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(過去ログNo.)

東京の地下鉄に学ぶLRT論

投稿者---打越健太郎氏 (2000/10/09(月) 03:33)

どうも、打越健太郎です。さて、今回もLRTのお話をさせて頂きたく存じます。
わが国ではLRTといえば、「路面電車の改良形」という感覚で受け止められていますね。別に間違っているとは思いませんが、大量・高速輸送が出来る簡便な鉄道、というほうが、「高架も地下も、専用軌道も高速で走れる」という本質を捉えているでしょう。ですから、既存の路面電車をLRTに改良するのは勿論、賛成ですが、それよりも僕としては、今後のLRTを考える際には、東京の地下鉄を参考にしたほうが良いかと思います。
東京に御住まいの方は忘れ勝ちですが、本来、郊外鉄道と地下鉄とは全く別物です。前者は郊外から都心の外縁部まで、後者は都市内の交通手段です(大阪では今でもそうですね)。地下鉄を郊外鉄道の規格で建設し、相互直通を行った東京のあり方は、実は世界的に見ても稀なんですね。この相互直通、まさにシームレス化の魁であり、今日、東京が公共交通主体の都市になったのは、この英断の賜物とも言えましょう。
で、LRTの話に戻りますが、わが国では中核市や特例市くらいの大きさの街にも、郊外鉄道が(JR・私鉄を問わず)生き残っていることが多いですね。でも、これらのターミナルは殆どが街外れ、市街地へは行くには使えず、これが鉄道の衰退・クルマの濫用の一因になっているわけです。これらの鉄道を活かすには、東京が地下鉄でやったことをLRTでそのまま実行しては如何でしょう。つまり、郊外鉄道の終点や途中駅から軌道を延伸し、市街地に軌道を伸ばすわけです。この軌道が併用軌道ならねトランジットモールなども実行でき、ますます結構なお話ですが、別に専用軌道でも、或いは高架でもかまいません。
LRTといえば路面電車、と考えがちですが、ここでは地方都市の郊外鉄道を再活性化するための手段としてのLRTを考えてみました。今後の交通計画に、こういった視点は如何でしょうか?

各地の動きに見る市街地への軌道延伸

投稿者---KAZ氏 (00/10/09(月) 19:09)

この視点は今でも各所にありますね。静岡の市民団体が静岡鉄道の電車をLRVに置き換えて静岡・清水市内に軌道を敷設し乗り入れさせるという案を持っています。岡山でも非公式でJRがLRVの研究を行っていて、将来的に市内の軌道へ乗り入れするような構想を持っているとの話がありますね。他にも前橋(上毛電鉄)や松江(一畑電鉄)でも構想はあるようです。

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相互直通の歴史を紐解く

投稿者---さいたま市民@西浦和氏 (2000/10/10(火) 00:45)

打越様。掲示板の皆様。管理人様。
長文の議論となるやも知れませんが、よろしくおつき合いの程お願いいたします。

東京の鉄道網の歴史は、都市の拡大とともに、かつての花形企業であった電鉄企業と公企業のせめぎ合いといってもいいでしょう。この舞台が都市交通審議会なのです。
皆様もご存じの通り、かつての東京は、山手線の内側が人口集中地帯であったわけです。したがって、山手線上に始発駅を置かなければならない私鉄はそこを副都心と位置づけ、交通流を集中させ、人を集めていきました。明治、大正の頃は、渋谷よりも目黒が、池袋よりも大塚が繁華街であったことは、若い皆様にはちょっと理解しづらいかも知れません。また、鉄道敷設の免許制度が都市計画と連動していたことが、現在の山手線上の等間隔の副都心の配置にも影響していたかも知れません。
山手線の内側は東京市電が独占的に都市交通を担っていたわけですね。はじめ私鉄であった地下鉄銀座線も当時としては、「新交通システム」だったのです。ただ、京浜電鉄への「乗り入れ」が計画されていましたので、当時の車両は同じ寸法で設計されていたようです。このことも有名ですかね。
まあ、もっとも、昭和の初めのころは、「郊外電車」は「新交通システム」の代名詞だったのです。新しい響きがあったのです。地方都市でも「市内電車」に対し、「郊外電車」は都市の発展を象徴する存在だったのです。
打越様の水戸でも、大洗へ行く電車などがそうだったのでしょう。
現在の寸法の電車のスタイルが確立するのは、戦争中ですね。当時としては大型な20m車両が標準となったので、私鉄の施設が大きく変わったわけです。

「相互乗り入れ」が考案されたのは、1950年代、東京の地下鉄路線網が実現し始めた頃でしたね。都電の輸送力が逼迫し、新規路線の建設に、当時都心乗り入れを自力で模索していた私鉄各社が、車両の直通を条件に免許申請を取り下げたという経緯があります。最初に実現したのは、押上が終点だった京成電車でしたね。
当時の京成電車は18m車*2~3両!! 押上からは、浅草~上野~須田町と四つ目通りを通って月島まで行く2つの都電系統があったのです。ずいぶん先を見越した建設だったかも知れません。

最近の世界の巨大都市の趨勢は、大型車両の新規路線または既存路線改良による都心貫通線建設かなと思います。パリでは急行地下鉄(RER)による空港アクセス線やオルセー美術館(これは元の都心ターミナル駅舎)地下のセーヌ川沿いの都心貫通線(ここは2階建て車両がプッシュプルで地下へ直通。これもRER)が既存の長距離路線の近郊区間に直通しています。
ベルリンも、近郊区間を担当するSバーンが都心で地下線へ入りますね。
オリンピックのシドニーも、近郊から運転してきたこれも2階建て電車(3ドアのもありますね、パリも)が都心の地下環状線を折り返して近郊線へ帰っていきます。
アフリカでもエジプトのカイロでは近郊線が都心を地下で貫通しています。

パリのメトロやロンドンのチューブ、ニューヨーク、ベルリンのUバーンのタイプは建設された時期が古く車両が小さいので、近郊線との直通よりも、地下鉄路線を郊外へ延長する例が多いです。
ニューヨークでは、旅客鉄道の巨大ターミナルが都心地下に建設され、近郊区間の輸送と都市内輸送が別な形で展開し、パリ、ロンドン、ベルリンは後の時代に大型の車両による地下鉄路線が建設されます。東京タイプの乗り入れは、パリに導入されています(国鉄と首都交通公団)。ロンドンは横須賀線のように国鉄が自前で都心直通線を持っていますね。

いいたいことが散らかってしまいましたが、東京のような巨大都市では歴史や交通企業の事情が複雑だったにもかかわらず、同じスタイルの交通路の確保が出来たという意味では、奇跡に近いかも知れません。

水戸の話はもうちょっと後になります。
知ってることだけを書き並べただけということで、みなさんも知っていることかも知れないのですが、いろいろご容赦。

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「鉄車輪AGT」「シュネルトラム」の薦め

投稿者---打越健太郎氏 (2000/10/09(火) 04:18)

引き続きまして、打越健太郎です。僕が言うまでもなく、最近、LRTというものが注目を集めはじめています。既存の路面電車をLRTに改造するといったアイデアばかりか、既存の路面電車が無い街にも導入が提言されるようになって参りました。しかし、これまでの所、そういったLRT新規導入案が実現した例は無いのですね。これはまた後で論じるつもりですが、現行の軌道法に基いてLRTを導入しても、それほど役に立たないからかと思われます。で、代わりに何が導入されているのかと言うと、AGT(広島)や、ミニ地下鉄(仙台)などの、やはり小型の軌道系交通機関ですね。ただ、これらはどちらも既存の鉄道と全く規格が違って相互直通できないという欠点があります(ミニ地下鉄と言っても、ここで述べているのはリニア式のミニ地下鉄です。何とか一般鉄道に直通できないか、また後で考えてみましょう)。これだと将来、LRTに対する補助制度が完備した後に禍根を残すことになるでしょう。

で、提案としては題名に挙げました「鉄車輪AGT」「シュネルトラム」です。前者は、AGTの高架に鉄レールを敷いてLRVを走らせる、後者は地下にLRVを走らせる、というアイデアです。こうしておけば、LRTの即時導入ではなくても、将来LRTを導入する際、それと相互直通が出来るわけです。
「下らないアイデア」と御思いでしょうか。でも、大阪のテクノポート線(地下鉄中央線と相互直通)、あのどう見ても一般鉄道のあの路線が正式にはAGT(高規格新交通システム)として補助金を受けていることを、皆様ご存知でしょうか。当初、本当にAGTで建設する予定でいたのですが、補助が決まった後に、AGTでは運び切れないことが分かったのですね。で、中央の官僚にも頭の柔軟な人がいたらしく、ただの鉄道をAGTという事にしてくれたそうです。後者は、オランダなどで実際に見られる形ですが、日本でLRVが地下を走る(あれがLRVと言えるかは微妙ですが)京阪京津線を思い浮かべて頂ければ宜しいでしょう。

軌道系交通の中では、建設費・維持費ともLRTが最も安価で、環境にも優しいですから、これが将来の主流になることは確実だと思っております。ですから、現状ではLRT導入が無理であっても、車両の規格だけでもLRTと揃えておくのが、将来を見据えた賢明な態度とは言えないでしょうか。

Re:「鉄車輪AGT」「シュネルトラム」の薦め

投稿者---KAZ氏 (00/10/09(月) 18:43)

なんか根底から矛盾しているような・・・

路面電車とLRTの違いは、前者が併用軌道を前提としているのに対し、後者は必要な部分で高架や地下軌道を整備するところが一番の違いになっているはず。LRTという概念には既に打越さんの仰るような概念は含まれているはずです。そもそもLRTは「簡易鉄道」的な意味合いの言葉であって、超低床車が長編成で走らなければならないことはなく、岡山なんかでは輸送量の関係から単車での構想でスタートしています。

今まで何故現在のスタイルのAGT(新交通)ばかりが導入されてきたかというと、運輸省が規格化したシステムで、建設省が用意した補助制度に基づき建設するのが、事業者の負担が少なく手続きも簡単だっただけで、積極的な理由で選択されている訳ではありません。今後はLRT整備に照準を合わせた補助制度が(現行の都市モノレール等の整備に関する法律を適用することになりそうですが)整備されれば自動的にLRTにシフトするものと思われます。AGTのデメリットは各社とも十分に痛感しているようですから。

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軌道法の改正の為に

投稿者---打越健太郎氏 (2000/10/09(火) 11:32)

グリーンムーバー

打越健太郎です。直上の投稿で申しましたように、現在、路面電車を建設しようとすれば、軌道法という法律に基く必要があります。ところが、これが全くの時代錯誤、具体的には

  • 列車の全長が30mに規制されている
  • 最高速度が40km/hに制限されている
  • 原則、軌道(線路)は、道路の真中に敷設することになっている
  • 原則、勾配が30パーミル(特例で60パーミル)に規制されている

などとなっています。これでは折角LRTを整備しても、輸送力が小さく、速度ものろく、役に立つとは言いにくいでしょう。仙台などでも「東西線」建設に際し、リニア地下鉄かLRTか議論されたのですが、結局、「軌道法の規定に基けば、東西線は役に立たない」と、それなりにもっともな意見が出て、リニア地下鉄で建設されることになってしまいました。

そもそも軌道法の規制は、営業の自由を妨げるものでありますが、こうした経済的自由の制約には、

  • 安全確保の為に行われる「消極目的の規制」
  • 社会的(経済的)弱者を保護するための「積極目的の規制」

という2種類があります。前者は比較的、客観的に必要性・妥当性が判断できますので、必要最小限のものでなければ「営業の自由を侵害しているので違憲である」という主張をし易く、事実、裁判所もこれを割と容易に認めるのに対し、後者は法学的には妥当性の有無が分かり難いため、裁判所に訴えても(余程、理不尽な規制でない限り)「立法の裁量権の範囲内」という理由で退けられてしまいます。軌道法の規定は「乗客等の安全確保」という消極目的の規制であることは間違いないでしょうから、これが果たして「必要最小限」かどうか、果たして40km/hを超えると危険か、30mを超えると危険か、明らかに「否」ですね。
(註・もしもこの規制が積極目的のものだとすると、「経済的弱者である自動車メーカーなどを保護育成するために、軌道の営業に制約を加えた」という、誰が見ても不当な結論に達してしまいます)

軌道法の改正がLRTの普及の為に必要であること、そして現状の軌道法は違憲の疑いが強いことは明らかですが、では何故放置されているのかというと、要するに、今まで誰も新規に軌道など造らなかったからですね。これによって不利益を蒙る人がいなければ、時間と手間をかけて法改正など行われるはずもありません。ですから、まずは現行の軌道法の不当性を人々にアッピールする必要があります。具体的には、LRT導入案が現行法に触れてしまう、といった事態が起こると、情勢が動き出すでしょうね。そういう意味で、現行の法律を打破してやる、くらいの気概を持った都市計画が策定されることが切に望まれると言えましょう…と考えていたら、そういう都市計画が実在しました。金沢市のLRT案は「最高時速80km/h、列車の全長36m」というもので、現行の軌道法に抵触しています(参考、上記URL)。金沢市には「この案は法律に触れるなあ…」などと尻込みすること無くこの案を押し通す気概を期待したいですし、全国で金沢の勇気に続く都市が現れれば、それが軌道法改正への大きな推進力になることでしょう。

具体的ポイントを考えたい

投稿者---KAZ氏 (00/10/09(月) 19:17)

軌道法は改正に向けた検討が建設省内で始まっているはずです。
LRT導入に際して支障を来さないような配慮の元に検討しているようですから、大丈夫なんじゃないでしょうか。

あと、軌道法なんて今でも特認だらけで形骸化しているんですから本気で軌道を導入する気でいれば、特段気にならない法律のはず。最高速度にしても併用軌道区間で40km/h以上出せるような環境はほとんどないでしょうし、郊外部の専用軌道では「新設軌道」の扱いになるので車長や最高速度の規制はなくなります。

別に違憲だどうだと騒がなくても、実際に軌道法に注目が集まるようになって矛盾点も洗い出されており、改正に動き出している状態を変に刺激しない方が利口でしょうね。やるのならどんな改正がいいのか、クルマとの親和性をどう取るのか、その辺を考えていきたいところです。

Re: 具体的ポイントを考えたい

投稿者---打越健太郎氏 (00/10/10(火) 14:14)

KAZ様、ご指摘有難うございます。法改正が建設省内で検討されているとは存じませんでした。まあ、「路面電車サミット」に運輸・建設両省が必ず官吏を派遣してくることを見ても、それほど意外なお話ではないですが。来年には運輸省と建設省が合併して「国土交通省」になるのですが、両省融和の象徴(註・現在、軌道は運輸省と建設省の共管です)として、是非ともLRTの整備を促進してもらいたいものですね。

はじめまして お世話になります

投稿者---P氏 (00/10/15(日) 17:10)

はじめまして。Pと申します。打越健太郎様にご招待いただきまして、こちらにお邪魔させていただきました。今後ともよろしくお願いいたします(…でも、見知ったお名前が多くて、「はじめまして」というのは不適切かもしれませんね^^)。

都市内交通機関の議論が最近熱を持っております。私、かつて大学というものにいた当時、ゼミの卒論でまさにLRTを題材として取り上げました(ロクなものは書けませんでしたが…)確かに私もLRTの国内導入には大いに賛成です。同じアジアでも香港、フィリピン(これはただの市電だったかもしれませんが…)でも導入されておりますし、今後の展望ではマレ-シア、シンガポ-ル、台湾、中国、ヴェトナムなどで導入あるいはそれに向けての検討が進められる事でしょう。
日本においては来年の国土交通省発足が1つの契機になるでしょうが、現在の政局状況、大臣の意見を聞くだにこれは希望的観測となる可能性の方が大きいです。また、バス網がやたらに発展している都市も(が)多いので、バス発展型のGWBやDMBの方が近い目で見れば良いかもしれません。ただ、路盤規格をバスではなく電車に合わせて造らなければ数十年先に困る事になりましょう(現在の新幹線のように)。
オ-ストラリアのアデレ-ドのGWBは自然保護区を通るということで、景観的に、そして周囲の環境保護という観点的に工法を工夫して自然への影響を最低限に留めただけではなく、その ガイドウェー上を100km/hというスピ-ドで快走して都市間交通としての機能も果たしているようです。名古屋の志段味線はカ-ブや勾配がやはりバス基準に作られているので、将来軌道系交通システムに改める際(この考え:なかんずく桃花台線高蔵寺延長を見越してのAGT化は構想としてはあるようですね)スピ-ド・輸送力からして魅力に欠けるものとなってしまいそうです。
何が言いたいのか、伝わらないかもしれませんが、LRTを「プレ・メトロ」といい部分的な立体区間を順次拡大して将来的にはほぼ完全な地下鉄にするという展望でもってやっている都市も多いということが、LRTの不可欠な要素だからです。これを言うと「じゃぁ、はじめっから地下鉄でやれば良いじゃないか。」となるのがニッポン的な(?)考えですが、地下鉄は時間と金が少なくとも4~6倍違い、しかも今後の社会構造の流れ:高齢化社会化を考えると現在の国内の地下鉄システムは老人虐待交通機関となります。私も最近は名古屋市内では地下鉄よりもバスを使う事の方が多いので…^^ここにアピール点があるわけで、あとはそれを扇千景にどう理解させるか!?(なんだか…浅草の漫才師みたいな話の流れですね^^)
それらは…まぁ、わざわざ述べるまでもなく当たり前のことですよね。さて、故島秀雄氏は東海道新幹線の設計時に将来、社会構造がどのように変化しても、あらゆる広がりを持たせられるような設計を常に考えて実行したそうです。たとえば、この思想を無意識下で流用した東北新幹線に現在「つばさ」「こまち」が走る事も、想定していたようです。この感覚を現在の交通政策関係者はどこかへ捨ててきてしまったようですね。これは悲しい事です。

ご挨拶までに、あまり関係ないことを記してしまいました(しかも長々と^^)皆様のご意見を吟味して、また参上いたします。季節の変わり目、皆様お体にはお気を付けて。

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〔交通論全般〕交通計画と市民参加

投稿者---打越健太郎氏 (2000/10/16(月) 02:06)

打越健太郎です。先日来、この掲示板でLRTについて色々と主張させて頂きましたが、すぐ前の投稿でP様が仰っている様に、果たして今後のわが国で、LRTの導入や、バス中心の交通計画が実行できるのでしょうか。公共交通の利用促進によって交通渋滞や環境問題などが解決できることは分かっていても、自家用車が普及した日本では市民の理解が得られまい、という反論もあります。しかし、日本に限らず、LRTの本場ドイツ、「LRT」という言葉を生んだアメリカもまた、クルマ社会です。にも拘らず独米をはじめ、フランスやイギリス等でもLRTの導入が進み、しかも自家用車にとっては不利な併用軌道・トランジットモールなどの導入が進められているのは何故か。欧米人が公徳心に富んでいるからでしょうか。日本人がおろかなのでしょうか。そうではなく、事業の進め方次第だと、僕は考えます。 先日、とも様がこのような事柄を主張しておられました。

大阪(打越註・のゾーンバス)がだめで、似たようなシステムのクリチバはなぜ成功したかということですが、その理由は、ズバリ、市民参加ではないでしょうか。
利用者が、バスルートを設定し、形態を決めるやりかたをクリチバはとっています。
しかも、その利用者とは市民であり、素人です。この素人をプロの交通計画の技術者がサポートすることで、事実上、市民が形態を構築する形をとっています。

このご指摘は実に的確です。わが国ではこれまで、交通事業(に限らず公共事業全般)は行政が一方的に計画し、市民は実施段階になって初めて知らされる、という形が稀ではありませんでした。その時点になってから市民が反対しても、代案を立てるための時間も情報も無く、辛うじて代案を提示しても行政は聞く耳を持たない…少々極端な言い方ですが、これがわが国の状況でした。こんなやり方では市民の怒りを買うのは当然です。ましてそれが「クルマの利用制限」やロードプライシングなど、市民に新たな負担をかけるものであれば、市民が賛成・納得するほうが不思議でしょう。今後は交通計画などを立てる際には、計画立案の段階から市民の参加を求め、情報公開・意見募集などを積極的に行っていくべきでしょう。

では、このようなやり方なら、我々が理想とするような「自家用車の利用制限・公共交通の維持整備」という形に市民の意見を集約できるのか? こここそ行政の腕が問われる所です。そもそも自家用車の利用によってどのような問題が起こっているのか、公共交通はどのように役立つか、こういった事に関して、力を入れて広報に励む必要があります。具体的には、自家用車の濫用が渋滞、事故、環境問題といったリスクを孕み、かつ自家用車によって市街地がスプロール化すると郊外の自然を破壊し、市街地に必要施設すら無くなって生活が困難になり都心部の人口が減少、空洞化した市街地は治安の悪化を生むばかりか、これまで市街地に整備したインフラが無駄になり、かつ郊外に新規にインフラを整備しなければならなくなる…こういった事柄を徹底的に市民に訴え、その上で対策を諮問する、といった形が求められるでしょう。仕上げに住民投票までやれば、完璧です。ここまでやって、なお市民が納得・理解しないとなればこれはどうしようもないのですが、日本の市民はこういった問題を知ってなお、自らが快適でさえあれば良い、対策など知らない、などと考えるほどの愚か者、エゴイストか? これに「その通り」と答えるとしたら、交通論以前の問題、そのような国民に主権者の資格無し、と断じても宜しいでしょう。ただ、証拠も無しにこう断言するとしたら、それは不当な名誉毀損に過ぎません。これからは、鉄軌道整備やバスルートの再編などの交通計画に際しては、大規模な市民参加、そして徹底した情報の公開などが求められるでしょうし、それによって市民が当事者意識を持つようになることを経て、初めて欧米のような公共交通中心のまちづくりといった方向に社会を向けていくことが可能になるでしょう。

追伸:この論に関連して、一部の懸念とは全く逆に、一般市民はクルマ社会の弊害を鋭く見抜き、対策としての公共交通の維持・発展に賛同、もしも便利になるのなら自家用車から公共交通に切りかえることすら厭うてはいない、という、実に頼もしい現状を現す資料が、僕の手元にあります。また後日、新規のレスでご紹介致しましょう。


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