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【検証:近未来交通地図】特別リポートNo.021
日本初!ガイドウェイバス開業
〜バス先進地・名古屋の交通斜め乗り記〜

ゆとりーとゆとりーと
(01/03/24・/25)
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 「ゆとりーとライン」 …和やかなその名はこの新世紀の春、名古屋に御目見えした日本初のガイドウェイバス。新たな中量輸送機関の実力や如何に…開業間もない同システムの速報を中心に、路線バス活性化の先進地でもある名古屋周辺のトピックスをお送りしよう。

ゆとりーと
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 名古屋市街外縁部の大曽根駅と市東北部の守山区志段味(しだみ)地区を結ぶ新交通システムとして誕生した「ゆとりーとライン」。専用道を案内装置の誘導で走り、一般道では普通のバスとしてそのまま走行できる特性(デュアルモード)を備える、ガイドウェイバスシステムを日本で初めて採用した事で注目を集める中、待望の開業を迎えた。当方は開業3日目の3/25、現地を訪ねてみた。

 朝10時過ぎの大曽根「駅」。小雨そぼ降る生憎の天気ゆえか、開業3日目・初めての日曜日にしては出足はさほどでもなさそう…。JR・名鉄線に寄り沿う高架構造物は下から見上げるだけではいわゆる新交通システムであるAGTの趣か。
 ところで、大曽根駅はJR中央線・名鉄瀬戸線・市営地下鉄名城線が集う拠点駅であるが、「ゆとりーと」開業でそのターミナル性向上への期待がある。御当地では「金山総合駅」という好例があり、集客拠点でもあるナゴヤドーム至近駅でもあるだけに…と思っていた。
 後述するが徒歩で大曽根入りしたので、実際のところ各線の乗り継ぎ関係ははっきりとはしないが、改善されているとは云い難いかもしれない。「ゆとりーと」駅舎は地上3階建てで他線構造物と接しながらも全く考慮されていないというのが正直なところ。集散する一般市営バス路線停留所も周辺各所に分散しており、これはいただけない。駅舎自体の造りは大層立派なものだが、地上から2階コンコース部へはエスカレーターはあるものの、旅客動線上は広く長い階段部が基本となっており、向きも名鉄・JR両駅へは廻りこむカタチになる。いちげんさんがどうこう云えるものではないにせよ、効率的な乗換拠点駅とは云い難い。

 そもそも、JRと名鉄の高架を越えるか越えないかという軌道高さを持ちながら、それらを乗り越して平安通やR19へそのまま進むことなくむしろそれらに寄り添うカタチに曲がってしまったのは…。今後都心方面延伸を考えるならば(異常時の対応拠点にするとしても)駅位置があまりにも中途半端だし、全く考慮していないのならばJR・名鉄駅の真上に造るなり、地上に降ろすなりして乗換に利便を図るべきではなかったか…。まずもってなんともはやの意見を思ってしまったのであった。

 改めて大曽根駅ウォッチング。2階コンコースは3階の対向式ホームへ向うべく乗降スペースが区切られており、降車スペースにはシートをかぶった改札機的な機器のようなものが何台か。平日朝ラッシュ時に使う機会があるのか…。3階が2面2線の対面式ホームで、同時に3台まで乗降が可能、小幡緑地、高蔵寺、瀬戸みずの坂方面で乗車位置が分けられている。全駅とも丸い大屋根で覆われており、接近案内表示機も設置されておりオシャレで機能的な空間を演出している。
 駅舎奥には10台以上が駐車可能の転回場。ターンテーブルはなく、異常時はここで調整させるのだろう(というか、専用高架区間内は追越し不能)。転回場で小休止していたクルマがやってきたので乗車。この後、途中数停留所で乗降して高蔵寺へ向かう。ちなみにどのクルマも試乗然の人々を中心に座席が埋まる程度なので20名弱の利用といったところであった。

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大曽根〜中志段味間で比較すると…
従来   ゆとりーと
1〜2本/h 運行本数 7本/h
48分 所要時間 28分
¥550 運賃 ¥420

運行本数が大幅に増えて待ち時間が短縮。
高架区間は信号がないため所要時間も短くなり
運賃は安くなる。いいことづくめだ。

東海ウォーカー(2001年vol.7)記事より

 「乗降確認、出発!」運転手の監呼とともに発車。右にカーブして一路東方へ。右手にナゴヤドームの白い丸屋根が迫ってくるとナゴヤドーム前矢田。ナゴヤドームへは建物伝いに通路が伸びて濡れずに行ける。砂田橋までの各駅は名城線乗換駅。砂田橋で乗換えたが、真新しい通路が設置されながらも駅舎自体は直結していない…。大阪の住之江公園駅は地下鉄とニュートラムを直結するエスカレーターが印象的だが、そうでなくともせめてエレベーターは一体化を考慮したほうが良かったのでは?
 左に曲がって矢田川を越える。振り返ればナゴヤドームや都心方面が見渡せてビューポイントだろう。守山直前で名鉄瀬戸線と交差、守山自衛隊前駅が至近だが双方とも乗換駅のアナウンスはされていない。実際乗り換えてみたが5分とは歩かない。大曽根で接続するし、栄へは地下鉄で、というアタマもあるかな?瀬戸線方面からナゴヤドーム連絡(名鉄では瀬戸線矢田駅から900mとしている)を考えれば言っても損ではなかろうに…。

 守山市民病院まで3階建て、以遠2階建ての「駅舎」はエレベーター設置にせよやはり「気軽に」とは云い難い。3階建て駅舎の2階部はコンコース。将来のAGT等への転移を考えての処置だが、現状は無人で監視カメラがあるとはいえ夜間等の保安が気になる。途中駅ホームはスペース的に2台は停まれようが、乗降箇所の他は柵で仕切られており、客扱いは1台しかできない。守山では小幡緑地方面ホームで「大曽根行かん?」と運転手に尋ねた老夫婦が。大曽根行きホームは目の前、折しもクルマがやってきたにもかかわらず【軌道内立入禁止!】に阻まれて階段を降りていった…。

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 川村から白沢渓谷までは6%勾配を上って行く。専用軌道は案内レール・側壁とも展望に支障はなく名古屋都市部のパノラマが広がる。勾配も難なく、揺れも少なく最高速度60キロとそこそこスピードも出る。面白いのは速度制限で、軌道上に一般道同様のオレンジの表示、側壁からは鉄道同様の表示がともにあるところ。運転手も「制限35!」と監呼するあたり充分鉄道の雰囲気…その運転手、ハンドルを握らずの運行はやはり最たる違和感といえるだろう。

 車窓がまさしく丘陵地帯に入れば高架専用道区間の終点・小幡緑地「駅」。この先に「モードインターチェンジ」という一般道連絡部がある。駅からスロープとなり、端部で遮断機をくぐれば普通のバスとなって一般道へ出て行く仕組み。案内輪の伸張と専用無線の稼動確認などを実施するとともに、車両および乗務員のIDを確認して遮断機を開閉するシステムにより、一般車両の進入を防ぐのだとか。ちなみにモードインターチェンジの傍の建物がシステム管理会社=名古屋ガイドウェイバスの本社である。
 小幡緑地の周辺は整備途上という感じであるが、パークアンドライドなども考慮できそうではある。もっとも、一般市営バスの新守山駅方面路線も残っている事を考えれば、小幡緑地駅を高架構造にしたのも将来の延長を考慮したにせよ理解に苦しむ。小幡緑地折り返し便はモードインターを一旦出てから戻って行く事を考えれば、モードインター端部に一般路線共々のバスセンターを設置しコンビニなどを併設すれば、単なる駅としてでなく地域の拠点としての機能も産まれるだけに良かったのではないか…。

路線図(平日データイム本数)
大曽根   名古屋市交通局
(毎時7本) 名古屋鉄道
小幡緑地 13分¥240 JR東海バス
(毎時7本)    
志段味支所前 26分¥420 (毎時1本)
(毎時6本) 瀬戸みずの坂 42分¥650
中志段味 27分¥420    
(毎時3本)    
高蔵寺 37分¥620    
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 結局のところ、約10分間隔の運行にしては利用率はさほどでもないのでこんなものかと…ふとここで改めて考えてみれば、やはり構造物と実際の許容輸送量を考えるアタマがまだ慣れていないというか、結局バスなんだから輸送量はほぼ見合ったものというべきだろう。だからこそ構造物が大袈裟な感じがより強まるというか、この前に基幹バスを見てからだっただけに余計に印象が思わしくないのかもしれない…。

ゆとりーとライン(名古屋ガイドウェイバス株式会社) http://www.guideway.co.jp/

 名古屋といえば路線バス先進地というか、新しい交通システム好きでというべきか…ま、それはともかく、それをもっとも印象付けたのは基幹バスの存在であろう。1980年代、都市部路線バスの構造的見直しの機運の高まりの中、各地で「都市新バス」の名の下に各種施策が実施されたが、名古屋では1982年に基幹バス東郊線(栄―星崎)、85年に新出来町線(栄―引山)が運行を開始、カラー舗装のバスレーン化、接近表示機設置などで従来の路線と一線を画すシステムを採用した。特に新出来町線桜通大津―引山間は中央走行方式を実現、停留所も囲い付きで安全性を高めるなど、当時の路面電車を越える配慮がなされていたことは特筆に値しようか。
 その後市の交通政策は地下鉄中心による面的整備方針にシフトしたために基幹バス自体は2路線にとどまっているが、両線とも利用率を延ばしているという。また、市は更なるバス事業見直しに際して今回のガイドウェイバスのほか、小型バスによる都心100円ループ路線を新設するなど、その積極性は失われていない。

基幹バス 基幹バス
基幹バス
中央走行方式の基幹バス (右上)名鉄バスは流行りのラッピングに (右下)名駅周辺を巡る都心ループ 

 基幹2系統(新出来町線)に試乗してみる。メインのバスレーン区間を挟んで市営バスが名古屋駅から自由が丘・猪高車庫方面、名鉄バスが名鉄バスセンター・栄から長久手方面等に路線を運行している。
 名古屋駅前、松坂屋ビル2階の市営バスターミナルから市営基幹バスに乗ってみた。一般路線と色の違うバスの愛称は「ミッキー」。駅前から桜通は通常ルートである。
 桜通大津から北へ進みバスレーンへ。中央分離帯両脇をバスが快調に走る。市役所前で名古屋城をちらと見て右に曲がり、狭く見えても6車線道路を快調に進む。路線由来の新出来町付近はカラー舗装改修中であったが、中央走行方式を十分に堪能させて頂いた。
 停留所の造りも簡易ながら風雨を凌げ、接近表示も備わっているなど利便性に富んでいる。そもそも適度に本数があるので時刻表要らずなのも好ましい。そう云う意味では、市役所前など一般路線が通常の路肩バス停と分かれているのはどうなのかなとも思うのだが…。

名古屋市交通局 http://www.kotsu.city.nagoya.jp/

 小幡緑地から一般道に出るガイドウェイバス。見た目こそ通常のバスなので違和感はない。この先、西小学校停留所・東名高速交差部まで道路拡幅整備が完了しており、5車線道路化されている。うち都心方面3車線の路肩1車線がカラー舗装の上時間帯バスレーン化されている。この間丘陵下りで左手に庄内川が見えるポイントはなかなかの景色だった。

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 道路が途端に2車線対向ととなってしばし、まもなく自然環境と調和した新しいまちづくり=ヒューマン・サイエンスタウンを目指す志段味地区へ…。中志段味には市営バスの折り返し場が設けられており、藤ヶ丘・引山・小幡方面の市バス・名鉄バスも集まっている。しかし折り返し場は原則他者進入禁止、中志段味バス停は路上で、乗降時は渋滞の原因ともなっている。小幡緑地同様、何らかの交通ターミナルとすべきだったのではなかろうか。
 その意味では一般路線区間の案内設備の貧弱さも指摘したい。高架区間こそ隣駅が見えるほどながら万全?の案内表示機を設置しておいて、一般区間では多くが普通のバス停板…(照明もなし)。渋滞懸念のある区間こそ、運行状況を明らかにすることが求められるのではなかろうか…。

「交流路線」は名鉄の小型バス  車内には常時ニュースが流れる  運転席横にシステム連動のカーナビが
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 名古屋から電車で30分程。ベッドタウン化の進む愛知県三好町では1999年10月から福祉バスの試験運行を実施している。R153沿線の町南部旧市街と名鉄豊田線沿線の開発進む北部新市街を結ぶ公共交通機関として、かつ町内各所と役場を結ぶ福祉機能を狙ったもので、役場近くに大型ショッピングセンターができたこともあって重要性が増した事から昨年12月に一部路線の見直しが実施されるなど、本格運行を目指した自治体主導の積極策が伺える。

 特記すべきは12月からトヨタ自動車によるバスロケシステムの運用実験が行なわれている事。昨年の東京モーターショーで企画出展されたTIME-bが実際に使用されているもので、GPSを活用した路線・車両管理でインテリジェントバス停に待ち時間・バス位置・到着予測などをリアルタイムで表示させる実験を主に行なっている。
 「電子バス停」は名鉄三好ヶ丘駅、アイモール・ジャスコ三好店、三好町役場前に設置されており、適宜情報が流される。実際にジャスコ前停留所でその動きを見てみたが、基本的には通常のバスロケと変わらない印象。ただ通常のバスロケが前々停留所程からの動きを固定表示するものと比べて、かなりの停留所の動きを目で追えるほか、文字情報で「○○を通過しました。あと×分で到着します」と流されると受ける印象はやはり違う。もっとも、1路線が2時間ヘッドだったことからバスが過ぎるととたんに表示が寂しくなるのは…。このシステム、携帯電話とカーナビ(GPS)を絡めてのものであるがゆえ、大掛かりな地上側設備を必要とせずに効率的な活用が可能という事で、今後の展開が期待されよう。

 なお、三好町ではまもなく本格運行を実施すべく各所で整備を行なっていた。現在2路線で運行されているが、1路線は名鉄の小型バスでのワンマン運行、1路線がタクシー会社委託によるマイクロバスでの車掌添乗運行。女性車掌が運賃(100円均一)収受を行なっていたが、その路線は特に狭隘区間を通るわけでもなかったのでこの措置はどういう意図かは不明…ともあれ、電子バスと女性車掌の取り合わせはある意味新鮮でもあった。
 また、車内では停留所案内の他、FM文字多重放送のニュースを常時流していた(蛇足ながら当日の芸予地震の速報もここで知ることとなる)。タクシーでは見掛ける施策ながら、こういうものはどんどん広がって欲しいものである。

愛知県三次町 http://www.town.miyoshi.aichi.jp/
三好町福祉バスホームページ http://www.hm.aitai.ne.jp/~joho/fukushi/page/top.htm

東京モーターショー2000見聞録 015.html

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「電子バス停」に刻々と運行情報が  三好町役場前バス停は「本格運行に備えた」整備途上  「生活路線」は地元タクシー会社のマイクロバス・女性車掌も

 高蔵寺から桃花台へ。丘陵を越えて視界が広がる眼前に弧を描く高架軌道が…小牧市桃花台ニュータウンの足として誕生した桃花台新交通=ピーチライナーはこの春、開業10周年を迎えた。ループ線を活用した片方向運行システムなど、AGTの中でも特記すべき構造を持っている同線だが、その経営は苦しい…。接続する名鉄小牧線が上飯田止まりと都心部未接続であるがゆえ、街自体が名古屋のベッドタウンとしての発展途上にあることもそうだが、なんといっても中央道がニュータウンを貫くクルマの便の良い街ゆえの結果であるともいえようか。挙句には並行して市主体のコミュニティバスまで運行が始まったほどである。

 当日はちょうど小牧駅前で新交通主催による感謝祭が催されていた。地域の人々を中心に和やかな雰囲気のお祭りであったが、どうせならニュータウンで開催して遠方からの客に新交通を利用してもらえば良いのに…と要らぬ心配までしてしまった。
 もともと高蔵寺延伸計画もあったことから、いっそガイドウェイバスと絡めて…などど遠大な話も出ているとかいないとか…10年前、AGTは近未来の中量輸送システムの決定版とまで思われていたものであるが…いまここに遠き日の夢の跡を見るのであった。

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2005.01.13 Update

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