【検証:】過去ログSpecial

【検証:近未来交通地図】Special013-3
鉄道におけるユニバーサルサービスの崩壊と再生(3)
(2002/10/27〜)

 本投稿は、【検証:】掲示板でもお馴染みの、さいたま市民@西浦和様より当BBSに御投稿頂きました文章を 中心に、読みやすく構成させて頂いたものです(なお一部文面を編集しております)。
 なお、【検証:】では掲示板投稿に限らず広く皆様からの御意見・レポート等を御紹介致します。自分ではホームページを持っていないけれど、意見が結構纏まっている…という貴方、各種ご相談に応じますのでお気軽に管理人までどうぞ!

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▽ 前ページより

 第9講 (2003/03/14 00:44:42)

 みなさん。ご無沙汰しております。ようやく第9講です。

 これまでは、地方、首都圏と話題にしてきましたが、こんどは都市内についてお話しすることにしましょう。これは、近郊も入れることができるでしょう。

10kmレベルの中心地を結ぶ

 前講で私鉄の無料特急電車の停車駅についてお話をしましたが、東京23区内など絶対的な人口集中地域に比べ、23区を出て、隣接各県のこのレベルの中心地はどのように結ばれているかを考えると、実際には十分なサービスが行われていない区間もありそうです。もっとも、それぞれの中心地を往来する需要があるか、という基本的な課題は残るのですが。
 ただ、やはり、「近郊の均衡ある発展」を考えると、サービスの頻度は小さくとも保障する必要があるでしょう。
例として私の回りを考えてみましょう。

例1:埼玉県南部の場合
 HNの通り、私は武蔵野線西浦和駅近くに住んでいるんですが、この武蔵野線は、沿線の埼玉県南部のほぼ等間隔に立地する各都市を結ぶ形になっている環状線です。浦和の両隣の志木・越谷、更にその先の吉川・三郷、新座・所沢と都市を串刺しにしています。武蔵野線は、東京の環状線であると同時に、隣接各都市を結ぶ交通路なのです。これに平行している外郭環状高速も同じ役割になるのです。東京を無視して埼玉県内だけを考えれば、連担した都市を結ぶ幹線交通路という解釈もできます。武蔵野線の快速運転の話題を読んだことがありますが、武蔵野線自体にもっと駅があれば、快速運転は必至でしょう。現状の貨物線のスペックの旅客駅の間隔と沿線の人口密度であれば、旅客駅の立地地点自体が快速停車駅の位置関係となっているのが、現状です。

例2:東京城南地区の場合
 私鉄各社の徴密な路線網が張り巡らされている東京の杉並武蔵野世田谷狛江目黒大田の地域で考えてみましょう。
 この地域で10kmレベルの中心地は、新宿・渋谷・大崎の山手線各駅を東側として、中央線では吉祥寺、京王線では調布、小田急線では成城、玉川線では二子玉川、東横線では武蔵小杉(これは川崎市)、目黒線や池上線や京浜東北線では蒲田ということになります。これらの地点がどのように結ばれているか、表にしてみましょう。

  蒲田 小杉 二子 成城 調布 吉祥寺 大崎 渋谷
新宿 換1         換1 換1 小田 京王 JR JR JR
渋谷 換1 東横 玉川 バ直 バ直 京王 JR  
大崎 換1 換2 換1 換1 換1 換1    
吉祥寺 換2 換1 換1 換1 バ直      
調布 換1 換2 バ直 バ直        
成城 換1 換1 バ直       換=乗換
二子 換1 換1         直=直通
小杉 換1           バ=バス

 理屈の上では、相互に交通があればいいのですが、まさに交通路の歴史的な事情から便利な組み合わせとそうでない組み合わせがあるわけですね。それぞれの地点が電車でもバスでも乗換なしスピーディーに結ばれれば、きっと便利なのだと思います。人口密度がほぼ一定の区域で、人の動きが乱数的にあるとすれば、また、人の動きを副都心にこだわらず拡散させるとするならば、全部の組み合わせに便利な交通機関があれば中心地の利便性や「地点」としてのブランド力を上げることが出来るかもしれません。

例3:近鉄大阪線の場合
 都市内ではないのですが、他のスレッドで近鉄の話が出てましたので分析してみました。10kmごとの例の一つです。武蔵野線が関東平野の真ん中を走るのに対して、近鉄大阪線は大和川や初瀬川の谷を詰めて、大阪平野から大和盆地、伊賀盆地と進んでいく路線です。この路線は、谷や盆地の中の中心地を縫って走っていくのです。地形的には限られた範囲に人が住んでいるのですが、中心都市となる地点がこれも(偶然か)10kmごとに見られますね。

km 0 10 20 30 40 50 60 70 80
駅名 上六 八尾 国分 高田 桜井 榛原 大野 名張 青山町
各停      
準急  
急行(日中)
区快(通勤時)
快急(朝・夜)

 近鉄大阪線の無料優等の基本は急行と準急なのですね。通常の榛原以東が各停となる急行に比べ、快速急行は、朝夕など、青山越えをする急行が名張まで通過運転するというサービス列車なのです。快急の運行時間帯は、準急などが名張まで延長して、国分から名張まで快急を速達として、各停になる準急が全駅へのサービスとして、緩急接続しているわけです。他の時間帯は準急は榛原行きがデフォルトです。ですから、名張発着の準急のある時間帯は、榛原から名張、青山町の間の増発と快急による速達サービスという意味があります。これは、大阪に対して10kmごとに区切られるゾーンを組み合わせて分離して輸送するしくみです。20kmの距離である国分(大阪平野東端)までは上本町行きの各停があるのと、急行準急の通過運行、50kmの榛原(大和盆地〜初瀬川の谷)までは準急が各停で急行が速達、70kmの名張(伊賀盆地西端)までは、朝夕は急行が快急となって速達運行が延長されるのと、この区間で各停となる準急の延長及び名張や青山折り返しの区間快速急行も運転され、増発となるわけです。40kmの桜井からの山岳区間の開発と通勤輸送に対応したダイヤです。名張や桔梗が丘のニュータウン(70km圏かあ…東京からだと小田原・三崎・木更津・成田・栃木・足利・深谷・秩父ですね)からは大阪へは「有料特急通勤」というライフスタイルも成り立つのでしょう。もちろん無料速達のニーズもあるでしょう。この路線の問題点は、10kmごとの中心地の配置に加えて、近鉄電車の運行上重要な駅が、中心地の配置とは関係なく立地するという点でしょうか。30kmの高田の手前に車庫がある五位堂がありますし、40kmの桜井の手前に京、吉野への乗換駅であり、橿原市の中心である八木があるということでしょう。高田も桜井も対面式ホームで緩急接続が出来ませんし、ここに近鉄急行論の混乱がありそうです。

◆数kmレベルの中心地を結ぶ

 さて、いよいよ異種交通機関を組み合わせた都市内の交通システムの構築です。
 電車の駅で言えば、数駅ごとの中心地をどう結ぶかという事ですね。電車の駅は都市内では数百mごとに駅を持っているのですが、東京23区内などは、数km平方の区の行政上の中心地があり、また、並行する鉄道路線の間隔は数kmというところでしょう。これを結ぶのには、通常の鉄道ではなく、人口密度に合致した交通機関を公共システムとして整備し、都市計画を作っていくべきなのでしょう。
 具体的には、東京23区なら30km圏からの通常鉄道の放射線の間を埋めていく中小規模の交通機関を設定していけばいいのです。この中規模輸送機関は現在百花繚乱の体をなしており、何が適正かという解は私には不勉強にして出すことが出来ません。ただ、設定する交通路の沿線をどのような人口密度の景観とするかを意識すれば、自ずと適正な交通機関が導き出せるでしょう。

例:東京西北部の私鉄並行地域
 東京23区の中でも、きれいに鉄道路線が並行している中野区 杉並区 練馬区 板橋区 武蔵野市 西東京市といった範囲を考えてみましょう。中央線から荒川の範囲ですね。路線の建設の歴史についてはここでは触れませんが、東京市街の外縁としての山手線の各駅を起点として、西側へ各鉄道路線が並行に分布している事は解ると思います。この各路線はまさに、数kmの間隔をもって並行に東西に伸びているわけです。そして、地域の景観や密度はほぼ均一の住宅地域が広がっているのです。
 東西方向には鉄道の路線が延び、都心へ向かっての通勤通学の大輸送が毎朝行われているのですが、都市の形態が、住宅地の開発拡大一辺倒から、高齢化や工場移転など再開発、再構成に変わってきた今、均等な地域の中に、新たな中心地の形成や既存の交通路のリニューアルが必要になっている状況です。実際、バス交通の高度化や、道路交通の更新が部分的には行われています。必要な場所にその施策が行われているのですが、やはり、均等な地域ですから面的に改善を進めることができれば理想です。

 この地域は東西の鉄道路線は何本もあり、鉄道空白地帯を埋めるべく、都営大江戸線が光が丘(環状8号笹目通り)までは新設開業し、北から都営三田線、東武東上線、営団有楽町線、都営大江戸線、西武池袋線、西武新宿線、JR中央線とほぼ並行する放射線が立地しているわけです。ところが、南北方向は、バス各社の路線のみで交通が行われている状況で、地域のライフスタイルが東西の鉄道路線による副都心への行動に拘束される形とも相まって路線沿線ごとの交流さえ少ない地域社会と言えるかもしれません。
そこで、この住宅地域の再構成を、小中心地の有機的な結合によって地域社会のブロックの組み合わせで行う構想を考えてみましょう。
 この地域の中心地をどこに設定するかということは、様々な構想があり、これも決定版が出来るわけではないのですが、既存の中心地を組み合わせる形で考えてみましょう。
 板橋区であれば、三田線に沿った区役所付近、板橋本町、志村坂上、西台、高島平、東上線沿いであれば大山、上板橋、成増、有楽町線沿いでは平和台などが考えられます。練馬区では大江戸線の光が丘、練馬春日町、西武池袋線の江古田、練馬、石神井公園、大泉学園、都民農園、西東京市になりますが保谷でしょうか。西武新宿線沿いでは中井、鷺宮、井荻、上石神井、田無ですか、そして中央線沿いであれば、中野、荻窪、吉祥寺でしょう。

 現状でもこの地域は、これらの中心地を南北に結ぶバス路線が稠密に張り巡らされ、ほぼ網目状といってもいいのですが、どの路線も地域の生活路線であって、知らない人がこの地域の南北移動をするには、非常にわかりにくいのが現状でしょう。地元の人たちは、「これでいい」思っているかもしれませんが、住んでいる人だけがこの地域を通過するわけではないのですから、住んでいる人たちでもいつかは考えなければならない、都市のリニューアルを面的に進めるためにも、交通路の再構成は必至です。
 そこで、南北方向の交通路の形態の吟味が必要になるのですが、いろいろな組み合わせが考えられそうですね。
山手線から武蔵野線までの環状線の間に南北方向の普通鉄道がないのです。一番簡単なのはちょうど真ん中に普通鉄道があればいいのかもしれませんが、これはどうでしょう?建設に大変なエネルギーが必要になるのでしょうね。次に、軌道系交通機関を2本ぐらい等間隔に配置するというのもいいかもしれません。でも、稠密な住宅地にそういうスペースができるのかどうか?まさに都市計画による道路との組み合わせでなければ実現しないのでしょう。時間がかかりそうですね。また、別項でくわしく吟味してみたいものです。この軌道系交通機関というのも、立川のモノレールみたいのもありますし、大江戸線みたいなリニア地下鉄もあるでしょう。何かと話題になっているLRTも、都電みたいな、バスが線路を走っているような形態のものもありますし、広島やヨーロッパのような長い電車でという考えもあります。ゆりかもめみたいな「新交通システム」もありますね。更に、現状の道路を活用したバスの工夫というのもあるのですね。実際、荻窪からの青梅街道では、バスが連なって走っているのが現実ですし、これらのバスは青梅街道へ、各地から集まってきて、荻窪へ向かうという路線構成でしたね。吉祥寺でも同じですね。「都民農園〜吉祥寺」なんて言う路線は何本もの鉄道路線や東西方向の道路を横切ってくるのですね。その上頻繁に走っている。こういう路線を更に近代化して、バス優先の道路交通の整理や、バス車両自体の近代化を更に進める事が出来そうです。でも、バス路線にしている道路自体が狭かったり、あみだくじのように曲がりくねっていたりしているのがこれも現実です。環8や外環道路をきっかけとした南北交通整備は誰もが言うのですが、工夫出来ることは何か?という話は青梅街道の件以外あまり聞きません。あまりにもやることが多いからか?
 結果として、この地域のバス路線があまりに稠密で、交通路が線とならずに面となっている現状をいじるのはなかなか難しいのかもしれませんね。ただ、やはり、先に挙げた中心地を組み合わせるわかりやすい路線での整備が必要であると言うことは言っておきたいと思います。次の更に小範囲小単位の地点を結ぶ方法とも重なってくる話題になりますから、次に行ってみましょう。

◆数百mレベルの中心地を結ぶ

 最小単位の中心地同士はどのように結ばれるべきか。という事を考えてみましょう。
 住宅地であれ、産業地域であれ、人の集まる地点が出来ますね。今は、コンビニとか、ロードサイドの量販店などの商業施設は昼夜を分かたず人を集めますが、公共施設や病院、スポーツなどのイベント会場も時間は区切られますが人が集まります。公共輸送がこのような場所へ人を運ぶのはもちろん最重要課題なのですが、限られた路線で少しでも輸送機関へ人を集めるためにはどのようにすればいいかを考えてみます。
 住宅地や産業地の中でバスなど公共輸送機関がどのように人を乗り降りさせるかというのは、古くて新しい課題でしょう。もちろん停留所を人の集まるところへ定めるというのが当たり前なのですが、最近の模索の一つの答えが「フリー乗降」だったわけですね。これは鉄道には出来ない芸当です。でも、1カ所出来そうな路面電車の走っている都市があります。岐阜です。ここは笑うとこ。
 でも、「フリー乗降」区間は、始発地点があって、目的地を線的に考えるから出来るのであって、やはり人の集まる「どこか」を目的地にするのでは難しい施策です。山間の村と駅を結ぶとき、通過する集落全体を停留所と考えることの出来るような集落の形態であればいいのですが、どの範囲を定めるかは路線の特徴によるのでしょう。
 これは都市の中でも言えそうで、どういう人の流れがあって、路線を設定するかによって、路線の形態が定まりますね。ターミナル駅対住宅地であれば終点近くの住宅地域で行えばいいのですし、そのバスが更に別の鉄道駅などを終着点とするならば、該当する区間を区切ればいいわけで、これは臨機応変にできそうです。世田谷区内などでやっている路線がありますね。今後増えるであろう高層住宅や、商店街や企業の集積のある地域の路線であれば、やはり停留所を定め、人を集めて輸送する方が合理的なようです。
 全国各地で流行している「コミュニティーバス」というのも様々ですね。公共施設の送迎のために行政が運輸企業に委託して設定された路線や、都市計画上の必要から設定された路線など、また、純粋に駅や商店街と住宅地を結ぶ路線などもありますね。私の住んでいる西浦和では両方のタイプのバスが立て続けに出来ました。このバスも、住宅地の狭い道路を縫って走っていく路線の設定で、細かい需要を拾っていくことで成り立っているのでしょう。意外に乗客が増えて、どうしたらいいかがわからない路線もあるようですね。バス路線をきめ細かく設定できれば、住宅地域の新たな魅力を生み出すことにもなるのではないでしょうか。やはり、岩手県北で例示したように、都市内の狭い範囲においても、需要の見込まれる地点を結ぶ、交通流のプロジュースが必要なのかもしれません。このような地域では、自動車と公共輸送は別のチャンネルになります。並列する事を前提としなくてはなりません。日常的に自動車に乗る人が限られているという前提です。
 で、都市部において更に個別のニーズに応える輸送機関としてタクシーがあります。公共輸送機関が補えない条件でタクシーは有用です。例えば、夜間〜早朝など、バスが運行しない時間帯の輸送量を確保する役割を果たすことが出来ます。また、介護施設などへの福祉的な輸送など特別なニーズに対応する方向がありますが、現実にはまだ十分とは言えませんし料金が高いです。「福祉タクシー券」は基本料金のみの補助ですよね。時間貸し切りでは一輸送ごとの料金制度で、目的地への往復や、目的地が複数あって数回利用する場合には一日で一万円ぐらいかかってしまうのです。

 バスやタクシーについてはこのくらいにして、鉄道に戻りましょう。
 都市の住宅地の商店街のような数百m間隔にあるような中心地を結ぶ仕組みとして、私鉄の電車の各路線があるのですが、今後もこのような役割は鉄道の重要な役割として期待され続けるでしょう。「駅」を中心とした都市再開発は都内ではすべての駅について考えられているでしょうし、実現も進んでいますね。その時に各駅の立地地点の性格によって、高層住宅中心の再開発や、商業中心の再開発といった色分けがされるでしょうから、鉄道による輸送がやはり前提となった開発が行われ、地点の性格を補いあうことになるでしょう。鉄道側もダイヤ構成の工夫で、長距離、短距離のそれぞれの旅客のサービスの区分けを行いますから、中心地のレベルの違いを補うような輸送の形態が実現するはずなのです。

例:東武伊勢崎線
 これまた最近話題の路線で解釈してみましょう。
 東武線は東京から群馬栃木へ向かう長距離路線ですが、東京都内から埼玉県南へ連接する住宅地工業地を貫いていますね。この20年、沿線はおおむね均等な密度の都市化が進み駅が数百m〜2kmぐらいの間隔を保って立地していますね。
 押上や浅草から北千住までは下町の密集地を進みますが、曳舟や鐘ヶ淵、牛田など駅を中心とした小商店街が立地し、北千住からは複々線となって、緩行線のすべての駅は北千住までと同様小商店街を擁していますね。これは複々線の終わる北越谷までほぼ同じ形態です。その上に北千住、草加、越谷といった10kmレベルの中心地が乗りますね。東武動物公園など結構奥から来る地下鉄直通の各駅停車電車はこの小中心地を一つ一つ止まって地下鉄へ入るわけですが、準急停車駅では都心へ急ぐ人たちを急行線の準急へ乗り換えさせ、この度新規に乗り入れた半蔵門線へ送り込むのです。また、この各駅停車電車の役割には、越谷市内草加市内足立区内の相互の交通の役割もあるわけです。蒲生は越谷市ですし、新田や松原団地、谷塚は草加市です。足立区に入れば、竹の塚、西新井(大師前)、梅島、五反野、小菅、北千住、牛田、堀切とどの駅も区内の交通を担っています。足立区は、北千住から梅島へ区役所が移転しましたから、東武線は沿線各地域から区役所へという移動もあるわけです。また、学生たち特に高校生などは、自転車で同じ市内区内の学校へ通っていても、雨が降れば一駅でも電車を使う場合があるわけで、それに職住近接の人たちなど、このような積み重ねが各駅停車電車のお得意さまになるのですね。沿線の、学校から離れた下宿を選んでしまった大学生などもそうですね。また、笑い話になりますが、安いマーケットへ電車賃かけて行く主婦層なんて言う存在もあるでしょう。どの駅でも商業施設を中心とした開発が行われますが、地域のニーズに合った、すこしでも魅力ある店を如何に呼ぶかというのが最近の各地方自治体の再開発担当者の腕の見せ所なのかもしれません。私が入れてもらえるかはわかりませんが、「高級スーパーマーケット」なんていうカテゴリーが成り立ってしまうのは、「高層マンション=ホワイトカラー=複数の海外旅行経験」なんていうライフスタイルの人たちの存在があるからでしょう。都心回帰現象もその主役はこのような人たちなのです。

では、最終講で。最後はバリアフリーを前提としたユニバーサルサービスについてお話ししましょう。

 第10講(最終講) (2003/04/22 00:49:56)

  さて、約半年に渡って書き連ねてきました拙論も、そろそろネタが尽きてまいりました。今夜は、鉄道を中心とした交通施設をいかにシームレスな移動施設として整備するべきかという理想というか妄想的な考えを主張して、一旦中〆めということにしましょう。

交通機関での移動はどのくらいなら受け入れられるか?

 まず、大体電車での移動はどのくらいまで受け入れられるのか。ということを考えてみます。
 時間では、どうでしょう、新幹線と飛行機の議論でのぞみ号の問題が出てましたが、東京から大阪まで2時間半の電車と、1時間の飛行機で競争が成り立つのは、車室・座席への拘束時間と、駅・飛行場へのアクセスを総合して利用者が判断しているのですね。また、企業が購入する回数券や出張パックがどの交通モードを擁しているかというセクターがあるわけです。東京大阪間で飛行機がシャトル便化するなど飛行機側も工夫しているのに対して、新幹線側は、途中駅の名古屋や静岡と東京大阪との行き来を便利にする傾向があるようですね。
 新幹線が独占できるのは、2時間ぐらいといったところでしょうか?東京からなら名古屋新潟仙台長野山形といった360km圏相互が飛行機の影響なく新幹線が独占できる距離なのでしょう。これらの都市へ飛行機で行くとなると不経済で時間が無駄な感じがします。飛行場まで行くうちに目的地へ着いてしまう…。
 東京から大阪や金沢秋田とか、大阪から新潟や福岡くらいの500km圏になるとどうも微妙なようですね。更に東京から700km圏の岡山や青森となると、岡山でのぞみ号ががんばっているのが歴史的経緯とはいえ、奇跡なのかもしれません。札幌〜東京〜福岡〜沖縄という1,000km圏相互の行き来はもう、やはりこれも2時間弱で着く飛行機以外には考えられないでしょう。自動車での帰省とか特殊な例は別としてもですね。

 いわゆる在来線や私鉄各線ではどうでしょうか?これも、大輸送が行われている区間の時間距離は限られてくるのではないでしょうか。関東地方の100km圏、中京圏、名阪間、京阪神、福岡北九州筑紫平野といった地域ですね。高速な列車種別がありますが、おおむねこの区間や範囲ではやはり2時間がひとつの単位となるのではないでしょうか?
 長距離バスでも、高速道路のSAでの休憩は2時間ごとが目安ですね。生理的にはひとつの単位でしょう。
 交通流のグランドデザインを考えるときも、各モードの「2時間」での移動距離というのは目安となるでしょう。これを組み合わせて交通圏を考えればいいのですね。
 デフレ経済の下とはいえ、目的地までの費用も、ある程度の目安が欲しいですね。値頃感とでもいうのでしょうか。例えば大阪〜東京間500kmの移動は新幹線飛行機共にトータル3時間で1万円とか、東京〜宇都宮100kmの移動はJR宇都宮線新特急東武線急行とも2時間2,000円とか、という受け入れられる標準の値段がありそうです。それに対して、同じ東京大阪間の4列シートバスで8時間5,000円とか、3列シート夜行で8,000円とか、寝台夜行列車で1万円とか、夜行快速乗り継ぎで4,000円など時間やアメニティーの欠ける分を割り引きすると考えて異交通モード同士の共存を考えていけばいいのではないでしょうか。移動の何に価値を求めるかというマーケッティングを進めていって欲しいですね。

 距離に比例して運賃が決まる鉄道路線の料金も、基準の距離の値頃感を一つの照査点として賃率を決めて欲しいです。結果として包括運賃と同じになってもいいのです。乗り放題や包括運賃の割り引きによるキャンペーンを期間限定や条件限定で行えば、ブームも作れるのでしょう。
都市内の運賃の異企業乗り継ぎによる運賃の倍増は何とかして欲しいですね。将来的にゾーン制を目指した運賃制度への工夫は出来ないものでしょうか。異企業による運営を維持したままでゾーン運賃を、電車バス共通でやって欲しいのです。どの会社でも初乗り200円からでいいですから、違う会社の電車へ乗り継いだら倍になるというのはとにかくやめて欲しいです。

シームレスとバリアフリー

 いま、電車賃のシームレスについて少しぼやいてみましたが、電車乗り場のシームレスはもっともっと進めて欲しいですね。同じ地平ホーム同士の八戸で出来なかった新幹線と在来線のホームタッチが立体交差駅の新八代で実現しそうですし、人の動きに合わせたエレベータやエスカレータの設置を工夫して欲しいです。
 ずいぶん前に内灘駅の話をしましたが、小さな電車とバスの間でも、改札をはさんで同一平面での乗換が出来るよう工夫されているのですから、全国の駅でそれをすればいいのでしょう。今では駅の形態の標準系の橋上駅を一つでも減らして、出来るところからでいいですから、ホームと道路の段差を減らす工夫を進めるべきでしょう(おっと!「べき」って書いてしまった)。私個人のシームレスとかバリアフリーの視点から見ると、地上線の橋上駅は「会社の論理」以外の何物でもありませんね。まあ、もっとも高速輸送に力の入っている会社では、一旦お客を線路の上の駅舎へ上げておけば、乗り遅れることもないし、踏切を待つこともないというメリットもあるにはあるのですね。この解決はきっと難しいのです。
 それから、車椅子などでエスカレータに乗るために、旅客の流れを止めるようなことはして欲しくないです。通常の利用者を止めてエスカレータを車椅子モードにするのではなく、スロープやエレベータを整備して欲しいです。車椅子の人だって、普通の人と同じように行動したいのです。車椅子だからといって他の乗客と違う動きをするわけではないのです。

戸口から戸口へ2003

 さて、最後の最後になりますが、私の個人的な経験と妄想的な提案です。
 今年2月に、車椅子の父と山形新幹線に乗る機会がありました。西浦和の家から、母の実家のある山形県新庄市へ往復したのです。
 今まで何度かウェルキャブ仕様の自家用車で往復したこともあり、今回もそうすることができましたが、雪や時間、予算の都合もあり新幹線と福祉タクシーという組み合わせを試すことで、現実的にどれだけバリアフリーが実現しているかを検証したかったのです。
 自家用車ではスタッドレスタイヤとタイヤチェーンを買わなければならなかったので、これも費用に入ります。往復のガソリン代、半額になる高速代を加えると、「土日きっぷスペシャル」と身障者介護者割り引きで乗車券半額の往復切符に特急料金とほぼ同額であることがわかり、「自動車で行きたい」と言っていた母も納得し、行ってきました。結果から言いますと、「まだ途上かな」というのが素直な感想です。詳しい内容は別スレッドへ投稿することとして、私たちの行程を紹介して、改善への妄想をご披露しましょう。

 西浦和の家から大宮駅まではウェルキャブ仕様の自家用車。大宮駅では駅長室入り口から営業所を通り業務用兼用エレベータで新幹線ホームへ。新幹線電車はE3系車だったのですが、車椅子席は取れず、普通車の席へ乗車。新庄駅は皆さんもご存じの通り、ホームから駅前広場まではフラットで、駅前へ福祉タクシーを呼んでおき、これにて母の実家へ着いたのでした。帰路も同様に、福祉タクシー〜400系自由席〜大宮駅〜自家用車という行程で、2泊3日の旅を終えたのでした。要介護度4の父は結構疲れたかと思ったのですが、翌日も何事もなかったかのように、週に一度のデイサービスへ行きました。
さて、この旅でいろいろ考えたことがあります。
 まず、浦和〜新庄と言う距離は約400kmありますが、自宅から実家まで、イスに座ったままの旅の出来る自動車と、乗り換え、上下移動、座席の移動のある電車の旅では、まさに、本人の快適性は雲泥の差であっただろうということです。自動車ですと、パーキングエリアには必ず車椅子トイレがありますし、自宅では車椅子から洋式トイレへ移るのと同じ家庭での生活と同じように、できるのです。駅やトイレの事については、現在改修中の大宮駅に不満を言うのは心苦しいのですが、私たちの実証の旅は時期尚早であったという結論です。
 私たちの購入した切符は、「土日きっぷスペシャル」と帰りは月曜日になってしまう両親の身障者割り引きと介護者割引の乗車券+それぞれの特急券でした。これを合わせると、スタッドレスタイヤ+チェーン+半額の往復高速料金+リッター6〜10kmのガソリン代よりも安くなったからなのです。
 山形新幹線電車も、「ミニ新幹線」であるためか、車椅子で車椅子席以外の通常の乗り口から乗車するのはやや難がありましたね。車内も、イスの間の通路が「あと2cm(!!)」広ければ、指定された席に移動でき、座れたのです。車椅子が入らずに難儀していた私たちを見かねたデッキのそばの席に座っていた方が変わって下さったというのが事実です。ありがとうございました。大宮・新庄両駅でも、スロープ板でもあるかと思いましたが、人の力で持ち上げる(新庄駅では金線の入った帽子の駅員さん=助役さんか駅長さん?まで来てくれた)形となって、介添えの我々は大変恐縮した気持ちになりました。山形新幹線は新庄駅が終点ですから、最後に降ろしてもらえましたが、大宮駅のように途中駅での乗降は、駅員の介助(担当の青年は大変に丁寧でありがたかったのですが)があっても電車を遅らせることになるのでしょう。
 福祉タクシーも、埼玉側山形側両方で予約しようとしましたが、両方とも1輸送3,000円強で、埼玉側でタクシー券が使えるのですが、山形側は現金で支払いました。車椅子タクシーの乗り心地は、どこも同じでしょうが、業務用ワンボックス車の改造でしょうから、あまり乗り心地のいい物ではなかったですね。将来は何とかなるのでしょう。これは自動車会社の宿題です。
ただ、障害を持っている者にとって、確実な素早い移動をするためには、新幹線電車は正確で早い!これに尽きるのです。だから試したのです。雪の深い山形へ不安を抱えながら、何時間もかけて自動車で行くよりも、3時間で確実に着く電車のアメニティーが良ければ、これからは電車で行きたいのです。母の実家の伯母も足が悪く、「もう東京へは来れない」と言っているのですが、できれば招きたいのです。

 そこでここからが妄想ですが、総合的な交通のあるべき姿として、以下のような姿を考えるのです。
 自宅から目的地(それは親戚の家でも、仕事上のお得意さまでも、観光地でも良いのです)へ、交通機関や移動手段を駆使して、同一平面で移動できるような交通システムを完成させてほしいのです。
 自宅そばのバス停からノンステップバスのコミュニティーバスで乗車駅へ向かい、一般の乗客と同じようにエレベータで改札やホームへ上がり、車椅子スペースでなく、きちんと車椅子から座席へ乗り移って、家族や介護者と一緒に座り、それが在来線の寸法の電車でもトイレや売店など、どこでも車椅子で入れるような設計の電車で、目的地へ向かうのです。着いた駅でも同様に乗り換えができ、目的地の駅からは同じようにコミュニティーバスや福祉タクシーで目的地へ到着するという旅がしたいのです。都市内の日常的な移動でも「移動する」という本質は変わらないのだから、その輸送量の大小に応じた工夫をして、ハンディキャップのある人の移動を保障して欲しいですね。
 そして、その料金も、自宅そばのバス停から目的地の駅やバス停まで通して計算してもらえればいいのだろうなあ。選択の幅のある多様化した移動方法やそれぞれに応じた料金制度をすべての人に納得してもらえるような方法で決めてもらえればベストでしょう。その中で、公的な負担が必要ならば、ぜひして欲しいですね。皆が便利になるために使われる税金に誰が不満を言うでしょう。採算や事業の成立などにこだわっているのなら、不景気と不良債権増加の追っかけごっこの今の社会の風潮では何もしない方がいいに決まってくるのですから。こういうときこそ、「国土のどこに住んでも、不利益無く生活できる社会」をつくってほしいです。

 長々と書き連ねてきましたが、お楽しみ頂けましたでしょうか。
 書き足りない点や、「あの話は?」というご指摘もあるでしょう。それはこの掲示板のご常連の皆様方と補っていきたく思いますので、どうぞ、ご意見ご感想を頂ければ幸いです。では、次に参りましょう。乱筆ご容赦。

2004.11.14 Update


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