【検証:】常設板過去ログ集

【検証:近未来交通地図】
(過去ログNo.070)
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「都市型第三セクター鉄道」の再建について〔続〕
 投稿者---TAKA氏(2002/06/16 23:13:18)
「都市型第三セクター鉄道」の再建について
└補助ではなくインセンティブでは?
 └北神こそ受益者負担の限界事例では
  └少なくとも対等のバーターではない
   └北神救済スキームの核心にまつわる異聞
    └北神救済スキームと他の「都市型第三セクター鉄道」救済スキーム
     └他人の褌か、他人の尻拭いか
「都市型第三セクター鉄道」の再建(北総の再建案の提案)
 └無理筋が多い
  └北総救済スキームの核心
   └誰がための大仕掛けか?
    └
横レス:私たちはこのような議論を経てきた
     └北総・東葉の再建に必要と思われる点
    └「三方一両損」を演出する為の「大仕掛け」
     └「三方一両損」は一時の話
      └増資案への私の意見
       └Re:増資案への私の意見
       └回答
        └先の書きこみ前提についてのお詫びと、「回答」へのレス
      └
「三方一両損」が長期的には「三方一両得」になる
       └超部分レス(それ以外は後ほど)
       └Re:「三方一両損」が長期的には「三方一両得」になる
        └インセンティブの話
         └ファイナンス面から見た問題
          └ファイナンス面から見た問題(補遺)
           └ファイナンス面から見た問題(補遺2・自治体の財政規模)
        └御提示内容への私なりの回答です・・
         └値下げされない件の限定レス
          └間違い書き込みへの謝罪&其処まで民間運営を
                    信用できないなら公営化しかないのでは?
(以上前ページ)

 └本筋に戻ってスキーム案の評価を(総評)
  └総括レス・そもそも国の関与から来た話と考えると

本筋に戻ってスキーム案の評価を
 投稿者---和寒氏(2002/06/23 06:57:53) http://www.geocities.jp/history_of_rail/

 さて、本筋に戻りまして、北総+公団+新高速スキームについて論評します。TAKA様は「乱暴かもしれない意見」と自ら認めておられますが、はっきり申し上げておきましょう。このスキーム案は「乱暴」を通り越し「粗雑」です。話になりません。TAKA様には、基本的要件に関する自発的学習を前提とした、議論の差し戻しを要求します。
 細かな点を挙げていけばキリがないのですが、基本的要件に関する勉強不足は明白です。提案するならするで、もっと勉強してからにしてください。

 以前から明記しているとおり、私は新高速の是非について論じるつもりはありません。さりながら、「手法論」としてこのスキーム案には欠陥(というか粗)が多すぎ、評価に耐えうる内容になっていません。その線に沿って、筆を進めることにします。

 全体として最大の問題は、このスキーム案が「京成の利益最大化」を企図している点にあります。「会社経営が健全化しなければ運賃値下げは果たせない」というTAKA様の主張には一理ありますが、このスキーム案に運賃値下げを保証する項目は皆無です。「15億円を減資(原資?)に値下げ」は財源を示しているだけであって、値下げを保証する仕掛がありません。保証する仕掛あってこその、スキームです。
 そんな目的不分明なスキームだというのに、仕掛が大袈裟に過ぎ、しかも「受益者」の負担が重すぎます。さらにいえば「受益者」たる空港公団や都市公団の経営が傾いた場合、北総の財政課題を空港公団と都市公団に転嫁する形になり、しかもひとり京成のみが受益することになり、問題があまりにも多すぎます。
 まったくもって話になりません。しっかり勉強してから出直してください。

■問題点1:北総債務をなにとバーターするか?

 スキーム案では、北総と都市公団は債務を新高速会社に売却するとありますが、新高速は1,373億円もの債務をなにとバーターするのでしょうか。当然、北総公団線のインフラ所有権一式ですね? また、京成と新高速は2種3種事業者の関係になるわけですね? そして、京成は、北総公団新高速区間の列車を運行して、線路使用料を新高速会社に払うのですね?
 このバーターが成立しなければ債務の売却はありえないので、書き落としと判断しますが、こういう基礎的な事柄はきちんと記述しておいてください。全編を通じて、この種の粗があまりにも多すぎ、読み手としてはイライラします。
 ちなみに、インフラ所有権の移転なしでの債務売却は論外です。ありえない絵空事です。ですからそうではないことを前提に話を進めます。

■問題点2:

 スキーム案では、京成→新高速の線路使用料設定を44.2億円に設定しています。これは京成の支払能力を考えれば過小です。
 「上」会社たる京成の実際の支払能力は、下記のとおりです。

北総公団線部分での支払能力 :66.0億円※
スカイライナー課金 :14.2億円

:80.2億円

※平成11年度鉄道統計年報に記述された北総・公団線の財務成績

  営業収益 営業費用 うち減価償却費 営業損益
北総 115.9億円 74.8億円 24.9億円 41.1億円
公団 15.7億円 17.2億円 6.2億円 -1.4億円
131.6億円 92.0億円 31.1億円 39.7億円

 「上」会社の「下」会社への支払能力は、全減価償却費のうちインフラ部分比率が85%と仮定すると、
131.6億円−(92.0億円−31.1×0.85)=66.0億円

 京成は年額36億円もの差益を得ますから、プロジェクト期間20年間で合計720億円もの受益となります(ただしこれは名目額面で、後述する現在貨幣価値換算を行うと509億円程度に目減りする)。
 その一方で、空港公団(「アクセス改善協力金」を含む)・都市公団・千葉県の負担金は1,100億円(これもやや目減りする)ですから、これら負担金のおよそ半分ほどが京成への補助金ということになってしまいます。

※ちなみに新高速利用者負担金は利用に対する対価だから正当。しかし、これを負担金に組み入れる無神経さにはあきれてしまいます。負担金とは即ち補助金であり、受益者負担とはおのずと質が異なるのですから。こういう点にも、論の粗雑さがあらわれていると、私は評価しています。

※さらにちなみに、スカイライナー北総公団線区間での運賃料金収入30.5億円/年の計上がない点も、もの凄く気になります。

■問題点3:

 このスキーム案では、社会的割引率を考慮した現在貨幣価値換算を行っていないため、実際の新高速会社(あるいは資金負担する「受益者」のいずれか)は資金ショートします。
 「今の百円」と「10年後の百円」と「20年後の百円」とでは、価値が違うということを、御存知ないのですか。この現在貨幣価値換算は、事業評価において内部収益率を算定するにあたっての、基本中の基本、初歩中の初歩です。
 具体的には、社会的割引率4%(これは最も常識的な設定値)として、およそ340億円がどこかでショートします。その分、借入金が増えることになります。
 算出根拠は敢えて示しません。自分で確かめてみてください。事業評価の常識を知らずして、スキーム案を得々と呈示されても、片腹痛いだけです。

 「利用者便益」については、あまり知られていない面もあるので、レクチャーする気になりました。しかし、現在貨幣価値換算についてはまったく別です。これは、正味の話、初歩中の初歩です。私は、レクチャーする必要を感じません。
 しっかり自分で勉強しておいてください。テキストは世の中に多々あります。

※社会的割引率は、エル・アルコン様の記事中のエスカレ率(インフレ率)に相当します。このほかにも物騰とかデフレーターという表現がなされることもあります。率設定の違いは、資金調達原資の考え方の違いによるものでしょう。

※なお、エル・アルコン様御指摘の建中金利問題と、上記問題点は相似形です。

■問題点4:

 スキーム案では、北総は10割減資のうえ京成に合併される。そのため、新しい京成会社の1株あたり配当率は高まり、しかも元々の出資者たる千葉県・都市公団の経営権参画は排除される。
 これはスキーム自体が持つ問題点であって、矢切様からも同じ視点からの指摘を受けている。
 千葉県・都市公団は、新高速会社対京成の関係において、主導権を握ることは可能だが、現状の北総大株主である状態と比べて優位か否かについて、判断できる要素がない。なぜなら、新高速における主導権設定の仕掛に関する記述が、スキーム案に明記されていないからである。補足レスでTAKA様が記述していることは、可能性について述べているだけで曖昧模糊としたものであり、スキームによる保証とはいえない。
 当然ながら、将来京成が値下げする保証は全くない。むしろ値下げしないと考えるのが妥当である。

■問題点5:

 派生レスにおいて、TAKA様は「利用者は将来の値下げによって受益する」としておられますが、これはかなり乱暴な見方です。
 仮に20年後に100円値下げしたとしても、それは現在価値では47円程度の値下げでしかないのです。これは先に述べた現在貨幣価値換算の一部です。
(そもそも20年後の値下げでは、受益するのは我々の子供世代という、「世代間較差」について言及がないのも不満)
 繰り返しながら、現在貨幣価値換算とは、プロジェクト評価における内部収益率を算定するにあたっての初歩中の初歩です。これを知らずしての先の意見であれば、あまりに不勉強です。逆に知っていながら敢えて先の意見を述べているならば、利用者を誑かす詭弁を弄する破廉恥漢と批判されてもしかたないところです。

 さらにいえば、20年も経つと設備更新投資が始まることを、忘却してはなりますまい。現実の例としては、北大阪急行・泉北高速・東京モノレールなどに、累積債務をほぼ一掃した時期があります。ところが、「これから値下げによる利用者還元だ」という時期に、設備更新もしくは路線延伸などに直面し、結果的に利用者還元はなされていない、というのが実態です。北大阪急行は、車両更新しただけで坂を転げるように財政状況が悪化したのですから、更新投資も侮れません。
 「将来の値下げによる受益」といわれても、上記の実例を考えると空証文に近いといわざるをえません。

■派生問題:

 転換社債については、その仕掛をまったく誤認されています。これも同じく、しっかりと勉強しておいて頂きたい。

■総評

 このスキーム案についての私の評価を、以下に記します。

 以前の議論における対立は、「思想信条の違い」として容認できる余地がありました。しかし、今回の議論は異なります。厳しい指摘になりますが、不勉強であること目に余るものがあります。
 繰り返します。勉強不足です。もっと勉強してください。
 私はこれ以上議論を続ける意義を見出せません。もしTAKA様が議論の継続を欲するならば、まともなデータを揃え、かつスキームの背景に至るまでしっかり勉強してからにしてください。もっとも、まともに勉強すれば、かくも奇天烈なスキーム案など出てくることはないでしょうが。
 これだけの大仕掛を用意するからにはさぞ豊富な背景があるのだろう、と期待した当方としてはガッカリです。失望しました。

 よって私は、議論の差し戻し、及びスキームの基礎的要件に関するTAKA様の自発的学習を要求します。また、この件に関する私の参加は、この投稿をもって打ち切ります。

総括レス・そもそも国の関与から来た話と考えると
 投稿者---エル・アルコン氏(2002/06/24 00:19:54) http://6408.teacup.com/narashinohara/bbs

 レスの付け方、場所が難しいのですが、取り敢えず本筋の部分なのでここに付けます。本稿は和寒さんへのレスではないのですが、総評なので御海容のほど。

***
 さて今回の議論を経て、お気付きになったかと思うことが一つあります。
 そもそも、新高速の必要性や北総問題についての理解については然程差が無いにもかかわらず、ここまで意見が割れた原因。それは、国の関与についてです。

 必要な資金を誰が負担するか、という部分において、利用者と事業者が総て負担するのか、公的セクターのうち沿線自治体が負担するのか。それとも国が相当部分負担するのか。そこで国はどう関与していくのか。
 また、建設における鉄道公団の関与のあり方。特に既開業の北総や、エリアは異なりますが北神急行における鉄道公団長期未払金の負担が経営に重くのしかかっている現状から、そのスキームは是か非かという部分ですが、これも国が鉄道建設に関っていることから来る問題でしょう。

 成田新高速のスキーム単独で1,200億円強。北総問題解決を含めると2500〜3,000億円という巨費に達する事業ですが、先にも述べた通り、ここまで来ると各セクターの負担は3桁億に達するため、事業者の経営規模、自治体の予算規模に占める割合は莫大なものになります。事業者はその収益のほとんどをこの事業につぎ込むことになりますし、自治体もその独自財源の範囲を超えるような規模です。企業にとって、国際空港政策やニュータウン開発政策といった国土開発の根幹とも言える事業に携わることで、失敗したら既存事業も含めて「御破算」となるような投資姿勢が必要なのか、そしてそのような投資を試みる事業者に対して投融資する投資家が出るのか。また自治体にとっても、基本的に自主財源がほとんど無く、交付金や縁故債でようやくまかなうという構造において、奉賀帳だけが回ってきても、簡単に積み増しできるのかということです。

 国の各種補助金をトンネルさせる手段はありますが、資金の出し手と使い手が異なることは、事業に対する責任を曖昧にしがちであり、であるならば明確に国を関与させたほうが良いと考えます。
 建設における鉄道公団スキームにしても、本来、一般的な与信基準(伝統的な担保力重視の与信)では建設費の資金調達など困難な事業者に対し、事業収益による回収を前提にした信用供与を行うことで、鉄道事業を可能にしているという側面をもっと重視すべきです(日本政策投資銀行など政府系金融機関による制度金融もその一助となっている)。

 また鉄道事業による収益で中長期的には回収できるのであればまだマシですが、鉄道事業の意味が非キャッシュの便益を含んでおり、利益を享受できるセクターが必ずしも資金を負担したセクターとは限らない場合がほとんどです。
 それでも事業規模が小さければ自治体などの公的セクターは社会資本整備の「費用」に潜り込ませて済ますだけの体力はありますが、今回のように全体で4桁億、各自治体でも2桁〜3桁億という規模になった場合、内部補填にも限界があるため、キャッシュベースでの受益者負担という原則の無理が明確になってきます。

 もちろん、余力のある国が乗り出すことについてもその限界はあるのですが、国の分限を超えた事業を一地方が執行することはないと考えれば、地方の分限を超えていても国の分限の範囲内ですから、国の負担には理があります。
 もしくは、地方財源について大幅に国から移管することで対応すべきです。足下の議論でも、財源を国が握ったまま、事業遂行の各種義務だけを地方に強いる不均衡を感じたからです。
 ここの整合性を考えてから改めて受益者負担を訴えることについては、私も否定しませんが、現状では無理があるとしか言えず、ゆえに反対の立場を取るのです。

 以上、拙いですが纏めてみました。

鉄道整備にあたっての疑問
 投稿者---かもめ氏(2002/07/14 17:41:27)

鉄道整備にあたっての疑問
└これは誤解でしょう
 └Re:これは誤解でしょう
└インフラ整備事業とイベントの相関関係
 └限定的な相関
  └限定的な相関関係について
Re:鉄道整備にあたっての疑問
 └鉄道整備にあたっての疑問〜最後に

 皆様、お久しぶりです。

 早速本論に入りますが、鉄道が整備される上での様々な問題点のうち、私がもっとも疑問に思っているのが「オリンピックや国体とリンクした鉄道整備」です。

 古くは東京オリンピックと東海道新幹線の関係を思い浮かべる方もいらっしゃると思われます。そして、鉄道整備がペースダウンした最近ではこのパターンの割合が殊に増えています。
 具体例をあげますと山形新幹線(べにばな国体)、長野新幹線(長野オリンピック)、肥後大津電化(熊本国体)、埼玉高速鉄道(ワールドカップ)等々枚挙に暇がありません。そして、この「オリンピックや国体に間に合わせる」というのが大義名分になってしまっています。

 私は決して「建設反対」等と言っている訳ではありません。むしろどんどん建設して行って欲しいと思います。問題なのはオリンピックや国体なしでは積極的に整備が進まない現状です。長野が優先されて日本の背骨たるはずの東北や九州新幹線が後回しにされたり、大阪オリンピック誘致に失敗した途端に阪神西大阪線延伸や京阪中之島線がトーンダウンしてしまう(かつて名古屋でも同じことがありました)ことに歯痒さを感じて仕方ありません。

 不必要に立派なスタジアムとセットにしなくても、「日本の背骨」や「通勤ラッシュの緩和」が大義名分となり鉄道整備が進む日が来る日を願ってなりません。

これは誤解でしょう
 投稿者---和寒氏(2002/07/14 22:21:58) http://www.geocities.jp/history_of_rail/

  かもめ様、こんばんわ。

 私がもっとも疑問に思っているのが「オリンピックや国体とリンクした鉄道整備」です。
 古くは東京オリンピックと東海道新幹線の関係・・・・・・山形新幹線(べにばな国体)、長野新幹線(長野オリンピック)、肥後大津電化(熊本国体)、埼玉高速鉄道(ワールドカップ)等々枚挙に暇がありません。

→これは、受けやすい誤解ではありますが、やはり典型的な誤解といわなければなりません。
 いずれの路線もオリンピックや国体のためにつくられた路線ではありません。東海道新幹線は東海道本線の輸送力増強、山形新幹線は新幹線と在来線の乗換を解消する直通運転化、等々それぞれの目的を持っております。
 たとえ世界的なイベントでも、それを整備の目的に掲げた路線は、過去に例がないと認識しております。唯一あるとすれば、北大阪急行の万博会場支線くらいでしょう(万博期間のみの営業)。イベント目的の路線であれば、イベントが終われば営業をも終えなければならないはずです。
 ただし、それぞれの路線の開業時期に関しては、 「オリンピックや国体に間に合わせる」 ように設定される傾向はあるようです。

「日本の背骨」や「通勤ラッシュの緩和」が大義名分となり鉄道整備が進む日が来る日を願ってなりません。

→現状でも、既にそうです。
 そのように見えないとすれば、過去の鉄道整備事例において、開業までの行程設定に依るところ、あるいはそれを報道するマスメディアの影響が大きいわけですが。

Re:これは誤解でしょう
 投稿者---エル・アルコン氏(2002/07/14 22:43:39) http://6408.teacup.com/narashinohara/bbs

 「オリンピックや国体に間に合わせる」ように設定される傾向はあるようです。

 これは少し考えれば分かりますね。
 開業時期が近接している場合、また事業が進捗している場合、沿線でオリンピックや国体、博覧会その他のイベントが予定されている場合、そのイベントの直前に開業させないほうがおかしいです。
 つまり、事業者としてはイベントと開業景気の相乗効果を享受して利用者確保に弾みをつける営業戦略を持って当然であり、逆に間に合わなかったら営業面で大きなマイナスになります。

 例示のほか、総武線の複々線化(昭和47年)も「若潮国体」と同タイミングでしたが、7月15日の開業という設定は、国体輸送のほか、千葉局の書き入れ時でもある夏ダイヤに間に合わせる意味もあり、このあたりは営業上の都合で開業をあわせたと言えるでしょう。

***
 イベントのために開業する、というのは確かに北大阪急行の一部区間くらいです。ちなみに、今回のワールドカップでは、車庫への引込線を使えばより近いアクセスになると言われながら踏み切らなかった埼玉高速鉄道の例や(ここはJリーグでも使うので、今後とも無駄とは言えない)、電化して積極的になるのかと思ったら輸送力の問題と徒歩ルート遮断の問題で全面運休になったJRW和田岬線のような例もあり、ここまでくると商売っ気の無さも気になるところです。

インフラ整備事業とイベントの相関関係
 投稿者---TAKA氏(2002/07/14 23:46:50)

 皆様今晩はTAKAです。

 表記の「インフラ整備とイベントの相関関係」について、何をイベントと定義するか、インフラ整備事業を狭義で見るか広義で見るかで違ってきますが、私は相関関係は限定的にありと考えます。

 私はイベントに関してはオリンピック・国体等だけでなく、戦災・震災等の予期不可能の悪いイベント(ゲームみたいですが・・・)インフラ整備事業に関しては、鉄道だけでなく、道路・都市計画等まで含めて広義に考えます。そうすると何故相関関係が有るとも言えるかがご理解頂けると思います。

 基本的には良いイベントでも、悪いイベントでもそのイベントだけが目的で、大インフラ整備事業が行われたことは皆無であると思います。
 例えば東京オリンピックの時には「東海道新幹線」「首都高速道路」「環状7号線(西側部分)」と言う大インフラが構築されていますが、これらのインフラ整備事業の計画は「東海道新幹線」は戦前の東海道線輸送力増強工事の「弾丸列車計画」が発端ですし、「環状7号線」も1927年の「東京都市計画街路」にて策定されています。又首都高速に関しても基本計画が出来たのは東京オリンピック開催決定の前年1958年です。ですから計画自体はそのイベントの前に決定されていたというのが現実です。それは関東大震災のような悪いイベントと「帝都震災復興計画」、その計画の根本にあった後藤新平の「東京市政要項」でも同一の関係にあります。

 では計画自体には相関関係がないと言うことが分かったとして、それでも何故相関関係があるかと言えば、「大義名分」という問題です。基本的に上記計画には公的セクターの予算が必要です。公的セクターの公共事業投資予算ははっきり言って計画・構想間の壮絶な予算取り合いの結果実施されます。
 その予算獲得を有利にする「大義名分」としてイベントを利用される為、そのイベントに使われ新設されたインフラに対して、「オリンピックに間に合わせて事業実施」とか「イベントの地域に集中してインフラ建設」と言って特別に予算を獲得して、一気に懸案のインフラ整備を実施してしまおうと言う「官僚の知恵」がインフラ整備とイベントを結びつけているのです。
 
 だから「イベントの間に合わせてインフラを作る」のではなくて「イベントを大義名分に利用してインフラ作成予算を引き出す」のがイベントとインフラの相関関係でしょう。
 今の東京を見ると鉄道話ではないですが、「環状7号線」「青山通り」「国道246号線」等の道路は東京の中でも一般道路で高規格道路の代表とも言えますが、これらは「東京オリンピック関連街路建設予算」で大部分が作られています。この予算は当時の金額で710億円で当時の東京都の道路整備予算7年分に匹敵します。
 イベントを大義名分にすることで、これだけの予算を引き出せてその予算で懸案のインフラ整備事業を一気に進められるのですから、「イベントとインフラ整備に相関関係は有り」と言うことになります。
 しかし東京にしても、東京オリンピック以来これだけ集中的な一般道路インフラ整備は行われていません。東京オリンピック関連街路建設と首都高速道路建設がなかったら東京はどうなっていたのでしょうか?

 それに正論の「通勤ラッシュの緩和」「道路混雑の緩和」と言っても、それは何処の都市にでもあるとして、それだけでは予算獲得の競争には勝てません。ですからその競争に勝ち抜く為の切り札としてイベントを使うのですから、正論で押さずイベントを前面に出すと言う事も方法論として必要でしょう。
 そこら辺の裏的なテクニック的な事情も考慮に入れるべきではないでしょうか?

限定的な相関
 投稿者---和寒氏(2002/07/15 09:11:38) http://www.geocities.jp/history_of_rail/

 その競争に勝ち抜く為の切り札としてイベントを使うのですから、正論で押さずイベントを前面に出すと言う事も方法論として必要でしょう。

→このへんのことは、充分にありえる話です。
 少なくとも鉄道の場合、大規模イベント開催を整備目的の前面に出した例はありません。それは関連する史料を調べて頂ければ、すぐわかると思います。
 ではなぜイベントと関連づけられることが多いのか。それは、事業者側にとっても行政側にとっても、「関連づけた方が説明しやすい」からなんです。例えば「日本の骨格をつくるために東海道新幹線を整備する」というよりも「東京オリンピックに間に合うよう新幹線を開業させる」とコメントする方がわかりやすい(※後者のコメントには整備の目的が含まれていない点に注意)。これは聞き手の側にとっても同じことです。
 わかりやすい、しかし真の大義名分が隠されたかたちで、情報が流布しているため、誤解が定着している、ということでしょうか。

 喩えていうならば。
 吉川英治の「三国志」はわかりやすいし面白いけれど、エピソードの9割まではフィクションで、真の史実(陳寿「三国志」や「後漢書」など)とは乖離しているのです。
 世間に流布されているイメージ(誤解)と、真の大義名分との乖離は、この関係に近いのではないでしょうか。

限定的な相関関係について
 投稿者---TAKA氏(2002/07/15 19:45:54)

 予算獲得は「方法論」です。あくまでもインフラ整備に取り「イベント」は目的達成の為の「大義名分」にすぎません。だから「相関関係は限定的にあり」と言うことになります。
 又その限定的にありと言うところでも、「イベント」の会場周辺の直接的道路等整備の様な直接的な物から始まって、前述の例のような「イベント」を触媒にして既成のインフラ整備計画を推進するような中間のような物も有り、又和寒さんの言われたような例の「東京オリンピックに間に合うよう新幹線を開業させる」と言うようなスローガン的な物まで有ります。
 その個々の相関関係やそれぞれに違いますから、個々に検討しないと一概には言えないのも事実です。但し一般的に言えば、道路関係には相関関係が強く、鉄道関係には相関関係が弱いと言えると個人的には思います。

 ではなぜイベントと関連づけられることが多いのか。それは、事業者側にとっても行政側にとっても、「関連づけた方が説明しやすい」からなんです。

 説明がしやすいというのも事実ですが、「利用している」という方が分かりやすいでしょう。
 少なくとも日本の行政は色々な大・小かつ中・長期的インフラ整備計画を持っています。しかし日本では往々にしてインフラ整備計画を立案・実施するのに行政内・行政間・一般市民等の各種利害関係者の間で調整付かず又反対され、計画実施が困難になったり挫折することがあります。
 その様なインフラ整備計画に立ちふさがる困難に対して、対抗し計画を進めより優位な条件を引出し早期に計画を実施する為の「大義名分」としてイベントが利用されているのです。イベントと関連付けてインフラ整備事業を実施すれば「インフラ整備事業反対=イベントその物に反対」という図式も描けて、その図式に当てはまるのが怖くて反対の矛先が鈍るという効果も期待できますし、予算や支援等の獲得の口実や支援射撃になります。
 ですから過去の日本において「イベントはインフラ整備に利用されてきた」と言うことですし、それ自体は善悪は別にして否定できないと思います。
 実際東京は「関東大震災」「東京オリンピック」というイベントがなければ、今の都市の構造(特に道路)は出来ていなく、もっと狭い幹線道路が多く渋滞に悩まされていた道路が多かったでしょう。ですから必ずしも否定できる相関関係ではないと思います。

 まあ鉄道に関して言えば、それらのイベント関連のインフラ整備に関して直接的に関わる部分が少なかったことと、インフラ整備に税金が投入されることが
 道路より少なく、道路特定財源のような自由度の高い特定財源が無く、旧国鉄・自治体・民鉄等の国ではないセクターが実施したインフラ整備事業が
 大部分だった為、必然的に利用する必要性が少なくスローガン的利用が多かったと言うことになるでしょう。
  只引き金や切っ掛けになったことは否定できない面もあるでしょう。長野新幹線にしても当初は軽井沢以遠はミニ新幹線だったはずです。
 それが長野までフル規格になった背景には「長野オリンピック」が有ったでしょう。又山形新幹線の整備の真意には「東京との時間距離を縮めたい」
 「それにより産業誘致等の地域発展を図りたい」という健全な目的があったが、インフラ整備の大義名分として「べにばな国体」を利用したと言えるでしょう。
 ですから直接的と言うより間接的に利用してきた相関関係が鉄道整備とイベントには存在していたと言えるのではないでしょうか?

Re:鉄道整備にあたっての疑問
 投稿者---かもめ氏(2002/07/15 22:06:25)

 皆様、レスありがとうございます

 「オリンピックや国体とリンクした鉄道整備」についてですが、私のいいたかったことは皆様の指摘されていることとまさに同じです。決してオリンピックや国体の「ため」に造っている、ということが言いたいわけではございません。私の舌足らずがあったと思っています。

 では、何故これらのイベントが鉄道整備の口実になってしまうのか?
 それは、現在広く流布されているところの「イベント(特にスポーツイベント)は善」「鉄道(に限らず社会資本)整備は悪(無駄)」というイメージがあるのでは、と思ってしまいます。
 鉄道を整備するだけだと反発が大きい、しかも運輸関連の予算配分はもともと薄い、そのような状況でなおかつ整備して行くには「応援しないと非国民」というコメントまで出てしまっているスポーツイベントを利用するしかないな、と。

 残念ながら鉄道整備の必要性を正面から説くよりも「イベントに間に合わせよう」というほうがはるかに話が通りやすい、そんな現状があるわけです。
 鉄道運営側としても初期需要の起爆剤としてイベントに期待する、とういう考えがあるように見受けられます。

 個人的には何とかしないといけない、と思ってはいるのですが。

鉄道整備にあたっての疑問〜最後に
 投稿者---かもめ氏(2002/07/17 22:07:27)

 皆様、レスありがとうございます

 本文中に「傾向が殊に増える」という表現を使ったように、私自身全面的な相関関係にあるとは思っておりません。ただ、「開幕に間に合わせる」という本末転倒な表現が横行している現状に疑問を感じているだけです。

 結局のところ私が問題にしているのは、冷静に鉄道整備について議論していてもはなしが一向に進まないのに、スポーツ等のイベントがからむとある種の思考停止状態で何でもホイホイ話が進むという今の状況です。

神戸電鉄に挑む神姫バス「恵比須快速」ルポ  投稿者---エル・アルコン氏(2002/07/03 01:56:03)
 
 http://6408.teacup.com/narashinohara/bbs

 六甲山の向こう側で神戸電鉄と神姫バスのデットヒートは完全に神戸の近郊・通勤路線での争いとなっており、フラワータウン経由で北摂NTや丹波篠山に向かう特急バス、御坂もしくは第二神明玉津IC経由で、三木・小野・西脇への急行バスとぴったりマークしています。
 そして、2001年9月に開業した「恵比須快速」は、とうとう神戸市西区と三木市東部の、木幡から押部谷、緑が丘、恵比須と粟生線に張り付いた格好で、残る独占区は鈴蘭台地区だけというところまで追い込まれました。
 しかもこの4月にはそれまでの毎時1本から一部時間帯は2本に増発されており、バスの侵食は着々と進んでいるようです。

 仕事が早く片付いた今夕、その恵比須快速に試乗してみました。
 18時20分頃に大阪寄りのJR高架下にある神姫バス三ノ宮ターミナルに行くと、次の発車は18時45分。土休は三宮に出たお帰り需要を狙ってか昼下がりから宵の口まで毎時2本ですが、平日は若干時間が詰まる程度にとどまっています。

 高架下の橋脚間に櫛形に8列バスが入る(実は待機分を含めて2台縦列に入っている)ターミナルで、バス側で待つスペースが無いため、狭いターミナルの案内表示に10分前に乗り場が表示されるまでそこで待つシステムです。
 待つ間にちょうど30分発の高松行き、阿波池田行き、北摂のけやき台行きが発車しましたが、北摂特急は前後扉、34席がほぼ満席の盛況でしたが、高松行き、阿波池田行きともそれぞれ1人、2人と目を疑うような惨状で、好調が伝えられる明石海峡大橋関連とは思えない様子でした。

 10分前の改札の時点でゲートにはもう20人くらいの行列です。恵比須行きのほか、洲本行きと急行玉津経由西脇行きが同じ45分に出るからで、どれも利用が良いだけに早々に長い列です。
 乗り場8番が表示され、乗り場に向かうと、北摂特急や西脇急行でお馴染みの前後扉車ではなく、高速車タイプの前扉車(11列トイレ無し。補助席付き)です。結局改札時点で乗り込んだのは25人を超えており、結局38人まで膨れ上がりました。察するに、高速車使用は定員を稼ぐ狙いかもしれず、実際、運転席後ろには、5月から平日の恵比須駅発7時20分発は2台運行という掲示があり、朝の通勤利用もかなりあるようです。

 18時45分、発車です。ドアが閉まると誘導員が高架脇の道路にパッと出て、バス出発用のスペースを作ります。そこへ大外から我が恵比須行き、そして頭ハネのように西脇行きが割り込み、洲本行きは後ろにつきました。洲本行きは半分強の入り(このあと高速舞子に停まる)、そして西脇行きはほぼ満席と盛況です。
 R2から生田川で川沿いの道に入り、北摂特急や神戸北町への市営急行バスが停まる新神戸駅のバス停を通りますが、こちらは無停車扱い。新神戸トンネルに入ると、すぐ西神への山麓バイパスを分岐。そしてしばらく闇の中を走りました。

 トンネルを抜けると箕谷。西脇急行のように県道経由ではなく阪神高速北神戸線へ入り次の藍那で降りました。このあたり、東側のように峻険な六甲山系ではなく、緑豊かな丘陵地帯ですが、人家が少なく、押部谷や三木の住宅街との間に広がる緩衝地帯となっています。巨大な採石場を巻いて下り、山陽道(神戸淡路鳴門道への枝線)と交差すると最初の停留所でもある神戸複合産業団地。さらに降りて木幡に至るとようやく人里です。

 小幡から降車が出始めました。ここから栄駅、押部谷駅、緑が丘駅と停車停留所は総て駅にぶつけるという真っ向勝負です。ところが各駅3〜5人の降車があり、神鉄の苦しさが見えます。
 藍那を出たのは三ノ宮からわずか20分でしたが、押部谷では40分近く経ってます。県道がやや混んでおり、滞る中、新開地を18時52分に出た普通が抜いていきましたが、車内はガラガラでした。ちなみにこの電車に乗るには阪急三宮発18時40分です。

 緑が丘は非交換の棒線ホームですがロータリーは立派。バスはここで粟生線と別れ、住宅街を縫うルートに入ります。
 賑わう商店街の中程の緑ヶ丘中1丁目で5人降車と、このバスの狙いが明らかになってきました。緑が丘西1丁目西などという笑える停留所を過ぎると緑が丘はおしまいで、次は自由が丘です。東自由が丘からあかねが丘、西自由が丘と続く一戸建てが並ぶ一大ベッドタウンを通るうちに乗客は降りきってしまい、街を抜けた最後の吉田公民館前で1人降りると私だけになってしまいました。
 結局19時50分着の恵比須まで乗ったのは私一人でした。メインの自由が丘を考えると三ノ宮から1時間弱というイメージでしょうか。ただ恵比須は御坂経由の西脇急行がカバーしており、自由が丘へは志染から神姫ゾーンバスであり、なぜ志染行きにしなかったのでしょうか。

 ただ、緑が丘、自由が丘という粟生線の根幹を成す住宅街にターゲットを絞った直行型のバスサービスはやはり脅威です。毎時1本レベルでここまで狙うのですから、ある程度のフリークェンシーを確保した時、神鉄が壊滅的な影響を受ける可能性は非常に高いです(三ノ宮ターミナルの容量が増発を阻んでいるのかも)。関西私鉄の中でも神鉄のサービスレベル(ダイヤ、アコモ)は相当落ちるところに、高速バスクラスのアコモと運賃、時間で斬り込んできています(緑ヶ丘までバス640円、鉄道690円)。運賃は個札ならバスが安く、時間もほぼ互角で、駅からバス圏の場合は圧倒的にバス有利でしょう。

 帰りの神鉄で、下り電車を観察すると、志染の降車は30人台とか、電車によっては乗客全体で20人程度(広野ゴルフ場前)とか、急行ですら4両で160〜170人程度(押部谷)とか、両者の本数差があるとはいえ、輸送人員ではバスが案外とシェアを確保している感じが見て取れました。
 六甲の北側の道路網整備は過剰と言って良い好条件ですから、今後も神鉄の苦戦が避けられないところです。

 ちなみに、緑が丘駅からの神姫ゾーンバスは日中毎時1本、夕夜間毎時4本(土休は3本)、志染駅からのゾーンバスは日中毎時2本、夕夜間毎時4本(土休は2本)で、恵比須快速が毎時1本(土休夕方は2本)なので、特に自由が丘エリアにおいては乗車チャンスという点では、平日は半分、土休は日中半分、夕夜間はイーブンです(緑が丘エリアは駅から恵比須快速自体の利用が出来る。なお途中まで一緒の路線を含めると緑が丘は日中毎時4本、夕夜間毎時8本(土休6本)になる)。

 同じ神姫バスなので単純に競合とは言い難いですが、住宅街から見た利便性ではバスのほうが相当高いように見えます。
 なお、三木市のHPの「三木市への交通アクセス網」のトップの地図では、「新開地駅から55分」「JR三宮駅前から神姫バスで50分」「新神戸駅から車で40分」となっており、どうも電車の地位が見て取れます。

三木市 http://www.city.miki.hyogo.jp/klesur/access.htm

2004.11.02 Update


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