【検証:】常設板過去ログ集

【検証:近未来交通地図】
(過去ログNo.077)
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〔大手私鉄〕業務効率化の狭間で
 投稿者---551planning(2002/08/17 21:05:25)

〔大手私鉄〕業務効率化の狭間で
└業務効率化は仕方ないのでは?
 └業務効率化は当然ですが
  └業務効率化が公共交通離れにつながらないとは限らない
   └ツケを顧客に回した報いは怖い
  └駅務合理化の適・不適の境界は?
   └能勢電鉄の事例と浜松市の方策
    └無人化を進めるにしても
     └適解はないのでしょうね…
  └私鉄経営の根幹問題(Re:業務効率化は当然ですが)
   └鉄道業という「ビジネス」
    └日本の民鉄のビジネスモデルから色々考えて・・・
     └Re:日本の民鉄のビジネスモデルから色々考えて・・・
      └会計処理の裏に経営の弱体化が潜む?
       └データ書き出し
        └私鉄経営の問題の実情?
         └超横レス:事務連絡(念のため)

  「私鉄商法」は沿線の生活総合産業として、交通部門を主軸に不動産販売、流通、レジャーと複合的な事業形態を形成してきたが、採算性の低い非交通部門がバブル崩壊で露呈、「土地神話」に支えられてきた不動産含み益の目減りで厳しい経営を迫られている。少子化などで鉄道の利用者数も減少傾向、「本業回帰」が各社至上命題となる中、鉄道部門の業務効率化にスポットが当たっていることはこれまでも当板で触れてきた。

「私鉄経営」の崩壊と再生 log006.html
人件費削減へ新たな流れ 
log024.html

 特に関東大手私鉄は天井知らずと思われた朝夕ラッシュ輸送力増強策中心の設備投資策が各社で一段落し始め、接客面での投資に向き始めていることもあって、ここ最近各社からの業務効率化施策が活発化している。
 8/13付交通新聞では「鉄道経営の再構築進む」として関東大手私鉄各社の動向が紹介されている。箇条書きに紹介すると、

***
 関西私鉄ではこうした施策もいち早く取り組みが進んでいる。阪神では駅無人化やワンマン運転(武庫川線)などで積極的に導入されていると記憶している。駅無人化では日中も進められて、遠隔操作で駅務管理がなされ、乗客案内もインターホン化されているが、そんな弊害がこんな形でも出てきている。

35無人駅を夜間重点巡回 安全対策で山陽電鉄 (8/14付神戸新聞)
 山陽電鉄(神戸市)は十三日までに、同社の駅の大半を占める無人駅の安全対策として、今月中にも巡回要員を置くことを決めた。夜間のホームや駅周辺の治安に不安を抱く乗客らの声に応えた。

 紹介事例は山陽電鉄であるが、48駅中35駅とは改めて驚いた。阪神大震災を前後にJR-Wの新快速攻勢を一番に受けていると思われる同社だが、ぎりぎりのコスト削減の限界事例と受け止めざるを得ない。
 駅は人の流動があって成り立つもの、「人の温もり」を感じられる場所であるがゆえ、活気が生まれる。それは遠隔操作、インターホンでは見えてこない…無人化施策は潮流とはいえ、防犯面での安全性低下は由々しき事態といえよう。都市圏近郊の闇を垣間見る気がした。

 当方が良く利用する営団の駅でも早朝夜間閑散時の改札口無人化が進み、都営地下鉄でも始まった。主要接客設備の自動機器化が進んだ結果、コストダウンの最後の砦は人件費、といことなのだろう。
 一方でサリン事件を引かずとも、地下空間の死角は多い。ホームレスの増加も顕著だ。営団の改札口は開放型になっており、防犯面での不安を感じるときもある。都営の駅では省エネと称して一部の蛍光灯の取り外しも行われているが、防犯カメラだけでは心もとない。地上駅でも昨日のゆりかもめ駅爆弾事件の記憶も新しい。

 経営再構築、業務効率化は日本社会全体の至上命題であることは事実だ。しかし一方で鉄道の安全性が問題になる時代になりつつあることに、我々はもっと敏感になる必要もあるのかもしれない、残念ながら。

業務効率化は仕方ないのでは?
 投稿者---TAKA氏(2002/08/18 23:07:40)

 今晩はTAKAです。書き込み読ませて頂きました。簡単に意見を書き込みします。

 基本的に今大手民鉄でも不採算部門の切り捨て、人員の希望退職実施等のリストラを行っています。昔は鉄道事業を幹にして周囲の不動産・流通・レジャー事業等で収益をあげるというビジネスモデルで私鉄経営を行ってきましたが、今や副業の不振・鉄道利用客の減少等でこのビジネスモデルは危機に瀕しています。

 又鉄道事業単体で見ても、多額の設備投資とそれに伴う減価償却が鉄道事業の収益を圧迫しその上乗客が減少してきており鉄道事業収入でも減収の状況では、業務効率化は仕方ないでしょう。その中で一番効率的なのは人員の合理化です。その合理化の第一歩となると駅務の合理化・利用者の少ない駅の無人化・列車のワンマン化等になってきます。
 今色々な事業者で合理化が行われていますが、自動改札・遠隔監視システム等で最新技術を利用すれば、そんなにサービス低下を招かず合理化が出来るでしょう。この様に技術導入でサービスを有る程度維持できるのなら合理化は致し方ないと考えます。

 又駅等の安全性の問題ですが、これは第三者による各種事件の発生があり防犯上好ましくないと言うことでしょうが、これは鉄道事業者も考えなければいけない問題ですが、基本的には第三者が故意に起こしている物ですから、全ての責任を鉄道事業者に押しつけるのも問題かと思います。鉄道事業者も駅の巡回・遠隔監視システムでの監視や発見時の放送等での警告は安全性維持の為の対策として行うべきでしょうが、同時に警察に巡回して貰う等の公的機関の協力も取り付けて行うべきでしょう。自らに過失のない安全性の喪失(事件等)の為に鉄道事業者だけが資質を負担するのもちょっと・・・とは思います。鉄道事業者の努力も必要ですが・・・

業務効率化は当然ですが
 投稿者---551planning(2002/08/19 00:36:15)

 TAKA様、返信有難うございます。

 昔は鉄道事業を幹にして周囲の不動産・流通・レジャー事業等で収益をあげるというビジネスモデルで私鉄経営を行ってきましたが、今や副業の不振・鉄道利用客の減少等でこのビジネスモデルは危機に瀕しています。

 厳密にいうとちょいズレが。比率は各社差こそあれ、鉄道事業こそが収益事業で、不動産等付帯事業はメインの事業になりきれなかったのが私鉄ビジネスモデルです。見方を変えると、企業政策として安定配当(関東私鉄では長らく5円配当)を確保するため、計算できる鉄道事業と不動産の含み益を基準とした収益調整(不動産販売の調整)による収益構造だったとでもいいましょうか。付帯事業はブランドイメージアップというのがより正しく、バブルで先にやられたのがこちらです。最たる例は東急でしょうか。
 連結経営時代に入り、バブルの膿を切開する経営年次が続いていますが、01年度がそのピークで、実際に大手私鉄でも近鉄・京阪・南海・東武が無配転落しましたが、翌年以降の「V字回復」アピールのひとつともいえます。株主にすれば…のものですが、「日産モデル」とでもいいましょうか。実は私鉄経営は経営構造こそ大きな転機にあるものの、総じて危機的状況とは言い切れないと考えます。
 このように副業の不振自体は企業経営に影こそ落とすものの、根幹を揺るがすものではありません。しかしながら鉄道利用者の減少は経営に直接響くものであることは事実です。関東私鉄では「底打ち」の見える状況になってきましたが、関西などでは厳しい状況が続きます。パイの違いとJRのやる気次第のところがあるんですが、これはまた別の機会に、でしょうかね。

 今色々な事業者で合理化が行われていますが、自動改札・遠隔監視システム等で最新技術を利用すれば、そんなにサービス低下を招かず合理化が出来るでしょう。この様に技術導入でサービスを有る程度維持できるのなら合理化は致し方ないと考えます。

 当方も業務効率化そのものを批判するつもりは毛頭ありません。むしろここにメスを入れてこなかったのが業界の体質改善が進まなかったところでしょうか。まあそれはJRから学んだといっても過言ではないでしょう。
 さて、この見方は危険かもしれませんが、自動改札システムにしても結局は駅係員の目があって初めて成立するものではないでしょうか。地方鉄道では車内精算が当たり前のようになってきていますが、その反面で「駅舎・改札口」の意味がなくなりつつあります。結構線路に立ち入って反対側へ行く、なんてのは当たり前ですね。少なくとも有人駅で駅係員の目が届いている場合には誰しも改札口を通るでしょう。その駅係員がいないとなれば…。
 残念ながら日本では信用乗車方式の100%定着は難しかろうと思っています。最近各社で自動改札機が導入され、乗降チェックシステムが稼動したことによって各駅の初乗運賃切符の売上が総じて減ったという話も聞いていますし。「モラルハザード」について企業側がどのように考えているのか…その意味で山陽電鉄が48駅中35駅無人というのに改めて驚いた次第です。

 自らに過失のない安全性の喪失(事件等)の為に鉄道事業者だけが支出を負担するのもちょっと・・・とは思います。

 難しい論点ですね。ケースバイケースになるのでしょうが。
 これも別視点ですが、鉄道利用において利用者は最低限の自己防衛をすべきという意味で、当方はホームドア取り付けに関しては懐疑的です。一方で鉄道利用そのものを阻害する外的要因に対しては、事業者側で何らかの対処をなすべきと考えます。紹介事例の場合、駅を安全に利用することが脅かされているので山陽が巡回策を取ることは当然のことと考えます。

 とりあえず以上、思いつき部分にて恐縮ですが…。

業務効率化が公共交通離れにつながらないとは限らない
 投稿者---とも氏(2002/08/19 01:53:06) http://town-m.vop.jp/

 ともです。
 経営論は苦手(汗)ですので、利用者の視点から。

●合理化
 合理化は是とします。当然です。
 自動改札の遠隔監視も悪くは無いでしょうし、駅の無人化そのもの自体も否定はしません。
 ただ、利用者の利便性を下げるようなら問題ですし、安全性の低下につながるようならそれも問題でしょう。
 利益追求は企業ですから当然ですが、「公共」交通である以上、だれにでも使いやすい乗り物でなくてはならず、合理化すべてが是とは思えません。
 列車はワンマンだろうが構わないと思いますが、駅を無人化するのが本当に良いと言い切れるのか・・・
 信用乗車方式が採用できないのは私も同感です。今の自動改札ですら東京では突破する人間は後を絶ちませんから、キャンセラーはどこかでチェックシステムを併用する形でなくては不可能でしょう(エドモントンのように都心部駅に改札をつけるなどの簡素化ならできそうですが)。
 また、人間がいなくては対応できないものとして車椅子利用者対応などがあります。いくらLRTでも乗降が不可能な場合も珍しくはなく、利用者が皆協力して行える体制がなくてはなりません。今の日本でそれができるのか・・・正直疑問です。
 もし、駅専属要員の確保が不可能ならコンビニエンスストアとの一体管理など様々な手法も考えられます。そういった「適正な」合理化を考えるのならよいですが、今の単なる要員廃止は合理化を追求するのみで利便性の向上にもなにもつながらないのではないかと感じます。

●治安と保安
 鉄道の治安が悪くなって利用者の鉄道離れ・・・というとやはりNYですが、地下鉄には警察官が常時乗車しています。中間部に警察官の乗車する車両があり、深夜などはそこに乗車するシステムです。
 私も深夜に乗車しましたが、その車両なら安全性が高いので、路線とエリアを選べば乗車可能です。
 翻って東京で見てみると、いまのところそこまでの状況になっている路線はありあません。しかし、今後はそういった点での保安要員確保が不可欠になる恐れがあります。ロサンゼルスのLRTのように、いくら整備しても車内の治安が悪ければ使ってもらえない(最近はよくなったようですが)ですし、意味がないのです。

●行き着く先
 ニューヨークは合理化を突き詰めたものの、サービス向上と都市交通としての一体性を求めるため、私鉄を合併し結果的にMTAという公的機関(日本でいうと3セクに近い)が所有し運営する形態になりました。
 香港MTRは自動券売機の改良や自動改札のIC対応などの合理化を進めたもののサービス向上のため各駅に要員を配置しました。年々要員が増えているようにすら感じます(駅によっては日本語案内係まで配置されています)。
シドニーは一部エリアの信用乗車方式が破綻し、各駅に自動改札を設置するとともに要員を配置。公的機関のPFI運営を導入しました。
 パース市は公団を設置し都心部無料にすることで逆に郊外部の利用者を増やし経営の合理化に反する対応をしながら収益を上げています。
 イギリスはバス経営の規制緩和をやったら一部で公共交通プアと過度の競争が生じ、結局、最低限の再規制を行いました。

 要は、「見た目の利益」を交通機関が追い求めては問題の本質解決につながらないのです。公共交通はあくまで「公共」交通なのです。であればまず第一に公共性を追求することが求められます。その上での合理化でなくては、本来の交通機関たる目的を達成できなくなります。
 合理化は必要です。ただ、競争がすべてではないし、利益追求だけに走っては公共交通ではなくなってしまう。そこを考えなくてはなりません。

 このための解決策が負担軽減策としての「街づくり会社」「第三セクター」「公的機関」の保有による運営委託やPFI、上下分離などの新たな事業手法です。
 こういった手法は高岡の万葉線などで導入が始まっています。今後は大手私鉄の方策としても新規路線や混雑緩和策にこういった方式を採用できるか、都市交通として鉄道をどう考えるかを収益や規制緩和ではなく公的機関も考えなくてはならない段階になっているのかなと感じます。

 まとまりませんが。ではでは

ツケを顧客に回した報いは怖い
 投稿者---エル・アルコン氏(2002/08/19 13:50:39) http://6408.teacup.com/narashinohara/bbs

 企業活動においてコスト削減は永遠のテーマですが、とは言っても、やるべきことのほかに、やらない方が良いこと、やってはいけないことがあります。

 まあ端的に言えば安全対策であり、労災や事故が発生しかねないような安全対策への投資削減は、そのコスト削減効果が絶大であっても許されません。
 いわんや顧客の立場を危うくするようなことは絶対に不可です。場面は違いますが、食品の不当表示問題や未認可添加物の問題では、顧客を欺き、不利益を与えたということでコスト削減をはるかに上回る多大な追加コストを問題収束のために強いられたり、売上の激減と言った社会的制裁を課せられたり、果ては会社が潰れるという最悪の対価を強いられることを我々は目の当たりにしています。

 今回の山陽電車の一件は、そのコスト削減が顧客の安全を犠牲にしてまで進んでいたことであり、結局巡回の社員のコストや乗客の逸走、駅や電車のイメージダウンという有形無形のツケを払う羽目になっては、なんのための合理化かというところでしょう。
 昨今の治安の悪化は、都市部よりも中途半端に都市化した郊外で深刻であり、山陽電車の場合はまさにそうしたエリアを結んでいることから、このような問題になったと思われます。
 実は「直通特急」で結ばれた阪神電車でも駅の無人化は進んでいますが、20時前までは駅員がおり、夕ラッシュはカバーしています。またJRに散々食い荒らされたとは言え利用者数はそこそこいるため、少なくとも梅田や三宮から乗ってきて駅で降りても、降車客が他にもそれなりにいるので滅多な事にはならないようです。

***
 仕事のせいで無人になった時間帯の阪神電車を利用する機会が多いのですが、インターホンで集中管理とは言え、駅員がそこにいないことによる弊害はそこかしこに見られます。
 改札機や精算機のトラブルで駅員を探しておろおろする乗客はけっこういます(インターホン呼び出しを知らない人は多い)し、突破する愚か者もいます。中にはインターホンで「トイレを貸してください」と断る生真面目なジベタリアンもいますが(それで通るのが阪神の良さでもあるが)、概ね無人の弊害のほうが多いようです。

 治安の面では例えカメラで完璧に監視していたとしても、その場にいなければ抑止にもなりません。最近サラ金の無人契約機などを狙った事件では、警報が鳴るのも構わず警察が駆けつけるまでに盗むという強襲型が増えており、見てるだけでは案山子にもならない状態です。
 こうした犯罪傾向の変化も考えると、現金商売、客商売で完全なる無人状態は極めて不適当です。治安維持は警察の仕事といえばそれまでですが、流通などの客商売では自分で警備会社を雇って安全を確保し、万引きなどの犯罪を抑止していることを無視できません。

 なお、車内や駅構内だけの治安を維持しても、ドアtoドアでの治安が維持されないと利用にはつながりません。どうも召喚されたようなので(笑)NYの地下鉄の場合を例示しますと、確かに電車内には制服警官が乗車しており、車内での凶悪犯罪は10年前あたりから激減しています。
 しかし、電車を降りると駅員は目配りではなく防弾ガラスのブースに篭城しており、地上への通路が難物です(ちなみにエレベーターはバリアフリー対策でありますが、無防備に利用するのは危険とされています)。
 ですから夜間は人通りのある路上で乗降できるバスや、ドアtoドアのタクシーやハイヤー利用がデフォルトということを付け加えます。

 ですから構内のみならず駅周囲の状況も合わせて安全にしないと、治安が確実に悪化している状況下では公共交通の利用を手控えられる懸念があります。本来は言われなくとも「顧客サービス」として鉄道会社が積極的に手を打つべきですが、それが出来ないのなら、街づくりの一環として行政側が対策を考えるということもすべきでしょう。
 もしくはコンビニチェーンや警備会社あたりが共同で、「駅サービス会社」を設立して鉄道会社から受託するというビジネスモデルも考えられます。

 ただ、そこまで他人任せになると、鉄道会社というのは「公共交通」における「運行」を担当するアセンブリーに過ぎなくなり、公共性を主体的に主張出来なくなる危険性すらあります。

駅務合理化の適・不適の境界は?
 投稿者---和寒氏(2002/08/19 10:55:24) http://www.geocities.jp/history_of_rail/

 皆様、こんにちは。

 自動改札システムにしても結局は駅係員の目があって初めて成立するものではないでしょうか。地方鉄道では車内精算が当たり前のようになってきていますが、その反面で「駅舎・改札口」の意味がなくなりつつあります。

→悩ましい問題提起ですね。
 駅務の合理化をどこまで進められるかは、その鉄道の状況によって、だいぶ異なってくるかと思います。
 北総では開業当初は駅務完全無人化を目指したものですが、機械を介したコミュニケーションがうまくいかず、在来路線の駅務に近い形に後退(利用者にとっては通常なみになった)しました。
 その一方、能勢電鉄では今や駅務完全無人化です。時間帯によってはスタッフの配置があるのかもしれませんが、基本は完全な無人のようです。それでも特段の支障があるようには見えない。利用者が固定的なのか、それとも駅務自動化があちこちで進行しているため受容されているということなのか。
 鶴見線のように拠点駅のみ駅務員配置という路線もあります。特殊な事例と呼ぶことも可能ですが、ここも、駅務合理化が問題なく受け入れられている一例でしょう。
 国鉄では武蔵野線から始まった自動改札は、当初は試験的導入であることは明らかで、うまくいったとは思えませんでした。ところが、JRになってからの自動改札化は、凄まじい勢いで進捗し、定着したという経緯があります。

 コスト要因を削減していくという企業マインドは、否定すべきものではないでしょう。とはいえ、それに対する不安感を利用者が持つことは、当然といえば当然のことです。現実に問題が発生すればその不安はさらに増幅され、利用の減退につながりかねないというリスクをはらみます。
 駅務合理化を進めるにしても、時と場所を選ぶ、ということはありそうです。難しい課題ですね。

能勢電鉄の事例と浜松市の方策
 投稿者---KAZ氏(2002/08/19 15:08:05)  http://www5b.biglobe.ne.jp/~ktnh/momo/

 どうもです。能勢電の話が出たので少しだけ。

 能勢電鉄ですが、ここは大昔から駅員はほとんどいませんでした。その代わりに各駅に比較的大きな売店を改札周辺に設置し、売店の売り子が旅客案内や企画乗車券の販売、駅務機器の簡単な点検補修などを兼任するというシステムでした。沿線が未開発な時代は「集落の雑貨屋」といった性格を駅売店に持たせ、地域に溶け込んだ経営と経費削減・旅客サービス向上を狙ったものでした。乗り越し精算なども売店の売り子が担っていました。現在は利用者も増え、また改集札の機械化も進んだことから売り子が担っていた作業を機械に移行させた、という形ですね。

 今度は現代の事例なんですが、浜松市がバス停近くにコンビニを誘致、というかコンビニとバス停の一体的整備を図り、コンビニに「駅」の機能を持たせようとしています。これは、ある意味能勢電方式が現代型に昇華したシステムとも言えるのではないでしょうか。今後はこういった形での整備も図られていくんでしょうね。

 とりあえず今日は簡単に事例の紹介まで。

無人化を進めるにしても
 投稿者---和寒氏(2002/08/20 09:36:18) http://www.geocities.jp/history_of_rail/

 KAZ様、御教示ありがとうございました。
 能勢電鉄の合理化はかなり極端な事例と見受けられましたが、これが成立するためには相応の背景があったというわけですね。

 鉄道会社の合理化努力は、当然のことです。しかし、人の目が届かなくなることから、無人化が荒廃を導くという事実もまた存在します。私が実見した例では、留萠線のワンマン列車(2両編成)にて、後車の後部デッキ、即ち乗務員もおらず利用者の動きもない区画において、高校生が思う存分に喫煙していたというようなことがあります。最近では、飯田線のある駅(どこかは失念)を夜間無人にしたところ、待合室に展示していた「南極の石」が盗まれたという事例があります。無人駅の荒廃は、枚挙にいとまがありません。
 長野電鉄長野線のように、ワンマン運転でも駅務員の配置がある、という合理化であればまだ安心感があります。もっとも、長電の場合は駅務自動化の投資余力がないというだけのことかもしれません。それにしても駅員に「じかに尋ねることが出来る」安心感は大きいです。
 スタッフの配置がない交通システムとは、初心者にとって、近寄りがたいものです。無人化が現状で受け容れられたにしても、新規参入者にとってはバリアが増えたようなもので、将来的にはどのように推移するか、見当をつけがたい面があります。

 ローカル線で無人化しても荒廃を呼ばない事例としては、私が見た限りでは小湊鉄道(上総牛久以南)や長電木島線の例があり、これらは地域からの協力を得て、駅の環境を維持していました。
 勿論、同じ手法は都市圏鉄道では使えません。理想的には、利用者のモラルによる「自治」を期待したいところですが、これで全てをカバーするのは無理で、既に御提案のあったビジネス手法によるべきなんでしょう。

 極めて個人的な感慨ですが。スタッフがいない交通機関というのは、ちょっとさびしいですね。

適解はないのでしょうね…
 投稿者---551planning(2002/08/21 00:05:41)

 和寒様から難題を頂きましたが、駅務合理化の適・不適の境界は?…うーん、適解はないんでしょう。北総、能勢電、鶴見線、どれも都市型の対応事例になり得るものでしょう。あとJR各社で目立つ、無人駅でノーラッチですがとりあえず自動券売機は置いてあります、という準信用乗車方式もありますね。
 皆様の議論を拝見してきて、むしろ自動改札という心理的な障壁で固めることこそ「合理化」という名のもとの矛盾なのかもしれない、と思ったりしました。曲がりなりにも「総合生活サービス業」的なアピールをするグループの本業部門で、最も利用者と直接的に触れる場面を機械で遮蔽していっているわけですから…。

 極めて個人的な感慨ですが。スタッフがいない交通機関というのは、ちょっとさびしいですね。

 最近関東私鉄の電車車内で駅務スタッフ募集の広告を見ます。関東でいち早く子会社委託化を進めている京急だけでなく、京王や小田急、営団でも見掛けた記憶があります。営団ではラッシュ時にOBらしきシニアスタッフもよく見掛ける様になりました。
 某○川駅ではバイト君がホーム案内から戸締指示機(ト○ってやつですね)操作をこなしているのを見てびっくりたことがあります(ネームプレートが違うので分かる)。バイトだから安全性がすぐ損なわれる、と言い切れませんし、それなりの配慮を持って採用しているのは当然と思われますから間違っているとはいえませんが、突発事象が発生した場合に適切な対処が可能なのか、少々不安を覚えました…無論、そんな目で見ているのは当方くらいなものでしょうが。かつての「鉄道員」の持っている威厳というか凛々しさというかに感慨を覚えることが古臭いのかもしれませんね(その「ト○」ってやつは大昔にNHK教育の「はたらくひとたち」チックな番組で阪急の実例が取り上げられていたのを見たおぼろげな記憶があります)。

***
 論点がちょいズレますが、現在のトップ写真は営団有楽町線・有楽町駅の改札口です。そう、ホーム直行EVと、車椅子対応型自動改札機が1つというバリアフリー対応型の到達点というべきものです。既存の改札口付近にEVが設置できないための帰結ですが、営団では他に辰巳のほか、少なからずあるようです。ここの場合はさらにスロープも整備されており、かなりお金が掛かっていることを伺わせます。
 実はこの改札、出入口に近いこともあってか結構普通に利用があったりします。しかしながら自動精算機等がありません(結構この付近ホームレスが日中からいるのも事実)。乗り越しなどの場合にはまたホームに下りて既存の改札口に廻り必要があります。各所に注記が貼られていますが、写真を撮った数分間でも間違って戻る利用者がいました。
 車椅子利用の場合は往々にして身障者割引があるはず、さらには列車への乗降時の介助含め駅員の手がゼロというのは考えにくいのですが、さてどのような対応になるのか気になります。

 …とりあえず思い出しの実例を取り混ぜて。

私鉄経営の根幹問題(Re:業務効率化は当然ですが)
 投稿者---TAKA氏(2002/08/19 15:28:12)

 わざわざ私の意見にご返信有難うございます。同感だな〜とおもう点と
 ちょっと違うのでは?と思う点がありますので書き込みします。

(ちょっと違うと思う点)→私鉄経営の根幹問題
 民鉄会社の経営に置いて、鉄道事業が収益事業である事はその通りですが、「付帯事業がメイン事業になりきれなかったのが私鉄経営モデル」という意見には疑問を感じます。
 現在民鉄協加盟の大手民鉄のうち東急・阪急・西武等は単独でも鉄道事業の売上は半分以下ですし、大手民鉄の殆どの会社は連結決算上は鉄道事業の比率は低くなっています。鉄道事業が数字には表れない信頼や扶養効果という点でも基幹事業ではありますが、不動産等の付帯事業もグループの中では少なくとも鉄道と並ぶ重要事業に育っている所も存在します。ですから必ずしも成功した私鉄経営モデルは「鉄道経営を根幹に有機的に付帯事業を結びつけた経営モデル」というのが正しいのではないでしょうか?
 ですから副業の不振は鉄道会社単独決算上も響いてくる会社も多数有りますし、連結決算になれば直撃の会社も多数存在します。乗客減は鉄道事業のも直撃しますが、間接的に扶養効果が減少する事で副業にも影響します。今の民鉄経営では、鉄道事業・付帯事業どちらの不振でも決算上は重大な影響を及ぼします。

 今民鉄経営では危機的状況ではないと言われますが、倒産する・しないは別にしてかなりやばい会社は数社存在します。明日に潰れる事は要りませんが、経営上の余力を今回のバブルの膿出しの含み損償却で使い切ったに等しい会社は間違いなく複数存在します。
 今回資産の再評価を行い鉄道事業用地の含み益を再評価して(含み益=固定資産税評価額の3分の1(会計上の正しい評価額)−実際の簿価(昔買った円・銭の金額))含み益を数字のマジックで含み損と相殺させる為の会計操作を行った会社(即ち鉄道用地の売却=鉄道会社の廃業なのにその様な土地を再評価してまで利益捻出しないと損失処理でき無かった会社)はかなり余力を使い果たしている状況であり、私は「民鉄会社の損切りは此処では終わらないのでは?未だ今後も株や地価の下落で損失が発生するのでは?その時を乗り切れる体力は残っているのか?」と考えてます。多分来年の決算で苦しい会社が又でてくるでしょう。
 私は私鉄経営に関して言えば、「経営構造の転機」は一般的企業にもある会計上等の転機であり、鉄道経営全般に関して言えば必ずしも違うと思います。未だ現在の「私鉄経営モデル」は有効であると考えます。しかし余力を使い尽くした会社にV字形回復が可能なのかは大きく疑問であると思います。

(同感な点)→合理化は必要、但しサービスは維持しないとダメ
 基本的に合理化は賛成ですが、サービスは維持しないとダメであると思います。そうしないと合理化が乗客減を招く悪循環を招きかねません。但しそれにも限度があり有る程度の利用者しか居ない駅には無人システムにして遠方監視を行い駅員は巡回等で対応すると言うのも手段であると考えます。サービス維持は大切ですが、サービスの対価を徴収できないほど乗客が敷く無ければ其処は合理化せざる得ません。
 そのバランスを如何に取りながら合理化と収支改善に取り組むかが問題であると考えます。此処を間違えて欲しくはないです。

 又安全問題に関しても、乗客の直接の安全を守る義務は鉄道会社に存在しますから、それに関しては万全を期するべきですし、又第三者から鉄道内で危害を加えられる事に関する安全は、確かに駅員がいれば抑止力にはなるでしょうが、それを全て鉄道会社が責任を負うべきでは無いでしょう。
 ですから、安全確保の為鉄道会社は、カメラの設置・危険時の警告放送等の遠隔監視システムを整備すると同時に、駅員の巡回を行う。又警察等にも駅の巡回を依頼する等の対策を立てる必要があると思います。

 この様な点に関してはエル・アルコン氏の書き込んでいる「コンビニ会社や警備会社が駅サービス会社を作る」というのも一案であると思います。阪急では子会社に駅業務を委託していますが、それを進化させたり駅にコンビニを作り利用客を吸収しながら駅業務を委託するのも一策であると考えます。ここら辺の工夫でビジネスチャンスも広がりサービスも維持でき一石二鳥のチャンスがあると考えます。

鉄道業という「ビジネス」
 投稿者---エル・アルコン氏(2002/08/19 16:28:32) http://6408.teacup.com/narashinohara/bbs

 私鉄ビジネスというものは何かということでしょう。
 鉄道事業を幹に、付帯事業で補強するのか、鉄道というツールを使って本業を盛り立てるのか、それぞれだと思います。鉄道がツールに過ぎない例としては会社の信用力として使っている紀州鉄道や、土地分譲のために敷かれたといえるかつてのロスの市内電車網もそうでしょう。

 ビジネスである以上は利潤を追い求めますし、失敗すれば経営は破綻します。しかし、他のビジネスと違うのは、その目的もしくはツールとなるものが「公共交通」という社会の公器であることです。
 通常のビジネスのようにある日突然店じまいで済む話でないことを事業者も自覚しないといけませんし、突き詰めればこの手の「事業」を純商業ベースに任せて良いのかというところから議論する必要すらあります。

 副業の不振が本業を倒した例としてはコトデンがありますし、公共・公益セクターに属する企業の突然の破綻劇としては米国のエンロン(簿外債務)、ワールドコム(不正経理)の記憶は新しいところです。
 これらはビジネスにおける破綻の形態としては例外に属するのですが、公共・公益事業をビジネスとして民間に委ねる場合には、こうした特殊要因での事業継続の危機というのも、公共・公益事業の継続提供の立場からすると考慮すべきリスクになります。

 なお、京王のように積極的なダイヤ改正が奏効した話を聞くと、結局は本業なんだなという気もします。

 以下は昨年末のコトデン破綻を受けての拙論です。

エンロンとコトデン log049.html#3

日本の民鉄のビジネスモデルから色々考えて・・・
 投稿者---TAKA氏(2002/08/19 23:06:58)

 エル・アルコン様私の書き込みにコメント有り難うございます。
 基本的には意見の間に格段の差はないと思いますがちょっと考えた事があるので・・・。

 私は基本的には大手民鉄のビジネスモデルは「鉄道事業を根幹に不動産等の周辺ビジネスに副業を広めていき、合わせて利益の最大化を図る」という点にあると思います。これは小林一三が阪急にて初めて以来基本的な点では変わりはないと思います。
 鉄道が信用力補完の看板に過ぎない紀州鉄道はちょっと違いますが、基本的には大手民鉄も鉄道事業を根幹にその信用力と知名度と地域独占性を活用して各所に副業を広めてきて企業グループを作り上げたと言えるでしょう。

 確かに鉄道事業は公共性が高く「倒産したから明日から運休」とのことが発生されたら重大な問題になります。
 しかし好んで企業を破綻に導く悪質な経営者が大多数ではなく、現実的には破綻させない為に必死になり経営しているのが実情ですし、副業が足を引っ張って経営不振や破綻を招いた例は京成やコトデン等色々ありますが、又同時に副業の収益が鉄道事業に貢献してきた事も忘れるべきではないでしょう。
 その例は東急の多摩田園都市です。他のNT鉄道が採算性で苦しんでいる中で、何故多摩田園都市は成功したか考えればそれは「副業の土地分譲で開発利益を補完して内部補助した事」と言うことになります。ですから強ち副業を否定すべきでないと考えます。 要は.バランスと採算性の感覚です。

 確かに民間の運営する公共性の高い事業(鉄道に限らず)における経営破綻での公共性の阻害のリスクは、考慮すべきです。しかし民間に委ねる事で効率よく公共的事業を果たしてきたという側面も無視できないですし、国鉄みたいに借金でボロボロになったら、公共サービスは破綻無く提供されても借金の処理を税金でするという国民負担のリスクも存在するのですから、そこら辺は如何にバランス良く公共性と効率性を両立したシステムを作るかに有ると言えます。
 完全に純商業ベースに委ねる事でのリスクは存在しているのも事実ですが、メリットも存在します。もし日本の交通が全て公営であったなら、今どうなっているでしょう。私は想像したくありません(国鉄がいくつ発生していた事やら・・・)
 日本の大手私鉄が純商業ベースで今まで日本の都市交通を支えてきた事実、JR各社が民営化後国鉄時代より遙かにサービス等を改善させ国民に受け入られている事実等々を考えながら鉄道を純商業ベースの組織に委ねる事へのリスクを考えた方が好ましいと思います。
 基本的には上場企業以外も経営内容を公開し、その内容が虚偽であったり破綻の危険性が示されるようになったら改善を勧告したり、虚偽等犯罪行為で有れば刑事罰を与えたり、経営が改善されず破綻の危機に迫られたら公共性の高い事業だけ受け皿を作り救済する等のスキームを考えておけばいいと考えます。

 でもエル・アルコン様の言われる民鉄は「結局は本業が大切なんだ」という事実も確かにその通りであると思います。
 しかし私は敢えて「結局は本業と周囲の副業のバランスが大切なんだ」と言いたいです。それが日本の大手民鉄のビジネスモデルにおいて一番大切であると思います。

 長々とした纏まりのない文章ですいません・・・

日本の民鉄のビジネスモデルから色々考えて・・・
 投稿者---551planning(2002/08/20 00:07:20)

 TAKA様、エル・アルコン様、経営論オンチの当方におつきあい頂きありがとうございます。

 さて、当方は私鉄グループ経営における付帯事業を何もないがしろにするつもりはありません。言葉足らずはお許し下さい。ただし、TAKA様が

 現在民鉄協加盟の大手民鉄のうち東急・阪急・西武等は単独でも鉄道事業の売上は半分以下ですし、大手民鉄の殆どの会社は連結決算上は鉄道事業の比率は低くなっています。

とされている点につき、確かに売上高的には鉄道事業と付帯事業の比率が50%を超えるバランス構造になった会社もありますが、収益レベルで見て頂ければ、と思います。鉄道会社は複合企業体でありますから、双方あっての収益力ということはできますが、その実態としては本業である鉄道できっちり稼いで副業である各種付帯事業で上澄みをつける、すなわち最終利益調整を行っていると書いたまでです。まあそれを「有機的に結びつける」と評することも間違いではないですが、「付帯事業の重きは如何に」という当方の視点は御理解頂けますでしょうか。
 もちろん各社とも連単倍率や鉄道:付帯の比率に気をかけていますが、「付帯事業」はあくまでも集合体であり、その根幹は不動産販売事業、沿線に買い貯めた資産の含み益をバックボーンとした経営でした。これまではそれが調整弁であった、これからは…というところはTAKA様も触れておられるところです。唯一特異例は西武グループでしょうが、セゾンの末路を見れば、基本的な流れは変わらないはずでしょう。

 今民鉄経営では危機的状況ではないと言われますが、倒産する・しないは別にしてかなりやばい会社は数社存在します。
 明日に潰れる事は要りませんが、経営上の余力を今回のバブルの膿出しの含み損償却で使い切ったに等しい会社は間違いなく複数存在します。

 現時点で「経営不安説」の企業を挙げるのは適切でないと考えます。そこまで体力を失っているでしょうか。TAKA様は直接触れられていませんが、固定資産減損会計導入が目前に迫っている中で、土地再評価法でお茶を濁した会社が厳しくて、そうでない会社がまだ体力がある、と見るのは早計と思います。
 なお、確かに「数字のマジック」ではあるものの、土地再評価法は法律に即した会計処理です。阪急などはいち早く適用しましたが、さらにはこれこそテクニックを駆使して鉄道車両までリースにしましたね。先日の日経でも云々書かれていましたが…。

 私は私鉄経営に関して言えば、「経営構造の転機」は一般的企業にもある会計上等の転機であり、鉄道経営全般に関して言えば必ずしも違うと思います。未だ現在の「私鉄経営モデル」は有効であると考えます。しかし余力を使い尽くした会社にV字形回復が可能なのかは大きく疑問であると思います。

 「V字回復」云々は「日産モデル」に込めた比喩的表現で、それこそ数字のマジックですね。仰る通り個々の企業いずれも体力回復した、とは思えません。それは日産然りです。
 そこで業務効率化、すなわちリストラに関わるのですが、結局世界広しとも公共交通事業で独立採算制でこなしているのは日本の私鉄経営モデルだけではないかと。それは誇るべきでしょうが、企業体力の保持をかけてまで公共輸送サービスコストの極限化を進めるべきなのかは疑問です。ただしとも様が書かれる様な、運営体の3セク化などへの施策までも喫緊とは言い切れません。
 その意味で現在の大手私鉄における付帯事業の位置づけ、あり方は各社よりシビアに見直す必要があると考えます。仰る通り今後の私鉄モデルではより根幹となるべき業態でしょうから、突き詰めて本当に必要なものの各業界競争力をその専業企業と同等以上のレベルまで押し上げる必要があるのではないかと考えます。ただそこまで必要なのか、当方には…ですが。

 全然纏まりません。資料を集めて出直します(それにしても民鉄協サイトはデータが薄いなぁ)。

会計処理の裏に経営の弱体化が潜む?
 投稿者---TAKA氏(2002/08/21 23:55:15)

 現時点で「経営不安説」の企業を挙げるのは適切でないと考えます。そこまで体力を失っているでしょうか。
 TAKA様は直接触れられていませんが、固定資産減損会計導入が目前に迫っている中で、土地再評価法でお茶を濁した会社が厳しくて、そうでない会社がまだ体力がある、と見るのは早計と思います。

 しかし2ヶ月ぐらい前?週刊東洋経済にて「大手民鉄の経営状況」に関する特集を組んでいた時、土地再評価表に絡む試算がでていましたが(詳細は取ってあったその週の分が見あたらないので今は何とも言えませんが・・)土地再評価法による含み益計上をして、土地等の不良資産を償却しないと「実質債務超過」に転落可能性がでる程財務内容が悪い民鉄は実際に存在します。
 正直言ってそれらの処理の渦中でしかも某大手民鉄企業の関連会社と親密に仕事で付き合っていると(その会社のOBですが・・・)噂としてその様な話は入ってきます。
 正直言ってリース会社への売却等の活用等に関しては、積極的な財務戦略として行っている前向きな会社と益出しを行っている後ろ向きの会社と2通り存在します。只土地再評価法に関しては今回採用した会社と採用しなかった会社と存在します。私のつきあいのある会社の親会社の某民鉄は「もし土地評価法を利用すると鉄道用地再評価で1,000億計上できる」という話ですが、再評価を実施していません。

 今回は採用した会社と採用していない会社の区分けは基本的には「今期大幅な含み損の処理をしたか、しなかったか」の所であると思います。
 まあ基本的には何処の会社でもここ数年問題子会社処理と副業の活性化・再編成と土地等含み損処理は行っています。しかし財務上のマジックをしないとそれだけの損失処理原資を捻出できないと言う会社も存在しているのは事実です(財務内容にそんなに問題のない私の関係某民鉄では子会社不良資産の処理・買取や子会社賃借物件買取による実質賃料補助も行っています)。
 その様に考えれば、上記の様な弱っている会社が「すぐ潰れたり経営危機が来る」とは言いません。只その様な会社が財務内容に傷を負い余力を失っている事は事実です。しかしその様な事が本業回帰等の経営の見直し、改善計画に力を注ぐ事は悪い事ではありません。今後固定資産は減損会計を導入せざる得ないですし、会計上は大きな転機を迎えています。

 今回の土地評価法の適用は減損会計の準備と見るべきと言われるかもしれませんが、私は表面はそうであるが実体は減損会計処理に託けた益出しに他ならないと思います。益出しした分余力は失われているでしょう。さてこれでどうなるか?楽しみです。
 実際子会社の整理等を有名文化事業でも閉鎖したり、筆頭株主の上場企業を更正法申請させたりとの思い切った整理を行っている民鉄も存在します。
 これがどの様な変化を及ぼすかで今後の民鉄のスタイルが変わってくるでしょう。
 子会社整理→損失処理の後にどの様な道筋を付けるか?それが問題であると思います。

データ書き出し
 投稿者---551planning(2002/08/22 01:13:11)

 しかし2ヶ月ぐらい前?週刊東洋経済にて「大手民鉄の経営状況」に関する特集を組んでいた時、

 週刊ダイヤモンド5/25号「電鉄15社 巨額損失処理の実態」ですね。あ、うちもすぐ出てこない…図書館行ってコピーしてくるか。改めてみるとネタ元…もとい、データも魅力ですし。そのときは表写真に阪急8000系が出てるんですが、あーた何も阪神大震災仮復旧時の写真を持ちださなくても!と思ったのと、付属記事のほうにひっかかったのが印象的だったような…。

http://dw.diamond.ne.jp/number/cont020525.html#cont

***
 当方も復習がてらデータの書き出しをば。

☆減損会計…
 狭義でいえば固定資産の時価評価。これまでは買ったときの値段が帳簿価格になっていたが、この御時勢、今の価値はどれくらいと見て大きな落差がある場合にはそれを反映させようよ、というもの。2005年度には強制適用の方向性。鉄道事業においては鉄道線路が減損対象になるなんて話が…。超うなぎの寝床、買います?

☆土地再評価法…
 会社が持っているすべての事業用土地を時価で再評価し、簿価との差益分から税金相当分の差引額(約6割)を「再評価差額金」として自己資本に算入させることができる特例措置。もともと金融危機時に銀行救済策として導入され、一般会社にも適用が広がったもの。2002年3月(すなわち前3月決算期)が適用期限。累積損失の圧縮や自社株消却にも活用できたので、一時的な企業体力の回復が図れたが、必ずリバウンドはあるようで…。
 大手私鉄では、阪急・近鉄・京阪・南海・東武・相鉄、東急や西武でも子会社が適用している。

☆2001年度決算
 5社が最終赤字、近鉄・京阪・南海・東武が通期無配転落、名鉄も減配。京成以後あったかな…。

☆格付け
 こんなん出てます。

JCR http://www.jcr.co.jp/topics2.htm#V1
R&I http://www.r-i.co.jp/jpn/rating/ra_list/japanese_class_jpn.pdf
ムーディーズ http://www.moodys.co.jp/ssl/list/rat_jigyo.htm

私鉄経営の問題の実情?
 投稿者---TAKA氏(2002/08/22 08:18:02)

 管理人様お早うございます。TAKAです。わざわざデータの書き出し有り難うございます。
 おかげで私の非常に曖昧な記憶が皆さんに誤解を招かず訂正できました。有り難うございました。
 でもこの問題「近未来交通地図」に影響を及ぼす重大問題かもしれません・・・(ちょっと大げさ・・・)
 よく考えないと不味いかもしれませんね。

 週刊ダイヤモンド5/25号「電鉄15社 巨額損失処理の実態」ですね。

 すいません・・・ダイヤモンドだったんですね。私の虚ろ覚えが如何に当てにならない事か・・・全く別の所を探していた様な物です。
 もう一度探してみないと・・・・私も付属の西武鉄道の魔術的財務構造(ちょっと大げさか・・)についての記事も気になって買った記憶はあります。
 只其方の方は一般的に他のの書籍等で言われている内容と変わらずちょっと期待はずれでしたが、大元の記事の試算はなかなか興味有る試算でしたから今でも覚えては一応居たのですが・・・ 
 それと阪急の写真ですが、あれには色々意味がある様な気がしますが・・・

☆減損会計…
 鉄道事業においては鉄道線路が減損対象になるなんて話が…。

 そうなんです。一番問題なのは仰有られている事なんです。鉄道路線が減損になる事が有る意味で問題です。土地に減損が掛かると言う事は土地を持たない事が収支の安定に繋がるが、鉄道会社が鉄道用地を持たないと言う事は鉄道事業を行わないと言うことを意味します。土地を除く鉄道設備に関しては減価償却で減損を実施している以上、土地まで減損する必要はないと考えます。それに誰もあんなウナギの寝床買わないですよ・・・誰も買いそうもない物を時価評価しても逆に問題であると思いますが・・・

☆土地再評価法…
 累積損失の圧縮や自社株消却にも活用できたので、一時的な企業体力の回復が図れたが、必ずリバウンドはあるようで…。

 これを利用して含み益を現実化して自己資本に算入してその自己資本増強分と含み損償却による自己資本毀損分を相殺しようというのが、今回の財務上のマジックですよね・・・
 これが何故問題かと言えばこれこそ減損会計の関係です。大手民鉄の大部分の路線用土地は明治〜昭和初期に買った土地が大部分ですから簿価は非常に安いです。(数円〜数十円の金額です)その評価額を会計上のMAXの「固定資産税評価額の3分の1」まで引き上げてしまうと、これ以上の地価下落=固定資産税評価額下落時に減損会計で含み損を計上しなければならなくなる事です。そうなると再評価法を実施していない会社はこの様になっても含み損計上をしなくて済みますが、再評価会社は地価下落の影響を諸に受けかねません。何せ地価が下落したらその分損失計上しなければならないですし、その土地を売却して損失切り捨て=鉄道事業の廃止になりますからそれも出来ません。万が一廃線にしてその土地を売却と言っても仰有られる様に鉄道用地の買い手が多数居るとも思えませんし・・・
 子会社や鉄道事業用地以外の売却できる土地に再評価法を適用するのなら未だ良いのですが、本業の土地を再評価するのですから上記の様なリスクは当然考慮しなければなりません。

 この財務上のリスクは非常に大きいと言えます。確かに含み損償却も減損会計を考えたら重要ですし、健全経営の為の重要な経営事項です。しかし今回再評価実施会社と下の赤字計上企業(=大幅な損出処理企業)は、減損会計のリスク回避の為に新たにリスクを背負い込んだ形になります(まあ噂では赤字企業の他に再評価法適用会社で良くない噂や問題子会社を抱えている会社は存在しますが・・・)。
 しかし背に腹を変えられず此処で再評価せずに含み損を処理したら自己資本がマイナスになる企業も存在したみたいですから、止むに止まれずの処理であったとも言えますが・・・
 これで全部の処理が終わっていればいいのですが・・・その後関係会社が潰れたり、それでも問題の大型テーマパーク関係の損失処理をしていない会社も存在しているみたいなので・・・
 ここら辺の状況が経営危機説として噂がでてくる源泉であるとは思いますが・・・

☆2001年度決算
 5社が最終赤字、近鉄・京阪・南海・東武が通期無配転落、名鉄も減配。京成以後あったかな…。

 正直言って京成の経営危機以来の状況です。京成の場合は谷津遊園と津田沼工場用地の売却とリストラで危機を切り抜ける事は出来ましたが、今は土地売却→含み益の発生→他の損失処理という京成再建のスキームを利用する事が出来ません。もうこの手段は使える経営環境ではなくなっています。
 あの時京成は民鉄協脱退=大手民鉄の地位を捨てると言う状況まで追いつめられて非常に厳しい経営再建を実施しています。それでも経済環境の好転という物があったからこそ経営再建が出来たとも言えますが、今噂のある会社に売却益のでる優良資産が多く残っている状況であるとは言えませんし、今後経済環境の改善が劇的に起こるとも思えません。今の環境は昔より悪いと言えるでしょう。
 さてさてどうなるか・・・この様な状況では「公共性の高い交通機関を不安定な経営体に任せておくべきか?」「公共交通機関をやはり公共セクターに任せるべきでは?」という議論がでてきても可笑しくないと思います。
 とも様の「運営の第三セクター化」までは私も反対ですが(最終的に失敗した国営経営を復活させるのは時代への逆流?)、この様な議論がでてきても否定できないほどの状況が来ても可笑しくない所まで危機は迫っているのかもしれません。

超横レス:事務連絡(念のため)
 投稿者---とも氏(2002/08/22 13:54:44) http://town-m.vop.jp/

 ともです。
 すみません。無要な誤解を生んでしまいますので自己フォローを

 さてさてどうなるか・・・この様な状況では「公共性の高い交通機関を不安定な経営体に任せておくべきか?」「公共交通機関をやはり公共セクターに任せるべきでは?」という議論がでてきても可笑しくないと思います。
 とも様の「運営の第三セクター化」までは私も反対ですが(最終的に失敗した国営経営を復活させるのは時代への逆流?)、(後略)

 すみません。私の書き方がややこしくて失礼しました。
 私の考えでは地方民鉄は別として、大手に関しては運営の三セクまでは考えていません。新線建設等においていわば三セク建設民間運営(運営権方式)やPFIを活用するスタイルを導入したほうが良いのでは?ということです。あくまで運営は民間側という意識です。
 地方にしても、万葉線のような例もあるにしても、それこそ青い森鉄道ではないですが公的所有民間運営というスタイルも出来ないわけではないですから、三セクは一案とお考えください。また、「まちづくり会社」方式は企業に行政が出資しますが、責任の所在は民間にあるという形です。要は既存鉄道に行政が直接出資するようなものです。この形は公的コントロールを過度に受けずに公的負担を活用する方式で、LRTなどで検討されている事業手法です。

 諸外国の都市交通ではバスやトラム、郊外電車の総合的な利便性を最優先にするための運営一元化策、つまり運営母体を一つにまとめる策が行われています。これを地方ならば導入してもよいかもしれない。ただ、日本の場合は独立採算でやってきているのだからそのノウハウを最大限活かせる方式などのコスト圧縮策もないわけではなくということを言いたかったまでで。

 混乱させていしまい失礼しました。

〔鉄道経営〕ビジネスと公益の整合性 log078.html

2004.11.06 Update


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