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【検証:近未来交通地図】<道往かば〜高速道研究>
(過去ログ-道路公団民営化編-No.503)
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道路4公団民営化 猪瀬論文への批評
 投稿者---エル・アルコン氏(2001/10/07 23:53:58)
 http://6408.teacup.com/narashinohara/bbs
─横レス・公共・公益事業における信用リスク
 └道路公団民営化論議はだんだんズレ始めている
 └公務員性善説の限界・コスト意識の過度の欠如によるデメリットの克服方法は?
  └補足
  └結局は公務員=仕事をしないということがすべてなのかな?
   └Re:結局は公務員=仕事をしないということがすべてなのかな?
    └Re:結局は公務員=仕事をしないということがすべてなのかな?
     └公務員=仕事をしない、なんてことは無いですよ
      └Re:公務員=仕事をしない、なんてことは無いですよ
      └公務員は大変ですね。
       └Re:公務員は大変ですね。
     └公務員の評価は民間のようにはいかないのかも
      └横レス
       └横レスの横レス
        └横レスの横レスに横レス

●はじめに
 道路4公団の「解体」は小泉内閣の「構造改革」のシンボルとなった感があります。これを推進しているのが石原行革担当大臣とその私的な諮問機関である「行革断行評議会」で、委員の事実上の代表ともいえる猪瀬直樹氏の精力的な著作で「分割民営化」が世間に浸透しています。
 私は道路4公団の「破綻」論に懐疑的であり、「分割民営化」に反対していますが、この最近の流れや著作を踏まえ、私なりの批評をしたいと思います。

 なお今回俎上に上げるテキストは専ら文藝春秋2001年10月号の猪瀬論文「道路公団「解体」を急げ」に依ります。

●道路4公団の現況についての論評
 道路公団問題での論調を見ると、専ら「経営が破綻している」という櫻井よしこ氏に代表される論と、「このまま無定見に建設が進むと「第二の国鉄」になる」という論の2つに大別されます。以前から私は、もし債務超過やその惧れがある経営破綻状態にあるというのであれば、公団の民営化は本源的に不可能であり、債務を分離=国民負担にして民営化することは、黒字のキャッシュフローという美味しいとこだけを取ろうとする御都合主義と批判してきました。

 今回の猪瀬私案(行革断行評議会の「試案」であるが、後述するように敢えて「私案」とする)によると、道路4公団、特に日本道路公団は巨額の償還準備金への繰入れという項目の建設費償還を毎年行っており、政府補給金と政府出資金をネットした7500億円というキャッシュフローを4公団で生み出している(本四公団が900億円ほど食いつぶした後の数字だが...)黒字経営という認識では私と共通しています。
 さらに経営破綻論の骨格となる減価償却費の取り扱いですが、猪瀬私案では高速道路の使用可能性・耐用性を踏まえ、償却資産とはしていません。これはキャッシュフローを極大化する(=黒字幅を大きく見せる)トリックと言われかねない処理ですが、公共財である道路を償却資産とする規則が無い以上正当といえます。

 なお道路資産を償却資産とした場合、償還準備金に充てられる利益はその分減少しますが(それでも黒字は2000億円程度確保できることに注意)、非キャッシュ項目である減価償却費は投資キャッシュフローの上ではそのまま自己資金となります。
 そのため、浮いた資金は繰り上げ償還・返済にまわすか、道路債券などの起債を減らすことになりますから、利払費用を中心とした金融収支が大幅に改善します。
(必要以上に準備金を積み立てさせられ、借りなくてもいい有利子負債に回っているともいえる)

 「分割民営化」論が論理破綻しないためには公団の経営・資産が民間企業として成り立つに値する健全なものという前提が必須ですが、猪瀬私案がそのハードルをクリアしている点は評価できます。

●事業の永続性についての論評
 現在建設中の433kmを除き新規建設をストップすることで、設備債務の固定化を図り、それを運営会社から得る30年間の賃借料で償還するというのが猪瀬私案の骨子です。
 通行料収入−費用の収支差異(償却前営業収支)を賃借料の最低落札価格とすることで、保有会社(=債務管理会社)は民間企業になったことによる外部流出を被ることを回避し、運営会社は支出の削減次第で収益を上げうることになります。

 ここで猪瀬私案では通行料金の値上げ禁止を契約条件とするとあり、メンテナンス業務は運営会社負担、SA、PAの付帯事業を新たな収益源とするとしています。
 また30年(状況によっては短縮も有り得る)の償還期限完了後は、道路資産を国有化して負債償還見合いの賃借料を見直し、それを含む道路運営管理コスト相当額を通行料と設定して値下げを直ちに実施するとあります。

 ここは分割民営化になっても利用者に不利益が発生しないという得心の部分でしょうし、「毛バリ」よろしく「民営化=無料化」というのでないことは評価できます。無料化するということはその会社の最大の収入が無くなることですから、その状態で経費をまかない、民間会社として配当金を出すということは錬金術にも等しいのです。

#猪瀬私案を無料化と誤認したり、無料化と喧伝するメディア(ex.既述のニュースステーション、雑誌「正論」2001年11月号の屋山太郎氏など左右問わず見られる)の存在には呆れを通り越して為にする何かを疑わざるを得ない。

 ただ、償還期間中のスキームで問題なのは、収益に上限を設けて規制した場合、運営コスト変動の吸収原資をメンテナンス費用に向けたり、最悪は吸収しきれずに経営危機に陥る懸念もあります。つまり利用者、経営ともにリスクが大きいのです。これは何も絵空事ではなく、カリフォルニア州で起きた電力危機の根底にあるスキームと同じなのです。(小売電力料に上限が定められているためコスト上昇をヘッジ出来なかったうえに、設備投資もしていなかったため経営危機〜電力供給の停止に至った)

 また償還期間完了後も含めて、通行料金に一定の、かつ強力な規制を敷くことと、民営化の理念が相容れるかという問題があります。 逆に規制が無い場合、民営化によって利用者の利益になるかというと、独占の進行過程における競争下ではいったん見られるが、寡占が進むと一転して料金その他のサービス提供水準が劣悪化するという独占における弊害の教科書的な進行が見られることは事実です

●今後の道路建設についての論評
 凍結後の建設について、猪瀬私案では国土交通省の直轄事業や地方自治体の事業として行うということと、建設途上で終わってしまうインフラについては道路4公団とは別会計の高規格道路(直轄事業)に適正価格で売却するとあります。

 そもそも公費で建設して無料が原則の道路になぜ有料道路があるのかという原点に立ち返ると、これほど妙な話はありません。
 限られた予算での建設ではいつになるかわからないから、利用者負担の原則で通行料を取り、それを建設費返済の原資に充てるということであり、営利事業を営むという目的ではありません。
 猪瀬私案もそれを理解しているから高規格道に代表される直轄事業や地方事業による整備を否定していないのでしょうが、ではなぜ道路4公団だけ営利事業になるのか、その線引きの説明がありません。

 今後の道路建設・整備も含んで民営化するのであればまだしも、その部分は切り離して、という絵なら誰でも描けます。本件はいわゆるプロジェクトファイナンスに類するスキームともいえますが、プロファイの要諦は、設備の建設とそのコストの回収スキームに尽きるのであり、建設は「官」、それも直轄事業で、というのでは、いわば現状より「官」頼みであり、「構造改革」どころではない話です。
 民営化のお手本としてイタリアの企業がよくあがりますが、これは建設・運営の両方を営むとはいえ、まだ建設をしていないという「実績が無い」会社に過ぎません。このような企業を視察して大いに満足した担当相の鼎の軽重は問われるべきでしょう。

●分割民営化についての論評
 広域競合ですが、結局猪瀬私案を見ると、川口・三郷−郡山で東北道と常磐・磐越道、東京用賀・高井戸−小牧で東名と中央道、神戸−広島もしくは山口で中国道と山陽道しかありません。通常の利用でこの両者を選択関係におけるユーザーはかなり限られますし、それも高速バスやトラック定期便など「営業活動」で決するであろう層がほとんどであり、我々の実感とするところにはなりづらいでしょう。

 なお、民営化によりSA、PAのサービス向上を謳う向きがありますが(この部分は今回の猪瀬私案には無いが、他所でのコラム等で触れている)、民営化により画一化ではなく各地の郷土色豊かなサービス提供で利便性向上、ということは期待しないほうがいいでしょう。
つまり、外との出入りが無く独占市場であるSA、PAにおいては、(地元系を中心にした)外部業者にかえて直営化を図ったり、地元企業へ資本参加して事実上直営化し、画一化に至る可能性のほうが高いのです。

 例えば旧国鉄の分割民営化後、供食サービスの分野を見ると、NREによる首都圏弁当業者への資本参加や駅蕎麦の「あじさい」ブランドへの統一(JRE)、新幹線ホームや駅構内におけるSPSの売り場の確保・拡大(JRC)、直営弁当(おこわ)店の展開(JRW)など枚数にいとまはありません。

#JRWの件は、岡山駅で全国的に有名な「祭寿司」の業者の場所を変えてまで展開するなど積極的だったが、後に撤退したようで、他社とは一線を画しています。

●手続についての論評
 本来この問題は国土交通省の所管ですが、小泉首相の指示(=支持)の下、行革担当大臣が国土交通大臣の所管をあれこれするというねじれた関係になっています。国土交通省内部の「抵抗勢力」を問題視するのであれば、国土交通大臣のリーダーシップの問題であり、その任免権は首相が持っているのだから、相応しい人物に替えるだけでしょう。
 本来の所管組織を残したまま、別組織に担当させる二元行政にロクなことはなく、大戦中の東条内閣で、外務省と別に「大東亜省」を設置し、「大東亜共栄圏」関係の外交を担当させたのが思い浮かびます。

 また、今回の「行革断行評議会案」に何がなんでも従わせようという首相の強い意思が見て取れ、国土交通省の対案を悉く評価することもなく却下していますが、道路整備その他立法府マターの問題を先にここまで絞り込む手続に問題はないでしょうか。
 猪瀬直樹氏という著名人をメンバーに迎え、各種メディアで積極的な「宣伝」をしている露出度の高さから、世間の大勢のようなイメージが醸成されていますが、この「行革断行評議会」が、法律や政令その他に全く基づかない、内閣の一メンバーに過ぎない石原行革担当大臣の私的な諮問機関に過ぎず、その人数も僅かに5人ということは案外と知られていません。(唯一公的な根拠といえば内閣官房行政改革推進事務局の「平成13年6月」という日時を特定できない告知のみ)

#その意味で、道路公団問題における猪瀬氏と櫻井氏の「活動」ぶりは特筆ものですが、逆を言えば著名な評論家である両氏の露出度の高さが世論形成においてある種の「錯覚」を惹起している点は否定できない。

 本来この私案(「試案」と敢えてしなかった理由はこの評議会の性質による)はあくまで大臣の私的な懇談会が出した一つの案に過ぎず、立法府において討議のうえ決定すべき話です。ところが対案を検討することもなく差し戻し、意に添う案を提出させようとするプロセスは非常に不透明です。
 猪瀬私案はあくまで私案であり、国土交通省が出さないと立法府に送れないという根源的な問題を抱えているからこそ、猪瀬私案を露出して外堀を埋めようとしているのではという邪推も成り立つのです。

●おわりに
 冒頭にも述べたように道路4公団の「解体」は「構造改革」のシンボルと化した感があり、ここまで来ると簡単には引き下がれないところに来ていることは反対派の私とて否定できません。
 しかし、「解体」という「手段」によって何がしたいのか、どう変わるのか、そして国民の利益になるのかという目的及び効果の部分が、小泉内閣の一連の政策に共通する抽象的な表現の域を出ない不透明なものであるうえに、ここに来て言わば面子の問題となって、とにかく解体しないといけないという「目的」と「手段」のすり替えが生じています。

 猪瀬私案にしても、現状認識については他を圧するものがあるだけに、それをなぜ分割民営化でないとできないのか、という手段の比較検討が無いのが問題なのです。
 一途な思い込みがこの内閣の特徴であるといえばそれまでですが。

横レス・公共・公益事業における信用リスク
 投稿者---エル・アルコン氏(2001/10/09 17:51:13) http://6408.teacup.com/narashinohara/bbs

 自己レス&横レスですが、事業の永続性について、今回の特殊法人改革ではあまりにも懸念が大きいです。特に住宅金融公庫の解体論がそれで、「超長期固定」という公庫のメリットに対し、民業圧迫という批判はありますが、民間で代替できるのでしょうか。
 確かに金融機関からは各種の「超長期固定」商品が出ていますが、利用者が享受しているのは超長期に亘る「商品スキーム」と同時に、超長期の「信用リスク」なのです。この部分の論点が抜け落ちているのが足下の議論や解説で、35年ローンを組んだ金融機関が5年目で破綻した場合、同条件でローンが引き継がれる保証は全く無いのです。
 例えば、足下の低金利を利用して5%の固定金利を組んだのに、5年後、長期金利が15%に上昇したところで借り入れた金融機関が破綻したとしましょう。このとき、5%のローンを15%のマーケットで調達して提供する奇特な金融機関がいるかどうか。最近改定された銀行取引約定書では、破綻の時点で期限の利益(取引の期限まで返済義務を負わない)をお互いに喪失し、強制弁済になります。

 道路4公団の場合も、民営化といいつつ、その運営会社の継続性や、スキームの継続性に確たる保証はあるのでしょうか。国が保証するのであれば偶発債務ですから改革の意味を為さなくなります。かといって強固な規制産業にするのであれば、民間の顔をした特殊法人といっても過言ではないのです。

***
 結局、公共・公益事業には民間企業による運営は馴染まないのであり、契約でサービス条件を縛るPFIが限度でしょう。理想は独立採算制(必ずしも黒字化を意味せず、構造上赤字なら必要最小限の赤字経営を目指すという意味)で、公的セクターが運営するのがベストと考えるようになっています

道路公団民営化論議はだんだんズレ始めている
 投稿者---とも氏(2001/10/10 01:17:47) http://town-m.vop.jp/

 ともです。

 いやいや猪瀬氏の道路公団へのバッシングとさえ言える強烈な意見にはすさまじいものがありますね。氏のおっしゃること、正しいこともありますし、また「オイオイ」ということもありますね。
 ただいえるのは、基本的に「道路公団の解体=公共事業を改革」するという構図をマスコミと「行政性悪説」をベースに作り上げているのかなという感じです。

 僕は基本的に道路公団の分割民営化には反対です。そもそも議論がまったくもってズレていて、本当に国民負担を軽くすることを考え、経済効率を考えるのなら、すべての高速道路を管理費程度の有料にすることを考えるのが筋であって、それを「道路公団が赤字(ではないのだが)だから解体」というストーリに結びつけ、なおかつ小泉改革の本来の趣旨からすればとっくに解体されていいはずの特殊法人がいくつもあるのにそれを無視して、おそらく自民党建設族以外は国会議員の反対がない道路公団の解体から入ろうというのは、税を取れるところからとるとかと同じです。
 しかも、新規建設はさせないといいながら外環道はつくるとか矛盾だらけなんですね。

 国民が考える道路公団民営化のメリット(値段が下がる、無料化、渋滞がなくなる(経営者が変わるだけで渋滞がなくなるわけはないことはみな言っている))と実際のデメリット(地方路線の値上げとインターの無茶な増設、交通量の過大な呼び込みによる渋滞)のギャップをどうするのか。
 もし、分割民営化するのなら、この辺の整理をつけ、さらに平行国道との関係などもきっちり整理しなくてはなりません。

 営団地下鉄とか道路公団とかって外国では逆にうまく公共コントロールの下で民間資金を活用している例とされているのですが...。営団は世界でも数少ない戦前に公共交通運営一元化を狙ったものですし、いまやこの方式、パリ、ソウル、ニューヨーク(交通局の名前で実態は営団というか公団)、パース、シドニー・・・と世界中に広まっているのに、なにを考えているのか。
 都市交通は公共、都市間は民間にというのが世界の潮流なのに、日本はすべて民営ですからね。民営で成立している地下鉄なんて香港だけなのに...(しかも関連事業が7割を占めてます)。

 といってもこんなことを言っていると、「社会の仕組みを知らない技術屋が」と言われるんですね(笑)
 ではでは。

公務員性善説の限界・コスト意識の過度の欠如によるデメリットの克服方法は?
 投稿者---樫通氏(2001/10/10 01:24:04)

★道路公団等の民営化について詳細の資料(エル・アルコンさんが掲げた猪瀬論文も含め)手にしていないので、極めて定性的な感想である点をご容赦頂きたく。

 結局、公共・公益事業には民間企業による運営は馴染まないのであり、契約でサービス条件を縛るPFIが限度でしょう。理想は独立採算制(必ずしも黒字化を意味せず、構造上赤字なら必要最小限の赤字経営を目指すという意味)で、公的セクターが運営するのがベストと考えるようになっています。

★戦後の公務員像はモチベーションが高く、少々の悪事やコスト意識の欠如があっても、トータルで見た場合良い仕事をするという信頼があったかと思います。この前提が崩れつつあり、弊害が目に余るようになっているなかで上記の結論が出るのはやや抵抗があります。モチベーションが高くて、コスト意識も兼ね備えた公僕を養成する具体案が無い以上、道路や住宅などでは官営組織を解体するメリットが現時点では多いという感度を持っております。

★電力のような代替手段が無い物についてはともかく、影響が少なからぬといえ、道路や住宅についての公共性を電気と同一視するのはやや飛躍度が高いように感じます。

補足
 投稿者---樫通氏(2001/10/14 16:19:25)

 小生の前コメントに補足させていただきたく。長文失礼。

 世の中の全産業において、国家など公的機関との関係が発生しますから、何かしらある程度の規制下におかれているわけで、その規制の程度は社会形態や当該産業の性質によって異なっていると言えます。具体的に言えば、社会主義国家ではあらゆる産業のあらゆる活動を規制下に置くことを理想とし、そうでない国家では必要な一部の活動を規制下に置き、其の程度は完全に自分でやるものもあれば、監督官庁に監視させるなどの形態もある、ということです。

 当然規制することとしないこととの間には相反するメリット・デメリットがあります。本稿で話題になっている、比較的高規格な道路の管理・運営を公団形式でやるか、民間会社でやるか、という点においてもメリット・デメリットがあります。エル・アルコンさんの論文は、民営化論でのデメリットとしてもっとも懸念される採算性について綿密な検証が出来ているとは思います。

 一方で公団形式でのデメリットとしては、

−顕在化しているコスト意識の欠如や既存計画へ過度のこだわりなどの弊害
−(道路公団では具体例が無いにせよ)建設工事をめぐって高頻度で話題にのぼる汚職等のモラル欠如

と言ったものがあります。民営化論の背景にはこれらのデメリットが看過できないレベルになってきたと言う理由があるかと思います。もし公団形式のままのほうが良いという結論を導くのであれば、デメリットを看過してでもメリットが大きいと言う論証が必要と思います。エル・アルコンさんの横レスは、この論証部分がやや粗いまま、結局民間企業による運営がなじまないと言う結論を導いている、と感じるので、小生としては抵抗があるわけです。

 高級官僚が時間としてよく働くことは存じてますが、彼らの献身的な努力が、いわゆる社会のためだけとは限らないことは、彼ら自身も感じているようですし、傍目に見ててもそう思います。人間の集りですから、ある程度は組織護持に力を割いてしまうのは仕方ないと思いますので、とどのつまりバランス・程度問題なのでしょう。とはいえ現状がベストでは無いかと思います。

 高待遇がモラルアップになることは、「当初公僕たらんとして公務員を志望したものの、あまりの待遇状況・仕事の量的激しさ、一方でたとえば国会質問内容を議員がなかなか出してこないためにタクシーで帰る時間まで待機したり挙句に庁舎で仮眠するとかいうような生活のために腐ってしまい、モラルよりも自己利益に走ってしまった」という層(少なくは無いでしょうけど)には有効ですから、全く効果が無いとは言いません。ただ、必ずしも全員がそうであるとは限らないと思いますし、持ち上げれば天狗になる性質をもった人間も多いでしょうから、「決め手」にはならないでしょう。極論での例示ですが、戦前の日本の役人とか、科挙によって認められた昔の中国の役人は高待遇かつ社会での認知も現在の日本の役人と比べ物にならなかったでしょうけど、世の中を必ずしも良い方向にだけにはもっていかなかったといえると思います

結局は公務員=仕事をしないということがすべてなのかな?
 投稿者---とも氏(2001/10/10 17:41:39) http://town-m.vop.jp/

 ともです。

 結局、特殊法人議論で意見が様々に分裂するのは、「公務員(特に国土交通省)=業界と族議員をバックに」という構図をマスコミが誇張して作り上げたところから始まっているような気がします。
 そもそも、特殊法人という制度が悪いのではなく、また、業界は当然その事業をまもるための運動はする(業界が仕事を減らすような提案をしたらそれは株主代表訴訟で訴えられますよ(笑))のですから、それも間違いではない。さらに、官僚も少なくとも問題意識はもっているでしょうし、必要かそうでないかの議論はしているのですから(実際付き合うと信じられないくらいシビアな話をしています)、そこに諸悪の根源があるという考え方が違うのかなと思います。

 まず、なぜ道路公団の拡張政策がここまで進んでしまったのか、それは官僚が作り上げた高規格幹線道路14000km政策がその根拠ではありますが、それはなぜ作られたのか。だれが作らせたのか。メインは業界や官僚ではないですよね。そこを考えずに議論をして、官僚を縛り上げても仕方がありません。

 別に官僚や業界を擁護するつもりはありませんが、今の霞ヶ関で国民の声に耳を傾けない省庁など消えるのは時間の問題です。それは現場にいる官僚はみなわかっているでしょう。

 国民の真の声とはなんなのか、本当に道路公団の民営化等を公平な条件で判断して支持するのかどうか(道路公団は収入が不足していて現段階でも借金を返せないと思っている人が多いのは事実)、それを踏まえなくてはならないと思います。
 SAやPAも民間にやらせても良いが本当にそれで競争は生まれるのか。一般道沿いのドライブインが道の駅を民業圧迫として文句を言っているが、そもそもドライブインの暴利ともいえる高値安定商売が一般化しているからこそ、低価格で安心でき、特徴のある道の駅に人が流れているという事実はどうするのか、だったらSA、PAは民間だけではなく地域にも開放したほうが良いのではないかといった議論がないですよね。

 競争=ベストでは無いと思うのですが。
 地方に高速道路は要らないと言っている人ほど、「高速道路がないところには車では行けないよ」なんていうんですよね。

 ちなみに、モチベーションが高く、コスト意識をもった公務員を養成する方法は、国民が監視だけではなく必要があれば支持してやることと、年功序列・学歴偏重を改めてかつ天下りをなくすために定年まで雇用することでしょうね。
 国土交通省の事務所なんかで話をしていると、「霞ヶ関や永田町で決まったことについて、文句をタラタラ言われたらやる気もうせるよ」という愚痴もききますし。
 しかも「うちの前は早くきれいにしろ。でも他はやるな」とかの苦情も多いといいます。
 まずはだれが意識改革すべきなのか、そこからでしょうね。
(いまだに「この橋は私が架けました!」なんていっている人が地方部にはうじゃうじゃいますから)

 ではでは。

Re:結局は公務員=仕事をしないということがすべてなのかな?
 投稿者---Tom氏(2001/10/10 18:47:44)

 Tomです。簡単にレス致します。

 自分を含め一般の人間は、役人というと市(区)役所などで定時になると例え仕事が残っていてもさっさと帰っていく、というステレオタイプがあるかもしれません。但し、大田区役所なんか見ていると昔と異なり休日も休日専用窓口とはいえ一部空けるなど、少しずつサービス業としての自覚が出でてきているのではないかと思います。
 高級官僚については、「規制を作って天下り利権を得て退職金をガバガバもらう人」「民間と違い柔軟な発想は全く持ってできず」「採算性というものを考えたこともない」というイメージが先に立ちます(友人に上級国家公務員がいないので・・) 。でも、ともさんの記述をみていると、そうではない方もいらっしゃるようですね。

 確かエル・アルコンさんだったと思いますが、JRが民営化に伴い周辺事業にまで資本注入してかえって寡占化が進んだことを記載されていましたが、SA/PAも一歩間違えると同じ轍を踏みかねません。更にJRよりタチが悪いのはJRなら駅のそばで買い物をすれば済みますが、高速のSA/PAでは高速料金の問題もあり寡占化を許しがたい状況があると思います。SA/PAの民間開放の際には、公団及び公団系企業の資本参加禁止及び公団系企業の比率を一定以下に下げることを法制化しないとまずいのではないかと思います。

 今まで競争が全くなかったことの反動で、「振り子が逆に振れすぎた状態」なのでしょう。これは議論が行き着けばもう少し冷静な論理の下に考えることが出来るようになるのではないかと思います。

 ちなみに、モチベーションが高く、コスト意識をもった公務員を養成する方法は、国民が監視だけではなく必要があれば支持してやることと、年功序列・学歴偏重を改めてかつ天下りをなくすために定年まで雇用することでしょうね。

 定年まで働かせる仕組みを作るのは大事ですが、能力・成果主義をきちんと織り込んでいただかないと・・。昔の民間の悪いところだけを入れることのないように願いたいです。最も行き過ぎた能力主義にも問題がありますので、仕事のプロセス評価の仕組みづくりも重要でしょう。

 国土交通省の事務所なんかで話をしていると、「霞ヶ関や永田町で決まったことについて、文句をタラタラ言われたらやる気もうせるよ」という愚痴もききますし。
 しかも「うちの前は早くきれいにしろ。でも他はやるな」とかの苦情も多いといいます。

 国民の甘え、確かに大問題だと思います。

 まずはだれが意識改革すべきなのか、そこからでしょうね。
(いまだに「この橋は私が架けました!」なんていっている人が地方部にはうじゃうじゃいますから)

 そういう輩に投票する人がいるからまた困ったものなのです。
#ともさん、また公務員について、いろいろ教えてください。
 それでは、この辺で・・。

Re:結局は公務員=仕事をしないということがすべてなのかな?
 投稿者---とも氏(2001/10/10 19:24:59) http://town-m.vop.jp/

 ともです。こんばんは。

 自分を含め一般の人間は、役人というと市(区)役所などで定時になると例え仕事が残っていてもさっさと帰っていく、というステレオタイプがあるかもしれません。但し、大田区役所なんか見ていると昔と異なり休日も休日専用窓口とはいえ一部空けるなど、少しずつサービス業としての自覚が出でてきているのではないかと思います。

 まだまだですけどね(笑)。
 大田区は良くやっている区役所だと思います。
 仕事で時々行きますが、職員の方々の態度もいいですし、夜も結構遅くまで皆さん働いています。

 高級官僚については、「規制を作って天下り利権を得て退職金をガバガバもらう人」「民間と違い柔軟な発想は全く持ってできず」「採算性というものを考えたこともない」というイメージが先に立ちます (友人に上級国家公務員がいないので・・)。でも、ともさんの記述をみていると、そうではない方もいらっしゃるようですね。

 というかかなりの確率でいますね。
 実際、国土交通省にしても厚生省にしても自己保身にさえ走らなければ専門知識(なにも法律だけでは無いですよ)を持った人間のあつまりですから、良し悪しの判断はできますから。
 ただ、どうも表に出る官僚が特殊だと思うんですが...(というかそういう人しか表に出ないのかも(笑))
 実際、優秀(国民から見て)な官僚は変な話で天下りしても良い仕事をするともいえますからね。

 SA/PAの民間開放の際には、公団及び公団系企業の資本参加禁止及び公団系企業の比率を一定以下に下げることを法制化しないとまずいのではないかと思います。

 SA、PAの民営化なら、駐車場などは公的セクターが整備をして、施設整備は民間なり地域に任せる、道の駅方式がふさわしいのかもしれません。あれだけ支持されている国土交通省の事業もめずらしいですね。

 今まで競争が全くなかったことの反動で、「振り子が逆に振れすぎた状態」なのでしょう。これは議論が行き着けばもう少し冷静な論理の下に考えることが出来るようになるのではないかと思います。

 だといいんですが。
 今の公団論議のまずいところは、振れすぎが=正常になってしまっているのが怖いです。

 定年まで働かせる仕組みを作るのは大事ですが、能力・成果主義をきちんと織り込んでいただかないと・・。昔の民間の悪いところだけを入れることのないように願いたいです。最も行き過ぎた能力主義にも問題がありますので、仕事のプロセス評価の仕組みづくりも重要でしょう。

 だれにとっての成果なのかというのも難しいですよね。そもそもそのプロジェクト自体が国民の賛否が分かれているものなら人によって評価が代わりますし。
 それはなしにして、その仕事に対する取り組みで評価することができれば良いのですが、今の「”自主的”市民(?)オンブズマン」のようにはっきり言って個人攻撃に近い指摘にやり方では、自分の発想と違えばおかしいとなりますからね。

 そういう輩に投票する人がいるからまた困ったものなのです。

 そうなんですよ。
 真っ先に意識改革をしなくてはならないのはだれなのか、そりゃみなさんお判りですよね。
 この意識改革なくして構造改革なんぞできません。
 どうしてそういった意見が出ないかな...

 ともさん、また公務員について、いろいろ教えてください。

 そんな教えられることなんて、そんなに詳しくないですし。やはり本職の方に御登場いただきたいですね。
(>打越様おまちしてます。)

 ではでは

公務員=仕事をしない、なんてことは無いですよ
 投稿者---打越健太郎氏(2001/10/10 23:58:01)

 こんばんは。声を掛けて頂いた以上、発言する義務があるでしょう。

 さて、我が茨城県庁では「オンブズマン」と称する輩というのは見かけませんね。茨城が田舎だから…ではなく、地方においては役所というのは筆頭レベルの大企業であり、知人・友人に県職員・市町村職員の友人が1人も居ない、などということはまず有り得ません。となると友人の勤める会社にあまり理不尽な言い掛かりはつけにくいでしょう。また「役所の人間は働かないなあ」と思っている人であっても、友人の公務員に、今から僕が申し上げるような実態を教えてもらえば、キチンと実態を把握するのでしょうね。

 ちなみに、僕は県庁の土木部監理課でしか働いたことが無いのですが、県の職員は働きますよ。口幅ったい言い方ながら、僕など入庁から2ヶ月、定時退庁したのは2〜3回だけ。毎晩22時まで働いては、県庁発22時13分の最終バスに乗って帰っておりました。僕はバス通勤なので乗り遅れてしまい、家の者に迎えを頼んだこともございます。また、どうしても仕事を仕上げたくて24時まで働いた経験もございます(当然、翌日も朝から仕事ですよ)。ここで思い出して頂きたいのが、僕が全くの新人、10月1日付で終身採用を頂くまでは仮採用だったということです。9月でクビになる可能性もあったわけで、重要な仕事を任される筈も無く、僕は監理課の中では比較的重要性の薄い仕事ばかり任されておりました。僕のようにバスで通勤している人は22時で残業を切り上げますが、自家用車通勤の者ならば24時退庁など日常茶飯事です。
 で、僕は何の仕事をしているか…と申しますと、予算関係。つまり、年明けから3月までは忙しくても、それ以外の時期にはやることが無い担当です。それでこうなのだから、中々大変でしょう? 土木部監理課は忙しいとも言われますが、総務部の総務課(法制を担当する課)や財政課(予算の立案・執行を担当する課)などはもっと忙しく、特に財政課の職員などは数年に1人、ノイローゼになって入院してしまうほどです。7月からはさすがに、たまには定時退庁も可能になって参りましたが、これもそろそろ終わりでしょう。現に、9月になってからは21時くらいまでは帰れなくなりました。
 因みに県の出先や市町村はどうか? 夜遅く問い合わせの電話を掛けても、十中八九は担当者が在庁しています。役所の友人(県庁は当然として、前述のとおり市役所などにも大勢居ます)同士で飲もうなどと思いたっても、日程を合せるのが大変で、まあ大概は流れてしまいます。実は7月に合コンを主催したのですが、女の子たち(民間人)が軽い気持ちで「日程変えられない?」などと言ってきましたが、冗談ではありません。たった5〜6人の男の日程を擦り合わせるのにどれほど苦労したか(事情を説明したら、女の子たちも分かってくれて、合コンは無事成功致しました)。

 高級官僚ですが、僕の友人に3人、他に大学の同級生だった再従妹がこれですね(再従妹は脱サラしてしまったが)。彼らの働きぶりは正直言って瞠目に値します。ところが国家公務員というのは安月給です。地方公務員のほうが給料は高く、彼らには気の毒な気が致します。そう言う僕(今年27歳になる)も、4月の採用時には税その他を引かれる前で190,125円(大学院を出ているので3年目相当)、ここから税金(役人も払うんですよ)や保険料などを引いていくと、手取りとしては12万弱といったところでしょうかね。7月に195,477円に昇給しましたが、決して豊かではないと思います。本来はもっと貰えるのですが、実は茨城県は倒産寸前(!)で(地方公共団体は潰れる事があります。潰れると「財政再建団体」通称「倒産自治体」になる)、給料カットという状況でした。9月に知事の任期が満了し(橋本昌知事が再選された)、そのため10月はカットの手続が行えなかったので満額(200,500円)貰えるのですが、まあ直ぐにカットが再開されるでしょう。潰れかけた会社に勤めているのだから、やむを得ないと諦めております。

 実際、良心的で真面目な役人は大勢います(僕は例外?)。監理課には建設業者の方が大勢いらっしゃいますが、僕としては民間に負けない接遇を心かげております。理由は? 気概です。民間に出来ることが役人に出来ないというのでは悔しいではありませんか。同じ人間なのだから、同じことくらい出来るはずです。で、僕程度の接遇なら、県職員は皆やっております。確かに現時点では役所は競争がありませんが、競争が無いから民間に劣る、などというのはプライドが許さない、と考えている者は大勢おりますよ(この点、僕も同じ。何事においても、民間の方には絶対負けたくありません)。

 今の公団論議のまずいところは、振れすぎが=正常になってしまっているのが怖いです。

 同感です。「役所は赤字ばかり」というご批判を頂戴する事も多く、その中には「黒字を出せそうな事業まで、役所がやると赤字になってしまう」という、納得できるものもありますが、そもそも役所というのは民間を補完するのが役目です。そして、公益性の高い事業でも採算ベースに乗るものは民間がやっています(ex.食料や衣服の供給はこの上も無く公益性があるが、採算ベースに乗るので、役所は原則関与しない)。
 そして市場原理主義は、むしろ自由競争の妨げであり、社会における階級を作り出してしまいます。例えば教育を完全に独立採算にしてしまうと、1年間に1000万円ではきかないほどの授業料を貰うことになってしまいます。これでは金持ちの子供しか教育を受けられず、そもそも市場競争における「機会の平等(=皆が同じスタートラインについて競走を始める)」すら実現出来ません。そこで大学というのは公営だったり、あるいは私立でも多額の補助金をつぎ込んだりしている訳です。医療や治安も同じ。自費治療ばかりだったり、自費でガードマンを雇ったりするだけでは、金持ちだけが生命や身体の安全を確保できることになり、一方の貧しい者は努力をするための基盤すら脅かされてしまいます(ex.「金持ちになるぞ」と努力しているが、今は貧しい者を想像してください。医療が受けられず体を壊せば、市場競争にも参加出来ません。カネが貯まりかかった所を泥棒にやられれば、お金もたまりません。こんなもの、そもそも機会が不平等ですね)。
 そして市場競争には、もともと有利な立場の金持ちだけが参加し、貧しい人々を搾取してもっとお金を貯める… こんな事を避ける為には、ある程度の「官」の役割は否定できないはずです。

 どうも役所は叩かれっぱなし。無論、反省すべき点は多々ありますよ。でも納得いかないのは「役人は働かない」「役人は自分たちの利益だけの為に行動する」という批判です。何という役所の誰という職員がそうであるのか、ちゃんと実例を(それも社会において無視できないほどの数であることを)挙げて頂きたいと願っています。

 実はこの意見、とも様やTom様に対する意見であると同時に、最近たいそう威勢の良い、竹内靖雄成蹊大学経済学部教授に対する批判でもあります。彼の著書の中では「市場に任せれば上手く行く」「役人は自分たちに都合の良いことばかりやる、公正な市場競争の邪魔者だ」ということが繰り返し述べられています。しかし、彼の著書においては「論証」と称して自分に都合の良い意見ばかり書き連ね(根拠も無しに断定しないで欲しい!)、また役人に対しては、何一つ具体例を挙げずにこき下ろしてばかりいます。
 僕に言わせればこんなものは論証にも官僚批判にもなっていない愚論でしかない(特に後者の「官僚批判」は、「ユダヤ人は云々」などの陰謀論に近い)ですし、こんな人物が大学で教えていられることには不思議すら感じます。彼は自分の著書を本気で信じているのでしょうか。信じているならば愚者、信じてもいないのに大学でそのような話を学生に教えているならば卑怯者としか言いようがありません。ちょっと「交通論」からは離れましたが、折角ですので自分の意見を開陳致しました。

Re:公務員=仕事をしない、なんてことは無いですよ
 投稿者---brother-t氏(2001/10/12 02:14:54) http://members.jcom.home.ne.jp/brother/index.htm

 打越さんこんばんは。

 なんと言おうか、基本的に顧客から現場に届く声と言うのは不平不満と言うのがほとんどなので仕方ない面はあるのですが、自治体や国などの公共主体に対してはマスコミ等がスパイラルさせますからねぇ。

 実はこの意見、とも様やTom様に対する意見であると同時に、最近たいそう威勢の良い、竹内靖雄成蹊大学経済学部教授に対する批判でもあります。

 しかしものすごいですねぇ、変な言い方をすればそんな反論の人物がよく学位を取れたものだなぁと不思議に思います。変な言い方になるのですがそんな意味のない事をやるくらいだったら身近な問題と言おうか実際に心配されるトラブルに関して実質的な改善案を書いて欲しい物です。>世の中の教授を名乗る皆様

 とここまで書いたのは更に話はずれてしまうのですが先日何故か柏の市議の方からメールを頂きました。内容は常磐新線の事だったのですが、正直学位も無い1学生にすがってしまうと言うのはこの手の話をしっかりと語れる人間がどれだけいないか(僕もそれほど語れる訳ではないのですが)と言うのを垣間見る様でぞっとしました。

 とは言え交通整備に関する公的主体の構造的な問題点もやはり感じなくはありません。
 1つは結局自治体に特に感じるのですが境界線の問題で、例をあげるならば千葉県白井市のコミュニティバスで、ルート上に印西市内の千葉NT中央駅と船橋市内の小室駅があるのですが両駅には停車しないため、両駅近辺の住民にとっては不便な状態で放置されています。(時刻表・ルートは参照1)その上この不合理な要素のあるバス路線の影響を受けているであろう赤字バス路線も補助(参照2)を出して残すと言うのは仕方ない部分があるとは言えやはり無駄があるのは確かだと思います。また各地で見られる市町村境で整備状況の違う道路などもこれの例と言えるでしょう。
 そしてもう1つはなんと言ったら良いのか、法律に縛られてしまっているデメリットか柔軟な意志決定に欠けるきらいがある事でしょうか、これの例としては極端かもしれませんが最近の小田急の高架問題と外環の矢切地区などが当るのではと素人の視点ですが思います。

 とは言えこの解決に関して民営化しか出てこないのはそれは考えが足りないとも思うのも確かですが…

参照1 http://city.shiroi.chiba.jp/bus-top.htm
参照2 http://www.pref.chiba.jp/syozoku/b_koukei/3-2-2-2-inba-keikaku.html

公務員は大変ですね。
 投稿者---とも氏(2001/10/11 00:26:32) http://town-m.vop.jp/

 ともです。

 打越様に御登場いただくと説得力がありますね。
 僕もあんなタイトルをつけましたが、いわば逆説的な言い方で、変な話多くの役人と付き合っているからこそ公務員の大変さは良くわかります。
 であるからこそ、今の特殊法人論議が「公務員=仕事をしない=競争の邪魔」というよくわからない、事実ではない(というかほとんどイチャモン)構図をベースにしているといいたかったのです。

 打越様が書かれているように、今、いわゆる「売れっ子コメンテーター&コラムニスト」の多くは市場原理主義ともいえる発想ですよね。
 こういった人たちにだれか、「ニューヨークもパリも実は交通は公的セクター経営ですよね」とふってもらいたいもんです。

 何度か書いてますが、世界中の地下鉄で純粋民間経営は香港のMTRだけ。しかも公(特別行政区)は資本は出しているので、厳密には純粋な民間ではなく、ただ、民間経営とは公的補助を一切受けていない(なぜなら利益の7割は都市開発で上げている)ということです。
 これ以外、海外にあれだけあるすべての地下鉄が公的補助を受けているということは交通行政をやっている人間ならば常識です。
 そして、道路も民間経営のもので成功しているのはほとんどなく、引き合いに出されるオーストラリアやアメリカはすべて公共施設として連邦もしくは州政府が管理・運営をしています(日本だって箱根ターンパイクと浅間ハイウェイが数少ない成功例とすらいえますからね。でも観光地だから成功している )。
 さらに、あの規制緩和のモデルのイギリスでは、結局ロンドン市内は公的機関のチェックが入るようになっていて、決して自由競争主義ではないのです。

 これらは一度は民間に移譲、あるいは民間経営だったものを結局は公的セクターに戻したものが多いですよね。
 イギリスもニュージーランドも公的セクターの厳しいチェックも土地利用に厳しい制約があるからこそなのでしょう。
 日本のようになんでも規制緩和、市場原理主義が良いなどということを言っている国はめずらしいです。

 国土交通省の特殊法人も、ただ単に族議員の多くが反主流派ということと、ここをいじくっても野党は反対しにくいということで選ばれたのかもしれないですね。
 なんだかこんなんで構造改革なんて...

 おっと愚痴ばかりだ(笑)
 ではでは。

P.S
 打越様大変ですね。僕の知り合いの公務員も1週間の合計睡眠時間が14時間とかいってますからね。休みは月2回くらい、定期は買って往復電車、ただし往復とも朝ラッシュって嘆いてました。これで残業代ほぼゼロですから、こんな公務員にこれ以上何をしろというのでしょうか...

Re:公務員は大変ですね。
 投稿者---Tom氏(2001/10/11 11:36:23)

 打越さん、ともさんの記事をみて公務員に対する認識を改めねばと痛感しました。公務員の皆さん、偏見を持っていて申し訳ございません。要するに、外務省のM氏とか、NYの公使とか一部の変な人がピックアップされているが為に公務員に対する見方が歪んでしまっているのでしょう。
 話は交通から大幅にそれますが、銀行などもそうですよね。
 彼らも高給といわれていますが、勤務実態は早朝出勤と終電帰りの繰り返しで、かなり過酷なようですが、マスコミはそういう実態には触れようとしません。どうも日本のマスコミは「思い込み」「先入観」による記事作りをしている所がおおいような気がします。

 民営化議論について:順序だてると本当は道路公団よりも、「世襲公務員」がはびこっている郵政が先だと思います。首相は郵政民営化論者なんだからここから行けばそんなに反対も出ないかと・・・。ヤマト運輸が地方でもきちんと配達出来ていますし。
 道路のような基盤インフラについて、箱根ターンパイクのような観光地なら民営化も有り得るのかもしれませんが、本来は公共セクタの仕事でしょうね。

 では、この辺で。客訪問のインタバルでのカキコでした

公務員の評価は民間のようにはいかないのかも
 投稿者---Tom氏(2001/10/10 19:55:56)

Tom@不況にあえぐ半導体屋です。
こんばんは。

 実際、国土交通省にしても厚生省にしても自己保身にさえ走らなければ専門知識(なにも法律だけでは無いですよ)を持った人間のあつまりですから、良し悪しの判断はできますから。
 ただ、どうも表に出る官僚が特殊だと思うんですが...(というかそういう人しか表に出ないのかも(笑))
 優秀(国民から見て)な官僚は変な話で天下りしても良い仕事をするともいえますからね。

 少しは安心できるのかと思います。 ただ、アフガン危機に際してテロ対策がほとんど出来ていないなんて話を聞くとまだちょいと疑いが・・・。

 SA、PAの民営化なら、駐車場などは公的セクターが整備をして、施設整備は民間なり地域に任せる、道の駅方式がふさわしいのかもしれません。あれだけ支持されている国土交通省の事業もめずらしいですね。

 道の駅はうまくいっているようですね。
 また、このおかげで長距離ドライブでもトイレの心配をしなくてすむようになりました。

 私の業界は不況もあいまってか、または国際競争が激しいためか人事制度の見直しを各社ともやっていますが、民間の場合は「起業として利益を生む」ことが目的であることがはっきりしており、その点については容易(=利益は決算数値で表せる)なので能力主義への転換が進みやすいのかもしれません。とはいいながら、最も能力主義が進んだといわれる某富○通さんあたりは「個人の成果にならない仕事はしない」という弊害が出ていると聞きますし、私の(本来の)会社でも、目標設定の際に低い目標を設定しがちであるという弊害が出てきています。その為、成果をあげる為のプロセスをどう評価するか、ということがマネージャークラスの話題になっている、というのが実情です。
 目標がはっきり定まり、特別利害関係人がほとんどいない民間企業でさえこうですから、公務員の能力主義評価というのは、さまざまな価値観・尺度があることが話をよりややこしくしているのだと思います。ただ、市民オンブズマンを入れた場合、その方の意向に沿わないことをやると、客観的にはいい仕事をしても評価されない所が問題だとは私も思います。この客観的評価尺度をどう作るか、それとその尺度に基づき正当な評価、特に加点評価ができるか、これが公務員の業務への評価を考える上で一番の問題だと思います。
 私の会社を含め民間の能力主義はも多少の振り子の振れすぎは散見されるとはいえ、方向性は間違っていないと思います。公務員の評価についてもプロセス評価をきちんと折込み、評価尺度確立し、公務員のやる気を引き出す人事制度が必要でしょう。
 具体論については、誰か人事やっている人、出てきてくれないかなあ?

 ではまた、今日はこの辺で・・・。

横レス
 投稿者---エル・アルコン氏(2001/10/10 21:44:56) http://6408.teacup.com/narashinohara/bbs

 確かに官僚の質が低下しているのは最近の涜職事件などから明らかですが、それでも「公務員だから」という理由でのフレームアップも大きいでしょう。
 同じことを民間がやってないかというと必ずしもそうでなく、もっとえげつないことをやっていることも多々あります。なぜ公務員が問題になるかというと、公務員は法律によるしばりばあるということと、「公僕」という言葉があるように、必要以上に厳しい出処進退を問う風潮があるからでしょう。
 まあ、相手が「官」だと批判しやすく、載せる側も商売上のしがらみが無いせいか、新聞の投書欄でよくお役所(特に郵便局)が槍玉に上がりますが、往々にして偶々の出来事を針小棒大に騒いでいる類です。(私自身は郵便局のサービスは悪くないと思いますが...)

 なお公務員が決められた仕事を淡々とするのはむしろ当然でしょう。立法者の決めたルールに基づいて仕事をする行政官なんですから。

***
 いわゆる高級官僚ですが、民間が楽園に見えるほどたくさん働いてますが、公務員=...という図式をインプットしたいのか、それが世に知られる機会がなかなかありません。官庁街でタクシーが並んでいるのを「タクシー使い放題」の切り口で報じることがありますが、タクシーでないと帰れないくらい遅くまで働いていることは決して書かれません。また、霞ヶ関を天気のいい昼間に歩くとよく見かける光景ですが、裏門なんかでよく仮眠用の布団を干しています。これも民間ではあまり見られませんよね。
 で、仕事の手を抜くのが地方公務員に多いのは私も否定しませんが、マスコミは「高級官僚叩き」のように批判しませんね。まあ、サボりが横行している自治体の傾向を見れば頷けますが。

 公務員のモチベーションを高めるには、本当は仕事に見合う報酬を与えることに尽きます。もしくは、(決して皮肉ではなく)「お役人様」というステータスを持たせるのも有効でしょう。
 カネも名誉もないけど仕事がキツイ、というのでは邪な考えを持つ輩が出ても不思議ではありませんし、ましてや真面目に仕事をしていても蔑みかねない風潮ではくさります。余談ですが、特にステータスの意味は大きく、その権化でもある軍人の場合、高級将校が不名誉な事態をやらかした場合、たいていの国では罪に問われる前に、「一人にしてもらえる」という「名誉を守る瞬間」があるやに聞いています。

***
 余談ばかりでは何なので...
 道の駅ですが、今まで一般道の休憩事情が悪すぎたというところが大きいです。コンビニが普及する前はトイレを借りる場所すらないのが一般的でしたし、ドライブインも一部の良心的なものを除けば、休みたければ食堂で、という形態や、特に観光地で「無料駐車場」と言いながら、「但し売店でお買い上げの方」と停めた後で言い募るのなどひどすぎました。

 結局、買い物や食事の強制といった干渉を排除した今のニーズにあった設備というのが大きく、「商売っ気のなさ」がキーワードのようです。このあたりは空きスペースと見るや乱雑に物売りを置く最近の拠点駅が必ずしも評判が良くないことと対照的です。専ら地元自治体や観光協会といった公的セクターの経営であることがかえって良かったのかもしれません。

横レスの横レス
 投稿者---とも氏(2001/10/10 22:25:03) http://town-m.vop.jp/

 ともです。

 確かに官僚の質が低下しているのは最近の涜職事件などから明らかですが、それでも「公務員だから」という理由でのフレームアップも大きいでしょう。
 同じことを民間がやってないかというと必ずしもそうでなく、もっとえげつないことをやっていることも多々あります。なぜ公務員が問題になるかというと、公務員は法律によるしばりばあるということと、「公僕」という言葉があるように、必要以上に厳しい出処進退を問う風潮があるからでしょう。

 とはいえ、ひどいのは事実ですし、一部の職員にそういった行動がある以上、全員がそれを反省しろという日本古来の??集団責任をもとめる「体育会的」なノリがあるのが原因かな(公務員自身がそうなっている)と思いますね(マスコミの煽り方はまさしくそれ )。

 なお公務員が決められた仕事を淡々とするのはむしろ当然でしょう。立法者の決めたルールに基づいて仕事をする行政官なんですから。

 そうなんですよ。それをやることが批判されるというのは、民間企業が利潤追求のため正当な手続きにのっとって営業や販売をすることがいけないと怒るようなものですからね。

 今はタクシーが使えないので始発で帰ることも多いそうです。
 僕も某都庁で経験したのですが、なんと公務員の行動をチェックする方がいるんですよ(オンブズマンの腕章つき)。
 こういった方が、12時15分より前に食事に出ないか、そして45分までに戻ってくるかをチェックしているんです。といっても民間だって窓口業務の人は交代なのに、それもだめよとなっているらしく、僕も都の職員に間違えられてチェックされたことがあります。

 公務員のモチベーションを高めるには、本当は仕事に見合う報酬を与えることに尽きます。もしくは、(決して皮肉ではなく)「お役人様」というステータスを持たせるのも有効でしょう。

 給料安いですからね。(笑)
 大卒(U種)の10年目で総支給額が25万以下ですからね。これじゃ...

 余談ばかりでは何なので...
 道の駅ですが、(略)このあたりは空きスペースと見るや乱雑に物売りを置く最近の拠点駅が必ずしも評判が良くないことと対照的です。専ら地元自治体や観光協会といった公的セクターの経営であることがかえって良かったのかもしれません。

 すみません私が原因です。(ごめんなさい)
 最近、九頭竜湖などでは鉄道駅と道の駅の一体整備をやったり、結構いろいろできるんですね。
 こういった道の駅と鉄道駅の一体整備なんてもっと全国でやられてもよさそうなんですが。
 大井川鉄道なんてやったら受けるだろうに・・・観光鉄道の生き残りにはいいアイデアと思うのですが。

 ますます脱線させてしまった(爆)
 ではでは。

横レスの横レスに横レス
 投稿者---氏(2001/10/12 21:52:06)

 お元気ですか?Pでございます。

 私の義兄がA県A市(すごくいかがわしい記載ですが、イニシャルではこうなってしまうんです…。私の出身地のトナリ町のことですが…)の公務員をやっております−国道拡幅に伴う立ち退き交渉が現在の主な業務だったと伺っております。本人、メールではスーダラ公務員ぶっていますが、私の見る目に間違いなければ(接客畑が長いので…ちょっとだけ…自信があります)、仕事をおざなりにする人物ではありません。

 以前訪れた道の駅で、岐阜県のせせらぎ街道の2ヵ所(清見村と、名前を忘れてしまいましたが、郡上八幡の少し北でした)は物産の露店や伝統地場産業の展示館などが充実していて、すごく良かったです。この2ヵ所は国内でもかなり当たりの部類の入る道の駅です。
 私が以前住んでいた、河東郡上士幌町の山向こう東の陸別町(最低気温−37度という記録を持つ日本で一番寒さのえげつない町だそうです)の道の駅はちほく高原鉄道ふるさと銀河線の陸別駅に併設されています。また。JR四国がJR駅と道の駅との一体化構想を打ち出していますよね。

 ますます脱線させてしまった(爆)

 こちらこそ。さらに…。
 道の駅天国(?)北海道よりPでした。今日、雪虫が飛んでいました。あぁ…じきに真っ白け…。
 So Long.

道路4公団問題、8条委設置へ  投稿者---エル・アルコン氏(2001/11/16 15:31:55)
 http://6408.teacup.com/narashinohara/bbs

 迷走する感も出てきた道路4公団の民営化ですが、内容の議論以前の問題として、今まで世間に出た案は私的諮問機関による案であり、道路建設、公団組織とも法に基づいて実施されているものを行政府が単独で、しかもその私的諮問機関で固めるという手続に、私は異を唱えてきました。

 で、ウェブ版読売新聞によると、小泉総理は16日、この問題について国家行政組織法第8条に基づく監理委員会を内閣府に設置する方針を固めたようです。
 旧国鉄の分割民営化においても、同じ「8条委員会」の国鉄再建監理委員会が設置されており、本件において法的根拠のある第三者機関が設置されることで、手続面については問題が無くなるといえそうです。

http://www.yomiuri.co.jp/top/20011116it06.htm

 ただ、行政府の判断で設置できる上に、始めに民営化ありきであることは明白です。できれば入口のところで何らかの形で国会の判断を通したいところです

道路公団民営化問題第2弾〜櫻井論文への批判
 投稿者---エル・アルコン氏(2001/11/19 00:51:49)
 http://6408.teacup.com/narashinohara/bbs
─「櫻井スキーム」仔細

 道路4公団の民営化問題で、先に行革断行委員会の猪瀬直樹氏の文藝春秋誌上に掲載された論文を批評しましたが、本件でマスコミ等への露出や寄稿が多く、影響力が大きい論客としては、猪瀬氏のほか、櫻井よしこ氏が挙げられます。おりしも週刊新潮11月22日号(15日発売)で、「櫻井よしこ告発レポート」と題して「「道路公団」民営化を挫折させるな」という一文が掲載されており、今回はそれを批評してみましょう。

●基本認識のスライドへの疑問
 猪瀬論文では本四公団を除く3公団については、債務こそ膨大ではあるが、収支は黒字という認識であり、4公団合算の収支によって債務を償還するというスキームでした。その是非はともかく、基本認識において批判すべき所はなく、「なぜ(分割)民営化をしなくてはならないのか」という本題での批評に移れました。

 櫻井氏の場合は、かねてより公団は実質債務超過であり、事実上破綻しているという基本認識でした。この部分について、私は「経営が破綻しているものを民営化するというのは本質的におかしい」と批判しています。では今回の文を見ますと、企業会計方式によると債務超過に陥っている可能性がある、と些か後退しています。悪く言えば断定が「可能性」と他人事のようになっているとも言えましょう。

 今回の文において公団民営化の理由はなぜか微妙にスライドしています。つまり、JHが平成14年3月期に2700億円の資金ショートを起こすというもので、今までの議論が消えた代わりに、些末だが、重要且つ判りやすい論点を持ち出してきました。このあたりの宗旨替え?も説明が欲しいところですが、以下論じることにします。

●半ばマッチポンプの資金ショート説
 JHの平成13年度の起債予定は、財投機関債1500億円と外債1200億円の都合2700億円となっています。この2700億円の発行目処がつかないことを以って資金ショートを警告しているのです。
 しかし、資金繰りというものは年度末だけではなく、場合によっては年内にも不足が発生する可能性すらあります。そのあたりの検証を欠いているのは不注意でしょう。
 また、JHが年度末の手許現預金をどの水準にするのかも調べない限り、安直に資金ショートという事は出来ません。

 さて、財投機関債や外債が発行できない原因は特殊法人の民営化問題により、事実上ソブリン債(国債、国家機関債)であったはずのJH債の信用が揺らいだことによります。事実、財投機関債の予備格付としてS&PはAA+(確か当時は日本国債はAAAだった)を付与しています。
 しかし、JH債の信用が揺らいだ原因はなんでしょうか。業績が不透明というのではなく、その組織自体の先行きが不透明になったということです。結局、民営化論者が声高に解体を叫ぶことで信用が失われ、それ見たことかと民営化を説いているのが現状であり、民間企業相手でこういうことをするのは、風説の流布そのものです。さらに、結果何らかの利益を得る存在であれば、法に触れる可能性すらある行為です。
 見出しではJHの資金ショートがゼネコンへ波及することを踏まえ、「大量連鎖倒産の引き金」とありますが、ここまで来ると見世物小屋の口上にも劣る煽りに過ぎません。

 なお、文中では年度末に翌年度の資金を振り込む「ウルトラC」が述べられているが、年度末の休日について言及しているのであれば、年度末の支払が休日規定等で遅れる可能性にも言及すべきでしょう。

●民営化試案の理解できない点
 4ページの記事のうち3ページが資金ショート説なので後は付けたしの感がありますが、「税負担の無い方法」についての疑問です。
約22兆円の負債をどうするかというくだりで、新会社が引き受ける負債を半分の11兆円弱として、50年5%の固定金利で引き受けるとあります。
 現在超長期国債は最長30年で、2.4%程度の利回りです。20年が2%、10年が1.4%というイールドカーブで仮定すると50年は3.5%から4%の間(3.5%に近い)でしょう。

 もし民営化することで負債膨張の懸念も消えるのであれば、国債(JGB)比100bp〜150bp(0.01%=1bp:ベーシスポイント)というスプレッドは非現実的です。足許の10年債のJGB比で見ると360bpのスプレッドであり、負債金額が大きい初期において、少なく見積もっても300bp以上(つまり払う金利のうち半分以上は不要)の無駄な利払こそ「金利の安定」ではなく「泥沼」です。
 もとより、国債市場すらない期限の超長期固定債のマーケットなど有ろうはずが無く(比較対象が無く値付けが出来ない。また金利変動リスクのヘッジ手段が無い)、その時点で終わってますが、ひょっとすると実際には信用リスクの小さい会社が破格の高利回りで資金を集める絵を描くことに意味があるのかもしれません。

 また、残債を清算事業団に付け替えると有りますが、フロー収益で償還するのであれば何も別組織にする必然性が乏しいばかりか、国鉄清算事業団の二の前(もっとも、こちらはフローに頼らずストック収益に頼るスキーム自体が問題だった)になっても不思議は有りません。

●終わりに
 文中、前に週刊新潮で発表した文に言及しており、それに触れない批評はルール違反かもしれません。しかし、今回の文を見る限りにおいて、何か秘策が隠れている様子もないようです。今回の文を見て感じたのは、猪瀬論文と比べて相当落ちるということであり、数字周りの部分の検討が不十分ともいえます。

「櫻井スキーム」仔細
 投稿者---551planning(2001/11/23 23:53:02)

 結局は玉虫色…11/22付与党3党合意により、道路4公団の一体民営化・年間3,000億円の国費投入中止が事実上進展することとなりました。「時間がない」と急ぐ話でもないと思う当方にとっては、まずは「議論」が「政策」に移行したことは成果と考えたいです。その果実の中身が美味しいか不味いかはなんともいえなさそうでありますが…。

 「時間がない」と強調される櫻井よしこ氏の論は11/24付の週刊ダイヤモンド誌連載コラム「オピニオン縦横無尽」でも改めて展開されておりました。週刊新潮のほうを当方は読んでおりませんのでこちらから紹介。

 道路公団再建には整備凍結あればこそとし、今こそ国民の税負担なしに自力再建がぎりぎり可能という氏。そのスキームは次の通り…。

●前提条件

  • 道路公団は上下一体方式の民営化
  • 整備路線建設の一時凍結
  • 「清算事業団」による負債返済

●2001〜2006年度

  • 整備路線建設の一時凍結
  • 道路公団は現状組織のまま存置
    →法人税・固定資産税免除、金利負担の道路整備特別会計補助(国費投入)の継続
     これにより、できる限りの負債削減を進める
     (試算上は23兆9,692億円(2000年度)→21兆1,980億円(2005年度末) △2兆7,712億円が可能という)

●2006〜2048年度

  • 道路公団民営化(2006年度=特殊法人中間取り纏めに沿う時期)
  • 負債を新会社および清算事業団に分割付け替え
    →会社引受額は旧国鉄→JR時と同じ売上5倍相当(試算では10兆5,980億円)
     負債の金利を5%固定(少なくとも50年間)とし、会社が元利とも負担(国費投入せず)
     法人税・固定資産課税(当初10年は固定資産税率を0.7%に抑える、以後通常税率1.5%に戻す)
    →清算事業団引受額は残り(10兆6,000億円)
     負債の金利は市場金利、会社負担は3.5%まで・以上は国費投入
     (差額補助も会社に法人税・固定資産税課税すれば国民にとって差し引きプラスになる、という)
     
  • 新会社は上記条件下、当初20年間は年間3,000億円、以後9年2,500億円、次いで5年2,000億円、最後9年1,500億円づつ事業団に元金返済、結果43年間で事業団付け替え分10兆6,000億円の負債完済
    新会社は付帯事業等の自由化などを活用し効率経営に努める。5年目からは株式配当も可能に。

 しかしながらこの試算、実行を1年遅らせてゆくだけで結果が大きく変わる、のがミソといえましょうか。現状道路公団の負債は年間で8,000億円以上増えている(99-00年度で8,167億円)ことから、2000年度試算で43年かかった事業団付け替え分返済は99年度なら34年で済んだことになるそうで。しかもさらに遅れてゆけば事業団負担分がますます増えてゆくことになり、返済時期もがどんどん遅れてゆく、よって再建は今こそがラストチャンス!と結んでいます。

 「このように国民に新たな税負担を求めずに道路公団を再建することはできるのだ」とされていますが、道路特定税制は負担縮減があるとしても今後50年以上存置される、というのが条件になるわけで、この議論の出発点であった一般財源化とは結論を異にします。さらにはこのスキームで見る限り、値下げ方向での料金体系改善も考えにくそう…。数字の裏付けがあるとはいえ、すんなり納得できるものとはいえないような気がします。

 ただし、纏めの部分で効果かれているのは大いに納得しました。そもそも、道路は要るのか要らないのかを考えたときに、普通に至る結論はこれではないかと当方が前々から思っていることですね。

 族議員と呼ばれる人びとや地方自治体の主張のように、新たな道路がなおも必要だというなら、公団方式でなく税金で賄うべきだ。どれだけの税負担が必要かを情報公開し、国民がそうした税負担を了承したときに、初めて、新たな建設を考えるべきだ。間違っても現在の公団の延長線上で道路をつくり続けてはならない。

 21日だったか、Nステで猪瀬直樹vs鈴木宗男を見ましたが、まあ予想通りの噛み合わなさだったのはさておき、鈴木センセが終始繰り返されていたのは「地元の市町村長さん、道府県知事さんが…」という点。公団方式が地元の財政負担を全く負わない以上、「道路を引くこと」こそに意義があるという現状の政治構造そのものを変えないと、機構論・財源論を繰り返しても…ということになりそうで、なんだか空しくなってしまいました。

2005.07.20Update

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