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長崎空港連絡バス

【検証:近未来交通地図】 特別リポートNo.058
九州収穫紀行2004

長崎空港連絡バス
「競合」に見る
新規参入の是非

(2004/10/03)
下記内容は予告なしに変更することがありますので、予め御了承下さい。
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長崎空港連絡バス

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アクセス解析

 【検証:】では2002年の道路運送法改正による乗合バス事業の自由化後の変化を、既存事業者が恐れていた新規参入の動向を中心に折に触れて取り上げてきました。結果的に実態としては雪崩をうっての新規参入による業界の根本的変化に至る…ということはなく、その一方でわれわれ利用者が恐れていた過疎地域から撤退が容易となったことで既存事業者の業績改善傾向すら見受けられるようになっているのはある意味皮肉にも思われます。

平成15年度乗合バス事業の収支状況について(国土交通省09/10)http://www.mlit.go.jp/kisha/kisha04/09/090910_.html

 新規参入ではクリームスキミング、いわゆるオイシイとこ取りが強く懸念され、収益性が高いとされる都市間高速バスや空港連絡バスなどでの競合に注目が集まっていたわけですが、その端緒となったのが高知空港と長崎空港の連絡バスでした。

 高知空港では、はりまや橋・高知駅との間に土佐電気鉄道が連絡バスを運行していましたが、規制緩和を先取りする形で2000年5月に貸切バス事業者の高知駅前観光が空港−県庁前・朝倉(高知大学)前間での空港連絡バス路線を申請、1年以上の審査を経て01年7月から運行開始にこぎつけました。当初は同ルートとなるはりまや橋−空港間での停留所設置は認められなかったものの、02年2月に合わせ早速設置、完全競合状態へ。土佐電鉄も子会社の土佐電ドリームサービスに路線移管して運営効率化に努めるとともに増便や朝倉ルートの新設などで対抗、朝倉ルートは02年11月で撤退したものの、現在も土佐電44往復(約20分間隔)、駅前観光26往復(約30分間隔)という空港規模にしては高頻度運行状態が続いています。当方は02年の夏に高知空港での様子を実見しましたが、券売機前で案内係が誘導する光景も見られ、客引き合戦とまでは云わないものの実務担当者は結構神経使っているだろうな…と思ったものです。その後情報は伝わってきていませんが、サイトでちょこっと調べる限り観光客やビジネスマンには高知駅前方面志向が強いのか、駅前観光は苦戦を強いられているようで…。

高知県交通政策課 もっと考えよう私たちの公共交通 http://www.keneibus.jp/
M's Blog Site 高知駅前観光の高知空港連絡バスに思うこと http://blog.makoto.ne.jp/archives/000676.html

 一方の長崎空港、長崎市内との連絡バスをずっと担ってきたのは日本唯一の県直営事業者である長崎県交通局(県営バス)。都市間高速バスとともに事業の屋台骨となっていきましたが、四半世紀以上の泰平を打ち破ったのが、過去2度の参入申請を認められなかった長崎自動車(長崎バス)。02年3月に県営バスとは別ルートでの申請を行い3度目の正直で認可、5月に悲願の運行開始を果たしたのです。法律改正後初めての新規参入例となったわけですが、一方県営バスはその別ルートに対抗路線を同時設定、長崎バスが申請した片道800円、往復1200円の運賃にも同調し、それまでの片道1200円から大幅値下げに至るという半ば非常識とも云うべき競合状態に突入したのでした。

長崎県交通局 http://www.pref.kochi.jp/~koutuu/koukyou/think/thinktop.htm
長崎自動車 http://www.nagasaki-bus.co.jp/

 【検証:】では上記の2例含め規制緩和の実態を探るべく考えましたが、長崎については共倒れの危険すらと云うべき状況が伝えられていたところ、その後の状況が見えなかったことと自身で実見していなかったこともあって気にかかっておりました。そこで今回の「九州収穫紀行」の際に乗り比べをしてきた次第です。

乗合事業「規制緩和」半年〜そろそろ1年(2)〜競業から協業へと向かう高速バス 038.html#2


長崎空港連絡バス

 グラバースカイロードの見学を終えてから徒歩で長崎バスの新地バスターミナルへ。長崎駅からは1.5kmほど離れていますが、至近には中華街や出島などがあり中心部の一角に位置します。ビル前には長崎電軌も走っており、最寄の築町は1系統と5系統の乗換電停として利用も多いですが川を挟んでちと離れており直接のリンクはなさそう。ターミナルビルにはダイエー長崎店が入居しており一定の集客力はありそうですが、建物がまもなく築40年、ダイエーも入居30年以上とかなり年季の入っている様子…ただしBT内に古めかしさはさほど感じませんでした。都市間バスも県営バス主導のため日中の高速路線発着はないものの、相当量の一般路線バスが出入りすることから活気はあります。なお長崎は日本全国でもバスの利用率が高い県といわれており、長崎バスのサイトでも『民営バス会社では日本一安い運賃をお客様に提供しています』と誇らしげに書かれています。

九州運輸局 乗合バス事業の概況 http://www.qst.mlit.go.jp/toukei/j_koutuu/file01.htm
長崎自動車株式会社 会社概要 http://www.nagasaki-bus.co.jp/gaiyou.html

 で、空港行「エアポートライナー」はというと、お隣の長崎バスターミナルホテル前からの発車となる旨があちこちに掲示されています。指示に従い隣のビルへ。乗車券もホテル1Fのフロントで発売、向かいのロビーが待合室代わりとなっており、こちらには何故か自動券売機も。なお、そのロビーにはノートPCが2台設置されており、インターネット利用が無料開放されています。ちょっとした調べものに重宝しました。さて、まもなく到着時間となりロビーを出てしばらく待ちます。と、深青ベースに紅白のラインが入ったバスがやってきました、案内板は幕式ではなく板なんですね。運転手は一旦降りてロビーに声を掛けにいきます。
 ところで、運行開始時には新地BT始終発で空港までノンストップでしたが、今年3月に長崎自動車道が延伸全通かつそれに接続する形でながさき出島道路(オランダ坂トンネル)が開通、それまでの長崎バイパスから市街北部につながるルートに加え市街南部にダイレクトにつながるルートが完成し、長崎バスは従来の西山トンネル経由からこちらに全便経路変更することで空港−新地BT間の所要時間を10分短縮(45分→35分)するとともに、そこから市内を北上する形で中央橋・大波止・長崎駅前方面、浦上駅手前の茂里町ターミナルまでこまめに停車する形態に改めたのでした…ただし乗車便ではここまでの乗車はゼロ、新地BTで当方含め7名が乗車して出発です。

長崎空港連絡バス長崎空港連絡バス

 早速そのながさき出島道路に入り、3km近くのオランダ坂トンネルに飛び込んでゆきます。車内では前方のモニターで案内ビデオが流されます。放送は日本語のみですがテロップ含め4ヶ国語対応はさすが、というか九州新幹線「つばめ」の車内放送では4ヶ国語すべての案内放送を体験しましたが、そこまで来るといささか丁寧過ぎるのでは…という感じも受けたことを思えば、丁度良いのかなと。
 長いトンネルを抜けると2つの料金所を経て長崎道へ。再びトンネルで山地を貫きつつ北へと進むと、長崎BPとの合流点である長崎多良見ICからは対向車もぐんと増え東に向け丘を下ってゆきます。緩やかに北に弧を描くともう諫早市街ですか。再び高度を上げつつ、JR大村線の細道を見下ろしながら進むと、丁度木場PA付近でか、県営バスと長崎バスの両空港連絡バス便が列になって対向して行きましたが、ぱっと見車内は両者ガラガラそう…。
 長崎道を快適に飛ばし20分少々で大村ICを降りて市街へ。真っ直ぐ海へ向かって一直線に進めば突き当たりで一旦左折、スーパー銭湯を右手に見れば空港への橋が見えてきました。海岸付近が昔の大村飛行場、現在は海上自衛隊管轄ですが、1975年に箕島を埋め立てて出来た世界初の海上空港でもある長崎空港の滑走路はB滑走路、こちらがA滑走路となっているそうで…というわけで所定より数分遅れで空港出発ロビー前到着となりました。

長崎空港連絡バス長崎空港連絡バス

 丁度東京便の到着とあって連絡バスが混雑することを予想して長崎空港ターミナルをさらっと見学。展望デッキではORCの出発シーンを見ることが出来ました。2Fでは手荷物検査場前に東京モノレール&京急の自券機があることや(普通は検査場内(=出発利用者のみ購入可能)の空港が多い)、検査場内外のガラス張りの区画に電話を置いた「グッバイコーナ」が目を惹きましたね…でもグッバイコーナーは映画に出てくる外国の刑務所の面会場のような感じもしなくはなく…? あと、実見はできませんでしたがさすが海上空港というべき船着場へは動く歩道つきの連絡通路もあるなど、特徴の多い空港です。

長崎空港連絡バス

 で、到着ロビー前の連絡バス乗り場へ。乗り場は5つあり、奥から

1番:長崎バス長崎市内行
2番:西肥バスHTB・佐世保駅行
3番:県営バス大村・諫早・小浜・雲仙行/島鉄バス諫早・島原行
4番:県営バス長崎駅・グラバー園行(浦上経由)
5番:県営バス長崎駅行(諏訪神社/出島道路経由)

となっています。まず補足しておくと、県営バスは長崎バス参入後に従来の浦上ルートと対抗路線の諏訪神社ルートの2ルート制になったのですが、出島道路の開通に合わせて諏訪神社ルートの一部をシフトして大波止と長崎駅交通会館とを結ぶノンストップ便に立替、都合3ルート制に移行しています…いささかややこしい気もするのですが、別の見方をすればニーズに細やかに対応しているとも云えましょうか…ただし諏訪神社経由は従前の半分以下に減らされていますが。
 さて、後参の長崎バスが1番乗り場ですか…と意外に思ったものの何のことはなし、到着ロビーからは一番遠い場所。一方県営バスは到着ロビー前で券売機もすぐそばの好位置です…その券売機前には県営バス側かカンバンを手に持ったオジサンもおり、方面別の乗り場を案内しています…ちなみに5番乗り場の県営バス便には「長崎までノンストップ」、1番乗り場の長崎バスも記載があり「市内各駅停車」と書かれていました…以前見た高知空港のような呼び込み等が積極的にあるわけではないですが、事前に知識がないと2つの乗り場でどちらか待っている状態であろう県営バスを選んでしまう可能性は高いような…。

長崎空港連絡バス長崎空港連絡バス長崎空港連絡バス長崎空港連絡バス

 さて、帰路はもちろん県営バス便をチョイスしますが、東京便の乗客を受け込み合う出島道路経由のノンストップ便を避け、浦上経由のグラバー園行に乗車します。乗り場付近でまごまごしていた観光客の御婦人グループに運転手が声を掛け「グラバー園までこれで行きますから」と説得して乗車する光景も見られたりしつつ、あらかた席が埋まった状態で発車。まずはもと来た道を戻りますが、浦上経由便は大村市街の停留所に停まるほか、長崎道上の高速BSにも停車、そしてたまたま乗車便は長崎BP内のBSにも停まります…さてどれくらいの利用があるか注目していましたが、結果はBP内で1名乗車があったのみでした。
 車内モニターがないばかりか案内放送が若干小さめで聞き取りづらいことはありましたが、適宜運転手の放送でカバー。各座席前には観光ガイド風の小冊子も置かれていて退屈はしません。それにしても九州の空港連絡バスはどれもしっかりと1〜2列程度の荷物スペースが確保されていますね。
 料金所前の高速バス停を横目に大村ICから長崎道を走って長崎多良見ICを降りて長崎BPへ。長い登坂射線含め片側3車線が確保されるくらいの需要を持ちますが、それ以上に勾配に加え右に左にとタイトとまで云わずながらも神経を使いそうな道です。なるほど長崎道・出島道路の整備や高速バスの経路変更も理解できます。実際開通による交通量分散効果も如実に出ているようで。

長崎空港連絡バス

長崎河川国道事務所 長崎自動車道・ながさき出島道路の整備効果(速報)
http://www.qsr.mlit.go.jp/nagasaki/tyousa-2/seibi/seibi.html

 4方向に分かれる大規模な川平ICから浦上トンネルを抜けて市街北部に入ります。ちなみに諏訪神社経由(かつ長崎バスの旧ルート)は西山トンネルで山麓を南へ潜り切って西山ダムの下方から市街中心部へ躍り出てゆきます。浦上ルートは長崎大などがひしめく名の通りの文教町からR206に合流して長崎駅方面へ向かいますが、当方は長崎電軌浦上車庫電停近くの大橋で下車。その前の昭和町とあわせ数名ずつが下りてゆきました。

 長崎電軌3000形LRVの試乗と「てんじんくん」の見学の後、徒歩で長崎駅前の交通会館へ。長崎バスの新地BTより数年前完成の40年選手、段差解消用に車椅子リフトなども置かれるなどバリアフリー対策も採られているものの一世代前な感じで、そろそろ抜本的対策が必要かなと思われました。ただ駅前であることや福岡行き都市間バス「九州号」はじめ高速バス路線のターミナルということで新地BTよりも活気があります。3ルートあるものの日中15分間隔は待たずに乗れる印象が強く、多くのホテルで交通会館からのアクセスが書かれるのも判るような気が…ちなみに長崎バスの長崎駅南口バス停は大波止方面に1ブロック進んだ先と判りづらい気もしますね。


 まず高知しかり長崎しかり、競合路線化して2年以上が経過しているにも拘らず、高頻度運行が維持されているということに注目せざるを得ません。時勢的に意地や頑張りで維持できるほど甘い状況ではないはず、便単位で見れば少ない利用かもしれませんが、少なからずマイカーなどからの移転効果なども見られている可能性があろうかと。また、双方ともにルートや形態の違いからある程度の棲み分けが成立しつつあるのかもしれません。ただやはりキモは人件費などの出物を抑えていることが大きかろうと。特に長崎の場合片道運賃が2/3まで値下げされたという状況下、県営バスにとっては内部補助の観点含め、今後ボディーブローのように効いてはこないかとつい懸念してしまいますが…以下、思いつくままに個別の状況をまとめてみます。

「県営」であることのジレンマ ●

 県営バスは過敏に反応し過ぎたのではなかろうかと…長崎バスの新規参入は、それまで県営バスがカバーしきれていなかった市中心街や南部からの需要に応えるという観点から見れば、棲み分け可能なものであったのでは、と云えようかと思います。長崎バスの直行便スタイルは出島道路経由への移行を強く予感させるものであり、県営バスの「諏訪神社付近住民のニーズに応える」としての路線開設、さらに出島道路完成後の諏訪神社経由便の激減は、当初の言葉とは裏腹にまさに対抗路線としてぶつけた何者でもないということになります。
 片道1200円から800円への値下げは確かに目を惹くものではありましたが、長崎−佐世保都市間バスが1,450円であることからすれば妥当な金額ということが出来るかもしれず痛いところを突かれた形になってしまったといえましょう。さらに市内競合路線で値下げを強いられるのはきついものがあろうかと。その意味で今後どのようなサービス提案が出来るのか、そこに「県営」であることのジレンマが邪魔しないかということも気がかりです。

二の矢三の矢は番えたが ●

 長崎バスにとって悲願の空港線参入は2年半の現状維持を見る限り企業価値としては一定の成功を収めたということができましょう。しかし実情としては02年度で県営バスが採算ラインを維持した一方で長崎バスはクリアできず(最後の参考記事参照)、二の矢三の矢となった市内路線の値下げや出島道路経由変更に伴う茂里町ターミナル延伸が実になっているかどうかも疑問です。
 特に競合化の真の狙いであった出島道路経由には県営バスも当然路線設定、長崎側の拠点である交通会館を軸に3ルート確保した中で、浦上方面茂里町Tへの延伸は長崎駅前では出島道路の直行便に、茂里町Tでは浦上経由便に利便は劣るのではなかろうかと。実際は従前の回送便の営業化(茂里町Tはバス車庫)と、長崎駅前直通をアピールする宣伝効果ありきの策なのかもしれませんが、市内ルートの伸びは運用増にもつながろうことを考えれば必ずしも効率的とはいえない可能性もあります。さらに各種割引サービスや路線バス・タクシーなどとの連携など、他所で見られる囲い込み策が見られないのも結局は既存事業者ゆえの柔軟性のなさに起因しているのかとも思われてなりません。

長崎空港連絡バス

● やはり競業から協業が望ましい

 両者の状況を推察する限り、また40便前後/日という長崎空港の発着便数を考える限り、あわせて85往復という便数はやはり過多に映ります。02年〜03年に設置された「長崎県県営交通事業在り方検討懇話会」の会議の席上、『子供がけんかして仕事をしたような感じがしてならない』の言に代表されるように厳しい評価が集まった競合状態ではあるものの、改めて長崎バスの投じた大きな一石をどのように評価するかが考えられるべきと思います。
 その意味では県営バスの将来性考慮を含め、まずは共同運行などによる運行効率化を図るべきだろうと思います。具体的には長崎バスが30往復・県営バスが約20往復持つ出島道路経由便の時間調整の上で新地BT経由長崎駅前発着での共同運行化が現実的に思われます。一見長崎バスに不利に映りますが、最終的には長崎バスを含めた地域分社化または交通事業体の統合が予想されることから一方的な不利益とはならないと考えます。

■ 改めて「新規参入」の是非は…

 望ましき競合、望ましからざる競合…その判断は難しいものがあります。富士交通の一件にしても、事実として総体の利用は増えたという事実もあり、大阪−高松線のように競合による事業者間の緊張感がいい具合に保持されれば更に相乗効果が望めた可能性もあります。しかしながら中長期的に見て大阪−高松線も供給過多に陥る可能性は否定できず、時間帯による非効率性、ひいては環境負荷すら問題視される状況を考えれば、競争激化による寡占化もまた求められる解のひとつとも思われるのです。
 ただ利用者の立場としては、適時適所での「落としどころ」を見出す方向性が望ましいと考えます。そのイニシアチブを何処が取るのかがまた難しいところなのですが、既存事業者同士の場合だと往々にして共同運行化などの模索がスムーズに行く場合も多く、長崎も遺恨試合などと評された経緯はあろうとも、上手く光明を見出して欲しいと思うのですが…そしてそれが新たなモデルになることも期待したいと思います。

≪参考≫
●参考記事(長崎新聞)県内トップに聞く バス・タクシー業界 〜規制緩和から1年〜

(1) 長崎自動車/上田惠三社長 空港線参入はプラス(03/01/28)http://www.nagasaki-np.co.jp/press/hito/2003/top/01.html
(2) 県交通局/古賀喜久義局長 コスト削減を推進(03/01/29)http://www.nagasaki-np.co.jp/press/hito/2003/top/02.html

●経過

1975 .05/01 世界初の海上空港として開港。県営バスが長崎市内との間でリムジンバスを運行開始。
     〜長崎バスは2回参入申請するも、需給調整規定等により当局から却下される。
2002 .01/21 県営バス、長崎バスほか県内3社局で、日本初となる共通ICバスカード「長崎スマートカード」発行開始
  .02/01 改正道路運送法施行、需給調整規定撤廃で新規参入が原則自由化。
  .03/28 長崎バスが新地BT−長崎空港路線参入申請。規制緩和後に“3度目の正直”県営バスとは別ルートとなる西山トンネル経由での申請。30往復 片道800円、往復1200円は県営バス(片道800円)大幅に下回る。
  .04/01 県営バスも西山トンネルルート(諏訪神社前経由)での別路線申請を実施。「住民の要望も強く、以前から参入を検討していた」。全体も44往復から55往復(従来の浦上経由29往復、諏訪神社経由26往復)に増便、運賃も長崎バスと同じ片道800円、往復1200円に揃える。
  .05/10 九州運輸局が長崎バス・県営バス両路線を認可。
  .05/18 長崎バス悲願の空港路線参入。「エアポートライナー」ノンストップ30往復、県営バスも増便で従前の44往復から85往復にほぼ倍増、運賃も大幅値下げに。
  .06/18 1ヶ月時点で両者痛み分けと報道。県営バスが利用客数5%減の1260人/日、運賃収入40%減。長崎バスが目標の半分の300人/日にとどまる。
  .07/14 県議会経済労働委員会で、県交通局が1ヶ月時点の状況を報告。利用客数は9%減の1396人/日、12.7人/便は採算ラインの13.6人を割り込むが、運賃値下げでの利用者増が見込め採算確保と予想。
  .07/29 県営バスの今後のあり方について議論する「長崎県県営交通事業在り方検討懇話会」第1回会議開催。
  .08/27 長崎バスが県営バスと競合する長崎市郊外7路線で運賃値下げ申請。県営バスの賃率ベースに合わせていたが、より低い長崎バスのベース算出に改めるため。
  .09/17 県営バスが長崎バスと競合する長崎市郊外8路線で運賃値下げ申請。「利用客の混乱を避ける観点から、同一区間の同一運賃を守ることにした」ため。
  .10/01 長崎バス・県営バス、長崎市郊外路線で一部運賃値下げ実施。
     
2003 .06/05 「長崎県県営交通事業在り方検討懇話会」第7回最終会議開催。現在の交通局直営制から、公設民営方式など経営の自由度の大きい間接営形態への移行が望ましいとする報告書をまとめる。
     
2004 .02/18 県がバス事業の経営形態に関する基本方針をまとめる。不採算・競合路線の一部民間移譲検討や高速赤字路線の廃止など、将来的に路線譲渡方式による民営化も視野に経営規模の段階的な見直しを図る。
  .03/26 長崎バスが株主総会。03年12月期決算でハウステンボス関連など不良債権処理の実施で20億1200万円の当期損失を計上、初の無配転落に。営業収益は93億9400万円(前期比2.0%減)、経常利益は2億6600万円(同20.1%減)。来期は復配の見通し。
  .03/28 長崎自動車道・ながさき出島道道路の全通に伴い、長崎バスは全30往復をルート移行、茂里町BT−新地BT・出島道路経由−空港に。県営バスも全55往復のうち空港行19便/発22便を出島道路経由直行便に変更、浦上経由29/24便、諏訪神社経由7/9便の3ルート体制に。
2005 .04/01 県営バスダイヤ改正、出島道路経由便を増強・経路変更。全55往復のまま、同経由行24/発33便、浦上経由29/22便、諏訪神社経由2/0便に。また空港発を長崎新地・中央橋・県庁前経由に。
  .08/01 県営バス浦上便停留所追加(宝町・松山町)。時刻修正で56往復に(出島道路経由24/32便 浦上経由30/24便 諏訪神社経由2/0便)。
長崎バス便、共通ICカードシステム「長崎スマートカード」対応化。

長崎県県営交通事業在り方検討懇話会 http://www.keneibus.jp/discussion.htm

●経路/停留所(2005.08/01現在)

県営バス無償配布パンフレットをスキャン 長崎バス経路(黄緑線)を追加
長崎空港連絡バス


長崎市街
 
浦上トンネル 川平IC 長崎バイパス      
西山トンネル      
ながさき出島道路 長崎IC 長崎自動車道 長崎多良見IC =長崎自動車道=大村IC=
長崎空港

県営バス(リムジンバス)

浦上・昭和町経由 (一部自動車運転免許試験場前、長崎BP内バス停停車/一部長崎駅前止)
グラバー園前−大波止−長崎駅前交通会館−宝町−浦上駅前−松山町−大橋−昭和町−(BP川平−BP犬継−畦別当−八峰口−正念)−BP多良見−高速木場−桜馬場−中古賀島−(自動車運転免許試験場前)−長崎空港

諏訪神社(西山トンネル)経由
長崎駅前交通会館−大波止−中央橋−諏訪神社前−長崎空港

出島道路経由
長崎駅前交通会館−大波止−県庁前(降車)−中央橋(降車)−長崎新地(降車)−長崎空港

長崎バス(エアポートライナー)

茂里町ターミナル−銭座町−宝町−八千代町−長崎駅前(降車)−長崎駅前南口−五島町−大波止−県庁前(降車)−中央橋−新地ターミナル−長崎空港


“膠着状態”の中の変化…
 投稿者---551planning(2005/08/02 16:49:53)
−Re:“膠着状態”の中の変化…
 └公営事業の“挑戦”の真意は…
  └Re:公営事業の“挑戦”の真意は…
   └空港線共同運行化
    └協調路線を今後の転機とできるか

 長崎スマートカードの「おサイフケータイ対応化」の話題で長崎県営バス&長崎バスサイトを久々にチェック。長崎空港連絡バスに端を発してガチンコ勝負中の両者ですが、その空港連絡バスでいろいろと変化があるようです。

●県営バス
・2005.04/01 ダイヤ改正
 空港−ハウステンボス便からの撤退(西肥バス単独運行化)は知っていたのですが、長崎便でも変化が。『市内での乗り継ぎなど利便性向上を図るため』として、3ルートのうちの諏訪神社経由が事実上撤退へ。全55往復はそのままに、当初の浦上経由は空港行29/空港発24便から29/22便に、最速ルートであり長崎バスと同経路の出島道路経由は19/22便から24/33便に増加、当初長崎バスがこのルートで参入時に「地域住民の利便性向上」を掲げて被せた諏訪神社経由が7/9便から2/0便となっています。
 さらに出島道路経由便について、空港発では従前大波止・長崎駅前直行だったのが、長崎新地・中央橋・県庁前経由にルート変更(空港行きは経由せず)、まさに長崎バスルートに併せてきています。

・2005.08/01 停留所追加
 浦上経由便で宝町・松山町バス停が追加。松山町は原爆公園に近く観光等の利便性向上に、宝町は既に長崎バスが停車していますがこれも併せてきたということでしょうか。
 なお、8月現在で56往復となっています(出島道路経由24/32 浦上経由30/24 諏訪神社経由2/0)。

●長崎バス
・2005.08/01 長崎スマートカード対応
 これまで空港連絡バスにはリーダーが装着されていませんでしたが、ようやく対応の由。どうせなら乗継割引をもっとアピールすればいいのでは?

***
 長崎空港には08/01からSNAが羽田便を就航、トリプルトラック化(差し引き3往復増の1日14往復化)が図られており、今後の展開も見逃せません。そんな中での連絡バスバトル、県営バスが押し気味というか、焦りすら感じられるのですが、さて。

Re:“膠着状態”の中の変化…
 投稿者---まえだ氏(2005/09/18 01:43:30)

 昔、何度か投稿させて頂いたものです。
 久しぶりに覗いてみたら地元の話題がありましたので、ちょっとだけコメントします。

 さらに出島道路経由便について、空港発では従前大波止・長崎駅前直行だったのが、長崎新地・中央橋・県庁前経由にルート変更(空港行きは経由せず)、まさに長崎バスルートに併せてきています。

 これは「客引き対策(?)」です。
 長崎空港のバス乗り場には、「案内係」の腕章をつけた人がいるのですが(多分、空港ターミナルビルが雇っている)、ターミナルビル自体が県の関連団体なので、「案内係」といえども中立ではなく、客を県営バスに誘導します。
 それで、県営バスと長崎バスの経路が違っていた時には、長崎バスの経路のバス停のほうが客の目的地に近くても、案内係が県営バスに誘導していて問題になったりもしました。だから、空港発の路線だけでも、県営バスが長崎バスに停車地を合わせると、堂々と「客引き」が出来る、という訳です。

 浦上経由便で宝町・松山町バス停が追加。松山町は原爆公園に近く観光等の利便性向上に、宝町は既に長崎バスが停車していますがこれも併せてきたということでしょうか。

 どちらも市内在住者用の乗換利便性を向上させるためだと思います。両停留所とも、市内バス路線の乗換停留所です。
 宝町は、以前、長崎バスが高速船連絡で空港路線を開設した際に停車していました。それに合わせて県営バスも停車地にしたのですが、高速船連絡路線撤退の後、県営バスも停車地から外したという経緯があります。
 あと宝町は旧長崎プリンス(今は別のホテルになりました)の目の前だ、ということも少しは関係しているかもしれません。

 長崎バスと県営バスの「遺恨試合」は、空港路線に限った話ではないので、相当根が深い部分があります。まあ、地元住民としては、とことん戦って頂きたい所ですが。

公営事業の“挑戦”の真意は…
 投稿者---551planning(2005/09/19 00:57:41)

 まえだ様、御無沙汰しております。フォロー感謝です。

 長崎空港のバス乗り場には、「案内係」の腕章をつけた人がいるのですが(多分、空港ターミナルビルが雇っている)、ターミナルビル自体が県の関連団体なので、「案内係」といえども中立ではなく、客を県営バスに誘導します。

長崎空港連絡バス長崎空港連絡バス

 間もなく訪問1年になりますが、昨秋の時点で確かに結構露骨な「誘導」も見られました。上の写真で左が空港到着口に近い県営バス乗場(ルート別に2つ)、右が1番乗場ながら到着口から一番遠い長崎バス乗場ですが、左写真右手が御指摘の“係員”のオジサン、一方長崎バス運転手は離れで様子を伺うばかり…という感じです。まぁ、オジサンの声掛けそのものは基本ソフトで、双方が人員を配置していた高知ほどではないとは感じましたが、これは券売所が1箇所に集約されているため、長崎バス側が人員配置できないゆえ、でもありましょうか。

 長崎バスと県営バスの「遺恨試合」は、空港路線に限った話ではないので、相当根が深い部分があります。まあ、地元住民としては、とことん戦って頂きたい所ですが。

 先のリポートを書くにあたり、結構調べて追いかけていたのですが(岡山の両備グループvs.中鉄バスも近いものがあり、それと併せて)、土地勘がないことや正直めんどくさくなって止めてました…ただ、大まかに見れば、彼岸の空港線参入を果たした長崎バスに対し、県営バスが物量作戦的に空港線から一般路線バスに至るまで勝負を挑んでいるような…最たる例は日本一の最安水準とされる長崎バスの運賃ベースに合わせての値下げを断行したことでしょうか。
 日本全体で見れば、公営バスの経営環境悪化による民間委譲が加速度的に進むという、どこぞのお方のお得意な掛け声そのまま?な状況、日本唯一の県営交通局も一種危機的な状況であることには変わらない中で、在り方懇話会で空港線の競争をある種“児戯”的と辛辣な指摘もされながらもファイティングポーズをとり続けている…利用者的には一見興味深いものの、当局が5年後10年後の公共交通維持をどのように考えているかが見えてこないと、傍目には危ういものとも思ってしまうのですが…。

Re:公営事業の“挑戦”の真意は…
 投稿者---まえだ氏(2005/09/19 16:44:45)

 コメントしておきます。

 案内係の人は、あくまでバスの「案内」をしているだけで、県営バスへの誘導が主目的ではありません。この人は、県営バスが雇っているのではなく、第三者であるはずの空港ターミナルビルが雇っています。
 また、案内係であるのですから、長崎行きのバスだけでなく、佐世保方面や、大村市内、諌早島原方面へのバスへの案内もしています。だからこそ、切符売り場の前に配置されているのです。
 そして、各バス会社の運転手は、自分のバスの前に立って乗客を誘導するのがルールになっているようです。これは長崎バスだけではなく、佐世保方面の西肥バスや、島原方面への島鉄バスの運転手も同様です。彼らは、自分のバスの前からは決して離れません。

 つまり、バス乗り場において、自分の意志で自由に動けるのは、案内係の人だけなのです。仮に長崎バスが人員を配置しても、現在のルールの中では、自社のバスの前を離れて、露骨に自社のバスへ客を誘導することは、不可能であると思われます。
 この状況の中で、本来中立の立場であるはずの「案内係」の人が露骨に県営バスへの誘導を行う所が、県という公共団体のやり方としておかしいのではないか、というのが、正直な印象です。

 ちなみに、タイトルは「公営企業の"挑戦"」となっていますが、私の印象だと、県営バスは何も「挑戦」しておらず、既得権を何とか守ろうとあがいているだけ、だという感じです。
 もともと県営バスは、自社の営業努力ではなく、政治的圧力で路線を開拓し(路線権は「権益」でしたから)、そこに安住し「高め」の運賃で利益をあげてきました。かたや長崎バスは、県営バスの(監督官庁に対する)圧力の元に思うような路線開拓や運賃設定ができず、県営バスに対して「戦い」すら挑めない状況でした。
  近年の自由化の流れの中で、やっと長崎バスに戦う土俵が整った、というのが今の状況で、県営バスは長崎バスが出してくる次々の戦略に「条件を合わせている」だけで、自らは何の手も打ってない(打つ能力を持っていない)のが実情だと思います。

***
 もう一つ補足しておきます。
 管理人さんが、

 片道1200円から800円への値下げは確かに目を惹くものではありましたが、長崎−佐世保都市間バスが1,450円であることからすれば妥当な金額ということが出来るかもしれず痛いところを突かれた形になってしまったといえましょう。さらに市内競合路線で値下げを強いられるのはきついものがあろうかと。

と書かれていますが、はっきり言って、長崎バスの値段設定は決してダンピングなのではなく、会社の基準に合わせた「妥当な価格」なのです。

 長崎市内−空港線に比べて、従来は長崎佐世保の都市間バスが割安だった、というのも、長崎佐世保間には以前別ルート(西海橋経由)で長崎バスの路線があり(これが両者の遺恨の理由でもあるのですが)、大村経由の長崎佐世保線も西海橋経由に値段を合わせていたので、結果として、長崎市内空港線の料金に比べて割安になっていたのです。
 また、「市内競合路線で値下げを強いられる」と書いてあるのも、単に今まで競合路線で県営バスに合わせて割高だった運賃を、長崎バスの基準に合わせて、長崎バスが値下げした所、県営バスも追随しただけ、というのが真相です。

 今の所は、長崎バスがダンピングしている訳ではなく、競合路線の料金を自社の基準に合わせているだけなので、もしそれに県営バスが付いていけないのであれば、民間に勝てない公営企業は存在価値がない、ということになります。
 多くの地元民は、県営バスは廃止されて長崎バスに移管されたほうがいいと思っているのではないでしょうか

空港線共同運行化
 投稿者---まえだ氏(2005/09/22 21:24:30)

 9月22日付けの長崎新聞によると、結局、空港線は共同運行になるそうです。

空港線、来月から共同運行 長崎バスと県営バス(09/22長崎)http://www.nagasaki-np.co.jp/news/kako/200509/22.html#04

 長崎バスから話を持ちかけたということですが、ひとまずは長崎バスが白旗を上げた、という感じでしょうか。
 やはり、空港での乗り場が離れていたということ(これも、県営バスと同じ場所に移すよう何度も要請していたが、却下されていた)と、県営バスに路線を合わされたことが痛かったようです。
 県営バスは2経路あるため(バスを最低2台出せる)、乗客が揃わなくても、先に長崎バスと競合する出島道路経由のバスを発車させることができますが、長崎バスは1台なので、乗客が全員揃うまで待つ必要があります。この状況の中で、案内係に、「経路は同じですが、こっちのバスが先に出ます」と県営バスに誘導されては、どうやっても客が集まらないでしょう。

 とりあえず話がついて良かったのでしょうが、どうも結果として県営バスの「不公正な戦い」が勝ったようで、印象が悪いです。
 競争するのであれば、路線の充実(諏訪神社経由の充実や、芒塚インター経由の新設など、地元住民からすると、やって欲しいことはあった)などで正面から戦って欲しかったのですが、結果として、長崎バスの乗り場を不便な場所に追いやり、路線を充実させるどころか後退させた上に長崎バスに経路を合わせて、最後には中立なはずの案内係を利用する、という汚い手口で長崎バスを追いやったのですからね。

協調路線を今後の転機とできるか
 投稿者---551planning(2005/09/23 12:35:39)

 リプライが遅くなりましたが、所感&情報提供有難うございます。結論は(後ろ向きな気は確かにするものの)当方の睨んだ方向になった、ということですが、まずは順番に。

 ちなみに、タイトルは「公営企業の"挑戦"」となっていますが、私の印象だと、県営バスは何も「挑戦」しておらず、既得権を何とか守ろうとあがいているだけ、だという感じです。
 もともと県営バスは、自社の営業努力ではなく、政治的圧力で路線を開拓し(路線権は「権益」でしたから)、そこに安住し「高め」の運賃で利益をあげてきました。かたや長崎バスは、県営バスの(監督官庁に対する)圧力の元に思うような路線開拓や運賃設定ができず、県営バスに対して「戦い」すら挑めない状況でした。 > 近年の自由化の流れの中で、やっと長崎バスに戦う土俵が整った、というのが今の状況で、県営バスは長崎バスが出してくる次々の戦略に「条件を合わせている」だけで、自らは何の手も打ってない(打つ能力を持っていない)のが実情だと思います。

 仰せの通りと思います。長崎バスに条件を合わせるという決断についての限定的評価もまた必要かとは思っていますが、当方も県営バスのあり方を是としているわけでなく、タイトルで挑戦の『真意は…』、本文でも『当局が5年後10年後の公共交通維持をどのように考えているかが見えてこないと、傍目には危うい』としたわけです。空港線における一連の流れ、特に諏訪神社経由の盛衰(長崎バスの当初直行ルートに併せ設定、「地域住民利便向上」を理由とするも、出島道路ルート変更後は激減)は象徴的です。

 今の所は、長崎バスがダンピングしている訳ではなく、競合路線の料金を自社の基準に合わせているだけなので、もしそれに県営バスが付いていけないのであれば、民間に勝てない公営企業は存在価値がない、ということになります。

 このあたり、今後気になるのは燃料費上昇の影響です。長崎バスの企業努力による絶妙な収支バランスの維持はおおいに認める一方で、この10年来比較的安定してきた燃料費の数割増のアップがボディブローのように今後効きはしないかと。これは長崎バスや県営バス云々だけでなく、公共交通事業者全体の課題であり、現に海運や航空で運賃値上げの動きが現実化しているわけですが、鉄道やバス、それにタクシーでは直ぐに追随というわけにも行かないわけで。
 話を戻すと、その中での公共交通維持を考えるときに、独立採算制を念頭とした民営ベースは必ずしも大きな時流ではないのではと。現実の経営努力や、入札制運営委託といった民営ノウハウ注入を否定するわけではありませんが、明確な形での運営補助金制度を前提とした事業運営を考えなければならないのかなと考えます。少なくとも現状の公営企業のスタイルを良しとするわけではありませんが、例えば長崎県域のバス事業を見据えたときに一過的な競争で優勝劣敗云々という評価は矮小ではないかと思うのです。

***
 さて、共同運行化ですか。今のところ長崎バスサイトで発表がありますが、握手するアイコンが印象的というか自嘲的というか…。なお44往復中長崎バスが15往復を担当、長崎空港は5番のりばに統一となります。長崎バスだけで見れば半減となりますが、時刻的には、航空東京線ダイヤと見比べると、なかなか巧い配分がなされているなとも。県営バスが配慮したかな?

長崎バス http://www.nagasaki-bus.co.jp/kuukou/kukou.html

 先に岡山空港での動きも紹介しましたが、こちらも運輸局レベルで動いていたということでしょう(現時点で九州運輸局サイトでは情報なし)。今年に入っての両者の動きが、結果共同運行化へのすり合わせであったかとも思えます。

 とりあえず話がついて良かったのでしょうが、どうも結果として県営バスの「不公正な戦い」が勝ったようで、印象が悪いです。競争するのであれば、路線の充実(諏訪神社経由の充実や、芒塚インター経由の新設など、地元住民からすると、やって欲しいことはあった)などで正面から戦って欲しかったのですが、結果として、長崎バスの乗り場を不便な場所に追いやり、路線を充実させるどころか後退させた上に長崎バスに経路を合わせて、最後には中立なはずの案内係を利用する、という汚い手口で長崎バスを追いやったのですからね。

 長崎バス参入から3年半弱。結果として残ったのは、片道運賃の2/3化ですが、新聞記事にあるように直ぐの値上げはあまり考えられないかなと。確かに後味の悪い感もありますが、まずは協調路線によるサービス向上を期待したいところ、更には他の競合路線の状況も注目されることになりましょうか。

2004.12.12 Update

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