【検証:】常設板過去ログ集

【検証:近未来交通地図】
(過去ログNo.055)
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東海道区間 鉄道/バスの昼行需給力における在来線活用案を考える 〔続〕
 投稿者---551planning@おさぼり管理人(2002/02/24 10:48:51)
東海道区間 鉄道/バスの昼行需給力における在来線活用案を考える
└東海道快速は近郊輸送の延長としてなら成立する
 └Re:東海道快速は近郊輸送の延長としてなら成立する
  └
サンライナーin静岡はありか?
   └Re:サンライナーin静岡はありか?
    └サンライナーin静岡はないでしょう
     └
サンライナーin静岡はやっぱりなしですか
     └Re:サンライナーin静岡はないでしょう
      └東海道快速の必要性
       └Re:東海道快速の必要性
       └Re:東海道快速の必要性

(以上前ページ)

└で、結局「東海道快速の必要性」はどの区間?
 └Re:で、結局「東海道快速の必要性」はどの区間?
  └コスト意識の欠如、非定量的需要予測、
                これじゃ運行コスト増のダイヤ提案などできない
   └定性的なアプローチだと
    └Re:定性的なアプローチだと
     └35分則と50分則〜静岡快速のメリット〜

      └Re:35分則と50分則〜静岡快速のメリット〜
      └≪管理者見解≫当該投稿に関して〜数値援用についての一考察〜
       └Re:当該投稿に関して
      └定量的評価
       └東海道快速導入論の是非を定量的に評価する

前ページより

で、結局「東海道快速の必要性」はどの区間?
 投稿者---551planning(2002/03/03 16:12:09)

 「サンライナーin静岡」に係わる議論、たいへん興味深く拝見致しました。
 政都・静岡と商都・浜松、経済誌ネタでいえば「犬猿の仲」というか、相互依存というよりも双方が独自の勢圏を保つ例ですね。他で云えば青森−弘前、福島−会津若松、富山−高岡、長野−松本、鳥取−米子あたりが近似例でしょうか。
 静岡県内流動を見ると、静岡中心流というよりも東京・名古屋への流出と見るのが自然でしょうか。裏を返すと高速移動機関が整備された東海道筋には小さな勢圏が連続しているともいえます。それはすでに指摘されていますね。静鉄・遠鉄が組んだ東名静岡浜松急行路線がずいぶん前に消え、以降高速バスが育っていないのも、両都市相互流動よりも小勢圏からの両都市への流れの強さを物語るものであり、さらには普通列車整備と新幹線新駅設置(新富士・掛川)という施策が実を結んだものと考えます。
 福岡と北九州の場合は北九州が経済構造の対応遅れによる低迷期を経たこと、福岡が九州の玄関口として勢圏を強めたことにより、どちらかといえば福岡を核とした周辺流動と捉えることができるでしょう。JR-Qによる博多以南での快速サービス提供、西鉄による福岡中心の高速バス網がそれを示しています。サンライナーもどちらかといえば岡山圏を軸とした県内輸送であり、西条快速と統合されていないのも(-Wの広島・岡山各支社の)輸送合理性追求の結果と考えています。サンライナー誕生の裏には山陽道の整備という事象も見逃せないでしょう。現に広島圏での高速バス網整備につづいて、福山を核とした広域バス網が整備されつつあることはなにげに見逃せません(逆に岡山を軸とした高速バス網が成立しないのは鉄道による圏域確保の賜物か…好例は瀬戸大橋線)。

 数字による論証固めは重要であり、当方に欠落した視点であることから議論の流れを注目しておりましたが、なんだか逆に非合理的というか、容易く操作し得るものであると認識してしまいました。どうなんでしょうか、単純に同じ数字からでも恣意的に複数の見方ができてしまう。brother-t様が補正された11時台からの算出というパターンから当てはめるのも無理がありましょうし、かといって換算云々の前に+950円の特急料金の支出評価をどのように捉えるかでも評価の分かれてくるところであるので、粗いから…という言訳は通らないところでしょう。とも様には折角算出して頂いたものではありますが、「ざっくり」なら提示なさらなければよかったデータでは?とも考えてしまいます。
 要は、結局のところ「実流動は御覧になられてますか」といいたいです。じゃあお前は?と聞かれそうですが、少ないながら実体験を踏まえつつ、伝聞を加味して論じているつもりです。少なくとも第3者からみて、静岡圏での速達サービスのニーズは低いものと考えます。「潜在需要が掘り起こされていない」なら高速バス撤退をどう評価するでしょうか。brother-t様論拠の新幹線通勤流動のデータもはや10年前のものであり、数字を前面に押し出しての論証の限界を見る想いです。

 近距離輸送の延長線上にあるという議論は理解しますし重要な論点とは思いますが、そもそもの議論は、長距離高速バスに対抗しうる東海道筋でのフリークエント速達サービスの提供からの論点であったはず。静岡−浜松間流動だけを取れば、では熱海−沼津−静岡、浜松−豊橋はどのようにお考えですか?直通運転とすればコスト面でもより跳ね返りが大きいと見ますし、ダイヤ上の効率性は維持されますか?そこについてどのようにお考えになられているのか、ぜひとも明快にお答え頂ければ幸いです。でなければ「面白い」だけのままで終わってしまいますぞ。

Re:で、結局「東海道快速の必要性」はどの区間?
 投稿者---brother-t氏(2002/03/04 03:18:34) http://members.jcom.home.ne.jp/brother/index.htm

 こんばんは。
 どうも視点の定まらないネタですいませんでした。

 要は、結局のところ「実流動は御覧になられてますか」といいたいです。じゃあお前は?と聞かれそうですが、少ないながら実体験を踏まえつつ、伝聞を加味して論じているつもりです。少なくとも第3者からみて、静岡圏での速達サービスのニーズは低いものと考えます。

 これに関しては浜松市のHPで浜松発着の流動に関しては発見しました。このファイル(※)の12Pです。
 実際浜松〜静岡に関しては浜松→静岡が1,547人、逆が902人の合計2,449人で予想していたものより大分少なかったのにはびっくりしました。とは言え浜松から50km以上離れる焼津・藤枝・島田の3市で→浜松が1,291人、逆が334人の合計1,625人いて、これらを合わせると4,074人となります。

※(PDF) http://www.city.hamamatsu.shizuoka.jp/admin/db/tokei/02_jinko.pdf

「潜在需要が掘り起こされていない」なら高速バス撤退をどう評価するでしょうか。

 浜松〜静岡の場合他地区と安易に比較出来ないのは結局駅〜駅間でないにしろ東名ハイウェイバスが相当数(下り片道20本)既に運行され、また新幹線こだまも含めて幹線ルートの途中区間利用が一定数確保されている事で、高速バスが入りこむ都市間2点輸送に特化すると言うニッチが無くなってしまったと言うのが無視出来ない要因だと言う考え方も出来ます。

 近距離輸送の延長線上にあるという議論は理解しますし重要な論点とは思いますが、そもそもの議論は、長距離高速バスに対抗しうる東海道筋でのフリークエント速達サービスの提供からの論点であったはず。静岡−浜松間流動だけを取れば、では熱海−沼津−静岡、浜松−豊橋はどのようにお考えですか?直通運転とすればコスト面でもより跳ね返りが大きいと見ますし、ダイヤ上の効率性は維持されますか?そこについてどのようにお考えになられているのか、ぜひとも明快にお答え頂ければ幸いです。

 個人的に最初に考えたのは快速の投入で思いきって東海道区間在来線を30分パターンにする事で、名古屋・東京の影響を引き摺ってしまう静岡地区を思いきって熱海〜静岡〜浜松で区切ってしまうと言う事です。確かに沼津辺りでは東京への直通が無くなるデメリットがあるかもしれませんが、そうするのはランダムに走る静岡〜沼津〜東京方面直通をなくす事でパターンが乱れがちな静岡東部の東海道線を規格化し、熱海で一定の乗り継ぎを出来るようにする事で、使いやすくする狙いがあります。逆に浜松では基本的に浜松以西では名古屋直通(出来れば新快速を30分毎直通、豊橋〜浜松間快速接続区間普通30分毎)を基本として運営して行きます。

 具体的な私案を言えば

 また他の支線区でも伊東線・御殿場線が1時間に2本、身延線が1時間に2〜3本になっているのを、快速接続を基本として(身延線は3本の時は30・15・15分毎の様に)運営して行けば効果は更に上がるのではと考えられます。
 1言で言うならば快速を設定して東海道全体でダイヤ規格化を計ろうと言う大風呂敷になってしまうのですが今日はこの辺で
 おやすみなさい

コスト意識の欠如、非定量的需要予測、これじゃ運行コスト増のダイヤ提案などできない
 投稿者---矢切氏(2002/03/04 13:21:09) http://www3.ocn.ne.jp/~skylark7/

 ダイヤ論なので厳しく批評します。
 brother-tさんのダイヤ案は貴サイトのものを含め著しくコスト意識を欠いており、ほとんど現実性がないです。
 大幅な増発案を出すなら、増発を正当化する根拠(今より何人輸送が増え、いくら収入が増え、それに対しコスト増は年間いくらである)を概算でも良いので出してください。

具体的な私案を言えば
 ・快速
  熱海〜浜松30分毎(熱海〜沼津各駅停車)
・普通
  熱海〜浜松間30分毎
  沼津〜浜松間30分毎
  島田〜興津(富士)間30分毎

 酷い増発です。区間毎の片道単位時間あたり本数を、現実と貴案とで比べます

沼津〜富士:4本→6本
富士〜興津:4〜5本→6本
興津〜静岡:6本→8本
静岡〜島田:6本→8本
島田〜浜松:4本→6本
浜松〜豊橋:3本→4本

 しかも貴案では運営コストが増えたのに弁天島付近での普通列車本数が毎時3本(最大25分)から2本へと大きく減少し沿線への著しいサービスダウンです。

 今までの議論では、これだけの増発に見合うだけの利用増加があるとは全くいえないです。何運用増え、何人従業員を増やす必要があり、余計にいくらかかるか、計算してみてください。全部の評価は難しいでしょうから、避けられない乗務員の人件費増分と電気代増分だけでも計算して、最低でも何人客が増えなければいけないかという数値を出すんでもいいです。実際には従業員を増やすとなると会社の長期的戦略とも絡みますからなおのこと困難です。

定性的なアプローチだと
 投稿者---エル・アルコン氏(2002/03/04 16:09:48) http://6408.teacup.com/narashinohara/bbs

 繰り返しになりますが、都市間快速を設定する場合、域内フリークェンシーが事実上犠牲になります。東海道は静岡地区の様に普通毎時6本体制をとり域内優遇策をとるエリアと、名古屋地区や京阪神のように快速:普通=4:4というフリークェンシーを犠牲にしているダイヤの二通りとなります。
 ちなみに岡崎−豊橋や野洲−米原のように華やかな快速街道の蔭で普通が毎時2本(野洲−米原は新快速も毎時2本という2-2ダイヤでしかない)となっていることは注意すべきです。

 浜松の場合は明らかに名古屋を向いていますから(県都静岡よりも名古屋を向いている傾向がある)、まずは新幹線でしょう。ただ新快速(特別快速)の速達性や、伝統的に「安くて速い」を標榜している名鉄の存在から、在来線経由での流動がそれなりに存在します。
 現在、名豊間の快速は名古屋駅で15分間隔のパターンダイヤになっていますが、停車駅の差から豊橋口では名古屋方面行きが毎時02-21-32-51分(21-51分は新快速)、到着が毎時07-24-37-54分(07-37分は新快速)と30分ごとに対になってばらけます。
 一方で浜松−豊橋間は下りが20分ヘッド、上りが19-18-23分ヘッドとなっており噛み合いません。(直通は当然として、その前or後の1本が接続する他は冗漫)その意味で30分ヘッドを基本とするのは、浜松−静岡間でも10‐20分の変則毎時4本パターンとも整合性がとれるので良いのですが、如何せん普通が毎時2本では問題がありすぎます。

***
 静岡地区の場合、明らかに輸送力不足が見て取れる面があります。ただ、実際にはあと1両の増結で十分というレベルであり、増発するべきかとなるとネガティブです。強いて言えば静岡‐沼津の毎時6本パターンは有効でしょうが。
 浜松−豊橋間の場合、豊橋口で快速接続を考慮した毎時3本の普通に、直通快速は快速運転、というのがまず考えられますが、ラフに考えると普通が浜松発で今の20分ヘッドが30-20-10分ヘッドになり、しかも快速が30分開いたあとの普通の直前に入る「使えない」ダイヤになります。上りは15-15-30分ヘッドでまだマシですが...

 また名古屋直通の快速なら浜松までの各駅からの名古屋速達(二川、湖西市、舞阪町など)サービスも考慮する必要があり、広域集客の望める浜名湖競艇まで考えれば、どうも通過できる駅はありません(浜松まで無停車という手はなくもないが、新幹線とキャラが被りすぎて無駄に終わりそう)。

 流動から見ても、浜松以西は15分ヘッド型のダイヤにして、以東は10分ヘッド型のダイヤにするのがよさそうです。浜松−島田間も、例えば愛野駅最寄りのエコバスタジアムの有効活用とセットにして現行の抜け目を埋めての10分ヘッドとする手もあります。
 増発により個別列車の編成増強を回避するか、増発せずに1両単位で増結するか(3連→4連)ですが、車両の純増は増結の方で効いてきますが、人件費や運行経費は増発で効いてきます。
 このあたりは車側で運賃収受を行わない都市型ワンマンでクリアしたいところですが、これはどうしても停車時間を多く取らざるを得ない(運転手によるドア扱い時間確保)デメリットがあります。

***
 私の場合は経験則からくる定性的な内容を主としたアプローチですが、提示の浜松市HPなどの資料を見た限りでは、体験から得た情報と現状に差は然程認められないようです。このあたりは18きっぷ使用の日帰りでも十分行ってこれますから、一度現地をご覧になるべきだと思います。

Re:定性的なアプローチだと
 投稿者---とも氏(2002/03/04 18:51:15) http://town-m.vop.jp/

 ともです。

 快速を設定するのならそれなりの需要があって、ハッキリした流動が見られるような区間でなくては意味がありません。
 今回の東海道筋で言えば、熱海〜豊橋にそのような流動は考えにくいのではないかと考えます。

 はっきり言えば、今の静岡クラスの普通列車需要ならどこにでもあります。長野近郊区間や新潟近郊のほうがひょっとしたら 乗っているかもしれません。
 そんなところに、「東海道は大動脈だから」と快速論を出しても、矢切様のかかれるようにまさにコストもなにも考えていない案でしかなくなります。

 私の場合は経験則からくる定性的な内容を主としたアプローチですが、提示の浜松市HPなどの資料を見た限りでは、体験から得た情報と現状に差は然程認められないようです。このあたりは18きっぷ使用の日帰りでも十分行ってこれますから、一度現地をご覧になるべきだと思います。

 まったくもって同感です。まず、実態を把握すべきです。私は「べき」だの「しなければならない」だの「せよ」なんていう言い方は嫌いですが、あえて言います。
 世間は確かに鉄道を再評価していますが、「増発してパターン化しました。熱海口のランダムを無くしました。快速で新幹線より少し遅いぐらいの快適サービスを提供しました」では客はつかないのです。

 利用者、しかも一般の普通に浜松なり静岡都市圏で鉄道利用する人にとって、今のダイヤより使いやすいのか、JR東海にとってメリットがあるのか。乗客増加が見込めるのか、それを考えずしてダイヤ論を語っても仕方がありません。

 それでは

35分則と50分則〜静岡快速のメリット〜
 投稿者---brother-t氏(2002/03/08 15:24:14) http://members.jcom.home.ne.jp/brother/index.htm

 皆様こんにちは。
 1つ確認しておきますが浜松〜名古屋方面快速に関しては一応浜松〜豊橋に関しては各駅停車という事にしていたのですが、如何でしょうか(とは言え30分にもう1本増発出来るなら快速運転した方が良いかなと思っていたのですが)?

 大幅な増発案を出すなら、増発を正当化する根拠(今より何人輸送が増え、いくら収入が増え、それに対しコスト増は年間いくらである)を概算でも良いので出してください。

 う〜ん、これはダイヤ案作成時の考え方の違いだと思います。個人的には問題点を自明と言うので無く、分かりやすい形で列挙・分析した上で、その最大限の改善を最小限の費用で実現しようという考え方で、その方向性としての1形態としてダイヤ案を出しているつもりです。とは言え費用と効果に関しては具体的に出すのは非常に難しいのですが出きるだけ出すべきと言うのはおっしゃる通りです。

 このあたりは18きっぷ使用の日帰りでも十分行ってこれますから、一度現地をご覧になるべきだと思います。

 これもおっしゃる通りです。

 快速を設定するのならそれなりの需要があって、ハッキリした流動が見られるような区間でなくては意味がありません。

 これもおっしゃる通りなのですが、サンライナーに関していっていることと矛盾していませんか(と言うより全く矛盾が無いと思ってた方が怖いような…)?
 というのはサンライナーで「はっきりした区間」と言うのが、サンライナーの走っている区間で快速のターゲットとなる距離帯であろう30km以上の区間と言うのは岡山〜笠岡だけで、こう言った区間は静岡地区で言えば静岡〜富士・富士宮、浜松〜菊川といった区間が相当します。実際流動・人口ともはっきり分かっている浜松発着のデータで見ると

 

(人)

 

(分)

  対浜松流動 人口 割合 〜浜松 〜浜松
快速
〜静岡 〜静岡
快速
掛川 3,218 76,839 4.2 25 22 46 41
菊川 857 30,675 2.8 31 - 40 -
金谷 184 21,482 0.9 39 35 32 28
島田 538 75,029 0.7 44 40 27 23
藤枝 884 124,822 0.7 51 46 19 16
焼津 403 115,931 0.3 57 51 13 11

【551注:参考】 brother-t氏想定の快速停車駅は下記の通り(よって菊川の数値が無い)
熱海・三島・沼津・吉原・富士・清水・静岡・焼津・藤枝・島田・金谷・掛川・袋井・磐田・浜松

 実際浜松・静岡の35分圏内の菊川・金谷までが完全な依存圏と言え、またもう1つの圏として通勤・通学の一般的な選択範囲として浜松から51分の藤枝がその境目と見る事が(1都市の例なので強引ですが)出来ると思います。実際静岡以東を見ると富士が34分で35分圏内(ここは完全依存圏内ではない物の実際20万人と言う人口規模から考えると都市の規模によって基本的には独立都市と見ても良いと考えます)です。また50分圏内に関しては沼津が静岡から54分で微妙な位置にいます。そして快速を設定すると新たに静岡・浜松の35・50分圏内に入るのは

   35分 50分
静岡     袋井・沼津・(富士宮)
浜松  金谷 焼津

 富士宮に関してはダイヤ次第と言う事でカッコ付しました。強引ではありますが、この効果を1日当りの金額に直すと(35分圏内2.8%、50分圏内0.7%、圏外0.4%として増加は計算)

  (人) (円)   (人) (円)
対静岡 人口 増加 定期 1日当り増収 対浜松 人口 増加 定期 1日当り増収
沼津 212,241 634 25,000 530,603 金谷 21,482 416 21,870 303,385
袋井 57,098 171 26,740 152,680 焼津 115,931 418 29,220 407,164
(計)  

805

 

683,283

   

834

 

710,549

 実際これだけでも約140万円の増収が期待出来ます。実際増車を考えず費用を計上すると人件費が半額(推定)で70万円、1人1日当り人件費を2万円とするならば快速を30分毎に走らせても充分ペイしそうな気がしますがいかがでしょうか?

Re:35分則と50分則〜静岡快速のメリット〜
 投稿者---とも氏(2002/03/08 23:37:28) http://town-m.vop.jp/

 ともです。
 超手抜きレスで

 サンライナーに関していっていることと矛盾していませんか(と言うより全く矛盾が無いと思ってた方が怖いような…)?
 というのはサンライナーで「はっきりした区間」と言うのがサンライナーの走っている区間で快速のターゲットとなる距離帯であろう30km以上の区間と言うのは岡山〜笠岡だけでこう言った区間は静岡地区で言えば静岡〜富士・富士宮、浜松〜菊川といった区間が相当します。

 サンライナーは都市間快速ではありながら、通過しても差し支えない駅を通過しているだけで、いってみれば普通の延長としての快速、つまり緩行系列車ではないですか?
 さらに快速のターゲットを30kmとしていますが、その根拠はなんでしょうか?
 30km超でも普通で十分やっていける区間もあれば10kmでも快速サービスが必要な区間があるはずで、単純に30kmを快速のターゲットなどと断言するのは違うのではないかという気がします。
途中の駅数や乗降客数、流動、都市規模などでまったく異なるはずです。

 実際浜松・静岡の35分圏内の菊川・金谷までが完全な依存圏と言え、またもう1つの圏として通勤・通学の一般的な選択範囲として浜松から51分の藤枝がその境目と見る事が(1都市の例なので強引ですが)出来ると思います。

 そもそもこの時間圏はどこから出ているのですか?
 依存関係にあることと所要時間に相関関係はないとは言いませんが、各都市で違うはずです。
 であれば、単純に50分圏などと設定することはできず、さらには列車所要時間だけで都市圏規模を設定するなど強引すぎます。
 この数字を見る限り、あきらかに浜松と静岡の間にはハッキリした相互流動はなく、都市圏輸送の延長線上としての相互流動でしかないのです。
 ということは都市間輸送は成立しないと言うことではないですか?

 これが私の言うハッキリした流動がないということです。
 ではサンライナーはといえば、あそこも確かに状況は似ていますが、決定的な違いは、それでも拠点駅間の流動が明らかにあることでしょう。
 データはありませんが、見に行けばすぐにわかるはずです。静岡〜浜松には拠点駅もなく、両都市に依存するしかないのですから、必然的に変わります。富士や清水を入れればというのも否定はしませんが、浜松との間で快速利用では時間がかかりすぎて、非現実的ではないですか。

 実際これだけでも約140万円の増収が期待出来ます。実際増車を考えず費用を計上すると人件費が半額(推定)で70万円、1人1日当り人件費を2万円とするならば快速を30分毎に走らせても充分ペイしそうな気がしますがいかがでしょうか?

 人件費が半額はちょっと無いのでは?ってこれは水掛になりますから置いておくとして、利用者増加の根拠が明確ではありません。時間距離の概念から静岡なり浜松なりの依存圏が拡大することによって利用者が増加するということですね?
 このやり方のように強引になるのは致し方ないとして、であれば、静岡なり浜松なりの他の圏域からの流動と見比べましたか?
 時間が短くなれば依存圏が拡大すると言い切れるでしょうか。否定はしません。相互流動は増加するということも否定はしません。
 ただ、この両都市間にはすでに便利な普通も新幹線も高速道路も国道バイパスもあって、移動しようと思えばいくらでも可能なのです。でも流動がないということは、相互流動拡大のパイは小さいということではないですか。そうなればここまでの増客は考えられますか?

 時間ではなくソフト面からのアプローチが先でしょう。両都市間に割引チケットでも出して相互流動を拡大させるのが先決と思いますが。

≪管理者見解≫当該投稿に関して 〜数値援用についての一考察〜
 投稿者---551planning@おさぼり管理人(2002/03/13 00:41:53)

 どうも、551@毎度【検証:】を御愛顧頂きまして誠にありがとうございます。

 さて、brother-t氏御投稿文に関して、提示数値および表形式のものについて確認しづらい点がありますので、過去ログページに編集致しました。幾分かは見易くなっていると思います。なお、表について一部、管理者の解釈の下加筆させて頂いている こと(単位表記、明らかな加算ミスなど)をこの場を借りてお断りさせて頂きます。

 編集しておりまして強く感じたのは、数値の根拠が何ら示されていない点。議論継続の上で明確にしなければならないと判断し、数値が一人歩きする事を防ぐため管理者権限により一時的に投稿を削除するとともに、管理者よりbrother-t氏に対してメールにて判断根拠についての公表を求める指摘を行い、結果下記のような回答を得ました。管理者にて内容を精査し、今後の議論維持が可能と判断したため、削除投稿文の再掲という措置を採らせて頂いた次第です。


brother-t氏からの回答(管理者にて要約)

  1. 「サンライナーの走っている区間で快速のターゲットとなる距離帯であろう30km以上の区間」という根拠説明について

     今回の舞台になっている静岡地区の特徴である

  • 新幹線が併行している

  • 複線だったら特急が1時間に2本未満

という中で快速が昼間時1時間に1本以上走っている地区をピックアップ(具体的には、名古屋・大阪・岡山・広島地区)、その地区で普通がどこまで快速に先行して走るかをある程度目安とした。
 時刻はJTB時刻表2001年10月号を参照、いわゆる発駅を12時台で正午に最も近い時刻に発着する列車を基準とした。
 なお12時台による基準は、ダイヤを取り上げるとき最も公平なやり方を考えたときに身近に参考となるものが「川島本」くらいしか無く、昼間時間帯=12時台というケースが標準的であったため、それに沿ったものである。

発着駅 発列車  

先行開始駅
*1

同距離
(km)

着列車先行開始駅
*2

同距離
(km)

名古屋 快速・新快速 下り 岐阜 30.3 岐阜 30.3
    上り 刈谷 24.4 刈谷 24.4
大阪 新快速 下り 明石 52.5 明石 52.5
    上り 京都 42.8 京都 42.8
岡山 サンライナー   笠岡 43.7 新倉敷 25.2
広島 山陽シティライナー   岩国 41.4 岩国 41.4
  快速   白市 32.8 白市 32.8
  平均     38.271   35.628
  広島・岡山平均     39.3   33.133

*1:快速が発駅を出て最初に併行する普通を追い越して停車する駅あるいは緩急結合駅
*2:*1の逆の駅

 実際平均は40km程度で誤差10kmをもって30kmいう根拠とした。

  1. 静岡圏快速運行によって増客・増収の旨数値提示されている根拠説明

 浜松〜各市町村の代表駅の所要時間と、市町村人口、浜松への流動/市町村の人口の数値を所要時間ごとに分けた浜松への流動志向性を出し、その上で浜松への35分圏である菊川、さらに50分圏である藤枝が一定の境となっていることを確認した。
 よって快速設定時に50分圏外→50分圏内となった場合流動は50分圏内の流動に移るという仮定で、まず通勤通学者の流動の増加を乗客の増加と近似し、そして1ヶ月当りの定期運賃を1/30にして1日当りの運賃として増客数を掛け合わせて増収を出した。

※なお、前提条件としての「35分則・50分則」は、brother-t氏自身周囲の経験則を踏まえたもので、電車で50分圏とは基本的にそこに住んでいる人が通勤・通学の圏内として無理のない時間距離として認知出来る圏内、そして35分圏内は中心都市の持つ日常行動勢圏(中心都市で生活を送る上で住居を構えるなどの限界距離)にあるとされています。

 この間brother-t氏と管理者との間でメールにてやり取りさせて頂きましたが、管理者として下記の点を痛感致しました。
 すなわち、数字による論証固めは重要であり、管理者当方に欠落しがちな視点でありますが、他方一見説得力がありそうで実は数値だけが先走る議論は一介の掲示板上では好ましくないと思っています。当方も実務で経理という数値を扱う仕事をしておりますが、答えはひとつのようで、切り口が違うと如何様にも変わる可能性があります。
 幸か不幸か、当掲示板ではいちげんさんにはとっつきにくいほどの、表現的にどうかは別として「厳しい」意見交換がなされており、その先には論文レベルまでに掲示板上の議論を高めなければならない、というひとつの方向性もありましょうが、その際に数値の持つ「絶対性」を掲げての議論中心になると、その地域、輸送機関の持つ合理性、適応性などが二の次になるのではないか、それでは当掲示板が掲げる『皆様の日々の各交通機関利用体験を踏まえ』という前提が外れるような気がしています。

 今回の事案についても、その根拠が明示されないままに数字先行の議論になりつつあると、管理者として危惧しております。議論する上で、根本的に何が必要でどのようにすればよいのか、という視点は常に持ち続けて行かなければならないのではないかと考えております。
 皆様におかれましても、その点を改めて御確認の上、有意義な議論形成を行って頂きたいと強く感じております。本件、ないし今投稿による「根拠説明」を踏まえた展論を大いに期待します。

※本件につき、「高速バス対抗策としての東海道区間全線における在来線競争力」ないし「静岡地区における快速設定論」以外に関する、管理者による数値援用に関する私見等につきまして御意見・批判等ございます場合には、お手数でもメールにて御知らせ頂きたいと思います。
 551planning@infoseek.jp

Re:当該投稿に関して
 投稿者---brother-t氏(2002/03/13 00:50:14) http://members.jcom.home.ne.jp/brother/index.htm

 この度は私の不用意な言動で皆様に不快な思いをさせてしまった事を心よりお詫び致します。

 主に熱海〜豊橋地区の快速運転と言うテーマでの議論の中で以下の様な見方が出てきました。

 非常にどの視点もレベルが高くなるほどと思うものでした。しかし確実に欠けている視点を感じたのも確かでした。それはその地域に生きる生活者の視点です。実際卒論で北総・公団線の問題を取り上げて感じたのは

「結局自分の様な外部の人間には意志決定の資料を提供する事は出来ても実際有用な意思決定を出来るのはその地域にいて直接関る人間だけである」

という事でした。例えば一言で近郊といっても20分で行ける地域と、通勤に1時間かかる地域ではやはり同じ近郊といっても違うと考えられます。少なくともその地域に転勤した時に住居を構えるとしたら前者の地域になるでしょうし、また後者の地域から通っている人を見たら「遠くから通うなぁ」と思う人は多いでしょう。

 自分は良く数字を用いて議論を行うのですがこれは単純に数字を扱うのが得意だからと言う理由の他に、実際居住していない地域の生活実感をその中から想像して行くためには他に手段が浮かばないと言うのももう1つの理由です。
 そしてこの地域の生活実感が分かった時にはもしかしたら自分の考えていた事は間違いだったと言うことになるのかもしれません。そうなったら快速は必要無いと自論を引っ込めるのに何の躊躇もありません。ただそれが感じられない中で結論は出せません。
 実際鉄道の運行を決める側はプロでも利用し鉄道の運行に必要な費用を払うのは素人の地域の生活者だからです。

 実際もう一方の関係者である鉄道会社の視点もやはり独立採算と言う制約の中で営まれている日本の鉄道の現状と言う中で無視してはいけないものです。
 実際結論を出す中では、鉄道会社がかける費用、そして生活実感の中から出てくる効果(この場合は鉄道会社の増収の部分です)と言う2つの視点で見なければ結論は出てこないと思います。

 とはいえこれからこれ以上どこまでこの2者に迫れるのかと考えるともう自分のほうでは限界ですし、またこれ以上皆様に御迷惑をおかけする事も許される事ではありません。
 もう自論を撤回しようと考えています。また現状の掲示板は管理人氏や常連の方々の人柄やレベルの高い議論に引かれて多くの人が集まり、また公共性の高い場所となっています。その中で私のような未熟者が不用意に議論を行うべきではない事を痛感致しました。 一度この掲示板の活動から離れようと思います。
 最後にこの議論に関った全ての皆様へ
 本当に不快な思いをさせてしまって申し訳ありませんでした

 brother-tこと柴田智洋

定量的評価
 投稿者---矢切氏(2002/03/13 10:06:50) http://www3.ocn.ne.jp/~skylark7/

 結論から言えば『コスト評価に「桁違いな誤りはない」としても需要予測が「甘すぎる」』と思います。

● コスト予測

 大前提として「増発するための職員確保に対し短期的にも長期的にも障害がないと仮定」します。

 人件費1人1日当たり2万円では低すぎます(勤務日が年間250日でも年500万円にしかならず、ここから会社負担の社会保障費や福利厚生費用を引いた場合の年収を計算するとあまりに低い)。2万円よりは3万円の方が適切。静岡浜松間で30分毎の快速設定で5運用の増、昼間=9時〜17時の8時間、乗務員1日あたりの乗務時間が6時間40分、週休2日で計算して、1日あたり乗務員人件費は36万円です。誤差は2倍以内でしょう。

 電気代は燃費が分からないのですが仮に100円/kmとして77キロ往復32本で24万6千円。こちらは数倍程度の誤差がありえますが1けた違い程度以内ではあっているでしょうか。

 他に車両や設備の消耗などがありますが、(かなり?)少なめに見て10万円、多めに見て100万円程度と仮定します。

 以上からコストアップは「1日あたり100万円(数倍の誤差はありうるが桁違いではない)」と見込まれます。これ以上精度の良い予測は今の私にはできません。

● 需要予測

 これは非常に難しい問題です。私は有意に誤差が少ない数字を出せません。
 ただし1日100万円の増収は困難とする根拠を出します。

 快速設定前と後の静岡〜浜松間の在来線所要時間評価です。
  ・現在=乗車時間70分、待ち時間込み平均所要時間78分
  ・設定後=乗車時間60分〜70分、待ち時間込み平均所要時間73分
 最も所要時間短縮効果の大きい静岡浜松間でさえ、平均5分の短縮でしかありません。

 駅までのアクセス時間も含めれば5%程度かそれ以下の短縮でしかないこと、5分の短縮で劇的な増加が見込める競争者が無いこと(2鉄道が平行し同じ所要時間だったら片方が5分短縮すれば転移が見込めるが類似条件にある他者がないので5分の短縮が利用選択の臨界点となる人は少ない)、座席供給においても現状で立ちっぱなしということはないので大した改善ではないこと、所要時間短縮に大きな価値を見出す層には新幹線を利用可能な人も多く時間短縮効果が出にくい環境にあること、これらを考えると何割も利用が増えると安易に考えるのは非常に危険です(私の勘では何割も増えることはない)。

 提示では35分や50分という所要時間を境に利用が2〜4倍増することになっており、甘い評価と断じざるを得ません。

● 収支(非常に粗い計算)

 (100万円程度)÷(700円/人)÷(32列車)=45人程度(注!) ここで"程度"には数倍の誤差がありうることを繰り返し注意します。快速1列車に45人程度乗っていれば良いというのではありません。普通列車からの転移分は差し引いた上で、30分あたり片道45人程度の中長距離客が純増で増えなければペイしないのです(しかもこんでいる列車でではなく日中全体上下平均しての値)。これはすなわち、何割も利用客が増えなければペイしないことを示しており、前項(需要予測)で述べたような状況も考えるともとがとれない可能性が高いと思います。

東海道快速導入論の是非を定量的に評価する
 投稿者---和寒氏(2002/03/14 06:28:31) http://www.geocities.jp/history_of_rail/

 和寒です。
 東海道快速導入論について、極めて定量的に評価してみます。採りあげるデータはほぼ全て仮定となってますが、オーダーはあっているはずです。また、分析手法は「確立された手法」に準じております。この分析は、決して私の自己流ではなく、幅広く認知されているという点に、御留意ください。内容に難しい面はあろうかと思いますが、それなりにわかりやすくしたつもりなので、御笑覧のほどを。


■快速導入論について
 JRの幹線筋は、一般的に表定速度が高いです。例えば静岡−浜松間の場合、76.9km、15駅停車、そして表定速度は約64km/h。これはもう充分に「快速」と呼べる内容です。
 上記のように「普通」列車でもごくレベルが高いわけですから、屋上屋を架す「快速」の設定が必要かどうか。一般論としてはネガティブです。例外として、旺盛な需要が存在する場合、競合する交通機関が存在する場合には、「快速」設定が有利かつ有効でしょう。
 余談になりますが、武蔵野線への快速導入がよく提言されますが、現状でも府中本町−西船橋間71.8kmで(即ち途中の時間調整をこんでさえ)所要75分、表定速度は57.4km/hの高速域に達しています。幹線系ではともかくとして、私鉄と比べれば明らかに優等列車の類に属します。武蔵野線では、直通需要(乗換駅−乗換駅間)は途中駅−乗換駅間の需要と比べ明らかに少ないですから、現状の需要を前提とする限り、快速導入はナンセンスな提言です。乗換駅が核都市として成長し、直通需要が卓越してくれば話は別ですが。
 快速導入の提言をハイセンスにするかナンセンスにするかは、現状での列車のスペックと、需要の多寡にかかっているといえます。
 では、東海道本線静岡−浜松間においてはどうか。列車のスペックは既に充分、需要に関しては当方よくわきまえませんが、皆様の呈示するデータを見る限り「寡」に属すると思量されます。

■社会的便益分析

【序論】
 そこを敢えて快速導入するとしたら、如何評価するか。
 評価論については誤解されがちなので整理すると、

というわけで、「快速導入による社会的便益」=「快速がもたらす利用者の便益(金額換算したもの)」の評価が必要となってきます。
 静岡−浜松間の快速導入により、時間短縮は 7分とされています。各駅間相互の利用者数がわからないので粗々での評価を試みます。数字はほぼ全て仮定となりますので、その点は御了承ください。ただし、仮定とはいえ、桁違いではないと考えます。実際のデータがあれば、それぞれの式に代入してみればよく、おそらくオーダー的にはたいして変わらないでしょう。

【便益の試算】
 普通列車の現行本数の一部を快速に格上げする場合は、途中駅利用者の待ち時間が増大するため、便益は必ず減少します。従って、この案は採用しないこととします。
 普通列車の現行本数を維持し快速を純増発とすると、便益は増大します。ただし、快速通過駅の利用者は、便益が増大しません。
 さてここで、普通と快速を別モード扱いすると、便益の合成にたいへんな数学的手間がかかるため、同モードとして扱い平均的な時間短縮を扱うことにします。

 そのときの便益は、下記の式で定量的に評価されます。これは消費者余剰分析といい、社会的便益分析の一般的なテキストに載っているもので、社会的認知を受けています。

B=(2×快速導入前の利用者数+快速導入による利用者増) ×0.5
  ×平均的な利用者の短縮時間
  ×時間評価値(1分=50円程度が妥当)
  ×評価期間(車両更新サイクルに社会的割引率を加味し12年とする)

 さて、快速列車の設定。毎時2本の増発としましょう。
 現行の静岡駅時刻表を基準にすると、
   毎時 00島田 09 19 32 39島田 49
 というのが標準系。であるならば、快速発時分は毎時08・48が理想的、島田で区間列車の利用者との接続をとる、という形にします。
 ここで仮定を置きます。利用者の駅到着時分はランダムである。静岡駅発の列車頻度を考えれば、この仮定は妥当と考えられます。すると、実際に所要時間短縮となるのは毎時50〜08分及び33〜48分到着の利用者、およそ58%が受益することになります。
 快速の所要時間短縮が 7分としても、静岡−浜松間全利用者で平均すれば 4分少々しかありません。
 それでも積み上げれば結構なオーダーになって、利用者数を静岡−浜松間 5,000人/日、快速導入で 500人/日増と単純化して計算すると、

B=(2×5,000+500)人/日×0.5×4分×50円/分×365日×12年=約46億円

となります。
(注1:社会的割引は評価年数に含んでいる)
(注2:利用者数が多めなのは途中駅利用者を含め単純化を図ったため)

 上記便益は実は「金額換算した」時間価値でしかありません。
 実際の金銭的な増収は、利用者の増分しか反映されず、

B’=500人×1,280円×365日×12年=約28億円

となります。

【費用の試算】
 次いで、分母となる費用の評価です。
 まずは、車両の初期投資を採り上げることにしましょう。
 快速運用は2時間半で1サイクルとなりますから、少なくとも新規に 5運用は必要で、ローテ−ション・予備車を考えれば 7運用ほどは要るはずです。それが 4両編成として、全体で28両の増備。純増ゆえ新車投入となるので、1両1億円として28億円の初期投資が要ります。

 ランニングコスト増は矢切氏の試算結果が適切であり、

C=100万円/日×365日×12年=約44億円

となります。

【費用対効果分析】
 どの便益とどの費用を組み合わせるかは、実は様々な議論があります。
 ここでは誤解を招きにくいよう、

費用対効果=(B+B’)/(初期投資+ランニングコスト)

とします。
 その解は、

費用対効果=(46億28億)/(28億+44億)=1.0

となり、プロジェクト採択基準(少なくとも 1.2)を満たしません。

【感度分析】
 ここで重要なのは、利用者増 500人/日というのは、現在利用者数の1割を単に挙げただけで、極めて楽観的な根拠の薄い数字だということです。
 実際には、鉄道利用者平均 4分の時間短縮では、潜在需要を刺激するほどの効用増とはなりえません。はっきりいえば誤差の範囲にすぎず、おそらくは数人〜数十人のオーダーにとどまるでしょう。
 仮に利用者増を50人/日とすれば、増収はわずか 3億円弱にすぎません。その際の費用対効果は、

費用対効果=(46億+3億)/(28億+44億)=0.68

となり、静岡−浜松間快速導入は、「社会的に必要がない」カテゴリーに属してしまいます。

【会計分析】
 上の分析での社会的便益は貨幣換算された利用者効用にすぎません。実際のキャッシュフローは、利用者増による増収分だけです。その費用対効果をとると、

費用対効果=28億/(28億+44億)=0.39

となり、もはやどうにもなりません。
 さらに感度分析すると、

費用対効果=3億/(28億+44億)=0.04

と、目を覆わんばかりの数値となります。
 企業的に見れば、静岡−浜松間快速導入など「ありえない話」となります。

■代替案との比較
 先のダイヤに注目。
   毎時 00島田 09 19 32 39島田 49
 この島田行を浜松まで延長すれば、それだけで平均 2.8分の時間短縮になります。ここで便益の増分は、

B=(2×5,000+500)人/日×0.5×2.8分×50円/分×365日×12年=約32億円

となります。人員・車両とも、運用数の増は先の案よりは少なくなりますから、この方がよほど費用対効果が高くなります。初期投資及びランニングコスト、いずれも3分の2程度と仮定すると、

費用対効果=(32億+28億)/{(28億+44億)×2/3}=1.25

となり、まだしも効率の良い案となります。
 ただし、感度分析や会計分析をすれば、やはり実現可能性の厳しい案であることは確かです。

■結論
 東海道在来線の普通列車スペックは充分高く、快速導入はあまり意味がない。
 しかし快速導入期待論を「マニアの戯言」とするのは、誤りである。なぜなら、消費者余剰分析による分析を行う限りにおいて、相応のオーダーで社会的便益発生が期待できるからである。この結果は筆者においても意外であって、「マニアの視点」も案外いい線を衝いているものだという感覚を持った。
 しかしながら、費用対効果分析は良好な数字にならない。初期投資・ランニングコストいずれも大きいため、総便益はせいぜい総費用を上回る程度しか期待できない。感度分析では費用対効果が1を大きく割る。
 よって、現時点での静岡−浜松間快速導入は、「社会的必要性の乏しいプロジェクト」と認定するのが妥当である。
 その理由は同区間の利用者数が少ないこと、さらに利用者の増加がさして期待できない点につきる。上記の仮定のせめて倍以上の利用者数と利用者増加がなければ、快速導入は社会的に許容されない。
 また、実際の貨幣タームでの増収はほとんど期待できない。従って、快速導入の企業的な実現可能性は極めてネガティブである。この点は、充分に留意すべきである。
 さらに、快速導入期待論は多大な社会的便益が発生するアイディアであるものの、便益を効率的に伸ばすものではない点に注意を要する。今回の検討においても、快速導入よりも区間列車の延伸の方が、より効率的であることが示された。

 快速導入論は相応の社会的便益が発生する、それなりに良いアイディアである。ただし、費用対効果は良好な数値にはならず、企業的(金銭的)評価においては実現可能性がごく低い。また、利用者便益を効率的に最大化するための最適解でもない。
 「マニアの視点」はいい線を衝いているものの、コスト評価が甘い面がある。便益だけを採りあげるのではなく、費用要因にも目を向けてほしい。
 静岡−浜松間に限らず、複数のオプションの中から、現地の状況に応じて、より目的にかなうものを選びとる作業が重要である。
 このスレッドでの議論は有益であったが、「より目的にかなう」視点を持たない論者の存在は、議論の質を押し下げており、一読者としても遺憾に思うところである。

■各論者の論点評価
 とも氏の評価はどちらかといえば入口論であって、いま少し突っ込んだ評価を試みてもよかった。とも氏にはそれだけの見識があるはずである。
 矢切氏の評価は鉄道会社の運営が主であり、利用者便益という軸を持ってもよかった。ただし、最終的には貨幣タームで企業的な実現可能性を図らなければならないので、矢切氏の視点は重要かつ不可欠である。
 エル・アルコン氏の評価は、実見に基づく感覚を代表したものであり、最も一般的かつ常識的な内容である。いま少し定量的な評価を試みてもよかったが、消費者余剰分析まで求めるのは酷であることはいうまでもない。
 問題は brother-t氏の評価である。氏は様々な評価軸を持ち出しているが、いずれの軸も「誰の利益を代表しているか」が曖昧であって、まったく説得力がない。定量的評価の体裁をとってはいるが、観念論に終止したと見なさざるをえない。さらに厳しくいえば、文面の各所に安易な決めつけが多く、問題意識の設定からして適切でない。論点・力点の置き方は、さらに適切でない。
 筆者においては、東海道快速導入期待論が決して「マニアの戯言」にとどまらないことを、ごく定量的で、しかも確立された手法をもって証明した(証明するつもりはなかったが、結果としてはそうなった。ただし、快速導入論が最適解ではないことは既に記したとおりである) 。
 これと比べ brother-t氏は、まとまらない自己の信念を羅列的に記すだけにとどまっており、いかにも稚拙であった。氏のアプローチは非科学的であり、不合理でもある。さらにいえば、費用対効果分析を行うならば、少なくとも筆者程度の分析ができなければならない。そうでなければ、実務レベルでは通用しない。筆者の分析は、決して少数しか知りえない秘伝ではなく、実務レベルのマニュアルに準じている点に、注意すべきである。前述した「より目的にかなう視点を持たない論者」とは、まさに氏にほかならない。猛省を促したい。

2004.11.02 Update


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