【検証:】掲示板過去ログ集

【検証:近未来交通地図】
(過去ログNo.112)
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〔川縦論+〕イベントと鉄道整備との相関関係
 投稿者---かもめ氏(2003/06/22 21:18:07)

−Re:イベントと鉄道整備との相関関係
 └冷静な交通政策に沿った整備が必要なのでは?
  └あくまで通常の交通計画の過程の中で立案されたものの前倒し
   └成否は別にして優先順位が「ねじまげられて」いまいか

 皆様、お久しぶりです。かもめです。
 皆様の議論を興味深く拝見致しております。

 今回の川崎縦貫鉄道のアンケートとその結果について、私は以前に投稿した「イベントと鉄道整備との相関関係」についての危惧が具現化した、という印象を持っております。そのときの投稿で真意を伝えきれなかった部分を含めて今回投稿しようと考えました。

鉄道整備にあたっての疑問 log070.html#2

 まずは「着工延期」という結論から。完成予定時期についての明示がありながらこうもあっさり延期になったというのは残念でなりません。もし仮に「2011年度にイベントを誘致するからそれまでに完成を」というレベルでの議論であったならこうはならなかったと思うからです。しっかりと需要予測を立て、その上で「2011年度に第1期開業」というのはあっさり覆ったのに、このレベルでの議論はおそらくまかりとおっていたどころが「大義名分になっていたであろう」ということに強い憤りを覚えるからです。
 スポーツイベントなどの誘致については「何故必要か」の議論もなされず国がどれだけバックアップしても「国策だから」で済んでしまうのに鉄道整備の場合は何年もの議論を経たうえで手続きを進めなければならない、そして税金を使う場合には納税者に対して完璧な説明と議会のコントロールを受けなければならない、そのような現状は問題だと思います。

 今必要とされ、大義名分足り得るのは交通インフラ整備そのものの方なのではないのでしょうか?

 周知がしっかりとなされずにアンケートを行ったことは、想像以上にアンケートの質を下げたように感じさせます。

 その結果として「空気に流された」ような結論に達してしまったのだと思います。いまの社会のあり方を見ればこのような結果になるのは目に見えていたといえましょう。芸能やスポーツといったものの誘致にはあれだけ熱くなってしまうのに鉄道や道路、空港といったものにはとにかく「無駄」のレッテルしか貼られない、本当に資料をそろえて物事を考えようとしない、安易な風潮をどうにかしないといけないとひしひしと感じました。

Re:イベントと鉄道整備との相関関係
 投稿者---とも氏(2003/06/23 13:04:41) http://town-m.vop.jp

 ともです。
 手短に。

 簡単な話なんです。イベントがあるというのは誰にでも非常にわかりやすい目標・ターゲットになります。
 しかし、人口増加がこれくらい・・・というのはどうしたってわかりにくい。

 野球場やサッカー場ができる。その交通アクセス整備だとしてもイメージはつきやすい。5万入るといえば東京ドーム規模とか3万ならカシマスタジアムだとか。
 でも人口増加や産業形態変化はわかりにくい。

 今回の問題はそういう意味では似ています。
 つまり、「将来、この町がこうなってこのぐらい人口が増加すると予想できるから必要なのだ」とか「人口増加はさほどではなく鉄道は必要ない」といった人口に関する意見といった、都市の開発動向や交通機関の動態部分が全く周知をされていないのではないかと感じるからですね。

 でも、本質は全く違います。
 イベントをなぜ呼ぶかと鉄道などの社会資本を同列で比較することに全く意味はありません。
 スポーツや芸能のイベントに対する公的資金の支出は鉄道や道路整備に比べたら格段に少ない。いくら長野やワールドカップでの支出増があっても、その額で整備できる交通網と言ったら悲しいほど少ない。
 また、スポーツイベントの場合は特に都市に活気を与え、目に見えない投資効果が大きい。たとえば長野の入り込み客数の増加基調や世界的な周知は金額換算できない大きな効果といえます。
 さらにはその副産物としての公共交通網や道路網の拡充はこれが無かったとしたらどうかを考えると極めて有効に使われている。
 そういった面はあります。つまり「起爆剤」。
 都市としての発展の起爆剤としての効果は下手な交通機関整備よりずっと大きいという見方もできます。

 でも、受益者が広く薄いか局所で出るか、人口流動にインパクトを与えるか・・・などの差がありますからそれも簡単に比較はできない。

 スポーツイベントの招致にしても議会などの長い議論を経なければなりません。大阪や長野での招致までの道のり(長野は50年の招致活動の末)を考えれば、それほど楽とは思えませんが。

 社会資本といえども議会での議論は当然です。ここに欲しいから敷こう!で敷いていたら採算どころか無駄な社会投資だらけになります。
 川崎縦貫の問題は、アンケートは良い、議論も尽くした。でもその結果を周知してますか?ということではないでしょうか。

 それでは

冷静な交通政策に沿った整備が必要なのでは?
 投稿者---かもめ氏(2003/06/24 21:53:04)

 とも様
 丁寧なレス、どうもありがとうございます

 スポーツや芸能のイベントに対する公的資金の支出は鉄道や道路整備に比べたら格段に少ない。いくら長野やワールドカップでの支出増があっても、その額で整備できる交通網と言ったら悲しいほど少ない。

 おっしゃるとおりだと思います。
 しかし、この種のイベントにおける施設整備は理想的な「上下分離」がなされています。施設整備に関わる費用は自治体側が負担しそこから発生する利益は競技者側が受益しています。
 インフラ部分の負担を固定費として抱え込む鉄道に比べてその優遇ぶりはあきらかです。鉄道でも上下分離の主張はなされていますが、ここまで優遇しろと言う主張は見受けられません。

 また、スポーツイベントの場合は特に都市に活気を与え、目に見えない投資効果が大きい。たとえば長野の入り込み客数の増加基調や世界的な周知は金額換算できない大きな効果といえます。
 さらにはその副産物としての公共交通網や道路網の拡充はこれが無かったとしたらどうかを考えると極めて有効に使われている。
 そういった面はあります。つまり「起爆剤」。

 そういった起爆剤が無いと整備にGOがかからない現状に疑問を感じます。冷静な交通政策に沿った整備が必要なのではないでしょうか?
 この種の現実を見る度に交通のあるべき姿を議論することの無力感を覚えてしまいます。

 あえて深く踏み込みませんが、メディアや市民団体の問題もありますしね

 私のいうことはもしかしたらおかしいのかもしれません。しかし今の風潮をみるにつけ書かずにはいられなくなってしまって・・・
 不愉快に思われた方には申しわけ無く思います。
 決して荒らし目的ではなく自分の疑問をぶつけてみたものですから、その点はご容赦願います。

あくまで通常の交通計画の過程の中で立案されたものの前倒し
 投稿者---とも氏(2003/06/25 12:17:38) http://town-m.vop.jp

 ともです。

 この種のイベントにおける施設整備は理想的な「上下分離」がなされています。施設整備に関わる費用は自治体側が負担しそこから発生する利益は競技者側が受益しています。
 インフラ部分の負担を固定費として抱え込む鉄道に比べてその優遇ぶりはあきらかです。鉄道でも上下分離の主張はなされていますが、ここまで優遇しろと言う主張は見受けられません。

 どうも誤解があるように感じます。
 競技者側は会場使用料の形で自治体(=管理者)に支払いを行っています。
 よって無負担ではなく、一部を負担しております。
 また、鉄道に対する税金投入はすでに行われており、国費もしくは地方費の直接投入がすでに実施されています。ただ、ポイントは第三セクターや公営企業体にしか補助金投入ができないこと。そこで一般的には第三セクターを間にかますことで鉄道事業者の負担を軽減しているのです。

 文化施設やスポーツ施設は鉄道とはまた別なものとして当然必須のものです。
 これを単純に比較して良い悪いというのはちょっとちがうのではないかと。

 そういった起爆剤が無いと整備にGOがかからない現状に疑問を感じます。冷静な交通政策に沿った整備が必要なのではないでしょうか?

 冷静な交通政策に従った整備が一般的には粛々と行われています。
 ただ、イベントがあるのであれば、それに間に合わせれば膨大な収益が得られる=事業費の償還が早くできる、周知が可能となり利用者が定着するという観点での起爆剤です。
 典型は北大阪急行(万博時の収益で建設費の償還を一気に進められた)や長野新幹線(五輪輸送でのスタートダッシュが効いている)、神戸ポートライナーでしょうか。

 ここも誤解されているようですが、これらの計画にしてもあくまで通常の交通計画の過程の中で立案されたものを前倒しでやっただけであり、なにも未来永劫不要なモノをつくったということではありません。

 ということで、誤解は解けましたでしょうか。では

成否は別にして優先順位が「ねじまげられて」いまいか
 投稿者---かもめ氏(2003/06/25 21:43:50)

 かもめです

 レスありがとうございました
 私としましても、もちろんそれ「だけ」が目的で建設されているとは考えておりませんしそれぞれの建設計画、計画以前の予定や答申についてもそれなりに学んでおります

 私がひっかかっているのは

○反対が「煽られている」と感じられること(それとは逆の「煽り」を芸能やスポーツで感じること)
○建設の成否は別にしても建設の優先順位が「ねじまげられている」と思えること

です。

 表題とは離れた議論になってしまったことをお許しください
 レスして頂いてありがとうございました

都市鉄道経営(財政)序論
 投稿者---和寒氏(2003/06/28 08:59:09)
 
http://www.geocities.jp/history_of_rail/index.html

都市鉄道経営(財政)序論
└残るのは線路だけ
 └受益者負担の実現を
  └受益者負担は簡単ではない
 └いちおうの筋道
  └Re:いちおうの筋道
   └筋道補足
    └事業の評価方法
     └自分なりのサマライズ

(前略)
 公営企業会計で運営する地下鉄事業は独立採算が原則。一般会計からの野放図な財政支援を避けるため、大規模なリストラが不可欠といえる。
 「一般企業なら破たん状況。なぜこんな過大投資をしたのか」。横浜市の中田宏市長の私的諮問機関「市営交通事業あり方検討委員会」で、座長の松田昌士JR東日本会長は先月下旬、市営地下鉄の経営状況を厳しく批判した。同市は「公営企業会計だけで責任を取るのは無理」(都市経営局)と、一般会計からも財政支援せざるを得ないとの認識を表明した。
 同地下鉄は02年度決算で1972年の開業以来初の営業黒字(7億円)になった。だが、巨額の建設費の支払利息が182億円と、経営を圧迫する。市は全列車のワンマン化など今後5年間の運営経費の削減目標を12%から20%に引き上げたが、経営努力を続けても累積赤字解消には39年かかる。
(中略)
 公営地下鉄の経営が厳しいのは建設費が1km当たり200億-300億円と巨額で、借入金の返済や減価償却費の負担が重いからだ。人件費水準もJRや大手私鉄に比べて高い。甘い需要予測も指摘されている。
(中略)
 だが、こうした増収対策も巨額の赤字の前ではかすみがち。安易な税金投入を避けるためには、人員削減や給与の見直し、業務の効率化など、なお一層の思い切った経営努力策が求められている。

■日本経済新聞平成15(2003)年 6月23日付記事より
(引用者注:漢数字はローマ数字に置き換えた)

■都市鉄道事業における「二重投資」
 上の記事は、都市鉄道をつくるにあたっての本質を明らかにはしていない。確かに横浜市の営業収支は、開業以来30年赤字が続いている。ただしこの収支は減価償却後のもので、償却前営業収支は昭和54(1979)年度に黒字転換し、昭和57(1982)年度に赤字に転じたものの翌年度以降は連年黒字が続いている(※)。償却前営業係数は近年では60代前半と、良好な数字を示している。つまり帳簿の上では赤字経営とはいえ、キャッシュフローでは黒字が出ているのだ。
 勿論、初期投資の際に必要とした莫大な債務の償還負担が重いことは間違いない。営業で稼いでも債務返済に追われ、返済原資捻出のためさらに債務が増える「雪ダルマ状態」に陥る年度もあるに違いない。実際のところは「ある」どころではなく、償却前営業利益よりも償還負担が重い状態が恒常化(※)しており、それゆえに「累積赤字解消には39年」を要する状態になっている。わけだが、では累積赤字解消時になにが残るのか。それを真摯に考察した分析が今までにあっただろうか。

※いずれも「鉄道統計年報」(各年度版)による

 この「累積赤字」の定義は明示されていないが、減価償却費負担にかかる記述からすると、損益計算書の繰越損失を指すものと考えられる。その読みがいちおう正しいとして、都市鉄道事業の累積赤字解消時には、下記の二つの「財産」が残るのである。

 ここでなぜ減価償却費をなぜ「財産」と目したか。それは、損益計算書において、減価償却費は費用項目として計上されるものの、実際の支出が伴わない仮想費用であり、引当金としての性格をも見出せるからだ。

 減価していく現存資産に、それを再構築するための引当金(減価償却費)をあわせれば、資産価値の総価はほぼ一定の値をとる。会計制度の巧妙と呼べる部分だが、この制度では出資による設備投資が前提されており、もともとの出資の目減りを避ける工夫として減価償却費が設定されている、と考えるべきではなかろうか。
 極めて巨額の借金をして立派な線路をつくり、その借金を返済しつつ、線路をもう一度つくりなおすための引当金まで積む、というのが現在の損益計算書に示された数字である。横浜市交通局をはじめとする都市鉄道の事業者は、実は「二重投資」の負担に喘いでいるにすぎない。「過大投資」では決してない。
 先に紹介した記事は、一面を照らしているだけで、本質を衝いているとは認めがたい。借入金を前提した大規模投資を必要とする公共事業には独自の会計制度が要る、という案を呈してもよいのではないか。日本で最も経済に通暁しているはずのメディアであるならば。
 このような記事からは、公共事業(公営企業運営)に対する不安や不信しか生まれない。もし地下鉄なかりせば、と極端な仮定を置くのも詮ない。百万都市の経営に必要不可欠な都市基盤というならば、それを安定的に成立させる手法を編み出すのが、社会の知恵というものだろう。
 否、損益計算書の繰越損益でなく、貸借対照表の欠損金(黒字に転じた場合は剰余金)を基に財政状況を評価するならば、この種の紛れは発生しない。してみると、これは記者の無知なのか、それとも公共事業(公営企業運営)に対するネガティブ・キャンペーンの一環なのか。どちらにしても簡単に読み流すわけにはいかない記事ではある。

残るのは線路だけ
 投稿者---樫通氏(2003/06/28 12:16:41)

 減価していく現存資産に、それを再構築するための引当金(減価償却費)をあわせれば、資産価値の総価はほぼ一定の値をとる。

★「総価」=取得価額であり、簿価と取得価額との差が減価償却累計額となるはずですから一定の値をとる事は事実です。問題は取得価額だけが資産価格なのかという点でしょう。

★線路も道路も、時価の算定のしようがないゆえ、ありとあらゆる解釈で金銭換算が試みられてますが、貴論の前提は、資産価格は常に取得価額と等しいとしているものかと思います。簿価が資産価格として完璧では無いことも確かで、新聞記事は簿価の世界だけで話をしている点についての批評が貴論であると思いますが、資産価格が常に取得価額と等しいとする前提での反論も、新聞記事の前提と比較して優っているとは判断できません。

★累損解消後に残るものは、線路だけです。資産価格が取得価額であれば、貴論のように簿価としての線路と減価償却累計額という資産価値の線路が残っているわけですが、線路の資産価値が時の流れと無関係に取得価額と一致すると言う考え方には反対します。

 その借金を返済しつつ、線路をもう一度つくりなおすための引当金まで積む、というのが現在の損益計算書に示された数字である。横浜市交通局をはじめとする都市鉄道の事業者は、実は「二重投資」の負担に喘いでいるにすぎない。「過大投資」では決してない。

★この部分は小生にとって不明です。減価償却を引当金とみなす考え方に立脚している(この考え方にも小生としては異論があるのですが)のですが、現在の損益計算書に減価償却費が乗っている代わりに、営業開始初年度(資産計上初年度)の損益計算書の費用として建設費が全額計上されているわけでは無いわけです。借金の利息返済が重いことは確かですが、二重投資とは違うと考えます。

 借入金を前提した大規模投資を必要とする公共事業には独自の会計制度が要る

★資産価値の評価が困難であることを理由とするのであれば、独自の会計制度の必要性がある点、同意です。しかしながら貴論の掲げた論拠であれば、まだ現在の制度の方がBetterでは無いかと考えます。

受益者負担の実現を
 投稿者---かもめ氏(2003/06/28 13:38:14)

 かもめです

 私が現状の交通網の整備について感じている疑問は受益者負担がなされていない、ということです

 では、受益者とはどのような人々のことを指すのでしょうか?従来、受益者とは鉄道事業者及びその利用者のことだとされてきました。そのために独立採算性の鉄道事業者自身による借入金を利用者の運賃負担で償還するのが正しい、といわれていたわけです。

 しかし、ここには重大な落とし穴が潜んでいます。最大の受益者は沿線に土地を持ち、何もしなくても資産価値が暴騰した地主である、という点です。
 これがために鉄道事業者が莫大な債務を抱え込む一方で沿線では不労所得で大儲けという矛盾がどこでも発生してくるわけです。しかも、それが当たり前のこととして受け入れられてきました。

 真の受益者負担とは、このような人々に負担をさせることではないでしょうか?外部利益の内部化です。資産価値の上昇等による利益の鉄道事業者への還元です。これまでこのことはタブーとされてきました。無理もありません。現在の選挙制度では、住民に利益を誘導することはあっても住民に負担をかけるようなことは考えられないのですから。

 そのために民間の鉄道会社は沿線の宅地開発やビル建設で利益を出すようになったのは周知の事実です。そして常磐新線ではこれを一歩進める形で宅鉄一体化法が制定されました。しかし、これらはいづれもリスクを伴います。鉄道建設との二重のリスク要因に曝されるともいえるのです。しかも宅地開発やビル建設の過程でもやはり沿線に補償金を積むという事実では変わりがありません。

 近年、「土地神話が崩壊した」といわれます。私はそうは思いません。銀行は今でも土地を担保にしお金を貸そうとしませんし交通網の整備によって沿線の資産価値が上昇するという現象も何ら変わりがありません。テナントでも大家側が圧倒的に強いままです。だからこそ、このようなことが必要なのでないでしょうか?

 受益者負担により交通網整備が進み、かつ不公平感が解消される日がくることを望んでいます

受益者負担は簡単ではない
 投稿者---とも氏(2003/07/14 11:46:57) http://town-m.vop.jp

 ともです。

 私が現状の交通網の整備について感じている疑問は受益者負担がなされていない、ということです
 しかし、ここには重大な落とし穴が潜んでいます。最大の受益者は沿線に土地を持ち、何もしなくても資産価値が暴騰した地主である、という点です。
 真の受益者負担とは、このような人々に負担をさせることではないでしょうか?外部利益の内部化です。資産価値の上昇等による利益の鉄道事業者への還元です。これまでこのことはタブーとされてきました。無理もありません。現在の選挙制度では、住民に利益を誘導することはあっても住民に負担をかけるようなことは考えられないのですから。

 自治体、つまり都道府県なり市町村なりが新規鉄道事業者に対し出資を行う例は大変多くなっていますが、この基本的な考え方のベースはご指摘の点と考えることもできます。
 一般に、地価が上昇すればそれに伴い地主の固定資産税の支払額が増大し、自治体財源が潤います。であるからして実質的には間接的ながらも受益者負担はすでに形成されていると考えることは不自然ではありません。また、市町村などの自治体が出資しない場合でも、市町村などは鉄道新駅周辺における開発などに投資を行うわけで、その投資は鉄道事業者にプラスとなるものですから間接的な出資ともいえます。

 現実問題として、地主が新規交通網開通によって得られる利益はあくまで財産価値の向上にすぎず、開発利益を還元するにしても直接的な利益を受益する形にはなっていません。もちろん、土地の売却、開発による家賃収入などが見込めるのであればそれに対する課税の形での受益者負担は可能となりますが保有しているだけでは単に負担増を招くだけであり、合意形成を得るのは困難といえましょう(仮に家賃収入や売却益に関して負担を求めるだけであれば実質的に一部の負担にすぎず公平性が問われます)。

 常磐新線に関しては宅鉄法という制度のもと、宅地供給を円滑に実施するため鉄道事業と宅地開発を一体で進めていくという発想から整備された制度であり、常磐新線建設にともなう開発利益を鉄道事業者に還元するという仕組みではありません。
 土地区画整理の事業スキームの中で、地方自治体や都市基盤整備公団(土地開発者)が鉄道用地に該当する面積を施行区域内にて先行買収(買い取り)を行い、鉄道事業用地に集約換地(買った土地を区画整理において換地=土地の再配置を行う際に鉄道計画用地に集約させること。権利の交換の形で実施)することで鉄道事業用地を生み出す手法とするものであり、開発利益が直接的な形で還元はされません。
 鉄道整備に関する費用負担として開発利益還元というものは考えられてはおらず、前述の考え方に近い自治体負担を行っているにすぎません。「国や沿線地方自治体が鉄道事業者に対し適切な財政支援措置を行う」という規定がありますが、ここには「開発利益の還元」は考えられていません。

 これは東急が行った多摩田園都市においても同様であり、東急電鉄は周辺地域の区画整理の中で、用地を先行買収して集約換地を行い事業スペースを生み出したにすぎず、自社内でそれを行うことで実質的な利益還元を行っているにすぎず、地元地権者からの還元は都市基盤整備への減歩としてしか行われていません。

 開発利益の受益者を限定するのも困難である上に、受益者からの負担をどのような形で行うのか、また、その受益者は場合によっては騒音や振動などの被害を受ける可能性も否定できない以上、単純に「開発利益の受益者負担として不労所得を得た地主に負担させる」とはできないと考えますが。

 批判的な意見ですが。ではでは

いちおうの筋道
 投稿者---和寒氏(2003/06/28 16:23:18) http://www.geocities.jp/history_of_rail/

 樫通様、レスありがとうございます。

★この部分は小生にとって不明です。減価償却を引当金とみなす考え方に立脚している(この考え方にも小生としては異論があるのですが)のですが、

→この指摘については、減価償却費にかかる一般的解釈とは異なる見方を呈示している以上、甘受いたします。

 現在の損益計算書に減価償却費が乗っている代わりに、営業開始初年度(資産計上初年度)の損益計算書の費用として建設費が全額計上されているわけでは無いわけです。借金の利息返済が重いことは確かですが、二重投資とは違うと考えます。

→まず、減価償却費が仮想的費用項目である点に異論はないと思います。
 損益計算書には資産に関する記述がなく、金銭収支のみが記されています。少なくとも鉄道統計年報においては、まず減価償却費を含む営業収支が記され、次いで債務償還を含む営業外収支が記され、さらにいくつか段階を経て経常損益、繰越損益が記されます。
 当該記事が損益計算書をもとにした「累積赤字」即ち繰越損益をとりあげているならば(減価償却費負担に言及している以上そうとしか解釈のしようがないが)、その「累積赤字」には仮想的費用項目たる減価償却費も含まれている、ということです。つまりこの「累積赤字」がゼロになった段階になった段階では、減価償却費相当額が手許キャッシュフローとして残る形となります。それは用語定義解釈の相違はともかくとして、実態としては引当金そのものでしょう。
 だから「累積赤字」ゼロ達成時には、簿価がゼロに限りなく近づいた、しかしまだまだ十年単位で利用可能な線路と、その線路資産を再構築可能な手許キャッシュとしての減価償却費相当額という、二つの「財産」が残るわけです。
 この解釈に誤りがあるでしょうか。自分では間違っていないつもりですが、もし間違いがあれば是非御教示を願いたいです(財務の専門ではないもので正直なところ確信がありません)。

 なお当該記事が貸借対照表の欠損金を指して「累積赤字」としているならば、私の論はただの言いがかりにすぎなくなります。ただしその場合、債務償還と減価償却費の負担がダブルでかかる、という経済専門紙らしからぬミスリードがある、との批判は免れないでしょう。

Re:いちおうの筋道
 投稿者---樫通氏(2003/06/29 13:23:15)

★小生も専門家ではないのですが、とりあえず小生の理解を。

→まず、減価償却費が仮想的費用項目である点に異論はないと思います。
 損益計算書には資産に関する記述がなく、金銭収支のみが記されています。少なくとも鉄道統計年報においては、まず減価償却費を含む営業収支が記され、次いで債務償還を含む営業外収支が記され、さらにいくつか段階を経て経常損益、繰越損益が記されます。
 当該記事が損益計算書をもとにした「累積赤字」即ち繰越損益をとりあげているならば(減価償却費負担に言及している以上そうとしか解釈のしようがないが)、その「累積赤字」には仮想的費用項目たる減価償却費も含まれている、ということです。

★以上については異論ありません。

 つまりこの「累積赤字」がゼロになった段階になった段階では、減価償却費相当額が手許キャッシュフローとして残る形となります。それは用語定義解釈の相違はともかくとして、実態としては引当金そのものでしょう。

★損益計算書の上では元本返済が表示されません。借金で建設したのであれば損益計算書上では費用にされている減価償却費、仰せの通り仮想的なものですからキャッシュアウトは無いですが、無茶苦茶儲かる事業形態でもない限り通常であれば元本返済に充当されます。

 だから「累積赤字」ゼロ達成時には、簿価がゼロに限りなく近づいた、しかしまだまだ十年単位で利用可能な線路と、その線路資産を再構築可能な手許キャッシュとしての減価償却費相当額という、二つの「財産」が残るわけです。

★Webで見れるH13年決算を見る限りでは、横浜地下鉄だと現在4号線を建設している事もあるせいで借金は増え続けており、営業活動からは利息のうち一部しか返済できない状況のようです。そう言う状況ではたとえ累損が解消されても線路しか残らないと言えると思いますし、減価償却を引当金と解釈したとしても既に引当残高をゼロまで使い果たしている状況と言えます。

 なお当該記事が貸借対照表の欠損金を指して「累積赤字」としているならば、私の論はただの言いがかりにすぎなくなります。ただしその場合、債務償還と減価償却費の負担がダブルでかかる、という経済専門紙らしからぬミスリードがある、との批判は免れないでしょう。

★専門用語の理解は小生も不足しているのですが、経済専門紙とはいえ小生みたいな読者に対しても分かりやすく書く、という観点からはそんなに問題ないのかなとも思います。というのは、減価償却費負担は既に営業中の建設費用の元本返済、債務償還負担は4号線建設費用に加えて過去の経常赤字時代の利息分返済の為に発行した公社債(地方債?)の返済に相当すると考えれば、ほぼそんなもんだろう、と言えるからです。

★当該記事の総評ですが、Webで見られる13年の数字で283億の乗車料収入に対して191億の利息支払(ほとんどそのせいで163億の赤字)ということでは、「民間では考えられない投資計画」であることは確かです。個人的には4号線と別勘定にした決算を見てみたいですけど。

筋道補足
 投稿者---和寒氏(2003/06/30 13:01:17) http://www.geocities.jp/history_of_rail/

 樫通様、対論して頂きまして、ありがとうございます。
 おかげで私の「自分の主張点」の整理がついてきました。冒頭の意見では、粗いとまではいわないまでも、相当端折った表現になっていたと反省しています。

★専門用語の理解は小生も不足しているのですが、経済専門紙とはいえ小生みたいな読者に対しても分かりやすく書く、という観点からはそんなに問題ないのかなとも思います。というのは、減価償却費負担は既に営業中の建設費用の元本返済、債務償還負担は4号線建設費用に加えて過去の経常赤字時代の利息分返済の為に発行した公社債(地方債?)の返済に相当すると考えれば、ほぼそんなもんだろう、と言えるからです。

★Webで見れるH13年決算を見る限りでは、横浜地下鉄だと現在4号線を建設している事もあるせいで借金は増え続けており、営業活動からは利息のうち一部しか返済できない状況のようです。そう言う状況ではたとえ累損が解消されても線路しか残らないと言えると思いますし、減価償却を引当金と解釈したとしても既に引当残高をゼロまで使い果たしている状況と言えます。

→勿論「現時点」であれば、当然そのようになりましょう。キャッシュフローにいささかなりとも余裕があるならば、債務返済に充てるのが常識であると、私も思います。ただ、論点にしたいのは「現時点」ではなく、将来の見通しに置きたいのです。
 損益計算書の繰越損益をベースとする限り、「繰越損失<減価償却費累計額となった時点」でキャッシュフローが正となり、「累積赤字ゼロになった時点」では減価償却費累計額相当のキャッシュフローが手許にあるか、あるいはそれを上限として新規の借金をすることなく設備投資(更新投資を含む)ができることになります。
 私が感じているのは、当該記事が損益計算書の繰越損失を「累積赤字」とみなしているならば(それ以外解釈のしようがないが)、それは上記の点を措いているネガティブ・キャンペーンではないか、という疑いです。ただし繰り返しながら、貸借対照表ベースの欠損金=累積赤字であるならば、私の疑いは言いがかりにすぎません。

事業の評価方法
 投稿者---エル・アルコン氏(2003/06/30 16:52:41) http://6408.teacup.com/narashinohara/bbs

 この話は、財務諸表の要諦でもありややこしいです。
 まあ「損益」が必ずしも「お金のあるなし」を指さない、いわゆる「勘定合って銭足らず」といった事態に代表される面が、字面から来るイメージと現実の間に隙間を生んでいますし、鉄道のみならず昨今話題の道路公団等民営化の問題でも同じような問題が見え隠れしています。

●減価償却について
 減価償却費=元本返済というわけではないですよね。無借金経営の企業なら、手金で償却資産購入代金を支払い、減価償却費見合いのキャッシュは手許に残ります。
 ややこしいのは償却資産購入の原資は借入であり、内部資金であり、出資金であること。つまり、減価償却費全体が借入金返済にあたるとは限らない。一方で借金で土地という償却しない資産を買えば、減価償却費以上の返済原資を稼がないといけないという面もあります(評価額の差異による損益計上があるが)。

 積み立てと見る見方にはどうしても違和感がありますが、借入金と両建てで評価するのであれば、返済に回る分以上は積み立てとも見えないこともないです。もちろん実際には新規設備投資の原資になったり、外部負債の圧縮に回ったりということで、現預金で残ることはありませんが。

●繰越損失と欠損金
 貸借対照表の欠損金ですが、これは「当期未処理損失」と「任意積立金」のネットになります。
 「当期未処理損失」は、「前期未処理損失」から総会で承認された損失処理案に基づき決定した「次期繰越損失」が出発点となります。これに「損益計算書」の「当期純損失」を加え、「当期未処理損失」になります。
 ですからこの両者は「損益ベース」という共通の根っ子を持っているわけです。

●企業会計は万能か
 だからといって損益計算書は不要とかいう単純な議論は当然できませんし、減価償却費にしても償却資産の「減価」分は稼いでいるかというような指針になるわけで、利益配当などの基準としては有効です。
 また債務超過云々を喧伝する傾向もありますが、貸借対照表での価値がどう変わっても電車の運行に変化があるわけでもないですし、償却したら線路が単線になったり車両が減るのであれば問題ですが、総いうことはありません。つまり、資産価値を企業会計で把握する必要はどこまであるのか、という問題もあります。

 ただ、公営交通の場合、それが独立採算の特別会計であったとしても、その事業で「利益を計上して」「配当する」というのが目的でないわけです。一方で、独立採算である以上、それへの投資を回収することを求められているわけで、何らかの基準と評価は必要です。
 道路公団で見られるように、何がなんでも民営化したいという向きにとっては、利益配当に直結する企業会計での評価は必須なんでしょうが。

●妥当な評価は
 今のところ妥当ではと思われるのは、結局キャッシュフロー計算書での評価でしょう。
 いわゆる間接法による計算は、税引前当期利益からスタートして、減価償却費などの非キャッシュ項目を調整し、利息の受払である金融収支をいったん戻して、狭義の「営業活動によるキャッシュフロー」のうち「営業損益」に対応する部分を求めます。そして金融収支と法人税を加算して「営業活動によるキャッシュフロー」を求め、設備投資や証券投資などの「投資活動によるキャッシュフロー」、さらには借入金の増減などの「財務活動によるキャッシュフロー」と進み、現金および現金等価物の残高に至ります(不渡りを出さない限りここは必ず期末の現金等残高としてプラスになります)。

 狭義の「営業活動によるキャッシュフロー」の段階で、金融収支である支払利息を賄える収入が残っているのか、そして「財務活動によるキャッシュフロー」での返済原資はあるのか。賄いきれずに調達しているとしたら、償還資金なのか、赤字運転資金なのか、という評価が可能です。
 樫通さんも指摘していますが、「283億の乗車料収入に対して191億の利息支払(ほとんどそのせいで163億の赤字)」という事象も、後述のように損益と現金では微妙な違いがありますが同一と見なした場合、狭義の営業活動によるキャッシュフローが28億しかなく、191億の利息を払ったら▲163億、というように評価が可能ですし、下に利息191億という支出項目があるのに28億しかキャッシュがないという異常性も一目瞭然です。

 もちろん支払、収入の時期に関わらず期間按分する損益と異なり、現金ベースで計上するので、最初の支払が翌4月というような場合、期末は見た目資金があるという錯覚が生じますので難しいのですが、このあたりは損益ベースの良さとの良いところ取りが出来ないものなのか、考えたい部分です。

自分なりのサマライズ
 投稿者---和寒氏(2003/07/05 08:33:07) http://www.geocities.jp/history_of_rail/

■反省
 正直なところ、貸借対照表の欠損金は現金ベースのものとまったく誤解しており、損益計算書と連動しているとは考えていませんでした。自分の無知無学を恥じるばかりです。

■論点にしたくない点
 まず樫通様から御指摘のあった、所得価格=資産価格なのか、という問いかけは、実は論点にはしたくない点です。私自身、「資産価格は常に取得価額と等しい」とは考えておりません。
 ただ、その資産を構築するために、莫大な初期投資(=取得価格)を必要とし、この初期投資の大部分は借金により調達され、長期間に渡り償還していかなければならない、という事実があることには、留意する必要があると考えています。
 また、私は横浜市交通局の財政が健全だとするつもりはありません。償却前営業利益よりも償還負担が大きいようでは、まさに雪ダルマ式の財政状態にあるといえるからです。

■それでも当該記事は腑に落ちない
 のはネガティブ・イメージに満ちているからです。
 債務の償還期間が長いことを訴求する一方で、「累積赤字解消時」には、まだ充分に使える線路、及び減価償却費累計額相当の手許キャッシュ(あるいは新規の債務によらない設備投資が可能になる)という二つの「財産」が残るという点に対する考察がないのは不満です。さらにいえば、キャッシュフローベースでいえば、もっと早い年次で「累積赤字解消」するというのに、その点に関する言及もありません。(ただしこれを言うためには本当に39年後までに累積赤字が解消するという大前提が要りますが)
 横浜市交通局が現下健全ならざる財政状況とはいっても、それで全国の「“自治体鉄道”経営厳しく」(当該記事表題)と代表してしまうのは、引っ張りすぎでしょう。
 いくら債務額が大きくとも、償還負担に耐えられるだけの営業利益(償却前のキャッシュベース)が出ていれば当座の問題はありませんし、そうではない「雪ダルマ」状態であればスキームの見直しが必要なのでしょう。
 繰り返しになりますが、当該記事から伝わってくる(あるいは惹起しようとしている)のは、公共事業(公営企業運営)に対する不安や不信だけにしか見えません。空気輸送の閑散路線ならばともかく、どの路線にも相応の需要があるはずです。社会的に必要な都市基盤として認められる路線には、安定的に成立させる手法を編み出すのが社会の知恵というものでしょう。そして、そのような手法を提言することが、日本で最も経済に通じているメディアの責務といえるのではないでしょうか。

横浜市営地下鉄の女性専用車アンケートを巡る疑惑
 投稿者---エル・アルコン氏(2003/07/01 11:11:57)
 
 http://6408.teacup.com/narashinohara/bbs

横浜市営地下鉄の女性専用車アンケートを巡る疑惑
└「限りなく“クロ”に近いグレー」ではありますが

 横浜市営地下鉄で3月から「試験導入」されている女性専用車(6両編成中の1両。平日始発から9時まで)につき、この6月末で試験期間満了でしたが、7月1日以降正式に導入することになりました。

 交通局ではアンケートを募集して、本格導入の是非を図っていました。方法としてはインターネットや備え付けのアンケート用紙による調査であり、それ自体は特段変わった事はありません。

http://www.city.yokohama.jp/me/koutuu/info/oshirase/kisha/pdf/20030627_02.pdf

***
 ところが、この決定を伝えた報道を見ると、奇怪な経緯を辿ったことが見えてきました。


 市交通局が試行期間中に駅やインターネットなどで行ったアンケートには10395人が回答。評価は賛成48%、反対47%と半々だった。男女別では女性の反対が27%に対し男性は75%を占める。反対理由としては30%が「他の車両が混雑する」を挙げた。
 同局によると、朝の混雑率は、4号車(132%)とその他の車両(147%)では大差はないという。また、地下鉄利用者を対象として各駅で新たに行った対面調査(男女640人ずつの計1280人が回答)では70%(女性81%、男性60%)が賛成したとしている。「専用車両が他車両の混雑を招いている構図はなく直接、地下鉄を利用している人たちの支持率も高い」(同局)と判断し本格導入に踏み切るという。

(文中漢数字および全角算用数字を半角算用数字に変更)
神奈川 
http://www.kanagawa-np.co.jp/news/nw03062863.html

 当初のアンケートでは賛否真っ二つであり、すんなり継続というには無理がある結果です。ところが、交通局では1280人を対象とした対面調査を期限が近い6月中旬に行って、そこで70%の支持があるとして、正式導入を決めています。この対面調査が「屋上屋」程度ならまだしも、ここまで露骨なやり方を見ると、当初のアンケートで市側の意向に沿わない結果が出たので慌てて別手段でのアンケートを試みたと見ることは、子供でもわかるような話です。

 この集計が当初アンケート+対面調査ならわかりますが、それでも賛成50%、反対43%という「僅差」です。さらに対面調査の手法についても疑義があり、男女同数の1280人への調査とのことですが、一見公平そうに見えて、当該時間帯の利用者男女比率が半々でなければ、実は不公平な調査です。また調査対象人数も各駅の利用者数に比例して割り振らないといけませんが、全32駅で合計1280人という数字からは、各駅40人で割りきれるだけに、全体の利用者数との整合も無い可能性が高いです。
 また、導入側の交通局職員に対して反対を述べる抵抗感もありますし、「お客様に、より安心してご利用いただけるよう、車内における痴漢等による迷惑行為の防止策として」と謳うことへの反対も面と向かっては言いづらい懸念もあります。

***
 この「再調査」についてはきな臭い報道もあります。


 同局が20日に締め切ったアンケート調査では、約1万件の回答のうち「賛成」が48%、「反対」が47%と拮抗(きっこう)。ところがインターネット上の匿名掲示板「2ちゃんねる」で「反対」の組織票を呼びかける書き込みが複数見つかったことなどから、改めて約1300人に対面調査した。

 その結果、「賛成」70%、「反対」11%だったことから、本格的導入が決まった。同局は「女性への迷惑行為を防止して安心して乗っていただけるよう理解してほしい」としている。

(文中漢数字および全角算用数字を半角算用数字に変更)
産経・神奈川県版 http://www.sankei.co.jp/edit/kenban/kanagawa/030628/kiji02.html

 「組織票」対応といえば聞こえは良いですが、結局は1万件のアンケートを葬り去り、「改めて」調査したと言うことです。
 とかく噂のあるネット掲示板を挙げてもっともらしく見せていますが、意中に沿わないから問い直すというのは「民主主義」の完全否定です。そもそも、政党その他を挙げるまでも無く、ある程度の「組織票」は民主主義の産物でもあり、特に横浜市議会も当然採用している議会制民主主義は「組織票」があって初めて成立するシステムです。

 今回、横浜市という行政が、極めて恣意的なアンケート調査を行い、制度を決定したということは、当初目的であった女性専用車の賛否を超越した、国民主権の根幹に関わる重大事とも言えます。
 もちろん、そうまでしなければ導入の大義が立たない女性専用車の導入についても、取り得る手段を尽くした果てといった「導入の必然性」を示して、利用者の理解を得られない限り無理といえます。

「限りなく“クロ”に近いグレー」ではありますが
 投稿者---551planning(2003/07/02 11:06:50)

  この問題、5月末に中間発表がされており賛否が拮抗、その時点でニュースにもなっていました。

中間発表 http://www.city.yokohama.jp/me/koutuu/info/oshirase/kisha/20030530_01.html
最終結果 
http://www.city.yokohama.jp/me/koutuu/info/oshirase/kisha/20030627_01.html

 もともと6月末までのアンケート期間が『集計の都合上』6/20で打ち切られ、『アンケート調査で賛否が拮抗しており、より慎重にお客様の声をお聞きするため』行われた対面調査で、『調査項目は従来のアンケートと同一と』した結果、賛成が7割になる(女性8割、男性6割)というのもなんだかなぁという気は確かにします。
 さらに、2chの複数の関連スレッドを斜め読みした中では、反対票を投じるような恣意的な表現は(無きにしも非ずなのは事実だが)然程見られず、むしろ賛否両論のやり取りの中でアンケートへの参加を積極的に呼びかけているという宣伝的役割すら負っていたと感じられました。その意味においては非利用者による意見反映が強くなったのではないかという疑問は感じる一方で、当該アンケートがいたって民主的なプロセス?に拠っていたのではと思います。

 「組織票」対応といえば聞こえは良いですが、結局は1万件のアンケートを葬り去り、「改めて」調査したと言うことです。
 とかく噂のあるネット掲示板を挙げてもっともらしく見せていますが、意中に沿わないから問い直すというのは「民主主義」の完全否定です。
 今回、横浜市という行政が、極めて恣意的なアンケート調査を行い、制度を決定したということは、当初目的であった女性専用車の賛否を超越した、国民主権の根幹に関わる重大事とも言えます。
 もちろん、そうまでしなければ導入の大義が立たない女性専用車の導入についても、取り得る手段を尽くした果てといった「導入の必然性」を示して、利用者の理解を得られない限り無理といえます。

 アンケート調査については各所で実施されているところであり、概ね導入については理解ある結果が出ているものと感じていますが、今回はネットで広く意見を求めたが故に一種の世論調査的性格を帯びてしまったというところでしょうか。その限りにおいて「導入には理解前提」という意見の存在は理解します。
 今回の場合、ちょうど2年も1軍実績のない選手がトップで選出されてしまうプロ野球のオールスターファン投票のような事態もあったが(そう見られてしまう2chもなんともはやなところがあるが…)ゆえに、横浜市の対応は後手後手に映ってしまったのは否めません。ただ利用者を対象とした対面調査でも反対意見は出ていることから、確かに手法としては疑念の残るところではあるものの、一概に恣意的なものと言い切ることもできないかと考えます。ゆえに導入に踏み切った判断は是認されるべきではないでしょうか。

 率直な意見として、当方は通勤通学時の女性専用車両の導入の是非について、痴漢をはじめとした迷惑行為問題が今なお存在するにおいては、緊急避難的措置としてあるべきと考えますし、ゆえにその運用は限定的であるべきと考えます。その意味では以前エル・アルコン様他の方々より御紹介頂いた、終日実施している神戸市営地下鉄の例などには引っ掛かりを覚えるものですが、『取り得る手段を尽くした果てといった「導入の必然性」を示して、利用者の理解を得られない限り無理』とはいささか飛躍の懸念を感じます。ただし、この「準世論調査」を横浜市および鉄道事業者、ひいては方向性に理解し支援していると思われる国土交通省が、どのように受け止めているのか…すなわち「犯罪撲滅への一過程」なのか「(女性)利用者サービス」なのかを明確に示す時が来ているのではないかと思われます。

「女性専用車両」ブームへの疑問 log100.html

2004.11.02 Update


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