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【検証:近未来交通地図】特別リポートNo.020
すぎ丸
「すぎ丸」の示す道
「ムーバス」誕生から丸5年…コミュニティバスの「いま」

(2001.03/10)
下記内容は予告なしに変更することがありますので、予め御了承下さい。
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 小型バス、路地裏走行、短いバス停間隔、ワンコイン運賃、赤字補填の自治体主導…それまでの路線バスのイメージを突き崩し、その精緻ともいえるトータルシステムで「コミュニティバス」という概念を決定付けた東京・武蔵野市の「ムーバス」が誕生したのは1995(平成7)年11月。その後全国各地で展開されるようになったコミュニティバスだが、良くも悪くも「ムーバス」ありきのイメージが強いせいか、実際にその地域に合った展開がされているか…というと疑問符がつくケースも存在しているという。
 そんな中、ムーバス満5歳の2000年11月、お隣り東京・杉並区で新しいコミュニティバス「すぎ丸」が誕生した。地域の状況を逆手に取った小型バスでの南北交通という試み、驚くべきはそのルートなのだが…。

すぎ丸すぎ丸すぎ丸

 既に当<中量輸送システムを考える>掲示板で紹介されている通り、当方がまず最初に乗ったのは緊急開催された東急世田谷線&多摩都市モノレール調査会[2001年2月24日(土)]の途上、急遽「乗ってみましょうか」…ということからだった。京王井の頭線浜田山駅からJR中央線阿佐ヶ谷駅までの約4キロを結ぶもの。東京西部、中央線沿線地域を中心に「ムーバス」以降コミュニティバスが「乱立」したこともあってどうせここも…という感じでしかなかった、というのが当初の正直なキモチだった。

 当日昼過ぎ、地下構造の浜田山駅構内から地上に上がるとすぐの所が「すぎ丸」のバス停。ポールには 15 と番号が振られており、これも「ムーバス」から始まったもの。15分間隔の綺麗なダイヤだがすぐ前に出たばかりで、雑談しながらしばし待つことに。それにしても駅前は狭く、人車とも交通量は少なくない。クルマを締め出したミニトランジットモール化もどうかな…という話が出ているうちに、バスを待つ人は10名ほどになっていた。やがてクリーム色のボディをした小奇麗な小型バスが到着、10名以上の降車の後に乗車が順次始まり、発車時間の12:15までには立ち客も出る盛況に。
 走り始めてすぐに対向車とのやり取りも結構気を使う道を進み始める。交通量の多い人見街道と井の頭通りの交差点を進んでしばし、おもむろに進路を北へ、道の両側は人家が建て込み、乗用車同士でも行き交うのに苦労する細道を進んで行く。停留所の間隔も一般バス路線に近いものがある、というかスペース的に苦しくて取れない、と云うのが正解か。ハイライトは阿佐ヶ谷団地を廻りながら抜ける地点。V字交差点、待避スペースを取った角道…。「ムーバス」誕生の影で道路法下の車両制限令による狭隘路の乗合バス通行の議論が問題のひとつとなっていたが、苦労を重ねての「前進」がひしひしと伝わってくる。
 杉並区役所から阿佐ヶ谷駅へは逆に肩身が狭いほどの広道。20分ちょいの乗車を終えて、一同から出た言葉は「いやはや参った…スゴイ!」というものであった…。

すぎ丸すぎ丸 すぎ丸
すぎ丸

 改めて沿線風景を見てみるべく、2週間後の3月10日、再び訪ねてみた。
 今回も浜田山から乗車。14時過ぎの浜田山駅前商店街も人手が目立つ。「すぎ丸」バス停の前にも5名ほど並んでバスの到着を待っていたが、発車時刻の14:30になってもバスは現れない…結局3分ほど遅れて到着、運転手交代もあって5分ほどの遅れで発車した。車内は座席が埋まって立ち客が出た。
 と、いきなり駅からほど無くの交差点で停止。井の頭線の踏切待ちの間に対向車が並んでしまい、踏切を通らない「すぎ丸」も対向車とのやり取りができない状態に…それだけ道が細い上に、所々の路上駐車が混乱に拍車をかけている。結局ここを通過してさらに先の人見街道と井の頭通りの交差点を抜けるのにも時間を食い、10分ほどの遅れが生じる事となる。

 各所で乗降をしつつ、乗客は増える一方。客層としては高齢者層が目立つものの、気軽な交通機関として多年齢層に親しまれている事が伺える。ただ、譲り合うにも立ちスペースも少ない事から若干苦労か。ちなみに乗車した車は1台きりのリフト付車両。他車と違って内向きシートは無く全席前向きのシート、よって着席数が少ない。
 当方は阿佐ヶ谷住宅東で下車、と、対向バスとすれ違いを見るが遅れの影響でか予定外の地点での交差となったため苦労していた…。「対向地点」は沿線数ヵ所に設けられているが、団地内にも公園(というよりも遊び場)を切り欠いて赤舗装した「バス待避所」がある。この他沿道では民有地を拝借してバス停や待避所としていると思しき所も散見され、道交法や車両制限令などの法令云々以前に沿線住民の深い理解無くして成立し得ないのだということを改めて感じさせる。

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すぎ丸

 やってきた浜田山行きはこちらも1台のみのGNG(圧縮天然ガス)バス。後ろの1列がガスボンベ置場に取られていているが車内はそう狭く感じない。空席もある乗りで、落ちついて乗れる分何となくホッとする。春の柔らかな陽射しのもとまた狭隘路を進んで行くが、対向車、特にトラックとのすれ違いは迫力がある。民家が集まるところで少なからずトラックなどの事業用車と対向するのは「抜け道」として知られている証しか…。その意味では一方通行化など「抜け道」化を防ぐための方策とセットに路線設定を行なう事も今後求められるのかもしれない。

 浜田山駅前に再び戻ってくる。と、整備された街灯にこんなプレートが…。

「商店街の中を走るバス」って安全でしょうか?
南北バスには賛成ですが、危険な「駅付け」には反対です!

 「南北バス運行を考える会」と記載されており、現行の浜田山駅前ルートではなく、1本外れた道への停留所設置を図解で提案しているところがただの揚げ足取りでない事を伺わせる。確かに自転車駐輪も目立つ活気ある商店街に小型とはいえ15分毎に路線バスが走ることへの抵抗感は少なからずある事だろう。実際杉並区でも懸念があるのか「自転車整理員」の腕章をした人が2名出てバス運行整理に立っていた。住民にも議論があり、区でもそれに少なからず対処している…手作りの路線である事に改めて感じ入ったのだった。

すぎ丸

 吉祥寺駅へ移動。本家「ムーバス」は昨年武蔵境駅からの境南地区への導入で2地区4路線が運行されている。吉祥寺地区からは1号路線東循環と2号路線北西循環が発着、関東バスや西武バスの大型路線車の中に可愛らしいカタチと塗装の車を見掛ける機会が増えている。東循環路線を1周したが、「すぎ丸」と同様裏路地に入るものの、俄然路幅が広く感じてしまう。番号を振った独特の色形をしたバス停もいまだ新鮮ながら、バス停を増やすのに「1-1」「11-2」とハイフン形式にしたのは苦肉の策、とはいえ実情に柔軟に対応する姿勢は評価すべきであろう。

 武蔵野市HPのムーバス紹介ページを見ると運行実績などが分かるが、その成長振りが改めて伺える。最低限の事業収支性を模索しての路線設定だったにせよ、赤字補填による自治体主導を打ち出した「覚悟の」出発であったろう。しかしながら平成10年度はついに約865万円の黒字計上と、住宅地の中への路線設定の可能性を裏付けるだけでなく、利用率の向上・安定化は沿線住民、特に高齢者層の外出を促す地域活性化の役割をも見事に果たしている。

 「すぎ丸」は東西交通網のなかにあって南北交通が弱い地域を結ぶ新しいスタイルの交通機関としても今後注目であろう。実際通し利用も少なくなく、区役所を始めとする行政拠点を結んでいる事からも15分間隔ながら小型車では半ば苦しいほどの輸送量になるかも…という声も聞かれた。街道越え・「抜け道渋滞」などの難所も抱えているだけに、まずは定時性と乗降時の安全性確保が課題であろうか。

 ただ、冒頭にも触れたが「ムーバスの成功」に乗っかったカタチで「乱立」したコミュニティバスが一様に成功しているかといえばそうでも無いという。主旨と目的を明確にしないままの安易な導入は利用者に継続的に受け入れられないということでもあるのか。「ムーバス」が総合的に秀でたシステムなだけに、今後この成功をどの様に生かして行けば良いのか、各地域に当てはめて地域なりの問題点を検証するのも我々利用者にとっても大きな課題である事を痛感させられたのであった。

杉並区 http://www.city.suginami.tokyo.jp/
南北バス「すぎ丸」(時刻表・路線図) http://www2.city.suginami.tokyo.jp/guide/guide.asp?n1=80&n2=1100&n3=100

武蔵野市 http://www.city.musashino.tokyo.jp/
快走ムーバス!(路線図・運行実績) http://www.city.musashino.tokyo.jp/japanese/m-bus/index.html

参考図書:“ムーバス”快走す(1996 武蔵野市+馬場孝治著 ぎょうせい)


「すぎ丸」の示す道
 投稿者---エル・アルコン氏(2001/03/04 00:51)
 http://6408.teacup.com/narashinohara/bbs
─Re:「すぎ丸」の示す道
 └Re:「すぎ丸」の示す道
  └施設側の整備の必要性
   └「駅付け」の意義

 先日のオフで、井の頭線の浜田山駅から中央線阿佐ヶ谷駅まで、杉並区のコミュニティバス「すぎ丸」に乗車しました。
 詳しいレポートはおいおい管理人の551さんから出てくると思いますが、この「すぎ丸」は今までのバスに対する固定観念をいろいろな面で打ち破ってくれました。

 中小型車による100円均一の循環路線というと実も蓋も無いのですが、とにかくルートを実地に見ると、動転境地、驚愕の路線設定です。
 普通車のすれ違いもままならないような、しかも対面通行の路地を縫い、果ては民有地を借用?してバス交換地帯まで設けています。
 15分ヘッドで、当日は雨天ということもあり立客がかなり出たため、増発も考えたいところですが、路地での交換を考えると限界なのでしょう。

 車両も小型かつ幅員を抑えていますが、それでも座席定員14名を確保しているのは立派で、一般路線バスも20人程度ということを考えれば充分なスペックです。

***
 「すぎ丸」レベルの路地に路線が引けると考えると、都市内や近郊のバスの今後の姿の一つが見えてきます。現下、大通りの渋滞に嵌まってるバスを尻目に歩く流動の取り込みが可能ですし、同時に住宅街や諸施設を丁寧に縫う路線設定も可能です。
 少なくとも、「ここにはバスは無理」という従来の固定観念は捨てる必要があるでしょう。

 自転車や徒歩との競合に活路を見出す形になりますが、100円均一といった運賃設定次第では、駐輪場の値段を考えれば商機はあるでしょう。
 少し余談になりますが、船橋市がここ2年連続で駐輪場の値段を大幅に上げてきています。もともと年間3000円程度と近隣自治体や民間に比べて安すぎるのは事実ですが、昨年が4500円程度、今年は6600円程度と毎年5割値上げですから恐れ入ります。

 それでも平日1日あたりなら30円程度ですが、値上げのインパクトはあります。
 一方で習志野台や高根台といった団地から駅への新京成バスですが、渋滞が無く時間が読めるのですが、170円という運賃の値ごろ感から、雨天・荒天でもない限り利用が今一つです。
例えばこれを「すぎ丸」の思考で団地内をこまめに縫う路線にしたり、100円均一にすることで、集客力を高めることは不可能ではないはずです。
 特に駐輪場の大幅値上げという今はその好機なのですが、昨年8月に大幅な路線廃止と本数削減に踏み切るなど、敵失を生かそうともしないようです。

***
 「すぎ丸」で欲を言えば、もう少し停留所間隔を詰めて欲しいところで、折角の路線設定も、停留所間隔が広いと使い勝手が悪くなります。

Re:「すぎ丸」の示す道
 投稿者---とも氏(2001/03/04 12:46)

 ともです。こんにちは。

 「すぎ丸」。すごかったですね。正直、所詮は「ムーバス」の二番煎じぐらいにしか考えてなかったのですが、ルート設定といい、運行形態といい、ムーバスとは明らかに異なるコンセプトを持ち、綿密な計画で運行されていることが驚きです。

 ムーバスに関しては、様々なところで導入までのいきさつ、課題などが発表されていますが、すぎ丸に関しても、道路運送法の処理、道路交通法との調整、バス事業者との調整をどうとったのか、知りたいところです。
 たかだか4m程度の道路にバスが走るというのは、各地の自治体に衝撃を与えるべきものですが、どうもムーバスというものがすぐ近所にあるせいか、目立ちませんね。
 「道路が狭いからバスなんて無理」とのたまう自治体に見せたいものです。

 ところで、自転車や徒歩の取り込みですが、いまの「すぎ丸」スタイルではちょっと厳しいかもしれません。
まず、バス路線が線的な設定であり、かつバス停間隔が長いので、面的需要が多い自転車に対抗するには少し弱い気がします。
 例えば、エリア内フリー乗降を認めるとか、高頻度運転(上下でルートを変えて、半循環スタイルにする手もあります)を行い、デマンド的動き(公共施設への立ち寄りなど)を行うなんていう対策をとるのも一案です。
 とはいえ、自転車利用は決して削減すべき交通ではないですから、難しいとこなんですが。

 あとは、土日には商業集積地への乗り入れなんかを考え、自動車交通の削減を狙うのも1案です。東京の郊外では多くの商業集積地で駐車場不足が発生していますから、パークアンドライド的な需要掘り起こしも期待できます。

 って、雑感です。
 ではでは。

Re:「すぎ丸」の示す道
 投稿者---551planning(2001/03/11 23:41)

 遅くなりました。
 「すぎ丸」再び行って参りましたよ。

 行政拠点を経由し南北交通をも担っている事で新規需要確保も可能と思いきや、既に通し利用が定着していると見受けられ、15分間隔でも常時立席状態にあるのは喜ばしいのか…。またルートが「抜け道化」していることでのバス待ち客・沿線住民への安全性確保が今後議論になるやも知れません。
 しかしながら何といっても「そこまでは入れるのか!」というコトを見事に立証してくれる路線であり、今後団地を抱える地域での可能性を十二分に感じさせてくれる路線である事は確かですね。今後の動向、要注目でしょう。

施設側の整備の必要性
 投稿者---とも氏(2001/03/12 17:32)

 ともです。

 すぎ丸レポート、読ませていただきました。
 僕自身も、先日偶然にも再度乗車する機会があったのですが、積み残しぎりぎりでの運行が続いているようです。いやはやなんとも予想外の好成績で。
 しかし、なぜか赤字補填が区議会で話題になっているとか。なにがいけないんでしょうか(一部区議に財政健全化の観点から「すぎ丸」赤字の場合には廃止という話が出ているようです )。
 やはり、運転手を見ると通常の京王バスへの委託のようですから、ひょっとしたらムーバスのような人件費抑制(ムーバスはバス会社を定年退職した嘱託運転手です)をやっていないとか、CNGバスが高いなどの問題なのかもしれません。
 とはいえ、「赤字だから廃止」では「交通機関のシビルミニマム」って何なんだろう・・・と思ってしまいます。

 で、話は本題です。
 すぎ丸で今、最も問題になっているのは、やはり浜田山駅前の「駅付け」の話ですね。
 商店街になにもバスを入れるなと言うことのようですが、これはやはり杉並区の失敗の部分なんでしょうね。
 幸いにして浜田山駅前は通過交通は入り込まないようですし、いっそ、セミトランジットモール化を考えても良かったかもしれません。
 歩道整備を行い、放置自転車の整理さえうまくできれば、幅員10m近くある街路ですから、一方通行ならばバスが通ってもそれほど危険を感じませんね。
 さらに言えば、商店街にはきっともう一つの懸念、バスによる素通りという問題があると思うんですね。これに対するケアとして、商店街入口へのバス停設置などを考えるのも1案でしょう。

 こういった施設整備面が、ちょっと忘れられているかなというのが、すぎ丸に対する率直な印象ですね。
 総合的な地域・都市政策として考えていくべき部分をもう少し膨らませられれば、すぎ丸の前途は安泰だと思います。

 ということで、半分雑感です。ではでは。

「駅付け」の意義
 投稿者---エル・アルコン氏(2001/03/12 23:20) http://6408.teacup.com/narashinohara/bbs

 確かに安全面を考えると、トランジットモールに対する批判同様「駅付け」が危険という主張には一理あります。
 しかし、先日の会でも、浜田山駅前で乗客がほぼ入れ替わったように、駅に乗り付けるからこそ乗降があるということは無視できません。
 「すぎ丸」の場合、阿佐ヶ谷駅と浜田山駅という双頭路線ということもできますが、こうした路線の場合、双方の「ターミナル」における利便性(本数、街区、電車の行く先)に大きな差が出ると、ターミナルへ向かう流動が発生せず、あたかも盲腸線になってしまいます。
 この典型が鎌取駅−ちはら台駅の路線で、どう見ても鎌取駅からの一方的な路線です。

 バスが駅前に来るから浜田山駅の利用も増えて、ひいては商店街に寄ろうと思う人も増える、という発想で、バス運行の支障を取り除く方が建設的でしょう。
 道一本離すのは簡単ですが、駅から遠い、歩く、濡れるというデメリットを前にすると、じゃあ阿佐ヶ谷経由で、と流動が逆を向きかねません


「すぎ丸」次のステップへ(2004/11/02 21:53:26)

 東京都杉並区の南北バス「すぎ丸」(阿佐ヶ谷駅〜浜田山駅)が走り始めてまもなく丸4年。開設当初は運行経路の安全性や赤字補填が問題視されるなど紆余曲折が取り沙汰されていましたが、今年4月には利用者200万人を突破するなど順調な成長を遂げています。その特異な経路・運行スタイルから地域が抱えてきた交通問題が垣間見えるとともに、コミュニティバスの新たな方向性を提示する存在として【検証:】でも注目していました。
 そんな「すぎ丸」、早くから浜田山駅から南方面への延伸・路線新設の方向性が打ち出されていたところ、結果的に浜田山駅南〜下高井戸駅前入口間の2号路線として結実することとなったそうで…11/1の開業前日、無料運行会が行われた10/31に現地を実見してきました。

すぎ丸

●すぎ丸小史

1960年代 京王帝都バス成宗線(浜田山駅〜杉並高校間)廃止 (情報:まるのや乗合より)
1996   「杉並区南北交通基礎調査報告書」で区内南北交通の不便に言及、阿佐ヶ谷駅〜浜田山駅間でのバス路線設定を第1候補に挙げる(情報:武相総合バス研究室より)
1997   区が南北バス交通検討調査を実施
  ・南北バス交通の整備方針
  ・調査対象3路線の想定と実現可能性の検討
1998   区が南北バス交通検討委員会を設置
  ・南北バス交通基本計画の策定
    運行路線の設定・グループインタビュー調査・関係者ヒアリング調査 等
1999   区が南北バス交通実施検討委員会を設置
  ・運行実現に向けた事業化推進
2000 .07 南北バス名称募集
  .09 愛称を「すぎ丸」と決定
  .11/27 運行開始(阿佐ヶ谷駅南口〜浜田山駅) (11/25・/26無料乗車会)
     ●区は赤字時年間上限2000万円の運行補助(=1200人/日)、黒字時は区と運営会社で折半(=1800人/日以上)
2001    ●00年度利用は1,295人/日
  .?? 利用者50万人突破
  .12 停留所追加(成田西幼稚園前・水道局営業所前)
2002 .03/26 区商店街共通ICポイントカード(すぎなみマルチカード)運用開始、1万枚限定で「すぎ丸」プリペイド機能付カード配布も
     ●01年度は約1000万円の赤字補填 利用は1,472人/日
  .04/01 ダイヤ改正、朝・夜間の運行時間を延長
  .06/01 松ノ木線(永福町〜高円寺駅南口間)延長運行開始(京王バス・関東バス共同運行)
 区は沿線道路の補修、注意喚起等の支援を実施、運行補助は行わず。
  .09/27 利用者100万人突破
2003 .01 浜田山駅以南地域の新規路線案について意見募集
  ルートA=浜田山駅〜鎌倉街道〜八幡山駅
  ルートB=浜田山駅〜鎌倉街道〜甲州街道(桜上水駅北側で折り返し)
  ルートC=浜田山駅〜鎌倉街道〜甲州街道(上北沢駅北側で折り返し)
  ルートD=阿佐ヶ谷駅〜鎌倉街道〜甲州街道(折り返し)
     ●02年度は約800万円の赤字補填 利用は1,663/日
  .07 2号路線運行ルート決定(浜田山駅南〜鎌倉街道〜甲州街道〜下高井戸駅前入口)
  .08 2号路線沿線住民説明会開催(計4回)
2004 .01 区長新年挨拶で浜田山〜下高井戸路線の運行開始を来年1月に開始すると表明(後に「柏の宮公園」(旧興銀グラウンド)オープンに合わせ前倒しとなる事が決定)。
     ●03年度運行は30,907円の黒字に 利用は1,773人/日
  .04/19 利用者200万人突破
  .05/27 2号路線の事業者を京王バス東に決定(区内事業者6社から選定、赤字時年間上限1200万円の運行補助) 想定250〜350人/日
  .08  
    路線名愛称募集
  .10 愛称決定、1号路線が「けやき路線」・2号路線が「さくら路線」に
  .11/01 2号路線運行開始 (10/30・/31無料乗車会)

杉並区役所 http://www.city.suginami.tokyo.jp/
http://www2.city.suginami.tokyo.jp/guide/guide.asp?n1=80&n2=1500&n3=100
杉並区議会 http://www.gikai.city.suginami.tokyo.jp/toppage.htm

(杉並区長)山田宏オフィシャルウェブサイトhttp://www.yamada-hiroshi.com/yh_mn/mn2_1.html

●けやき路線再見

 当方すぎ丸には数度乗車も、ここ1〜2年は御無沙汰でした。街の変化も楽しみにしつつ、まずは1号路線「けやき路線」に御挨拶。昼前の阿佐ヶ谷駅南口から乗り込みます。当初から15分間隔での運行が守られており、デビュー時は日本初だった小型バスでのCNG車とリフト車1台ずつを含めた日野リエッセ5台が任を担っています。
 潜在需要に完全にフィットしたことに加えクルマが小さいこともあって混雑路線として知られているすぎ丸ですが、珍しく谷間なのかガラガラで発車。路線名の由来ともなった、前夜の雨に濡れたケヤキ並木を抜けて杉並区役所前から一旦青梅街道に入ってすぐ右折すると、早速ハイライトというべき狭隘区間の始まりとなります(そういう意味では浜田山からの乗車が「通」だと薦める方もいらっしゃるようで)。杉並税務署から阿佐ヶ谷住宅の周回へ。を、赤舗装の「バス待避所」も健在ですね。熟練の運転手のハンドル裁きも見事ですが、対向する乗用車も馴れたものです。
 中央広場で時間調整の後、住宅西側のV字カーブから鎌倉街道に入って南下を続けます。桜が見事な善福寺川緑地ではモデル撮影会中!と、阿佐ヶ谷行きバスと対向、立客も見えます。五日市街道を越えれば道も若干広くなったかと思うものの、それは目が慣れた証拠かも? 渋滞中の井の頭通りをすり抜ければまもなく浜田山駅前の商店街に到着、最後はトランジットモールってこういうこと?と実感しながら駅前に到着となります。到着を待ち侘びた乗客が早速席を埋めていました。

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●さくら路線に乗って

 さて、お目当ての「さくら路線」に乗り継ぎます。浜田山駅の改札はけやき路線バス停前の1箇所、横の踏切を越えて右手に進むと浜田山公園の一角が転回場になっておりました。当方は南口の商店街をぐるっと廻ってから乗場にたどり着きましたが、南口商店街では「さくら路線開業」ののぼりを出すなど期待十分の様子。その意味では乗場がちょい外れの場所になってしまう感じ。改札とは直線距離ながら、北口がメインの感も強い中で南口商店街への影響はどうでしょうか。
 さくら路線は30分間隔での運行、共同運用となるためか、新車が2台導入されましたが同じリエッセ、ただし屋根にCNGを載せたタイプで両車ともリフトつきです。もちろんコレは2000年の交通バリアフリー法施行に伴うもの。ちょうどけやき路線の運行開始と重なっていたのでした…ちなみに当時が5台で(CNG・リフト化改造費含め)約8,400万円、今回が2台(CNG・リフト付き)で約5,000万円近くということですから、ステップありのリエッセでこれということはコミュニティバス事業もお安くはありませんで。
 バス停は「さくら路線」にもかかわらず?青色。緑色のけやき路線とは別に1〜33の番号が振られています。実はけやき路線運行前から鎌倉街道を南下しての甲州街道方面への路線延伸が沿線住民から強く求められていたところ、結果的には井の頭線を挟んで分断という形になりました。踏切を越えるのは安全性や定時運行の確保などからやはり至難と云わざるを得ませんが、今なお直結化や乗継割引化などの意見があるようですね…しかしながらすでに乗場ではすでに15人以上の人だかり。今日は無料乗車会とあってかかもしれませんが、期待の大きさが伺えます。

すぎ丸すぎ丸すぎ丸

 さて時間となって乗車、まずは下高井戸駅まで乗り通すこととしましょう。南口商店街の外延を通って鎌倉街道へ。閑静な住宅街の中を南下し、旧興銀グラウンドを開放した「柏の宮公園」の近くを抜けて神田川を渡ります。傍の塚山公園に沿って右カーブから坂をぐんと上り、再び南下。玉川上水の堤を抜けると首都高4号新宿線の真下、甲州街道に合流です。ここからは進路を東へ…路上駐車車両と陸橋から結構なスピードで降りてくるクルマに挟まれて難儀しつつ、広々とした道をヨタヨタ?と進みます。桜上水駅入口を横目になお進みますが、あちこちで駐車車両…中にはバス停のポール前に堂々と停めているクルマも。確かにずーっとバス空白地帯ではありましたが、正式運行開始後も悩まされそうです。不動跡バス停を過ぎると先の赤信号を利用して3車線を斜めに切り込んで、先の信号手前でUターン。下高井戸駅入口バス停に到着と相成りました。この間数停留所で乗降はあったもののほとんどの乗客が乗り通し、初乗りでの散歩体験であったことが伺えました。なお、甲州街道上ということで循環チックなのかなと思いつつ乗降は分離されており、全員一旦降車となるようです。何とか路肩に寄せて時間調整も行うようです。
 ここから下高井戸駅までは歩いて3分かからない距離…なるほど、下高井戸は世田谷区の印象が強いのですがぎりぎり区境なんですね。むしろ東急世田谷線がぴたっと区境手前で止まった(もちろん京王線が主因ですが)という感じも受けました。03年に行われた新路線案の意見募集では下高井戸への路線は甲州街道経由となることでの影響等を勘案してか想定外だったものの、予想以上に希望があり、最終的に落ち着いた理由の一つとしては区長も言及していますが世田谷区との連携もとされています。

●さくら路線を歩く

 下高井戸駅付近をしばらく巡ってから、適当なところで乗るまでさくら路線沿いを歩くこととします。甲州街道を今度は西へ。桜上水駅入口を越えたところで向かいをすぎ丸がちょこちょこと走って行きました。鎌倉街道入口のUターン路は使わずに甲州街道からちょうど外れる首都高に沿ってしばらく進んだところで折り返す形となりますが、これは鎌倉街道入口の狭さもあろうかと。信号の絡みで渋滞も伸びる傾向が見られ、ここがさくら路線最大のネックになりそうな感じを受けました。ただちょうどすぐ北側に玉川上水の堤が甲州街道に沿っていることから、この両脇の道を行ってもいいのでは?と…ま、地図を見る限り下高井戸に寄れば寄るほど道が細くなるようで巧くないようですが。

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 ここからは北上。目線の先には高井戸の清掃工場の煙突が見えます。穏やかな住宅街では低層階ながら規模の大きなマンション建設も見られるなど、絶えず変化している様子。クルマ通りもありますが徒歩の方も多く見受けられ、浜田山や上北沢から最奥部の塚山公園付近までそれぞれ直線で1kmないことからもけやき路線との性格の違いを感じさせます。その塚山公園でしばし一息。坂道を登ってくるすぎ丸をパチリとやりますが、バス停が坂の途中にあるところ、運行面はもちろんバス停設置等でのいろいろな苦労が想起されます。神田川を越えて更に住宅街を進むと、もう浜田山の駅前。ちょうど30分間隔の間で歩けてしまいました。

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●松ノ木線散歩

 で、勢いついでで井の頭通りを永福町まで歩きます。永福町駅手前の京王バス東永福町車庫は、中央高速バスからコミュニティバスまで揃う賑やかな車庫、CNGエコステーション前では渋谷区コミュニティバスのハチ公バスが4台並んで休息中。奥には大型のCNG路線車が大挙して休んでいました。

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 ここからはもうひとつの南北バス・松ノ木線で高円寺へ抜けます。02年に既存路線を延長するカタチで誕生したこの路線、詳細は以前の投稿に譲るとして、運行そのものは完全民営、ゆえに運賃が倍となる200円になることが最大の違い、【検証:】でも、また杉並区議会でも議論があったところですが、昨年末に区が利用調査を実施している中では特段の問題点等はピックアップされていないようです。区長も同様のスタイルでの新規路線開拓を公約のひとつに掲げています。
 さて、永福町発車時にはガラガラだった車内が松ノ木町内の超狭隘区間を抜ける間にあっという間に立客も出る盛況に…ただ、この路線が初となった三菱エアロミディMEは立席スペースが少ない上に後方は「劇場型座席配置」ともいうべき急斜度ゆえ粗密のムラが出やすいことを改めて実感したのでした。あ、そうそう、松ノ木住宅にあった旧路線時のターンテーブルは民間駐車場になっておりました。

コミュニティバスからコミューターバスへ…ミニバスが拓く路線バスの可能性 ../../topics/neotrans/log341.html

すぎ丸

 すぎ丸の次のステップとなるさくら路線、全般にけやき路線よりもルート上の狭隘区間はまだマシという印象を受けましたが(実際バス停設置や道路補修等の「道路環境整備費」はけやき路線で約5,230万円、さくら路線では予算ベースで約1,900万円の由)、「歩けてしまう距離」ゆえに長らく交通空白域だったところを埋めるという意味では武蔵野市のムーバスに近い性格かなという気も。区役所を初めとした公共施設や駅前商店街との結節を念頭に入れた南北バス事業の観点から云えば、越すに越せない井の頭線踏切が恨めしいかもしれませんが、運行効率など総体的に見れば現状のスタイルでやむなし、という気がします。気になるのは甲州街道上での遅延可能性と、鎌倉街道入口付近での対向車捌きなどの運用面でしょうか。それゆえの30分間隔(計画時は45分間隔だったそうで)ということかも知れませんが、確かにけやき路線のように大化けする可能性はいささか乏しい分、今後の展開が気に掛かる路線ということもできると思いました。

 最後に気になった点としては、導入車輌が「またリエッセだった」ということ。共通運用等を考えると妥当な結果ではあるものの、先述の交通バリアフリー法などとの絡みで云えばいささか前世代に属するクルマになったとの印象を受けます。議会資料からは、けやき路線の車椅子利用者が00年度45人、01年度73人、02年度30人、そして何かの間違いかとも思ったものの03年度ではわずか4人に留まっている由。確かに同路線ではリフト付き車輌が時間1本未満ということ、更には狭隘区間ゆえに乗降可能停留所が6箇所に限定されるなどの制約の厳しさはありますが、急減ぶりは驚かされました。ま、当方自身は移動制約者に対するサポートサービスについては別途填補されることが望ましいと思っているため、介護保険の関連でそうした流れが進んでいる証左かとも理解しますが、その延長線上として利用者の主体が高齢者であることを考えると、ノンステップバスなどの導入が望ましかったのかな、という気もしています。ただし、ハチ公バスのような日野ポンチョでは積み残しの可能性がより高まるほか、松ノ木線の三菱エアロミディMEも先程見たような問題点があり、なまじ利用の多い路線だけに違う意味で頭の痛い話であることも事実でしょう…その意味ではミニバスのあり方そのものも見えてくるのかなという気にも改めてさせられたのでした。

すぎ丸すぎ丸

2005.01.13 Update

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