【検証:】中量板過去ログ集

【検証:近未来交通地図】<中量輸送システムの明日…>
(過去ログNo.308)
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〔自動車〕燃料電池車登場!
 投稿者:打越健太郎氏 投稿日:00/11/15(水) 03:35
〔自動車〕燃料電池車登場!
└環境問題と自動車規制をどのように捉えるのか
 └発電所の問題は?
  └Re:発電所の問題は?
   └燃料電池車とLRTの比較
    └Re:燃料電池車とLRTの比較
     └Re:燃料電池車とLRTの比較
    └環境保護と産業保護
     └やはり公共交通論のカギは「共存」「利用の仕方」「選択の多様性」
      └〔LRT〕海外における今日の在り方…スイスに見る

 皆様、こんにちは。打越健太郎です。「自動車は環境負荷が大きい」という常識を覆す(かもしれない)「燃料電池車」、なかなかその実態が見えて参りませんでしたが、11月14日の「讀賣新聞」夕刊の5ページに「燃料電池 いま・未来(中)」という記事がございます。これによると、鉄道総合技術研究所が燃料電池による軌道車両の施策に成功したとのこと。
 一方で、自動車に関する情報にも触れられています。本来、燃料電池とは水素を燃料にするので、有害な排気ガスは全く発生しないことになっています(水素を燃やしても、発生するのは水蒸気ですものね)。しかし、皆様ご存知のように、水素は常温では気体ですから、莫大な体積になってしまいます。冷やすか高圧をかければ液体に出来ますが、どちらも我々の日常とは無縁なほどの低温・高圧が必要になり、安全性や管理が困難です。水素を吸収して蓄える合金というものも開発されているそうですが(僕のような理科オンチには驚きです)水素1gに対し、合金は50gと重いのが欠点だとか。これらの点を突いて、僕は以前から「燃料電池車など実用できっこない」と思っておりました。
 しかし、僕は浅はかでした。メタノールを燃料にして、そこから水素を取り出す、という方法を全く思いつかなかったのですから。燃料タンクにメタノールを詰め、車内で水素を取り出して使うことが出来るそうです。この方法では、二酸化炭素が現在のガソリン車の半分ほど発生するものの、その他の公害物質の発生は起こらないようです。また、これとは別に、ガソリンを用いた燃料電池もあるそうです(なお、この点については以前に、別の掲示板においてではありますが、エル・アルコン様が正確に指摘していらっしゃいました。エル・アルコン様の博識ぶりにはただただ驚きです)。もっとも、残念ながら、ガソリンを用いた場合の環境負荷については、この記事では触れられておりません。因みに、この「燃料電池車」の開発に長けている(電池まで開発した)のはトヨタ自動車と本田技研工業。ともにメタノール・水素吸収合金の両方法の自動車を製作、本田は高圧ボンベに水素を詰めるタイプも試作したということです。

 ここからは私見です。まず、「燃料電池車・トラム」の開発に成功したことを素直に喜ばしく思います。これほどの技術力を持つ既述各位に敬意を表したいと思います。また、環境負荷の小ささにも、驚きと喜びとを禁じ得ません。このことをはっきり申し上げておきます。
 ただ、一方で(少なくとも現時点では)完全な水素自動車の実用化は無理、という点も少々気に懸かる所です。と申しますのは、メタノールを用いると、結局、二酸化炭素は発生するということですよね。現在の自動車、なかんずくディーゼルエンジンの環境破壊は、二酸化炭素と窒素・硫黄酸化物の双方に拠るものだということは、皆様ご存知でしょう。で、(意外と知られていないことですが)話を温暖化に限定した場合、二酸化炭素はこれを促進し、窒素・硫黄酸化物は(大気を黒く濁らせ、地球に降り注ぐ光や熱を妨げるので)これを阻害しています。現時点では「地球温暖化」と言いつつ、日本ではきちんと冬がやってくるのはこのためだとも言われております(もっとも、先日の名古屋大水害は、僅か1日の降雨で起こるという稀なものでしたが、あれは「典型的なスコール」とも言われています。本来、名古屋でスコールなど有り得ないはずですから、案外、我々が思っている以上に温暖化が進行しているのかもしれません)。
 もしも窒素・硫黄酸化物の排出が止まり、二酸化炭素の排出が続くと、澄明な二酸化炭素のせいで温暖化が顕著に進む、という危惧の声もあるのです。無論、二酸化炭素の排出も、現在の半分、というのは心強いことですが、やはり「自動車はもはや環境問題を克服した」というのは無理ではないでしょうか。LRTの議論をする際、僕としてはこれまで意図的に環境問題を避けていたのですが、やはりこれでは、環境問題についても考えに入れたい所です。なお念の為に申し添えれば、「ではバスや、燃料電池トラムも環境破壊するのではないか?」という、一理あるご批判が予想される所ですが、例えばバスは1両で80人、つまり自家用車の16倍もの人が乗れる一方、二酸化炭素などの排出量が16倍ということは考えられないはず、と申し添えておきましょう。

 さて、今日(15日)から、1泊2日で東京に参ります。久しぶりに地下鉄やバス、時間が取れれば都電荒川線・東急世田谷線にも乗って参りたい所です。「本題」のほうで、僕が大好きな「地下鉄改良案」などもやってみたいので、皆様、どうぞ乞うご期待…

環境問題と自動車規制をどのように捉えるのか
 投稿者:とも氏 投稿日:00/11/15(水) 17:14

 ともです。
 ちょっと横レスを

 現在の自動車、なかんずくディーゼルエンジンの環境破壊は、二酸化炭素と窒素・硫黄酸化物の双方に拠るものだということは、皆様ご存知でしょう。で、(意外と知られていないことですが)話を温暖化に限定した場合、二酸化炭素はこれを促進し、窒素・硫黄酸化物は(大気を黒く濁らせ、地球に降り注ぐ光や熱を妨げるので)これを阻害しています。

 まず、認識に誤りとは言いませんが相違があると思います(といっても指摘できるほど化学に詳しいわけではないんですが) 。

 一般論として、ディーゼル車は二酸化炭素の排出量が少なく、ガソリン車は多くなります。
 逆に、窒素&硫黄酸化物(化合物)はディーゼル車のほうが多くなり、ガソリン車は少なくなります。
 そして、石原知事のおかげで有名になったSPM(浮遊粒子状物質)はディーゼル車からの排出が多くなります。
 たしかに、窒素酸化物や硫黄化合物による大気汚染によって太陽光が阻害されているということは否定はしませんが、それが地球温暖化を抑制していると断言はできません。
 なぜなら、窒素酸化物や硫黄化合物は二酸化炭素とは異なりそれほど拡散しませんから、全地球的にそれが広まることは考えにくく、それが本当に広がっていくとすれば、道路沿道での窒素酸化物や硫黄化合物濃度はもっと低くなるはずです(二酸化炭素はどこでデータをとっても変化しません )。
 黒く濁った排気ガスは、浮遊粒子状物質が主因ではないですか。窒素酸化物の影響はあるでしょうが、そもそもの黒煙の正体が粒子状物質です(黒煙防止フィルターはこの粒子に対するものです )。

 自動車規制の各国の考え方の違いはこれを受けています。
 ディーゼル車を規制するアメリカ型と、ディーゼル車を推進しているヨーロッパ型です。
 アメリカの大気汚染問題は局所的な対策として考えられます(カリフォルニアの大気汚染規制が典型ですね)。
 逆にヨーロッパでは、大気汚染問題はあるものの固定発生源(すなわち工場など)の影響が大きいため、自動車に関してはエネルギー問題が基本となっています。
 よって、ヨーロッパではエネルギー消費の少ないディーゼル車が多く、アメリカでは皆無という状況が生まれます。

 日本はどうでしょうか。
 日本の場合、大気汚染対策を自動車ではなく道路に求めてきたため、発生源対策よりも道路側に環境対策をとらせるようになっています(東京の大気汚染裁判でやっと自動車メーカーが入りましたが) 。
 それにあぐらをかく形で、自動車メーカーは排出ガス対策をおろそかにしてきたという過去があるわけです。
 また、中小企業保護や利用者保護を「錦の御旗」にしてより影響の大きいトラックなどよりも乗用車を規制するというやり方をしています。
 しかも軽油を安くするヨーロッパ的な考え方かと思いきや、アメリカのような大気汚染対策をとろうとするので、どうしたって矛盾が生じるわけです。
 その結果が現状の日本の状況と言えるでしょう。
 環境庁にはもう少しリーダーシップをとってもらいたいところです。このままじゃ国土交通省のほうがましな施策を出しかねません。

 続いて

 例えばバスは1両で80人、つまり自家用車の16倍もの人が乗れる一方、二酸化炭素などの排出量が16倍ということは考えられないはず、と申し添えておきましょう。

 ディーゼル車でしかも排気量が大きいバスと、ガソリン車で排気量の小さい自動車ではその単体の排出ガスの量には雲泥の差があります。
 よって、バスにある程度の乗車人員がいない限り、自動車よりも環境に優しいとは言えないはずです。
 ちなみに、1人が1km移動するのに消費するエネルギーとしては、自動車はバスの3〜3.7倍という推計があります(土木計画学論文集1995 土木学会)。
 すなわち、バスに4人乗っていれば一人しか乗らない車よりエネルギー消費量は少なくなりますが、窒素酸化物等に関しては別ですので一概には比較できません。

 僕が良く言う「その都市に最適の交通機関を選択する」という考え方の根底はここです。
 最も環境に優しい都市構造は一極集中ですべてが徒歩圏にあって、郊外との移動は高速鉄道で行えるという形です。
 しかし、そんなことは不可能ですよね。
 ベターな都市構造、交通機関とは何かを考える必要があるのではないでしょうか。
 郊外部などではデマンドバスやミニバスのようなもの、あるいは自転車や自動車を端末交通として、基幹交通をLRTやバスに持たせればよいわけです。

 燃料電池にしてもメタノールにしてもはたまた電気方式にしても二酸化炭素の排出はあるわけですから、意味もなくエネルギーを消費するのではなく、効率的に消費する、それぞれの長所を活かした「かしこい使い方」が重要ではないのでしょうか。

 では。

発電所の問題は?
 投稿者KAZ氏 投稿日:00/11/15(水) 18:20

 ども。

 これも明確な根拠は提示できないのですが・・・
 環境に優しいLRTを駆動させるために必要な電気を起こすために必要になる「発電所」の環境負荷は、こういった交通モードの環境対策の中で省みられたことがあるのでしょうか。原子力発電なら大気汚染はほとんどないと思いますが、火力発電所は結構な負荷になっているのではないかと思うのです。LRTが優しいといっても、それはその物体からは環境汚染物質が出ないだけであって、他の場所で大きな負荷を発生させているのであれば地球サイズで判断すれば「環境に優しくない」乗り物かも知れません。
 まあ、それを実証するにも調査が大掛かりすぎますし、発電所の形態にも火力・水力・原子力そして風力とありますから一概には言えませんが、原子力発電所の将来がはっきりしない中では、自然の影響を受けず安定した電力供給が可能なのは火力だけとなりますので、火力発電所の環境負荷も注視したいところです。

 個人的な見解ですが、特定の一部分(道路沿線の排ガス公害など)の環境対策としてはLRTは大きな効果があると確かに思います。しかし地球サイズで見た場合は燃料電池バスと火力発電LRTのどちらが環境に優しいのか、今の私には判断できないのでLRTが環境に優しいと断言するのには抵抗があります。どこかの研究室やゼミで調べてもらいたいですね。工学系の学生諸君、奮起願う!(笑)

Re:発電所の問題は?
 投稿者:とも氏 投稿日:00/11/16(木) 17:57

 ともです。

 LRTの二酸化炭素排出量の考え方ですが、これをまとめられれば、論文が何本か書けるボリュームになってしまうので、概要だけ。
 まず、前にも書いた輸送エネルギーという考え方から説明しますと、鉄道の場合、1人が1km移動するのに必要な熱量(エネルギー)は47〜101Kcalとされています。
 ばらつきがあるので、最も多いもので考えると、バスの2/3、自動車の1/6程度です。
 二酸化炭素はご存じのとおり物質の燃焼によって発生しますので、エネルギー消費と比例するものと考えて差し支えないでしょう。
 とはいえ、この前提は火力発電所だけではなく、原子力や水力も含んでいますから、そのまま二酸化炭素排出量には置き換え出来ませんので、だいぶ鉄道に厳しい前提としてこんなもんだと思ってください(火力発電所の発電量から見ればこの半分とも言え無くはないですね。もし、KAZ様の言われるようなすべて火力という前提ならばまさしく、こうなるかなと思います )。

 しかも、窒素酸化物や硫黄化合物の排出については発電所での除去対策はディーゼル車に比べれば簡単ですのでほぼ0と考えて良いでしょう。
 とすると、LRT(=鉄道)は環境に相当優しい交通機関と言えます。
 鉄道利用の高い東京圏は、全国に比べ、輸送に要するエネルギーが小さい(全国6124Kcal、東京5214Kcal)という結果も出ており、鉄道の環境負荷は小さいと言えるでしょう(出典:土木学会 土木計画学論文集(1995年) 東京都市圏におけるPTデータを用いた輸送エネルギー推計と都市構造に関する一考察) 。
 ただし、鉄道の数値は、混雑率が高いほど輸送エネルギーは小さくなりますので、需要が少ない区間ではバスが有利、さらに需要の無い地域では自動車が有利ということになりますね。

 さて、バスと自動車の関係で、バスの大気汚染物質排出量についてですが、ディーゼルバスの数字は無いので、トラックとの比較ですが、直噴式ディーゼルエンジン車の10トントラックの場合、ガソリン乗用車の30倍程度の窒素酸化物が排出されるとされています。(出典:「恐るべき自動車排出ガス汚染」)
 バスの場合、少なく見積もって半分としても15倍ですから、バスの窒素酸化物排出もあながち無視できません。もちろん、ハイブリッドバスやCNG化、軽油の低硫黄化によって大幅な削減が可能ですから、一概に否定はできませんが。
 また、鉄道の場合にも、ディーゼル動車では同じ問題が発生しますので、一筋縄でいく問題ではないですね(ディーゼルカーの脱硝(二酸化窒素の除去)は難しいとされています。重要な問題なんですが )。

 さらには、自動車に乗られる方は体感されるのですぐわかるでしょうが、走行速度が遅い(=渋滞している)と燃費が悪くなりますね。これはつまり排出ガス量が増えているということですから、渋滞解消策が環境改善に資するというのも的外れな議論ではないのです。
 実際、ポートランドでは、TDM施策の一環として時差通勤などを取り入れることで大気汚染を押さえようとしています。

 LRT整備を環境問題への答えと考えるのであれば、単純に一つ二つの施策をやっても意味は無く、いろいろ組み合わせることが重要ですね。

 ちょっとマニアックすぎました。この問題に突っ込み出すとこういう議論になっちゃいますね。
 僕も大気汚染は専門外なのでそれほど詳しくはないので・・・。あいまいですみません。

 ではまた。

燃料電池車とLRTの比較
 投稿者:とも氏 投稿日:00/11/16(木) 18:39

 ともです。
 肝心なことを書き忘れてしまいました。

 燃料電池車とLRTの比較なのに、一般バスとの比較をしてしまいました。
 その後に書いたのですが、うっかりコピーミスで消してしまいました。

 燃料電池車は打越様が書かれていますが、メタノールでも何でも二酸化炭素の排出は考えられますね。
 二酸化炭素排出量が半分とすると、バスの場合、二酸化炭素排出量は鉄道よりも少なくなることが考えられます。
 とはいえ、前にも書いていますが、鉄道に厳しい前提でバスの2/3のエネルギー消費ですから、ほぼ同程度と考えるか鉄道が優位という考え方もできますね。

 ただ、燃料電池車については実用化の目途はついたものの、実際市販への道のりは長いでしょうね。
 トヨタがプリウスを出したときも、ハイブリッドシステムが実用化されるようになって何年も経ってますからね。

 僕が今、気になっているシステムはアルコール燃料の「ガイアックス」ですね。
 二酸化炭素排出量は変わりませんが、窒素酸化物や硫黄化合物の排出量は少ないですから、ガソリン車から燃料電池車への移行過渡期用代替燃料としての期待がもてます。
 すでに市販され、しかもガソリンエンジンでそのままOKというのも強みですね。
 バスのCNG化とともに期待できますね。

 では。

Re:燃料電池車とLRTの比較
 投稿者さいたま市民@西浦和氏 投稿日:00/11/16(木) 22:34

 こんばんわ。みなさん。

 知っていることと感想を少し。
 燃料電池は鉄道車両に応用しようとしているのでしょうか。検索かけてもちっともかかりません。企業秘密になっているのでしょうか。
 水素燃料は、ガソリンスタンドの店舗網で販売できるでしょう。メタノールだったか忘れましたが、アルコール類に混入してこれを燃料電池の水素として用いるのでしたね。水素を抽出するシステムの研究をしている状態でしたか。ガソリン販売会社には大きな負担はかからないのではないしょうか。石油精製企業も燃料電池用燃料の生産を始めることができれば、燃料電池車の普及が進むことになるでしょう。ニワトリか卵状態ですかね。自動車に比べれば鉄道の場合は、給油箇所が少なく、供給しやすいと思うのですが。
 自動車生産企業の構造変化は現在進行中ですね。武蔵村山や座間、岡崎など自動車産業都市での変化が話題になっています。どうでしょうか、日本の中小企業はこの変化に耐えられるでしょうか。でも、耐えられなければ日本全体が沈みますね。
 石炭から石油へ、そして水素燃料、自然エネルギーの小規模化という流れに私たちはあります。ただ、新技術は大企業の中で完結するように技術が革新しているように見えます(その方が企業の直接の利益が大きいでしょう?)ので、案外変化が速く進むとも思えます。さらに、かまどや七輪、石油コンロ、ガスコンロ、電熱器、電磁調理器のように、新技術と旧技術は共存する時期がありますので、急激な変化を期待しても、現実は漸進的に進むものです。ガソリンの無鉛化なんていう実績もあります。たしかに、実に文学的な終焉を迎えた技術もありますね。例えば鉄道動力における蒸気機関のように・・・。
 それぞれの技術の長所短所を吟味した上で、推進するべきであることは確かでしょう。また、技術の多様化を維持する事も大事でしょう。すべて石油、すべて原子力、すべて燃料電池というわけには行かないのではないでしょうか。むしろ問題なのは、日本の大都市の緑の少なさのほうだとおもいます。

 ちなみに私の家の屋根には太陽電池が載っていますし、車の燃料は「ガイアックス」です。

 未来は何気なく来ます。
 乱筆ご容赦。

ガイアックス紹介ページ http://www.d5.dion.ne.jp/~gaiax/index.htm

Re:燃料電池車とLRTの比較
 投稿者打越健太郎氏 投稿日:00/11/18(土) 01:06

 打越健太郎です。東京で、「ガソリン車が消える日」(宝島社『宝島社新書』舘内端氏著)という本を入手して読んで参りました。この本によると、現時点でもっとも実用化に近い所にあるのはメタノールによる燃料電池車ですが、米国カリフォルニア州(米国で1番、規制が厳しい)の基準では、これは完全な「無公害車」とは認められず、メタノール燃料電池車10台を無公害車7台と換算するということです(同書105ページ)。メタノール燃料電池は二酸化炭素を少なからず排出する、ということなのでしょうね。
 また、同書117ページでは、「地球温暖化は(中略)技術開発だけで解決するのはむずかしいというのが、専門家の大かたの意見」とあり、炭素税やロードプライシングなどの導入をも提言しています。つまり、「燃料電池車だから自家用車を今と同様に使い続けてOK」とは言えない、やはりTDMなどを実施して、自動車そのものの数を減らすべきだ、という主張がされています。
 もっとも、この本は具体的なデータがあまり記されておらず(多分、実証データそのものが不存在)、これだけではこの議論に賛成も反対も出来ませんので、現在、もっと詳しい文献を取り寄せ中です。近々、総括したいと思います(ところで、このテーマは「中量輸送システム」に関係しているのでしょうか?)。

〔自動車〕自動車の将来に関する私論・燃料電池車を中心として ../traffic/log015.html#5

環境保護と産業保護
 投稿者
エル・アルコン氏の ホームページ 投稿日:00/11/16(木) 19:47

 燃料電池自体は、初歩のものはアポロ計画時に既に実用化されており、家庭用小規模発電プラントとしての普及もありますから、要は小型、低温燃焼というクルマに合ったスタイルの確立という段階です。

 結局現在のクルマの燃費と公害対策が、オイルショックと公害訴訟という「外圧」により急速に進捗したことを考えれば、環境問題という「外圧」が錦の御旗になれば、一気に進むでしょう。
 ちなみに、各車がターゲットにしている2003〜2005年の上市というスケジュールですが、現在市場にいるクルマたちの、次のフルモデルチェンジにだいたい重なるというところまで来ています。

***
 ところが進まないのは何故か。
 結局、産業構造の激変をどう解決するかという問題に行き着きます。これを欠くと、既存技術側の抵抗による新技術の普及阻止となり、蓄積のない新技術側は干されつづけます。

 つまり、燃料電池自動車は内燃機関ではなく電気動力であり、化石燃料ではなく水素燃料で動くのですから、内燃機関関係の部品メーカー、下請け企業や、石油業界といった産業が一夜にして壊滅する危険性を併せ持っています。

 実は我が国において、この手の破局は先例があります。それも、環境とエネルギー問題絡みで発生しているだけに、厄介です。
 鉱山で採掘していた硫黄が、石油脱硫の回収硫黄にシフトして硫黄鉱山が壊滅した昭和40年代前半。
 また、オイルショックによる電力費高騰で、輸入インゴットに対する競争力を喪失してアルミニウム精錬業が壊滅した昭和40年代後半。
 いずれも外的要因でいとも簡単に産業自体が消滅しました。

 とはいえ、産業保護のために環境保護を等閑にはできません。
 産業構造の転換を図りつつ燃料電池自動車のシフトを強力に推し進めることが必要です。
 #この場合はEVや新燃料といった受け皿となる新産業があるのが強み。

***
 環境問題の切り札を切るオプションをクルマが握っていることを無視して、まだまだとか言っていると間に合わない可能性があります。
 LRTに限らず、公共交通全般に、ではクルマを排除したらユーザーの利便性やライフスタイルはどうなるというビジョンがほとんど見られないだけに気になります。

やはり公共交通論のカギは「共存」「利用の仕方」「選択の多様性」
 投稿者とも氏 投稿日:00/11/16(木) 22:48

 ともです。

燃料電池自体は、初歩のものはアポロ計画時に既に実用化されており、家庭用小規模発電プラントとしての普及もありますから、要は小型、低温燃焼というクルマに合ったスタイルの確立という段階です。

 そういえばそうですね。映画の「アポロ13」に出てきましたよね。燃料電池。

 とはいえ、本当に2003年〜2005年に実用化できるのでしょうか。疑問です。
 その理由としては、産業界の圧力とか何かよりもその性能です。
 たしかにEVの最大の問題である走行距離は克服できますが、今のEVのモーター性能程度しか出力がないのであれば、乗用車レベルでの実用化が精一杯でしょう。とすると、バスやトラックのような大出力車への転用は厳しいですから、今の大気汚染の主因であるディーゼル車に対して何ら代替機能を有しないわけです。
 もちろん、鉄道車両なみの強力モーターを搭載できれば別ですが。自動車に搭載できる高出力モーターってあるんでしょうか。LRTに使う小型モータなら可能かもしれませんが、いってみれば1Mで動かすことになるので、出力的に厳しいでしょう。今の小型電気バスの性能では高速走行や加速に問題有りですね。

 確かに、二酸化炭素の排出量の削減に寄与するかもしれませんが、その他の物質の削減に寄与しなければ、今の道路公害の抜本的な改善には寄与しないことになります。

 LRTに限らず、公共交通全般に、ではクルマを排除したらユーザーの利便性やライフスタイルはどうなるというビジョンがほとんど見られないだけに気になります。

 これには賛同します。全くその通り。
 といっても、これを言う相手がいないのが難しいですね。
 行政はそんなことは言ってません(LRTを入れようとしている自治体の多くは自動車との共存をうたっています)からね。

 やはり、カギは「共存」「利用の仕方」「選択の多様性」です。
 これを抜きに、LRTを導入だ!と叫んでもだれも相手にしませんから(そういう意味で長野のトラフィックセルや宇都宮のゾーン、ポートランドのTDMは優れてますね。かしこく自動車を使おうとしてますから) 。

 では。

〔LRT〕海外における今日の在り方…スイスに見る
 投稿者:打越健太郎氏 投稿日:00/12/03(日) 21:54

 打越健太郎です。本日(12月3日)の「日本経済新聞」の38面に「路面電車 スイス快走 渋滞・大気汚染緩和で脚光」『ジュネーブ チューリヒ 路線を復活・新設』という記事が出ています(「世界は今 交通」というシリーズらしい)。
 ジュネーブでは全廃寸前、90年にはわずか1本しか残っていなかったトラムが(東京と同じですね)すでに1本復活、そしてさらに2004年までに本格的復活に取り掛かるとのこと。バスよりも輸送人員が多いと言うのが売り物になっているようです。
 一方のチューリヒでは、これまでわずか1本をトロリーバスに置き換えただけ、ほぼ全盛期のままの路線網が残っているとか。チューリヒの交通局幹部は「環境問題への深い配慮」を自慢しているとか。こちらでも更なる延長計画が決定したとの事。中心環状部の無料化が検討されているとの事です。
 これらスイスの都市を見るに、「環境問題」が今日においてもキーワードになり続けているというのが注目に値します。燃料電池の開発が間近になった今日においてもなお、ですよ。僕が予想するに、ヨーロッパにおいて「環境問題」とは、硫黄・窒素酸化物もさる事ながら、主に二酸化炭素を指すのでしょうね。スイスは山国で海面上昇とは無関係ですが、反面氷河が溶けたりしては大変です。ヨーロッパにおいては、日米で忌避されているディーゼル車が今日なお「二酸化炭素の排出量が少ない」と愛用されていることからも、その傾向が伺えます。燃料電池といえども、メタノールやガソリンを燃料にする限りにおいては二酸化炭素と無縁ではありません。そういった意味で、「自家用車の多用は環境問題の改善になり得ない」と考えているのではないでしょうか。

 翻ってわが国においては、最近、燃料電池が大変に評判になっています。これは一面において確かに正しく、ディーゼル車の置き換えが成功すれば、今日問題となっている排気ガス問題はかなり改善するのですから。当然、燃料電池車への置き換えは積極的に進めるべきです。しかし、それだけでは二酸化炭素問題が解決しない事を弁え、スイスに学んで自家用車の抑制・公共交通への誘導を図る、ということもまた、忘れてはならないのではないでしょうか。

【自動車】自動車の将来に関する私論・燃料電池車を中心として ../traffic/log015.html#5

〔LRT〕既存鉄道並行路線の是非を問う
 投稿者:打越健太郎氏 投稿日:00/11/30(木) 23:54
〔LRT〕既存鉄道並行路線の是非を問う
└Re:〔LRT〕既存鉄道並行路線の是非を問う
└東京で急行サービスが新たに必要な区間って?
 └Re:東京で急行サービスが新たに必要な区間って?

 打越健太郎です。お久しぶり。実はここ数日、都市交通の問題と環境・エネルギー問題について俄勉強しております。特に後者に関しては、数日中に常設掲示板において「クルマの将来(特に燃料電池自動車)」というテーマでの議論を致したく思っておりますので、乞うご期待…

 さて、今日は少々LRTに関する提言を行いましょう。551planning様の掲示板のうち、「空港アクセス」掲示板において東京1号線(都営浅草線)、「都市交通デザイン」掲示板において東京4号線(丸ノ内線)における急行運転を提案致しました所、「都市内近距離の移動に支障を来たす」という御反論を頂戴致しました。確かにこのご意見は正鵠を得たものと心得ます。実際、都内で快速運転を行っているのは僅かに中央線と埼京線、それに東京10号線(都営新宿線)のみ、前2者は複々線で、並行する各駅停車がありますし、後者に関してはおそらく、ほぼ並行する総武線(各駅停車)を複々線に見たてて行っているのでしょう。その他の鉄道線で通過運転を行っているのは、悉く郊外路線ですね(東京5号線〔東西線〕も快速区間は郊外と言えなくもないでしょう)。現状では地下鉄の都心部通過運転は望ましくないかも知れません。

〔地下鉄〕東京4号線(丸ノ内線)の改良案 ../citydesign/log211.html#3

 但し、それがあるべき姿かと言えば、少々問題があるかと思います。かつて地下鉄は「高速鉄道」と呼ばれていました(現在でも営団の正式名は「帝都高速度交通営団」ですね)。路面電車に比べて高速で走ることを売り物にしており、実際路面電車に比べてかなり速いといえます。その裏返しで路面電車に比べ、かなり駅間距離は長いですね。また、路面電車に比べて電車に乗るまでに時間もかなりかかります。したがって、本質的に地下鉄は都市内の近距離移動には向いていないと言えます。それは路面電車ないしバスの役割です。
 そこで提言したいのですが、LRT導入を論ずる際、地下鉄のうち都市内の近距離移動の利用が多い路線に並行するものの整備を考えては如何でしょう。停留所も地下鉄より増やすことが出来ますし、東京1号線・10号線などは心置きなく通過運転が可能になります。
 場所によっては、利用の少ない地下鉄駅を廃止することも出来るかもしれません。一見無駄な二重投資のようで、実際には地下鉄に「高速鉄道」たる本来の姿を取り戻させることが可能になります。また、さすがに二重投資は無意味というのであれば、並行するバス路線によって同様の施策を行っても構いません。東京などの大都市では「急行地下鉄」の導入を要望する声もあるやに聞き及んでおりますが、公共事業批判が強く、中央・地方財政も厳しい今日、新たな地下鉄の建設は事実上無理でしょう。しかし、LRT整備によって既存の地下鉄を「急行地下鉄化」するのであれば、かかる費用は相当に安く出来そうです。LRT(および都市新バス)整備対象の1つとして、「地下鉄並行路線」を提言致します。

京急・品川〜京急蒲田間の普通を基幹バス化できる? ../traffic/log062.html

Re:〔LRT〕既存鉄道並行路線の是非を問う
 投稿者さいたま市民@西浦和氏 投稿日:00/12/02(土) 00:40

 こんばんわ。打越様。KAZ様。

 打越さん、シンポジュウムでの司会、ご苦労様でした。
 さて、地下鉄と路面電車を並行させるというご提案ですが、都電が廃止される前は、どの路線も地下鉄と路面電車が道路の上下に両立していたのです。「都電の代わりに地下鉄」という思想で建設された地下鉄は、都営三田線からです。結構長距離の路線だった都電志村線を廃止して、代替バスとし、高島平ニュータウンと都心を結ぶ地下鉄へと移行したわけです。ですから三田線は地下鉄の中では比較的駅間が短いのです。
 東京最初の地下鉄である銀座線(比較的小型の電車ですね)でも、その上を都電1号系統が走っていたのです。銀座線の1駅の間に都電の停留所が2〜3つづつぐらいでいたかね。

 都電荒川線の延長は、13号線の建設とのセットでという研究もありましたね。これが実現、成功すればいいのかもしれませんが。現在のバス路線でも池袋サンシャインから渋谷行きがありますね。明治通り沿線も高層住宅や商店が集積しています。
 バスに頼らない形で、並行路線を建設し、うまい具合に乗り換え券などができれば、両立は可能ですね。培養線という言葉もあります。

 乱筆ご容赦。

東京で急行サービスが新たに必要な区間って?
 投稿者KAZ氏 投稿日:00/12/01(金) 01:00

 ども。

 先日は丸ノ内線の急行運転で反対意見を書きましたが、あれは「速達サービス自体が必要ない」という訳ではなく、丸ノ内線という複線の限界で運用されている路線で、緩急それぞれの列車を運行するのは無駄が多い・若しくは不可能ということで投稿しました。しかし路線自体を「急行路線」とするような形態なら話は別で、そうなれば「スピードの速い並行ダイヤ」が可能なのでラッシュ時間帯でも速達サービスが可能になりますね。大阪の御堂筋線は将来の複々線化(急行線増設)を見越して軌道を道路東側に偏らせて敷設し、西側にもう一本トンネルを並行して掘削できるようにしています。
 しかし東京の既存線を急行路線に仕立てるとしても、軌道設計が高速向けになっていないはず(恐らく80km/hでカーブの建築限界は設計されているはず)ですし、ルートの設定自体もカーブが多くて高速走行は期待できませんね。単に駅をいくつか廃止したとして、その分速くなるだけになりそうです。思い切った駅廃止ができれば効果も上がりそうですが、LRTを緩行線・地下鉄を急行線として機能分化するとしても乗換ロスが大きい(地上の電停から地下駅への移動)のであれば速達効果より乗換抵抗の方が大きいかも知れません。
 あと都営新宿線の急行運転ですが、ここの急行は車輌運行効率を上げて運用車両数を減らすといった目的試験でもあるらしいです。本来なら千葉県営鉄道区間に新車庫を建設してそこに車輌を置く計画だったのが、本八幡以遠への延長がなくなり車庫収容力がが不足するとして、現有車両数を維持しながら輸送力を上げるために「急行運転での運用効率化」を実地試験するといった意味合いで運転されているようです(学術誌に都交職員がレポートを発表していた記憶があります)。

 東京で急行サービスが新たに必要な区間ってどういった部分なんでしょうね。業務集積地同士を結ぶ区間(大手町・丸ノ内から新宿や恵比寿・渋谷バレイ?)や大消費地同士の回遊性創出(池袋・新宿や渋谷から銀座?)、新都市と在来都心との連絡(お台場やさいたま新都心と大手町・新宿?)といった区間でしょうか。そのうち最後の新都市との連絡は郊外鉄道の役目だとして、他の区間での急行サービスの可能性はどうなんでしょうね。平日だけに需要が集中する業務集積地同士の連絡は新たな路線整備(建設)は採算的に厳しいでしょうから既存路線利用となるのでしょうか。しかしルートとして使えそうな路線はどれも線形が厳しそうですね。地上部でのLRT整備可能性も含めて、実現の可能性はあるのでしょうか。大消費地同士の連絡も同じような状況ですね。

 東京在住ではないので正直ピンと来ないのですが、どんなもんなんでしょうか・・・

Re:東京で急行サービスが新たに必要な区間って?
 投稿者エル・アルコン氏の ホームページ 投稿日:00/12/02(土) 13:53

 「急行地下鉄」ですが、NYなんかでは複々線や三線区間を利用した設定により比較的有効に使われています。
 ただ、東京で見ると、どうかなという気はしますね。
 例えば半蔵門線は銀座線のバイパス、急行線としての役割を持っていますが、やはり利用は銀座線の方が圧倒的に多いです。
 有楽町線も丸の内線とそうした関係になっていますが、こちらも同様です。

 つまり、都心部ではターミナルなどの拠点間速達よりも、沿線の目的地に応じての利用がメインということであり、それを踏まえて定時性の問題もクリアすればLRTでも、地下鉄駅からの徒歩時間を含めたトータルで勝ち目が出てきますし、逆に不便になった「急行地下鉄」に閑古鳥が鳴く懸念もあります。

 もちろん、専用レーンを持った都バスで充分ではというのが持論ですが。

〔LRT〕異軌間直通の実験を急げ
 投稿者:打越健太郎氏 投稿日:00/12/01(金) 00:50
〔LRT〕異軌間直通の実験を急げ
└Re:異軌間直通の実験を急げ
 └Re:異軌間直通の実験を急げ
  └Re:異軌間直通の実験を急げ
〔LRT〕異軌間直通に関して

 引き続いて、打越健太郎です。先日の「21世紀の都市交通を考える」シンポジウムは、お陰様をもちまして成功致しました。確かに発言者の中には賛否が分かれるような意見も無いではありませんでしたが、それも今後の議論の呼び水と考えて頂ければ幸いです。
 さて、そのシンポジウム、詳細報告は後日とさせて頂きますが、基調講演(里田啓氏)の中で、ドイツにおけるLRTと既存鉄道との直通が紹介されていました。ドイツはこの「鉄道直通」が得意で、有名な所ではカールスルーエ(初の直通例)、ザールブリュッケン(交直流LRVによる鉄道直通)、そしてツヴィッカウ(郊外鉄道のディーゼル車が市内直通)があります。特に後2者は日本においても導入が期待されますね。カールスルーエにおいては鉄道との直通開始後、市内線の利用者が倍以上になり、「市街地まで入れない」という欠点を克服すれば、どれほど軌道系交通軌間が利用されるようになるかを如実に現しています。また、ツヴィッカウは人口僅か11万の小都市で、こんな都市でも鉄道との直通を行うことによって軌道が必要とされるほど市街電車の利用が増える、という驚くべき事実の報告もございました。今日ジリ貧のローカル鉄道なども、起点・終点などの市街地に直通しては如何か、などと思っております。

 さて、ツヴィッカウにおける鉄軌道直通は注目に値する、というのはディーゼル車による直通だけではありません。もう1つ、異軌間直通を行っている、という点も注目です。具体的には鉄道線は標準軌(1435mm)、市内線はメーターゲージ(1000mm)ですが、レールを3本引くことで直通を行っています。この「3本レール」という方法は日本の路面電車を活性化させるために是非とも取り入れたい手法で、これによって函館(ここは偏軌1372mm)・広島・長崎・鹿児島(以上3路線は1435mm)などの路面電車がJRに直通することが可能になります。また、この度の西鉄北九州線の廃止で乗り入れ先を失ってしまう筑豊電鉄(ここも1435mm)でも、同じことが出来そうです。
 実はこの「3本レール」、今日でも小田急と箱根登山鉄道との間で行われている他、前例はちゃんと日本にもあります。京都市電は1435mm軌間でしたが、最初に開通したN電だけは狭軌(1067mm)でした。並行区間もあったのですが、そこでは3本レールでした。また、川崎市電や京急大師線も貨物列車を走らせるために3本レールを使用、特に後者はつい先日まで貨物列車が走っていましたから、ご記憶の方も多いと思われます。でも、「技術は既に確立している。だから即刻3本レールでJRと路面電車を直通させてLRT化を図れ」と言っても、多分経営者としては躊躇があると思われます。京都市電は昔の話で、しかも両者は同じ経営主体でしたし、川崎は直通列車が貨物のみだったし…と。

 そこで、今日においても3本レールによる直通に問題が無いことを実証するための実験を提言したいと思います。この「3本レールによる直通」をもっとも真剣に考えているのは広島でしょう。JRに直通することは広島電鉄の側でも考えているようですし(参照:「鉄道ピクトリアル」2000年7月増刊号)、広島県のプランにもなっています。そもそも広島電鉄は鉄道線(宮島線)との直通に関してはノウハウもあるし、またJR直通によって可部線に直通すれば大町駅に達するなど、アストラムラインと張り合うためにも非常に有益ですからね。ただ、いきなり広島のようなところで試行して万が一手違いなどが起こると、何せ日本一の会社でのことですから、やたらインパクトが大きくてLRTに対する信頼を裏切ることにもなりかねません。まあそんなことは無いと思いますが、最初にやるにしては広島は規模が大きすぎるでしょう。
 僕としては、熊本における実験的導入が望ましいと考えています。と言っても、JRに直通するのではなく、私鉄の熊本電鉄への直通です。熊本電鉄はローカル私鉄ながら、フリークェント運転などの熱心な経営が功を奏して利用が増え、赤字脱却まであと一歩です。
 ですからこの実験は、単なる実験ではなく、事業としても成立するはずです。しかも上熊本駅で両者は接続しており、路線建設は殆ど不要です。さらに言えば、支線である上熊本〜北熊本間は折返し運転だけ、本線とは直通していませんから、実験的導入には最適です。具体的には市電の上熊本駅前から軌道を70m延長、さらにここから熊本電鉄の北熊本まで3本目のレールを敷設…念の為に申しておきますが、改軌ではありませんよ。あくまでも3本目のレールの敷設です…して、北熊本までの直通を行います。電鉄のほうは高床式の普通の電車ですから、駅には低床ホームをも建設し、高床ホームとの間をスロープで結ぶなどのバリアフリー化も実験すべきでしょう。もしも幾つかの方法が考えられているなら、各駅毎に違う方法を採用すれば、効果のほども確かめられます。
 ダイヤに関してですが、電鉄はこの区間、ラッシュ時には15分間隔、閑散時には30分間隔ですが、終日15分間隔として実験するのが宜しいでしょう。1時間当たり直通は2本、残り2本はこれまでの高床電車を当てます(混在させないと実験になりません)。これで問題点があるかどうかを確かめ、もしあるようならそれに対する改善の手法まで編み出せれば、今後日本のあちこちで、この「3本レール」による直通が行われるようになることでしょう。
 なお、「フリーゲージ台車」の開発が進んでいますが、果たして低床車に採用できるか現時点では不明であり、また可能であってもかなり高価で、なかなか事業者には手が出ないでしょうから、この「3本レール」、実験して手法を確立することに損は無いはずです。

 おまけ:この提言を書いている最中に12月1日になりました。僕は12月2日生まれで、法律的には誕生の前日に歳をとりますから、僕は今日から26歳です。今後とも宜しく…

Re異軌間直通の実験を急げ
 投稿者KAZ氏 投稿日:00/12/01(金) 01:12

 ども。誕生日おめでとうございます!

 さて、3線式ですが、これは広軌・狭軌それぞれの軌道中心点がずれることによる建築限界やホーム接触限界の問題が出ますので、狭軌側の車輌の設計に気を付けないといけなくなります。それさえクリアすれば大丈夫でしょう。小田急と箱根登山なんかはどうしているのでしょうね。あと積雪地では複雑になるポイント部分の雪害を恐れて3線を避ける事例(奥羽線・秋田新幹線の異ゲージ単線並列)もありますので、鹿児島なんかでは桜島の灰害なんかを考慮する必要もあるかも知れませんね。

 まずは少しだけレスを。

Re:異軌間直通の実験を急げ
 投稿者打越健太郎氏 投稿日:00/12/03(日) 14:25

 打越健太郎です。今日は白昼のレスを…

3線式ですが、これは広軌・狭軌それぞれの軌道中心点がずれることによる建築限界やホーム接触限界の問題が出ますので、狭軌側の車輌の設計に気を付けないといけなくなります。それさえクリアすれば

 うーむ、これはますます実験の必要性が出てきましたね。熊本も広島も、そして僕が挙げた各経営主体も、前もって3本レールによる直通を考慮していたわけではありませんから、いきなりレールを足せば直通できる、といった安易なものではないかもしれません。僕の提言が実現すれば、日本におけるLRTのみならず鉄道全体のシームレス化に大いに有益でしょうから、ここは鉄道に携わる諸賢の叡智を結集したい所、具体的には小田急・箱根登山鉄道・JR東日本(山形・秋田新幹線の一部は貨物列車のために3本レール)、それについ先日まで3本レール区間を持っていた京急の関係者に呼びかけ、プロジェクトチームを作りたいですね。無論、ここに熊本市電・熊本電鉄・JR西日本・広島電鉄、その他異軌間直通を考えている鉄道会社(ex.阪急・大阪市交通局・南海)の関係者を結集させるべきでしょうか。折角の大同団結ですから1回きりのものに終わらせず、国土交通省の音頭で常設チームを設ければ、さらにいっそう有益かとも思われます。

積雪地では複雑になるポイント部分の雪害を恐れて3線を避ける事例(奥羽線・秋田新幹線の異ゲージ単線並列)もありますので、鹿児島なんかでは桜島の灰害なんかを考慮する必要もあるかも知れませんね。

 これも難問ですね。雪ですら問題なのに、火山灰では決して溶けませんから。どうすれば良いのでしょうか。あと、「3本レール」ならぬ「4本レール」というのも理論的には有り得るはずですが、これが取り上げられないのは何故でしょうか?

Re:異軌間直通の実験を急げ
 投稿者KAZ氏 投稿日:00/12/03(日) 15:13

 ども。

 4本レールですが、山形新幹線建設の際に3線式の欠点(軌道中心点間隔の偏倚)を避けるために検討されましたが、ポイント構造が複雑になるので採用されませんでした。

 異ゲージ間の直通については特にプロジェクトチームを創らないといけないような大事業でもないでしょう。問題になるのは線路を一から引き直すような大工事(枕木をそれに対応したものに交換する必要があり、それを考えれば新線建設に近い工事になる)と保守の費用分担をどう見るか、この辺りのことですから、当該社同士で打ち合わせればいいでしょう。

〔LRT〕異軌間直通に関して
 投稿者:打越健太郎氏 投稿日:01/01/06(土) 11:18

 打越健太郎です。こんにちは。遂に省庁再編が実現しましたね。運輸省と建設省とが合併し「国土交通省」が成立致しました。これまで軌道は運輸省と建設省との共管でこれがLRT導入の際に煩瑣な手間を要していた訳ですが、今後は一般鉄道と同様のスッキリとした管轄になります。現在の交通事情や技術の進歩に合致していない軌道法の改正、さらには鉄道と軌道とを一括して取り扱う法律なども出来るかもしれません。期待したいところです。

 さて、先日、我が国でのLRT導入への一助となるべく「熊本で異軌間直通の実験を」と申しましたが、その際に「3本レールによって直通した場合、ホームと車両との間に隙間ができてしまうのではないか?」という点が課題として残っていました。で、先日も使いました参考文献「都市と路面公共交通 欧米に見る交通政策と施設」(西村幸格・服部重敬著、学芸出版社刊)には、それに関する記事も載っておりました。欧米でのLRT導入の際、しばしば3線化による異軌間直通は行われているのですが、やはりホームと電車との隙間に関しては配慮が行われているようですね。具体的には、

1,3本目のレールをホームの反対側に敷く
 これによってホームと電車との隙間を出来る限り小さくしているようですね(因みに、日本でも大阪市営地下鉄や営団銀座線などの第3軌条式地下鉄では、電気の通っている第3軌条をホームの反対側に設置しています)。

2,一部通過運転
 どうしてもホームと電車との隙間が空いてしまう場合の手です。安全な乗降が難しい停留所を通過してしまうわけです。我が国でも、かつて京阪京津線がこれに似た手法を使っていましたね。京都市内の併用軌道区間では、低床の各駅停車だけが客扱いを行い、高床の準急は京阪三条まで通過運転を行っていました。これはかなり使えそうな手法で、例えば熊本で市電が電鉄線に直通した場合も、お客の多い停留所には高床・低床両方のホームを設け、利用の少ない停留所にはどちらか一方のホームだけを設ければ良いわけです。

 これらの手法は当然、我が国でも使えるのですが、我が国ではこれとは別の手法も用いられています。以下にそれらも紹介致しましょう。

3,別のホームを使う
 箱根登山鉄道式の手法です。箱根板橋駅などでは、そもそも登山電車と小田急のホームは別になっています。無理に両方に対応できるホームは造らず、線路だけを共用しているわけですね。 

4,ステップ
 山形・秋田新幹線の方法です。東北新幹線の各駅では、在来線規格の400系・E3系はホームと電車との間に隙間が生じてしまいますので、ステップを張り出します。そもそもLRTの売り物に「バリアフリー」というものが含まれていますから、車椅子や足の悪い方のために、少しの隙間も生じさせないためには良い方法でしょう。

と、こういった手法があるわけですが、何か他にもありましょうか。これらの手法を活用して、早く我が国でも異軌間直通という方法を確立し、以てLRT導入に弾みをつけてもらいたいものです。

2004.11.02 Update


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