【検証:】過去ログSpecial

【検証:近未来交通地図】Special012-2
寒風つのりゆく鉄路〜〜山田線・岩泉線実乗記(続)
(2002/11/17)

 本投稿は、【検証:】掲示板でもお馴染みの、和寒様より当BBSに御投稿頂きました文章を、読みやすく構成させて頂いたものです(なお一部文面を編集しております)。 また、文中の写真は和寒様に所有権帰属となります
 なお、本文は和寒様のサイトでも加筆の上公開されていますので併せて御覧下さい。

http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Labo/5256/yama/00.html

下記内容は予告なしに変更することがありますので、予め御了承下さい。
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▽前ページより


資料編 山田線・岩泉線時刻表

■昭和39(1964)年 8月期山田線・小本線時刻表
■平成14(2002)年11月期山田線・岩泉線時刻表

盛岡・浅内(岩泉)→宮古

     410D  721D  412D  711D  414D 3640D  416D  715D  717D  418D   745  420D  719D
盛 岡            6:00     9:10    13:00 14:50             18:10
上米内             6:15     9:26    13:18 15:06             18:27
区 界              7:00    10:13    14:09 15:54             19:27
川 内      6:42      7:34    10:52    14:49 16:40             20:05
茂 市      7:02      8:04    11:28    15:19 17:10             20:35
浅 内      7:06 10:40 13:56 16:54     19:45
和井内  7:03  7:53 11:13 14:30 17:29     20:20
茂 市  7:16  7:24  8:06  8:10 11:26 11:40 14:44 15:27 17:10 17:42 17:46 20:33 20:47
宮 古      7:48      8:36     11:56    15:44 17:33     18:18     21:11
    682D  628D  632D 684D 2622D 2624D 3640D 3646D    686D  658D  688D  662D
                  休日休   リアス リアス                  
盛 岡            7:27 8:08 11:11 13:41       16:23     19:12
上米内            7:41 8:23 11:25 13:55       16:37     19:26
区 界                     11:53       17:11     19:57
川 内      6:19  7:37               17:43     20:54
茂 市      6:53  8:11       12:52 15:22       18:19     21:28
岩 泉    8:03       17:20 19:32
和井内  6:38  8:40       17:58 20:09
茂 市  6:52  7:05  8:12  8:57     12:52 15:23   18:12 18:32 20:25 21:29
宮 古      7:29  8:33  9:18     13:10 15:40       18:53 20:47 21:51

宮古→浅内(岩泉)・盛岡

     712D  681D    714D  413D    716D  415D  718D  417D  720D  419D  722D
宮 古  5:14  5:54    8:03       12:06    15:31     17:41     19:05
茂 市  5:37  6:20    8:26  8:32   12:29 12:40 15:54 16:00 18:04 18:11 19:28
和井内  6:36    8:46   12:54 16:14 18:30
浅 内  7:12    9:20   13:30 16:50 19:18
茂 市  5:37        8:27       12:29     15:56     18:04     19:28
川 内  6:17        9:05       13:05     16:33     18:40     20:05
区 界  7:01       10:00       13:40     17:08     19:15    
上米内  7:39       10:28       14:16     17:44        
盛 岡  7:55       10:44       14:33     18:00     20:00     21:24
     621D  681D  623D  683D   3629D    685D  643D    649D  687D  653D
                      リアス                        
宮 古  5:03  5:54  6:35        9:35   14:46 15:43   18:10     19:47
茂 市  5:24  6:18  6:56  7:01    9:53   15:30 16:03   18:31 18:35 20:07
和井内

 6:33

 7:15     15:45   18:49
岩 泉     7:54     16:23   19:28
茂 市  5:24      6:57       9:54       16:04   18:31     20:08
川 内  6:05 休日休  7:32             16:38   19:09     20:42
区 界  6:37 2621D     2623D   10:54       17:10   19:58        
上米内  7:06  7:46      8:33   11:26       17:37   20:26        
盛 岡  7:21  8:01     8:48   11:41       17:52   20:41        

  ※山田線茂市到着時刻は原典に明記なきため両方面とも推測。

■コメント
 今日の山田線・岩泉線は、極めて不便と形容するほかないダイヤとなっている。しかし、「昔と比べて不便になった」とみなすのは必ずしも正しくない。今日の盛岡−宮古間直通列車は壊滅的なまでに少ないが、約40年前のダイヤにおいても実は同様に少ない。山田線・岩泉線のダイヤは、今も昔も変わらず不便なのである。

 運行本数が昔より間引かれながらも、今日のダイヤには相当に工夫が凝らされている。特に朝の盛岡口のダイヤは、昔よりよほど便利なほどだ。

 そうはいっても、不便なダイヤであることは間違いない。昼前に宮古に着く盛岡発列車がないのは問題であろう。列車の足が遅い点も、魅力に欠ける。盛岡−宮古間は102.1km、これだけの距離に2時間を要するとは、いかにも遅い(それでも昔よりは速いのだが)。さらに交換待ち時間が長い列車が多く、利用者にとって嫌気される要因はうずたかく累積している。

 岩泉延伸時点では、山田線内に急行が設定されていたはずである。当時のダイヤと対照すれば、昔と今の不便な状況が際立つだろうが、あいにく手許に情報がない。


資料編(2)ローカル線運営に関する文献

■須田寛JR東海会長(当時)のコメント (平成12(2000)年1月14日付交通新聞記事)

 ・・・・・・地方交通の役割を担う鉄道各線はどこも厳しい経営危機に直面しているといっても過言ではない。
 ・・・・・・鉄道だけでなく地方のバス路線も存続の危機に瀕しているのである。
 ・・・・・・地方交通線を運営する第三セクター鉄道も、既に地元自治体の公的支援なしでは経営が続けられない状態になっており、今後もその傾向はさらに強まると考えられる。すなわち、地方交通の維持は、もはやシビルミニマム維持の観点からどのようにその在り方、方向を考えるかという瀬戸際に来ているのである。
 ・・・・・・第三セクター鉄道(そのほかのローカル鉄道も含む)や地方バス路線の今後の在り方を考える場合、まず第三セクター鉄道・バス会社など交通事業者側で徹底した効率化営業努力など、ぎりぎりの経営改善への努力が前提となる。その後に残る経営負担(欠損補填など)は前述のような今後の地方行政(住民福祉)の視点、住民コンセンサスを踏まえた、その地方にとっても最適の交通手段の選択を前提として進めなければならない。
 具体的には事業者側で努力できる限度はどこまでかを明らかにし、地方自治体と協議の上、互いの努力目標(事業者側は収支目標を、自治体側は交通支援策の具体案もしくはその金額)を明らかにし、場合によれば契約を取り交わすなどして、その責任範囲を明らかにしていくことが必要なのではなかろうか。
 現状のままでは、第三セクターなど地方交通事業経営者は「働けど働けど楽にならざり……」的心境に陥り、経営意欲を阻害する心配もある。自治体側としてもこれまでの場当たり的な、鉄道もバスもという多面的な補助施策は早晩限界に逢着することになろう。地方交通の今後を考える際には規制緩和を念頭にいま一度、交通事業者、地方自治体それに住民のそれぞれの果たすべき役割と、その責務を地方自治の原点に立って再確認し、新しい歩みを始めることがまず必要なのではなかろうか。・・・・・・

■山之内秀一郎JR東日本会長(当時)のコメント (「鉄路の将来」(山之内秀一郎))

 ・・・・・・輸送量が増えた線区と減った線区のベストテンを調べてみました。増えた線区は、青函トンネルに接続する津軽線を別にすると、京葉線、相模線、武蔵野線、川越線、成田線、横浜線、これは全部同じ特性を持っています。東京外周部、国道16号線沿いです。京葉線、相模線は、民営化後2倍になっています。ローカル線がおかしくなって絶えて久しいのですが、陸羽西線、岩泉線、山田線は、国鉄が民営化した10年間にさらにお客様は半減をしています。お前らは列車本数を減らしサービスが悪くなるからお客を減らすんだということをおっしゃる論客がいますし、あるいは国鉄を民営化するとローカル線は切り捨てられるということを意図的におっしゃる方が結構いるものですから、かなり徹底的にローカル線の列車を増発したり、新車を投入したのですが、結果はごらんのとおり、こういう線は激減しています。そういう議論は空理空論であったことの証拠だと思います。陸羽西線、岩泉線は半減以下になっています。要するに、何をやっても、だめなものはだめだということだろうと思います。・・・・・・

■山田線の利用実態に関する研究 (「JR山田線盛岡近郊区間の輸送改善について」(岩佐正章・田村大輔))

(前略)

3.JR山田線盛岡近郊区間の概要
(1)駅

 JR山田線の盛岡近郊区間には、起点の盛岡駅を含め現在4つの駅がある。

(a)盛岡駅
 東北新幹線、秋田新幹線、東北本線、田沢湖線、山田線、花輪線の列車が発着する、北東北最大の鉄道ターミナルであり、1日の乗降客は39,000人を数える。周辺には駅ビルやホテルが建ち並ぶが、駅自体は市街地の西外れに位置しており、繁華街とは約 1.5km離れている。
(b)上盛岡駅
 市中心部のやや北側に位置し、繁華街へは盛岡駅より近い。付近には旧市街地をはじめ、高校や大学、病院等が多数集積している。周辺地域の人口はしばらく微減傾向にあったが、最近は駅の貨物用地跡に高層マンションの建設が進み、再び増加へと転じている。
(c)山岸駅
 市中心部の北東に位置し、駅の西側には山岸地区の旧市街地が集積している。北、東、南側でも宅地化が進行しており、 1.5km圏内の人口は1万人を超えている。
(d)上米内駅
 盛岡駅から9.9kmの地点に位置し、朝の区間列車はこの駅で折り返す。駅の周辺は農村地帯の様相を呈しているが、北側にはニュータウンが建設され、朝は家族の送迎によってここから列車を利用する高校生も多い。

(2)運行形態

 現在のダイヤでは、宮古直通の4往復と朝ラッシュ時に盛岡市内を折り返し運転する区間列車が2往復(休日は1往復)運行されているに過ぎず、午後の下り列車は依然として宮古行きが3本あるのみである。そのため、行きは定時性・速達性を重視して鉄道を利用するが、帰りは適当な時間帯に列車が無いため、バス利用や徒歩、あるいは家族の送迎に頼る片道利用者が全体の半数を超え、公共交通機関としては極めて特異な状況にある。・・・・・・

4.利用者への意識調査結果と考察
 (中略)
(2)通勤・通学利用の実態

 山田線利用者の乗車目的は、通勤が61.9%、通学が25.4%と、通勤・通学客が盛岡近郊各駅利用者の9割近くを占めた。・・・・・・
 ・・・・・・帰りも山田線を利用した人は全体の38.6%に留まり、行きに山田線、帰りにバスを利用した人が40.9%と、往復とも山田線を利用した人の数を上回る結果となった。また、徒歩、タクシー、自家用車による送迎と答えた人も無視できない数存在し、山田線の公共交通機関としての問題点が浮き彫りになった。
 往復利用が困難なため、定期券の利用者も全体の52.2%と、通勤・通学が主体の路線としてはかなり低い割合を示している。
 利用区間を見ると、山田線内のみの利用は全体の44.0%に留まり、半数以上の利用者は盛岡で他の鉄道路線へ乗り換えを行っている。この内、新幹線を使って県南や宮城県との間を通勤している利用者も、全体の11.9%と高い割合を示した。
 (中略)

(4)その他の要望
 調査票末尾の自由記入欄においては、列車の増便、特に会社や学校が終わり、帰宅時間帯となる17・18時台への列車増発を望む声が、幅広い年代から多数寄せられていた。
 また、上盛岡駅から岩手県立中央病院へは、以前あった連絡通路が廃止され、現在は最寄りの踏切を使って迂回しなければならないことから、その復活を求める声や、団地から駅までのシャトルバス等による、2次アクセスの確保といった要望が多く寄せられていた。
 (後略)

■「つくる人」と「使う人」 (『線路のない時刻表』より「建設と廃線の谷間で−−三陸縦貫線」(宮脇俊三))

 飲みながら大塚さんの話をいろいろうかがった。それらのなかで、やはり胸に残ったのは、つくる人と使う人、あるいは、つくる人と使わない人とのズレであった。
「三江線の開通祝賀会でのことですが」
 と大塚さんが言う。三江線とは広島県の三次と島根県の江津を結ぶ線で、開通は昭和五〇年であった。
「その席で公団(引用者注:三江線を建設した日本鉄道建設公団)側が挨拶するわけです。長年手塩にかけた娘を嫁にやるような気持です、国鉄さん、どうか宜しくお願いしますって」
「なるほど」
「それに対して国鉄側も挨拶するのですが」
 と言って大塚さんは、ちょっと絶句した。
「これでまた管内の赤字線が増えた、お荷物が増えたって、そう言うんですよ」

■我田引鉄 (『線路のない時刻表』より「『三陸鉄道』奮闘す」(宮脇俊三))

 岩手県における我田引水といえば、盛岡から宮古への山田線を建設したのは宰相原敬の力である。この線は北上山地の真ん中を横切るので人跡は稀だ。それで野党の議員が、「かような所に鉄道を敷いて、いったい総理はサルでも乗せるつもりか」と、帝国議会で質問した。これに対し、原敬は平然と答弁した。
「鉄道法ではサルは乗せないことになっております」

2004.11.14 Update


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