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(過去ログ-料金制度・ETC論-No.)

別納制度を巡る問題の所在

投稿者---エル・アルコン氏(2003/06/30 14:42:11)
http://6408.teacup.com/narashinohara/bbs

今朝の大阪朝日の1面トップは、JHが別納制度により97~01年度の5年間で1兆円の減収になっているというものでした。もちろんハイカやETCでの割引もあるわけで、単純に割引による「減収」というのも何だかな、と思ってみますと、社会面に、ある事業協同組合が億単位の別納制度の差益を得て、さらに利益を所定の手続を経ずに処分し、組合員に還元していなかったという記事が出ていました。

さて、両方の記事を読めば、何が問題かということはだいたい分かるのですが、別納制度を存置しているJHが悪いという1面記事と社会面の猪瀬直樹氏のコメントは妥当でしょうか。
以下、とかく言われる別納制度について考察したいと思います。

●別納の趣旨と利用者

大口利用者を対象に、預託金(若しくは金融機関の保証)を積むことにより割引運賃で、かつ1ヶ月締め後払いで支払える制度です。
月額利用料金が14000円、7万円、70万円、140万円、280万円、700万円をラインに、それぞれその金額を超過する部分を5~30%まで5%刻みで割り引いており、例えば月額1000万円の利用であれば、平均で24%引きとなります。

 この対象は個人・法人を問いませんが、預託金制度や利用額の問題があり、ハードルが高そうに見えます。ところがここに落とし穴があり、中小企業等協同組合法による組合組織がこの制度を利用出来るのです。つまり、同法による事業組合に加盟すれば、組合名義で別納制度が利用出来るわけで、ボリュームもまとまりますから簡単に最大限度の割引適用が可能になります。

●記事が訴える問題点

本来中小企業等協同組合法によれば、組合員の利益の為に組合は存在し、利益も組合員に還元する制度趣旨ということが出来ます。ところが、組合員に提示している割引率と出来上がりの割引率に乖離があるため、その差額が組合の差益になっているということです。
今回のケースではさらにその差益を還元しないばかりか、総代会での承認を得ずに他の支出に当てていたとのことです。

●何が問題なのか

もちろん、大口利用者を優遇する「別納制度」自体が悪いと見ることも出来ます。
しかし、そもそもの問題として、回数券や定期券、マイレージなど世の中に存在する大口利用者優遇の総てを否定することになります。
 よく言われるETC前払割引との関係でも、利用金額を考えると、ETCの5万円前払以下の割引というのは整合性が取れないわけです。

では、事業組合の利用が悪いのか。
確かに大口利用者向けサービスの抜け穴どころか、超大口利用者向けのサービスを享受出来るという結果は制度趣旨を大きく逸脱しているように見えます。
しかし、中小企業等協同組合法を見ますと、その9条の2で、「生産、加工、販売、購買、保管、運送、検査その他組合員の事業に関する共同施設」を事業目的にしており、中小事業者が共同で大口ユーザーとしての効果を享受することが想定されたシステムであり、大手企業であっても共同購入や物流の統合はポピュラーな手法なだけに、これを高速料金といった特定の分野だけ否定することは困難です。
また、企業向け文房具の取り次ぎ販売というビジネスモデルが成功を収めていることは有名ですが、このように「協同することで大口ユーザーとなり安く上げる」ということ自体がビジネスになっている以上、その行為が問題とすることも難しいです。文房具は良くて、通行料金はダメという説明はどう考えても不可能ですし。

結局、明らかに問題だといえるのは、総代会の承認を得ない利益処分と、差益の非還元程度であり、その意味で社会面の記事は問題の指摘として良い目の付け所ですが、1面のように別納制度自体が問題というスタンスは、同じような事例が世の中にゴマンとあるにもかかわらず、JHだけを槍玉に挙げたという為にする記事の一種です。

●別納制度はどうあるべきか

実は私も事業組合による利用は制度の抜け穴という見方をしていましたが、事業組合の存在についての根拠法がこういう利用法を想定している以上、JHの不備や努力不足というのではなく、立法府、つまり議会が事業組合にそうした便益を与えることを予定していることに他ならず、これを禁止することは難しいです。
現行法では事業組合が、経費分以上の「差益」を総て還元した場合、何等批判すべきところがなくなるわけで、JHは形式要件が整っていたら別納適用を拒めないというところは注意すべきです。

割引率の高さについては確かに目を引きますが、遠距離割引などの割引制度の拡充や、全体的な値下げを前提にして、段階的に割引率を下げていくという方向で、実質の負担増を抑える形で別納ユーザーに偏重した割引制度を解消の方向にもって行くのが落としどころでしょう。
ETC普及の妨げになっているという批判に対しては、別納カードにETC機能がついているということもあり、「別納料金適用=ETC利用のみ」として、割り引く代わりに料金所渋滞解消に協力せよ、という取引を強いてもいいでしょう。

「とりあえず」廃止では…

投稿者---551planning(2003/09/19 23:51:25)

エル・アルコン様の詳細な指摘にあるように、システムの不備解消には広い視野が必要だと思うのですが、流れはまさに「とりあえず」なようで…終いには「置き土産」とまで揶揄されていますし。

『すべて値下げに回せば一般の通行料を12%下げられる計算に』というお題目はいざ知らず、『ETCなどを使って悪用が難しい大口割引制度などを検討することに』とのことでは同時並行的結論ではないということを如実に示すもの、やはり「とりあえず」なんですね。
個人的には単純に見て、別納制度そのものの廃止に振れる事が正しいのか疑問に思っているところです。ただ制度の柔軟性が結果的に温床となり、では締め付けをというところで別途癒着なりが…という事が当然に想定できるところ、廃止という方向性は止む無しということになるのでしょうが、やはりそこにはそれに代わりうる対処策が同時に無ければというところ、一方でETC別納カードという存在がある以上は話はそう難しいものではないとも思うものの…。

安直な予定調和の茶番

投稿者---エル・アルコン氏(2003/09/21 01:37:46)
http://6408.teacup.com/narashinohara/bbs

この問題、20日の大阪朝日は社会面トップで「高速料別納 廃止で波紋」「健全組合にもツケ」「中小業者倒産の恐れ」と、一見「別納廃止反対?」という記事を掲載しています。

新聞の報はマッチポンプの極みで論評する気も起こりませんが、悪用があるから悪用者を厳しく処断、なら筋は通りますし、制度そのものがおかしいのであれば制度を廃止しても問題は起こらないはずです。
しかし、前にも述べた通り、超大口利用者への優遇や、中小事業者の協同購入等による競争力強化という制度の根幹を否定することは甚だ疑問であり、今回の問題が制度否定の方向で収束するというのは、悪用者にとっては追求が無く「やり得」、真面目な利用者にとっては制度が無くなって「一大事」という最悪な結果になります。

運送業者にとって、顧客とは別納割引込みの運賃で契約を仕切っている訳で、それが廃止になったからといって過当競争気味の業界でそれが顧客に転嫁されることはまずありません。逆に価格競争力のある大手に対抗すら出来なくなったり、無理なコストダウンのツケがドライバーの労務費や労務管理に回ることも予想されます。
さらに、記事中でも関係者から指摘がありましたが、別納は利用2ヶ月後の支払であり、それが現金ベース、もしくは現行ETCのように割引適用は前納となると、主たる経費で、かつこのご時世、貸し剥がしがあっても新規の運転資金を貸すとは思えず、資金繰りに行き詰まる可能性が高いです。見出しの「倒産の恐れ」とはまさにこの部分です。

***
記事には民営化推進委の猪瀬委員のコメントが載っており、「放置を続けた公団・国に責任」とあります。そして「別納制度と似た制度をつくって別納制度の利用者をそちらに移すだけなのであれば、廃止する意味は全くない」と述べています。

そもそも、悪用者の摘発を適正に行うだけの話であり、別納制度自体の廃止については、協同組合法の制度趣旨や中小事業者の資金繰りという問題も含めて、「独占機関」でもある公団が優越的地位を元に一方的に実施し得るのかという問題があります。
悪用の放置については、表面上は確かに監督者の公団の責任でしょう。しかし、どうしてそういう事態が横行することが可能だったのか。それは公団と組合の馴れ合いだけでは出来ない問題です。

公団を民営化するという流れの中で、取り敢えず公団にすべてを被せて、という安直な予定調和としか見えない今回の廃止劇ですが、いろいろなしがらみやタブーを丹念に調べ抜いた「ミカドの肖像」が出世作となった猪瀬氏がそれで良しと考えているのであれば、大宅賞の看板が泣くというものではないでしょうか。

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大口利用優遇は必要?

投稿者---774氏(2003/09/21 13:47:23)

大口利用優遇の必要性の根拠を

もちろん、大口利用者を優遇する「別納制度」自体が悪いと見ることも出来ます。
しかし、そもそもの問題として、回数券や定期券、マイレージなど世の中に存在する大口利用者優遇の総てを否定することになります。

だけで済まされていますが、本当でしょうか?
世の中にある他の大口利用優遇は、サービス提供者の利益につながっているはずですが、高速道路の場合はどうでしょうか?

事業者側のメリットと社会的要請

投稿者---エル・アルコン氏(2003/09/21 22:09:32)
http://6408.teacup.com/narashinohara/bbs

大口利用者へ優遇することが事業者側の利益につながるということは、すなわち割り引いても大口利用を確保することで、固定費負担の高い事業の収益確保、改善になるということでしょう。郵政事業において全国一律料金と配達網が企業DM取扱に支えられているのもその典型ですし。

高速道路の場合も当然そうした側面があります。民営化議論でも結局は不採算路線を語る尺度として利用台数があがるわけで、最近は各種社会実験で通行料金を下げて利用を確保するという動きがあるのもその一環です。大口利用者への優遇については、確かに減収という面では無視できないものがありますが、無料の一般道路という「ライバル」、また他交通モードとの競争を考えると、道路網の整備と維持を前提にした時、返済原資と維持費になる一定の収入確保という意味で事業者に貢献しています。

もう一つは上記の社会実験の主題にもつながりますが、生活道路的色彩の濃い一般道路からのシフトを促すという社会的効果があります。つまり、社会的要請から敢えて「損失」を厭わずに利用優遇を実施している面があります。ETCの長距離割引はその典型で、コストダウンのしわ寄せで超長距離を下道で走るケースが増えているなか、高速道路に本来の長距離流動を担わせるという意味があります。
もちろん、モーダルシフトその他で環境に優しいスタイルの調整にすればいいという考え方もできますが、道路利用に比べて高い利便性やコストを誰がどう負担するのかという現実的な問題の解決を提示しない限り非現実的な話です。

社会的要請という意味では別納制度を事業協同組合に適用するのも当てはまりますし、鉄道などの通学割引、障害者割引や戦傷病者割引なども同様ですが、このあたりは民営化を実施した場合に同様の施策が継続できるのかという問題もあります。税金による補助で「新会社」に実施を依頼するとしても、その補填がコストを切り詰めた結果のミニマムロスなのか、社会実験は自ら望んでの話でないから別段の対応をせずに、単に得べかりし損失を機械的に補填するのかという問題が生じます。

そう考えると、民営化推進委が別納割引の廃止を訴えるのもある意味当然の話で、償却も進んで採算が取れる路線だけを引き継ぐ前提であれば、独占事業ですから別に割引メニューを揃える必要も無く、増してや社会的要請にホイホイ応える必要も無い訳です。

Re:事業者側のメリットと社会的要請

投稿者---774氏(2003/09/23 22:38:10)

机上の論理かもしれませんが(以下、大口=大企業、小口=中小企業と単純に考えています)

そもそも一般道路との競合が生じること自体が問題だと思います。料金が受益の範囲を超えているわけですから、まず受益に応じた適正な料金体系(大型・長距離料金値下げ等)に改めることが必要ではないでしょうか?適正料金にすれば大口利用者を優遇するメリットはなくなります。

現状の料金体系の不備を大口割引で済まそうとするのは、そのつけを小口利用者に押し付けているだけで、小口利用者が組合設立という負担を強いられるのは問題です。大口・小口に対して中立であることが社会的要請だと思います。

大口割引でなく、例えばトラック割引で済ますことはできなかったのでしょうか? 大口利用者に比べれば小口利用者は少ないので、大した負担にはならなかったと思います。大口利用者のエゴ(小口無視)が見え隠れしてならないですが。

実は小口に辛い制度廃止

投稿者---エル・アルコン氏(2003/09/23 23:12:10)
http://6408.teacup.com/narashinohara/bbs

もちろん料金水準の「適正化」が最も効果的であることは論を待ちません。  ただし、高速道路の場合はその建設コストの回収、維持コストの徴収という問題がありますし、もっとも極端なケースとして無料化を実施した場合、「条件の良い道路に集中する」という当たり前の裁定が働き、高速道路側の容量が地域全体(IC間以上に亘る流動全体)の流動を満足させない限り、たちまちパンクするという問題があります。

***
大口と小口の関係論になると、例えばハイカ、ETCの割引も一種の「大口割引」ですし、道路以外のケースも皆当てはまります。
逆に小口利用者に大口と同じ土俵を提供したという意味では優れた制度だと思いますが、その為に不可欠な協同組合という中間組織の介在そのものが不正の温床になってしまったのは制度の欠陥といえます。

あとは、業務利用者に事実上の金融を付けている機能の代替をどうするのか。
これは非常に重要な問題です。
運送料金が都度払いでなく、月末締めXヶ月後支払というような商慣行の中、別納利用により回収した代金で支払うことが可能でした。それが都度払い、またETC前払割引利用となると、そのX+1ヶ月分の資金手当てが必要です。
もちろん資金にゆとりがあればETC前払割引+長距離割引により絶対額としての通行料金をセーブする道もありますが、多くの業者、特に協同組合に参加して利用しているような中小業者にとっては夢のまた夢です。

大口割引と公共性

投稿者---774氏(2003/09/25 23:38:34)

私の議論の出発点は、公共性のある事業では「大口・小口(会社の規模)に対して中立であるべき」ということです。つまり、特定の会社が競争上有利な立場になるようなことは国がすべきではないということです。

ハイカ・ETCの割引については、額が小さいので私の議論の出発点を否定するものではないと考えます。もちろん厳密な区分はできませんが。

また、一般社会で大口割引が当然という点については、公共性のある事業にそのまま当てはまるかは別の問題ではないかと思います。 例えば、

  • 一般道路建設のために運送会社が負担している税金
  • 航空会社の支払う着陸料・燃料税

などは大口割引されないのが普通だと思います。

***
単純化し過ぎかもしれませんが

●「大口割引は当然」から出発すると
 「大口割引による収入確保」双方にメリット結論「大筋で問題なし」
 「別納組合」社会的要請から導入
●「大口・小口(会社の規模)に対する中立」から出発すると
 「大口割引による収入確保」出発点に反する認め難い制度疑問「これしか方策がなかったのか?」
 「別納組合」単なる彌縫策

***
私の疑問を理解してもらえると嬉しいのですが。
ただ単に、私がひねくれているだけのような気もしますので、興味がなければ捨て置いてください。

最後に、メールアドレス不記入の件、お詫びさせていただきます。

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Re:大口割引と公共性

投稿者---エル・アルコン氏(2003/09/26 15:11:28)
http://6408.teacup.com/narashinohara/bbs

論旨理解致しました。
この論点は出発点の違いでもあるので、これ以上の議論は困難でもあります。

ただ、現実問題として、高速道路のほか、電力、ガス、水道、電話、郵便といった公共・公益事業のあらゆる分野に大口割引と言うものが存在するということがあります。
一方で、税金のように累進性を持って徴収されるものもあるわけですが、これは利用する(=支払う)ことに対する自由があるか、必ず支払わないといけないかの差と見ることもできます。

どちらが公共・公益事業の料金として相応しいかとなると、難しいですね。おっしゃるように規模に対する中立に軸足を置くと、「公平」の実現が容易ですが、現行の社会の「常識」をある意味ひっくり返すことになりますから。


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