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次世代都市型ミニ輸送機関?“エコライド”を見る~東大生研千葉実験所公開より

投稿者---551planning(2010/11/18 17:00:00)

皆様は、“位置エネルギーを活用した世界初の省エネ型都市交通システム”の実験線が千葉にあることを御存知でしょうか…東京大学生産技術研究所(以下東大生研)と泉陽興業のコラボによる、その名も「エコライド」。千葉市稲毛区の東大生研千葉実験所内に約100mの実験線が設けられています。
「泉陽興業」たる社名でピンと来られた方はさすがですが、主に観覧車やジェットコースターといったレジャー施設用遊具の製作を手掛け、現在ではレジャー関連施設のトータルプロデュースから都市交通システム提案にまで幅広い展開を行っている会社。1985年のつくば科学万博ではジェットコースターの技術を活用した小型モノレール「ビスタライナー」を製作※、その後新軽便交通システム“ニュー・ビスタライナー”を企画し特許申請中とのこと。それらは鋼管レールをウレタン車輪で3方から保持するというジェットコースターの走行システムを援用したものですが、ジェットコースターの原理というべき高低差=位置エネルギーの活用、すなわち適度な斜度による交通システムへの昇華を狙ったのが今回の「エコライド」になる-というわけですね。

※蛇足ながら、「ビスタライナー」はその後吹田のエキスポランドに移設され園内遊具として稼動していましたが、2007/05の園内ジェットコースター死傷事故に伴うエキスポランド休園→経営悪化による閉園に伴い2007/12で営業終了、その後施設も撤去されています。エキスポランドは同社の関連会社でもあっただけに、事故は同社にとっても大きなインパクトとなったとしても過言ではないでしょう。

話を戻して、当方がその存在を知ったのは今年4月。テレビニュースでちらと見かけたのですが、調べてみると2006年から新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の支援を受け研究がスタートし、2008/10に実験線が完成。2010/04は第2次車両完成に伴う報道公開で、千葉実験所サイトによれば毎年11月に一般公開を行っている-とのことで、指折り数えて待っていました…というのは大袈裟ながら、当時メモ書きしていたスケジュールを直前にチェック、内心ワクワクしながら当日午後、最寄のJR西千葉駅前に降り立ったのでした-。


千葉実験所は地図的には千葉大学西千葉キャンパスの一角といった感じですが同大学は1949/05発足、もとは1942/03設立の東京帝国大学第二工学部を端とし、千葉大発足と同時に東大生産技術研究所も発足、1962/03の研究所六本木移転に際し大型研究のための附属研究施設たる千葉実験所に改組され現在に至っています。なお六本木の施設は2001/04までに駒場第2キャンパス内に移され、政策研究大学院大学キャンパスおよび国立新美術館に生まれ変わりました。
受付を済ませいざ構内へ-敷地の多くを千葉大に移行したとはいえ9.2haもあり、研究棟の間隔もたっぷりとられていて思ったよりも閑静な空間を進んでゆきます。

まずは交通関連の研究概要をチェック。エコライドのほかにも「サステイナブルITSの展開研究」や「ビークルシステムダイナミクスの展開」、「モビリティの制御と信号処理」「千葉試験線を活用した鉄道技術に関する包括的研究」といった刺激的?な文言が…時間の都合で展示パネルを斜め読みするに留まりましたが、展示物で目を惹いたのは「乗降位置可変型ホーム柵の開発」-立体感のあるユニットが左右に動くことで扉数や車両長の差異に対応するというもの。2012年度の商品化を目指すとのことですが…さて。
ところで、“千葉試験線”はエコライドのそれとは別で、LRT等の台車・車両開発を念頭に2007/11に敷設された普通レール単線で107m、緩やかにカーブを描いていました-線路伝いに進むと、本物の鉄道車両台車が置かれていました。京阪・阪急から寄贈されたものだそうで。 敷地内にはこのほか“青点滅”といった新機能の研究を行う実験用交通信号機や、都バスから転じた実験用バス(という名の物置?)が居たりとなかなかのワンダーランドっ振りです。

さて、いよいよエコライド実験線へと向かいます。実は受付で貰った資料には公開エリアとしての記載がなく、見ることができても動いていない可能性も…と思っていたのですが、研究概要展示のところに『13時からのエコライド試乗時に忘れ物…』なんてな貼紙がなされていて、一安心するとともに小1時間ほど早く来ていればひょっとして乗れたのかな?なんて思ってみたり。
ともあれ実験線に到着。まず目に入るのは実験車両、ホワイトベースに大柄の初代はブルー、ひとまわり小さくなった2代目はグリーンの帯を巻いています…それにしても、こうしたハコモノ車両による新交通システムは、当方が子供の頃のおぼろげな記憶で重工業系だか商社系だかでも似たような感じがあった印象、それらはたいがい実用化の段には大仰なシステムになる(というかそれでないとペイしないし、それでもペイできない)-という感覚があるのですが。
なお当方が居た間に車内見学や乗車などはできなかったものの、さすがに試験車両、素人目にも簡易な構造であることが伺えます。なにしろ初代車両を下から見上げた際に木製であることがはっきり確認できたくらいですから-無論このシステムでは軽量化が大きな課題のひとつでもあり(2代目は空気抵抗考慮等を含め小型化されている)、一方でジェットコースターのように定員制というわけにもいかなさそうという意味では多客時のスピードコントロールも大きなポイントとなりましょう。

エコライドエコライド

実験線はR=15mの90度カーブを挟むL字様構成、カーブの先のA駅が一番高い高度4m弱、カーブ区間を含め最大8度の斜度を下り、軌道面で高度1mほどのB駅に滑り込む-というものです。それぞれの駅はあくまで鉄骨組みの簡易なものですが、軌道はまさしくジェットコースターのそれのような鋼管レール。車輪は3方からレールをくわえ込んでいるほか、車両下部中央にスケート靴のブレードのような金属板があり、レール中央部に配置されたブレーキ装置で挟み込んで速度を調整する仕掛けです。車両自体に駆動装置を持たず、坂を上る際にはワイヤーで巻き上げることとなります。
この一般公開では近所の小学生の社会科見学が行われており、ちょうど何班かに分かれて施設内を巡廻中-当方が着いたときにはちょうど1つの班が説明を受け終えたところで、B駅に停まっていた車両がそろそろと動き出しましたが、まさしくそろそろという感じで3分程でA駅に到着ですから時速2km程といったところでしょうか。ただし巻き上げ装置といってもかなり小型で実用ともなれば大型化されるのでしょうが、展示パネルのイメージ図までにはちょいと当方の頭では想像し難い感じとも…ちなみに、坂を上る際にはジェットコースターのそれのようなガタンガタンといった音はなくいたって静かなものでしたよ。

エコライドエコライドエコライド

エコライドエコライドエコライド

その後いつ動くのかと待っていたものの、10分経っても係員の動きはなく、気持ちがだれそうになったところで、小学生の別の班がやってきたので説明をしばし拝聴…と、係員が動き出したのでカーブの先にて待っていると、警報音の後に車両がスルスルと動き出しました…実用化時の最高速度は40~60km/hを想定、実験線では最高25km/hとのことでしたが、最大斜度のところではその数字以上の印象を受ける速さとなるも、当然ながらブレーキ装置によってB駅にピタリと停止。走行音も振動も意識されるほどのものではなく、なるほど“可能性”を伺わせるものでしたね。
となると課題は上り時のスピードアップということになりそうですが、そういえばリニア地下鉄が高低差を使っていた印象が-後で一般見学者の方が係員に同趣の質問をされており係員も直ぐに反応していたので、リニア技術の活用による発展可能性はありそう。実際その方向性の基礎的研究もされており、『リニアモータ推進は、ロープによる上り勾配走行に比して、効率は劣るものの、表定速度の短縮に大きな効果があることが示された』-とされていますが、それはそれでシステム肥大化にもつながりかねない話でもあり…なんとも悩ましいところですね。

エコライド

なお、NEDOの支援は2006~2008年度までで、2009年度は経済産業省「低炭素社会に向けた技術発掘・社会システム実証モデル事業」の実証研究に採用されています…そのため初代車両にはNEDOの、2代目には経産省関東経済産業局のマークが入っているというわけですな。また、内閣府による社会還元加速プロジェクト「情報通信技術を用いた安全で効率的な道路交通システムの実現」のためのITS実証実験モデル都市に追加選定された千葉県柏市での事業連携として、柏の葉地域への導入想定ケーススタディが進められている由。確かにTX柏の葉キャンパス駅から東大キャンパスやがんセンター東病院、柏の葉公園へは微妙な距離感ですが…。

少なくとも数年内の実用化までに結びつくのかはなかなか疑問ですが、基本的技術は確立しているのは大きな強み…でも結局は遊具どまり、になってしまいそうな気がついしてしまうのですが-どこまで低コスト・コンパクトたる基本理念を維持できるかが鍵でしょうかね…って、あくまで素人の戯言なのでお聞き捨て賜りたく。

ともあれ、東大生研千葉実験所公開は鉄道総研技術フォーラム一般公開同様、交通分野だけでもなかなかの濃さを感じることができました。エコライドのその後を見守るべく、来年も再訪できればと考えているところです。


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