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“富士桜”の挑戦と挫折

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【検証:】過去ログ特撰-“富士桜”の挑戦と挫折

(過去ログNo.)

駅前広場は誰のもの

投稿者---エル・アルコン氏(2003/09/11 18:33:10)
http://6408.teacup.com/narashinohara/bbs

管理人さんのレポートに、福島-仙台間の新規参入高速バスが後発の悲哀か駅前広場に入らない、というくだりがあります。
この手の話はよく聞くわけで、新規参入会社の使用を拒んでいるとされるのが、先発組のバス会社だったり駅を管理する鉄道会社だったりとしますが、締め出されたほうに乗るために下手をしたらバス停1~2個分を歩かされる利用者にとってみると不便極まりない話です。
バスに限らずタクシーにしても、「構内営業」の鉄道会社の社章入りステッカーが貼られているなど、縄張りがありますね。

***
さて、こうした事態、言われて得心する反面、何の権限があって駅前広場からの「締め出し」「占有」が可能なんでしょうか。

駅前広場が鉄道会社の私有地、もしくはバス会社などの共有財産であれば分かります。我が国においては契約自由ですから、相手がだめだといって強引には入れません。しかし、そこが公有地であったらどうでしょうか。そこは「天下の往来」であり、道交法などの法令を遵守している限り、使用を制約される謂れはありませんし、ましてや営業許可を監督官庁でもないところから取る必要はないはずです。
昔からの駅であれば、鉄道会社が自前で整備しているケースが多いわけですが、最近では明らかに自治体が整備しているわけで、公費で特定法人の営業用資産を整備するというのもおかしな話です。  よくある光景として、需要がある路線が駅に入れず、路線権維持路線と揶揄される1日数本の路線バスがブースを占拠していることもあるわけで、なぜ整備した側が需要に応じた割り振りを出来ないのでしょうか。

バス会社間の鞘当てもさることながら、多くのケースで隣接しているタクシー乗り場と一般車乗降場の鞘当てもそうです。本来一般車が駐停車出来るはずのスペースをタクシーが占拠して、結果としてあふれた一般車が路上駐車で迷惑をかけるという光景もよく見ます。

最近各地で建設が進んでいる「バスの駅」事業ですが、国と自治体が負担して、国道など公道に面して作られています。
明らかに事業車が何の権限も有していないこういうケースで、新規参入業者がバスの駅のブースを使いたい、と言ってきたら使えるんでしょうか。

当たり前のように接している事例ですが、ふと、疑問を抱いたまでですが。

駅前広場

投稿者---和寒氏(2003/09/12 09:12:40)
http://www.geocities.jp/history_of_rail/

私もよく知らないので、疑問と問題提起にまっすぐ応えられる内容ではないかもしれませんが、世の中にはこういう研究もあるようで。

駅前広場の「仕切」はこれだけでは判然としませんが、半公有であり、かつ半鉄道会社有と読めそうです。だから鉄道会社の意向も相応に反映されるのというのはありえるのかなと。
中途半端で半可通な知識のままでものをいうのは危険なので、奥歯にものがはさまった表現をしつつ、こんな情報もあるというお知らせまでに。

Re:駅前広場

投稿者---THE-Q氏(2003/09/13 03:10:21)

特定事業者のバスが、バスプールに入れないのは、私も問題だと思う。
だけど、需要の少ない路線バス路線が需要の多い高速バス路線より優先されることは問題無いと思うよ。
特に、福島-仙台みたいに鉄道路線が並行している場所ではね。

ついでに言うと、福島-仙台間はJR東日本が各停を増発/スピードアップするだけで高速バスはほとんど淘汰されると思う・・・。

横レス:富士交通の例は…

投稿者---551planning(2003/09/12 00:32:22)

エル・アルコン様に引用のお気遣いを頂いて、恐らく本題のネタ出しをお忘れになられた?と思うので蛇足ながら…実は当方もこの記事を見て投稿せねばと思っていたところでもあります。

今年5月に公取委が既存3社(宮城交通・福島交通・JRバス東北 1999年より仙台-福島線、2000年より仙台-郡山線を共同運行)に対する異例の口頭注意にまで発展したのですが、その際の指摘事項が

  • 運賃対抗値下げ(富士交通の運賃にあわせる形で値下げ追随) =通謀による私的独占(独禁法第3条違反)
  • バスプール使用不同意(福島・郡山駅前プールに入れず) =競争者に対する取引妨害(同19条違反)

という抵触可能性だったというわけで、さらに国土交通省・東北運輸局に対してもいわゆる新規参入組との「調整」の必要性有無、すなわち停留所設置に対し共同運行化を促す形でのすり合わせについて否定的な指導したというところからもその厳格さがお判りになろうかと思います。
で、これを受ける形で従前既存3社の同意を必要としていたバスプール乗り入れが同意不要となり先ず福島で実現した、というものです。ただここまで4ヶ月近く掛かったというのも記憶に留めておきたいところではあります。

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公取委の「線引き明確化」が高速バス市場にもたらす影響

投稿者---551planning(2004/02/25 00:55:22)

昨年5月に、公取委が富士交通の福島駅バスプール乗り入れに際し、既存3社に対して注意喚起がなされた事は既に触れておりますが、その際に「規定の見直しを行う」とされていた点について、明確化が図られました。

カンタンに経緯をおさらいしておくと、まず1997年に規制緩和の一環として独占禁止法適用除外カルテル等制度の総括的な見直しが行われた際、道路運送法で定める適用除外を一定の共同経営(過疎路線ないし複数事業者による共通路線運行)に関する協定に限定するとされましたが、当時で一般化しつつあった高速バスの共同運行については、公取委が補足的に当時の制度・実態に基づき原則独禁法上問題としながらも、相互運行先での事業施設確保等の必要性などを鑑み、事業者が単独で参入しにくい場合においては問題とはならないという考え方を示しました。ただし実態に沿ってといえど曖昧であった事は否めません。

その後2002年2月に需給調整規定撤廃を柱とした改正道路運送法により、新規参入による競争状況に大きな変化が生じ、富士交通の事案となったわけですが、これは

  • 富士交通の運行開始前に既存3社が対抗的に運賃引き下げを行った事
  • 事業認可の際に事業者間で同一停留所(この場合福島駅バスプール)の調整をすることが求められている状況で既存3社より拒否等は無かったものの速やかに同意が得られなかったために 別途自前での停留所で認可を受けた事

について、独禁法に直ちに違反するものではないながらもその可能性を認めて注意喚起に至ったというものです。この際1997年の考え方で想定している状況と大きく変わったことを踏まえ、関係機関(国交省・日本バス協会)に対しても指摘等を行っています。

そして今回明確化されたのは、いわば緩和規定の線引きというべきもので、新規参入に対しては「錦の御旗」となるとともに、既存の高速バス共同運行スタイルにも少なからずの波紋を投げかけるものとも考えられます。「線引き」を挙げてみると、

  • 新規参入者への排除行為(バスプール使用に同意しないなど)等の独禁法抵触可能性の明示 (→日経記事ではこれをもって先の富士交通事案での既存3社の対応は今後「違法」になるとしている)
  • 共同運行の認容を「事業者が単独で参入しにくい場合」等とする原則の再確認(その状況の継続をもって問題なしとする)
  • 単独での運行が可能な場合に、その移行を不当に制限する行為等の独禁法抵触可能性の明示
  • 上記抵触可能性事例に該当する場合は独禁法の一般論に基づく判断になることと、その場合の運賃プール性の問題を確認的に記述

ということが具体的に記載されています。これを素直に読むと、単独運行可能との経営判断で既存グループからの離脱による新たな競争関係の発生も予測内にあると考えられるでしょう。無論そういった選択肢が取られるかどうかはかなり否定的ではあるものの、むしろ公取委の立場としてはそれを促すスタンスであるということと当方は理解した(解除条件ではなく限定条件である、とわざと法律用語で考えてみる)のですが…。

利用者不在の競争は規制と同じでは

投稿者---エル・アルコン氏(2004/02/25 20:51:27)
http://6408.teacup.com/narashinohara/bbs

既存事業者や駅前施設を所有する鉄道側の事情で新規参入が出来ない、もしくはターミナルの設置で冷や飯を食わされるケースは多く、そういうケースの打破は利用者の利益にもつながるので歓迎すべき事象です。

しかし、今回の公取のガイドラインを見て、いささかの違和感を感じた人も多いのではないでしょうか。
高速バスの共同運行や運賃プール制は、利用者から見て事業者間の垣根がないことから、あたかも一つの路線として認識、利用出来るメリットがあります。
また、運賃をプール配分することで、不採算な時間帯の担当も容易になり、ひいては利用者にとってはフリークェンシーを享受出来るメリットが発生します。

実際、バス業界における規制緩和の発端となった昭和63年のダブルトラッキング解禁以降、数多の競合路線が発着地の事業者の合従連衡とともに生まれましたが、利用者にとっては互換性が無く、予約や購入、乗降も別々の路線が乱立しても使いづらいだけで、共倒れのように衰退したり、共同運行化して来た経緯があります。
最近では明石大橋経由の京阪神-高松線が、JR系と民鉄系に分れて競っていたのが、新規参入者(たかなんフットバス)の名乗りを前に大同団結した事例があります。これも公取的にはカルテル行為による新規参入への嫌がらせなんでしょうが、利用者的には少なくとも既存路線に関しては使い勝手が飛躍的に良くなったわけで、利用者にとって見れば公取の姿勢は「反消費者」と受け取られかねません。

桜交通仙台便

今回の富士交通の参入路線で見られる「XXの切符は使えません」という一札は、共同運行におけるメリットの裏返しになるデメリットですが、この程度の弊害だから許されるともいえるのであり、何がなんでも競争ではなく、本当に利用者にとってメリットのある形態は何なのか、そこまで考えるのが公僕・行政ではないでしょうか。

***
ちなみに独禁法の趣旨がその第1条前段で「この法律は、私的独占、不当な取引制限及び不公正な取引方法を禁止し、事業支配力の過度の集中を防止して、結合、協定等の方法による生産、販売、価格、技術等の不当な制限その他一切の事業活動の不当な拘束を排除することにより、公正且つ自由な競争を促進し、事業者の創意を発揮させ、事業活動を盛んにし、雇傭及び国民実所得の水準を高め」、とあるように、独占を排し、競争による経済活動の活性化を図ることを目的にしているわけですが、それは当然後段の「以て、一般消費者の利益を確保するとともに、国民経済の民主的で健全な発達を促進することを目的とする。」という結果に結びつくものでないとおかしいはずです。

つまり、今回のガイドラインは利用者不在の事業者同士の競争を目的にするために独禁法と公取が機能するがごとき印象を受けたのであり、もし独禁法の想定があくまで事業者同士の競争のみに主眼があり、一般消費者の利益は反射的効果に過ぎないというのであれば、消費者保護の観点から見て「間違った法律」として指弾されるべき存在になります。

競争は経済の活力を維持するうえでも大切なことですが、それはあくまで消費者に利益があることが大前提です。消費者に背を向けた業界のための「競争」は、業界のための「保護・規制」と本質的には何も変わらないということを、業界も公取も考えるべきです。

Re:利用者不在の競争は規制と同じでは

投稿者---World's Uniquest Railway Enthusiast氏(2004/02/25 22:23:15)

こんばんは
同様の意見になりますが、別の視点からコメントさせていただきます

ちょっとマニアックな学術書ですが、東京大学出版会の「自由化時代の交通政策」(2001)の14章「バス市場における規制・競争・補助」で、バス産業の学術研究の第一人者である寺田一薫氏はバス産業の規制緩和について次のように言及しています。

1996年に運輸省は、すべての交通機関についての需給調整規制撤廃を発表した。わが国の交通部門の規制緩和では、英国をはじめとした各国と比較して取り組みが遅れたために、交通機関ごとの特性に照らして制度をつくる時間的余裕がなくなってしまった。・・・  (前掲書 p236)

こういう記述を見ると、公共交通の規制緩和というのは利用者の便益よりは、行政改革の形式的な実現のための一手段となってしまっているような気がします。規制緩和が単なる言葉上のものならいいのですが、不完全だろうが余裕がなかろうが実行された以上監督官庁は厳格に実行する事が職務上の義務でしょうから、今回の判断を下した公取以下、関係する行政担当者も対応に随分苦労しているのではないかとおもいます。

競争で利用者は利益を受けるといいますが、独占下のバス業界で大金持ちになったバス経営者の成功談があるわけでもない以上(バス運転手が多少羽振りの良かった時期というのはあるでしょうが)、競争によって還元される利益の源も限られているように感じます。行政で緻密な分析をやることは難しいと思いますが、このあたりを多少でも吟味してもらいたいものです。

「諸般の事情」に垣間見える“見えない障壁”

投稿者---551planning(2004/03/25 11:18:06)

富士交通は、04/01からの仙台-福島線の運行経路変更を発表しています。開設当初からの名残である「西ルート」と、既存3社と完全に被る「飯坂ルート」(両ルート名は当方勝手な命名デス)それぞれで停留所を増設する(特に飯坂ルートでは既存3社の停留所と完全に合わせる)ほか、西ルートのテレビユー福島「角」停留所を「本社前」(福島西道路沿い)に、そして福島駅東口乗場をバスプールから再び日通駐車場前に移すとのこと…(なお共同運行の桜交通サイトではまだ出ていません)。

当スレでもさんざ触れられているように、公取委「口頭注意」という“錦の御旗”を掲げて念願の東口バスプールに乗り入れてから、まさか半年で撤退とは予想だにしていませんでした。ただ、当方が乗り入れ後にも拘らずその“様子”を垣間見ることができなかったことから想起するに、いろいろなことをつい勘繰ってしまいます。
当の東口バスプールは、福島交通とJRバス東北の路線バスを中心に、関連する高速バスも発着しています。高速バスの出る10番乗り場は駅ビルからはロータリーを挟む遠い位置にあり、屋内待合施設もあるわけではないですが、なんといっても傍に福島交通の発券案内所があることが最大のポイントでしょう。そしてそこに「富士・桜便」についての言及は当方が見る限りにおいてほぼなかったものと考えます。

無論だからといって既存社による排除と非難するとか、富士側が不利かというと、そうはいえないでしょう。バスプール管理もタダではないでしょうし、応分の負担をしつつ、それゆえの「利用権」を主張し続けることも可能であったのではと思いますし、それが自然です(独自の発券“小屋”を施設内にまさに「捩じ込ませた」たかなんFOOTBUSの例も)。さらに云えば、本数で見ても既存3社便のほうが多いこと、運賃ベースでもほぼ横並びの状況が続いていたことなどから考えるに、各種利便性で既存3社が勝った結果でもありそうです。結果として拠点をずらしたことで利用者側の混乱もあったのではないかと推察されますし(降車場としては従前の道路上にポールが残っていたということもあった)、途中停留所が2ルートに分かれていることでの不利もあってかの停留所増設策と併せ見ても、富士側の苦心振りが見えてくる気もしなくはないです。
ただ発着拠点を何とかずらすためとして公取委まで引っ張り出した背景に、既存社がなかなか反応しなかったという「事実」があったことを思えば、乗り入れ実現後も無言の圧力とまで云わないものの、何らかの“見えない障壁”があったのではと思われます。何よりも『諸般の事情により』という表現をしたところに富士交通の悔しさが現れていると思うのは、当方だけでしょうか。


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