方が無い話です。


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