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(過去ログNo.)

輸送事情の変化とダイヤ改正

投稿者---551planning(99/07/05(月) 23:14)

この夏、関東大手私鉄2社でエポックメーキングなダイヤ改正が行われる。
小田急電鉄(07/17)・京浜急行電鉄(07/31)で、実施前から利用者・趣味人の間で話題となっており、両社の施策の行方が大いに注目される。

小田急では将来の複々線化を見据えた着実な輸送力増強を行ってきた。最近では急行の強化(小田原線系統と江ノ島線系統の運行分離・10連化)が一段落したこともあり、今回は小田急にとって社の『聖域』とも言うべき特急に手を加えることとなったのである。
【ロマンスカー】=【箱根】という認知度は高く、それがある種小田急のステータスになっていることは否定できない。しかし、やはりというべきか近年の社会経済環境を反映してか、観光客需要が減って代わりに通勤通学・買物需要が目立ち始めた。「普段着で乗る」ものとしての認知が沿線でなされてきたといっていい。oer
車両面では10000系HiSEまでの従来の前面展望重視・連接構造形態を見直し、あさぎり用20000系RSEをはさんで30000系EXEで20m大型車10連へと単体輸送力増強がなされた。普通車分併の実績を特急でも…との6+4連としたことも運用面の柔軟性をうかがわせる。
今改正ではそんなEXEの特徴を通勤通学需要で大きく引き出そうというもの。夕方以降新宿発列車の多くに充当され、列車名も「ホームウェイ」に。また、昼間時の多停車駅型特急「あしがら」「さがみ」を「サポート」に改称(その他「(スーパー)はこね」「あさぎり」「えのしま」は存置)、近距離利用客掘り起こしのため特急料金を改定し、一部値下げとなった。改札方式も従来の乗車口検札から列車内車掌検札となり、乗車口制限も無くなる。まさしく≪普段着列車≫となるといっていい。

ステータスの高い特急列車の「開放化」は、東武【スぺーシア】の春日部停車にも見られるように、個人的にこの流れは致し方なしと考える。むしろ沿線利用者の利便性向上策として評価すべきものと考える。ただ「ホームウェイ」はライナー的印象を与えるものとして納得できる(一般公募された名称でもある)ものだが、「サポート」は…。「はこね」の「スーパー」化でも安直では?との議論があったように記憶しているが、沿線地域を示す「あしがら」「さがみ」に、今更ながらなぜか妙な愛着心を感じてしまうのだが…。

特急列車再編が大きな目玉になっている今改正ではあるが、個人的に大いに気になる施策は【最終列車時刻繰上げ】である。最終経堂行こそそのままだが、それ以前に発車する以遠3駅行きの最終列車に関しては3分程度の時刻繰上げとなるものだ。

小田急では複々線区間工事夜間作業時間の確保という理由もあるとしているが、これまた近年の社会経済環境を反映するものとの見方もされている。バブル時に世論の後押し(というかマスコミの煽りか)で各社軒並み終列車の繰下げが行われたが、現状の利用率はピーク時より概ね低下しているという。トータル面で見ての輸送効率化を追求するならば、保線作業に惜しみなく…という理解ができよう。さりとて一度繰り下げたものを元に戻すのはなかなかに難しい。他社の注目が集まる施策といえそうだ。

私的には、終列車繰上げはともかく、夜間の輸送効率化を大いに図ってもらいたいところだ。小田急がどのような状況かは無知で恐縮だが、優等列車増発が図れるのであれば、スシ詰めとまでは言わないものの、長距離の立ちっぱなし帰宅は辛いもの。要は「座りたければ割増料金を」とのことなのだが、一般列車の充実もお願いしたいところである。ま、結論を言えばなんといっても複々線区間の早期全線開通なのである。特に訴訟にもなっている下北沢地域は…。

***
一方京急は、列車種別自体の再編成という大鉈を振るうこととなった。

従来整理券方式完全着席列車である【京急ウイング号】(夕ラッシュ時下り・品川~上大岡ノンストップ、以南快特停車駅・乗降自由)を筆頭に、快速特急・通勤快特(朝ラッシュ時上り)・特急・急行・普通と続いていた。さらに羽田空港乗入に伴いエアポート快特・同特急が新設され、実に8種類もの種別を抱えている。
京急だけの種別である【快特】は、都営線直通開始時に停車駅が増えてきた特急に成り代わって線内最高速列車たる位置付けをされたものであり、現在なおその名に恥じない走りをしているといって良い。かたや急行は快特・特急のサポート役で、朝夕ラッシュ時・沿線催事などで臨時停車と称して停車駅が増える。フレキシビリティありといえばそれまでだが、実際あんまり速くない。エアポート特急も快特退避があるなど、全般に何が速くて何に乗れば効率的に目的地に着けるのかという点が「いちげんさん」には非常に分かりづらくなっていたのである。

近時の改正では徐々に急行の縮小傾向にあったのだが、今改正に至り、特急にまでメスが入るようになった。京急蒲田以南の急行(いわゆる「逗子急行」)の全廃・昼間時都営線直通本線特急の快特化が大きな柱である。従前の特急・急行停車駅の利便性確保は普通車のほぼ倍増(京急川崎―金沢文庫間)で賄うとしている。これにより、昼間時下り品川駅基準で言えば、特急と快特の発着にずれがあって、快特のほうが込み合う状態から均等に旅客を誘導できる利点が生じる。朝ラッシュ時上りでも急行の廃止(羽田急行は存置されるので縮小ということになる)による特急・快特(通勤快特の名称は廃止)の均等化をもくろんでいる。結果、本線系統種別で言えばラッシュ時は3種、昼間時等は2種に整理統合されることになり、一見すっきりすることになるといえよう。

個人的には逗子線直通列車の動向が気になる。従前の「逗子急行」漸減化のため逗子線の利便性低下が利用者等から指摘されてきた。今改正では「逗子急行」全廃の代わりか平日朝ラッシュ時の新逗子発特急の設定や、品川発12連快特の文庫切り離し4連の新逗子直通化などが盛り込まれている。

問題点もある。やはり従来特急・急行停車駅利用者にすると乗り継ぎが必要となることから利便性低下は否めない。快特の堀ノ内以南の各停化で品川・横浜対久里浜以遠の速達性も若干低下する(裏を返せば横須賀市南部からの利便性は向上するが)。また、都営浅草線では呼称種別が1つ増えることになるわけで、ややこしさが増す。エアポート特急はエアポート快特に統一されるものの、浅草線内各駅停車列車の昼間時直通本線快特と羽田特急も入り混じることになるからだ。結局立会川停車しか変わらない羽田急行が存置された理由も不明だ(おそらく平和島退避の存置を特急ではできなかったということなのだろうが)。長期的に見ると「急行」名称廃止による「快速特急」たる呼称そのものの方向性も議論されるだろう。その意味では都営線を介した京成との種別統一化も図られて良い頃だと考える。

種別に関しては対称的な会社として西武鉄道が挙げられよう。千鳥式運行方法の導入で、朝ラッシュ時を中心に実に多彩な種別を抱えるに至っている。関西地域や東武鉄道に見られる「区間○○」も多種別化に一役買っている。これらの会社に共通するものは、ターミナルからの対距離圏の到達時間の均等化という命題がある。すなわち各種列車の対応区間を明確化することでそれぞれへ至る時間の平均化を図るねらいがある。京急の場合京浜間はもちろん、対横須賀方面における都市間輸送的役割を担っていることもあり、それぞれの拠点間輸送を重視した緩急分離的運行形態の先鋭化が目立つ会社でもある。その意味で今改正はさらなる分離を明確化した大いなる実験といえそうだ。逆にいえば、本線利用の頭打ちと羽田空港輸送の好調という大きな需要流動の変化がこの考えに拍車をかけたともいえよう。

鉄道各社、特に大手私鉄はバブルに踊った付帯事業との協調路線から本業回帰・強化の流れにある。さらには社会経済情勢の変化による輸送サービス需要への発想力の転換による対応が求められている。2社はそれぞれ趣が違うものの、どんな輸送サービスを提供すべきかの答を見つけようとしているといって良いだろう。そんな2社に求めたい視点は、実際の利用者の意見汲上による即応的な改善体制の確立だ。それだけの責任のある改正を行うんだということを忘れて欲しくは無いものである。
とりあえず…様子を見守ってみたい。

京急ダイヤに付いて

投稿者---brother-t氏(99/07/07(水) 00:50)

ご無沙汰してます。brother-tです。今回は私の地元京急のダイヤに付いて書きたいと思います。

快特の堀ノ内以南の各停化で品川・横浜対久里浜以遠の速達性も若干低下する(裏を返せば横須賀市南部からの利便性は向上するが)。

とのことですが、これに関して1つだけ言えることがあります。
それは、この改正で実際に所要時間が延びるのが多分久里浜だけだということです。なぜかと言うと久里浜以降が単線で久里浜での待ち合わせ時間があるためです。

今改正では「逗子急行」全廃の代わりか平日朝ラッシュ時の新逗子発特急の設定や、品川発12連快特の文庫切り離し4連の新逗子直通化などが盛り込まれている。

これに関しては知りませんでした。ただ昼間に関しては、各駅停車より、新逗子発の特急を快特に先行させたほうがいいと思います。それは今でも混んでる快特がこれ以上混むと考えられるのと逗子発の普通は快特と接続するのが上大岡になって所要時間が延びるからである。

Re:京急ダイヤに付いて

投稿者---551planning(99/07/09(金) 07:02)

brother-t様、こちらこそ御無沙汰しております。

この改正で実際に所要時間が延びるのが多分久里浜だけだということです。なぜかと言うと久里浜以降が単線で久里浜での待ち合わせ時間があるためです。

そうでしたそうでした、沿線住民にとってこの問題は切実ですね。
ま、都営浅草線通勤利用者にとっても切実だったりします…(それは置いておいて…)。

快特ではないですが、発表されているウイング号の所要時間から見るに京急久里浜基準で最大7分もの延着化が予想されます。快特に関してもこれは同じでしょう。確かに久里浜以南の単線区間がこれまで(今後も)ネックであることは否めず、今改正で現特急の速達化が予想される分時短もありえますが、それに勝る3駅停車分の延着化が考えられましょう。

今改正の最大の利点として京急が強調するのは快特10分間隔(均等)化による乗車効率の均等化です。確かに金沢文庫での上り方面は追浜・八景といった現特急停車駅利用者や逗子線旅客による乗換混雑が予想されます。
しかし利用効率は普通5分間隔とあいまって均等分散化されるはずであり、逗子線・文庫・上大岡旅客のための特急(恐らく新町止りC特のようなイメージを持たれていらっしゃるのでしょうか?)はまだ時期尚早ではないでしょうか。まあ、本論でも書いた通り、利用者の意見汲上のよる即応的対応が求められることしきりです。

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「私鉄経営」の崩壊と再生

投稿者---551planning(99/09/01(水) 23:05)

週刊東洋経済誌今週号(9/4特大号)裏面掲載の、編集者による連載コラム「風」で、「京浜急行のダイヤ“改悪”」として、下記要旨が紹介されている。

京浜急行の運行ダイヤが7月末に変更されたが、筆者が住むO駅の近くの団地では、主婦や高齢者が新ダイヤについて「改悪だ」と怒っている。
O駅はそれまで特急停車駅だったが、昼間時に快速特急に格上げされたため、横浜や都心へは乗換を伴うようになったため、不便だというものだ。
すべての利用者が満足するようなダイヤ変更というのは難しいかもしれないが、こと特急停車駅だった利用者にとっては迷惑な話だ。
「O駅の近くの自動車工場がいずれ閉鎖になるのを見越して」「駅周辺団地は京急系デベロッパー開発でないから」「リストラの一環では」…主婦たちの憶測が乱れ飛ぶ。
と、一人のオバサン。「会長は鎌倉に、6月までの常務以上の半数は非沿線居住者。日常生活で使っていない経営者たちが決めたダイヤだからおかしいものになるのよ」
少々牽強附会の感はあるが、周囲の主婦たちはこれを聞いて納得顔だ。このオバサンは頭に来て京急株を売ってしまった。主婦たちを敵に回すとコワイですぞ。(軽Q)

当【検証:近未来交通地図】でも以前御紹介しているが、その際【大いなる実験】と評した京急の今改正に関しては予想通りというかさまざまな波紋を呼んでいる。これについては改めて検証するとして、今回のテーマはちょっと視点が違う。

このオバサンは頭に来て京急株を売ってしまった。

元来私鉄経営は、阪急の小林一三を祖とするとされる、利用者還元主義というか、鉄道を軸に住居を、小売業態やレジャー・文化産業、ホテル事業など、利用者にさまざまな付帯事業を提供しつつ、利益そのものを循環させることで総体的利潤構造を生み出すというものであった。その意味で沿線居住者を中心とする利用者は御客様であり応援団たる存在として位置付けされ、私鉄経営を根底から支えてもらうべく、株式保持者にさまざまな特典を提供することで沿線利用者の株式取得を勧めていった経過がある。得点として知られるのが鉄道やバスの優待乗車制度や各種付帯事業の優待利用権などである。さらには1株あたりに5円程度と固定する安定配当金政策という暗黙の了解がとられている。こうした利用者「還元」施策が好奏してか、私鉄株というのは個人保有比率および継続的保有比率が意外と高く、経営の下支えとなってきた。件の「オバサマ」もこのクチであろう。現に京急の株主総会をたまたま覗く機会を得たが、意外と「オバサマ」が多く、穿った見方だが目当ては当日の御土産であるホテルのケーキだったりするようにも見うけられた。
しかし現状はそんな安定経営をも脅かす時代に入っている。多摩田園都市という広大な土地保有というバックボーンの中に結実させた、文字通り私鉄経営の完成形を創造した東急グループでさえももがき苦しんでいる現状は御存知の通りであろう。バブル期に多くの私鉄が踊った付帯事業の「暴走」のつけが重くのしかかってきているのである。その中での市場からの資金調達も次第に重いテーマになりつつあるのだ。かつては手堅い株価を持っていた私鉄であるが今となっては昔日の影すらない。さらに東急だけでなく、多くの私鉄の格付けが降格されている。しかしながら各社リストラの過程は不透明で、機関投資家からの評価は微妙になりつつある。頼みの綱の「安定収入源」であったはずの鉄道収入も、さまざまな要因で数年来前年割を続け、しかもラッシュ混雑緩和策たる複々線化等の大規模投資も継続しなければならないというネガティブスパイラルに陥りかけている。
私鉄経営のおいしいトコロをもっていったと揶揄されがちなJRではあるが、株式による市場からの資金調達に対する姿勢は明確だ。政府からの放出という特殊用件を考慮しても、利用者還元施策でない明らかに投資目的での購入に誘導しているし現に機関投資家のシフトが起こっている。最近ではとりわけ海外投資家への情報開示に積極的である。しかし私鉄は今なお車内に優待制度をウリとした利用者への株式取得勧誘広告を打っているのである。
安定配当施策は、バブル期までは浮いたおカネを他の設備投資や新規事業開拓への潤沢な資金投入を可能にする私鉄と、確実利回りの魅力ある投資対象とした利用者のバランスが取れていたものの、さまざまな穴埋めをしなければならなくなった現状では、ついに最後の砦にすら手をつけなくてはならなくなりつつある。現に東急ではリストラの進展による機関投資家へのリターンアピールをも兼ねて安定配当施策を今後止めようとの動きも見られるが、他社追随があるのかどうか注目する必要があろう。

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安定配当施策がなくなるとなると、最大の応援団であった沿線利用者への訴求力は著しく低下することが予想される。それを見越してか、最近各社では優待制度の大幅な拡充がなされていたりするが、今回の京急の例のように企業の政策が利用者個人に直接関わってくるものになるにつれ売却という直接行動に訴える個人投資家が増えるのは間違いなかろう。裏を返せば、それだけ私鉄経営そのものに投資家たちの注目が集まっているとも言えそうである。
私鉄経営は大幅な転換期を迎えようとしている。短期的な資金調達・経営維持を考えるのなら、機関投資家にどれだけの魅力が訴えられるのか、ある意味利用者の不平不満を押さえるだけの経営的な力を持つことが求められよう。とはいえ、誰が為の公共交通を軸とした企業連合体かという存在理由をももういちど見直して行く必要があろう。その意味では、利用者の意見の率直に耳を傾ける姿勢こそが肝要であることは言うまでもない。これまでの「私鉄経営」との決別、そして新たな私鉄経営の模索・確立が急がれるところであり、それをなした企業こそ、次世代のリーダーシップを担えるのではないだろうか…。

公共・公益企業の行動が利用者ではなく株主を向いている事は問題

投稿者---いのうえ まさし氏(99/09/02(木) 13:26)

JRの場合、エクイティファイナンスというより政府保有株を1円でも高く売るために機関投資家の覚えを目出度くする必要からああいう政策を取っているのだと思います。
基本的に「安定株主」がほとんどであれば、きちんと配当して株価が維持されていれば、キャピタルゲイン目的の投資家に良い顔をすることや、株価に一喜一憂、それも右肩上がりを期待する必要はないはずです。

JRの場合は利用者の利益よりも企業収益、すなわち株主への還元に軸足を置いていますが、国鉄債務返済という大目標はあるとはいえ、公共・公益企業の行動が利用者ではなく株主を向いている事は問題です。

ところで京急はバス車内で自社株購入のお誘いをしていますが、沿線住民や沿線企業といった利用者からの出資を仰ぐケースはどうでしょうか。
収益を上げないと株価の維持や配当もままならないので、おかしな施策には株主としてノーを突きつけたり、株式を売却することができます。
つまり利用者イコール株主に対して経営責任が発生するのであり、会社側の施策が利用者を向いたものになります。
一方利用者=株主も、エゴもろ出しの施策を会社に要求した場合、会社の利益確保とは程遠いような施策であれば、企業業績が悪化して、減配・無配といったところから、甚だしいケースでは会社破綻に伴い株主としての責任を問われる(持ち株の価値が無くなる)ため、会社の施策に無理が無いかチェックできる存在になります。

文句を言うのなら利用者株主として経営にコミットする。という形が公共交通には相応しいのかもしれません。


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