【検証:】過去ログSpecial

【検証:近未来交通地図】Special203-4
川崎縦貫高速鉄道の可能性を探る

 本投稿は、川崎縦貫高速鉄道の賛否について、【検証:】掲示板でもお馴染みの、とも様とかまにし様 、串間様の対論を中心に、読みやすく構成させて頂いたものです(なお一部文面を編集しております)。

朝ラッシュ・南武線実乗記と川崎縦貫鉄道の可能性
なぜ川崎縦貫が必要か

川崎市の地下鉄に関するアンケート結果
世紀の愚策となるであろう結末

需要予測についての疑問
市民部会の川縦批判手法を批判する
横浜市との連携ができないか
川崎縦貫高速鉄道線のルートを検証する

下記内容は予告なしに変更することがありますので、予め御了承下さい。
当サイトの全文、または一部の無断転載および再配布を禁じます。



【川縦論】世紀の愚策となるであろう結末 〔続〕
 投稿者---とも氏(2003/06/17 00:18:45)
 
 http://town-m.vop.jp/
世紀の愚策となるであろう結末
└Re:世紀の愚策となるであろう結末
└多摩区川崎市民としては・・・
└シンプルに見えて「混ぜ混ぜミックス」な話
 └「延期」という名のボディーブロー
(以上前ページ)

  └PIの典型的失敗例なのかもしれない
   └Re:PIの典型的失敗例なのかもしれない
    └PIに関連して

    └Re:PIの典型的失敗例なのかもしれない
     └御返答
      └Re:御返答
      └需要予測はそんなに甘いモノではない
       └知る者と知らざる者
       └アンケート調査を深度化できないものか

▽前ページより

PIの典型的失敗例なのかもしれない
 投稿者---とも氏(2003/06/17 20:43:03) http://town-m.vop.jp

 ともです。

 しかし「延期」というのはなぜか。明らかに必要とする声が多数派になってしまった。これが無視できないわけでしょう。実際、昨今の公共工事「不要」論の流れの中で、まがいなりにも「必要」とカウントできるほうが多数派になってしまった意味は非常に大きいでしょう。逆立ちしても出来ない、というべきなのか、石にかじりついても実現します、というべきなのか。結果が先送りと言うわけです。

 まさに。
 今回のアンケート結果を「中止が多数」と解釈することも「賛成が多数」と解釈することも容易なものにしたツケは大きいです。
 考えようによってはどうにでもとれる。住民合意が今や公共事業では不可欠である中で、このアンケートには恣意的なものすら感じられてしまいます。

 川崎市が川崎縦貫鉄道の沿線で都市計画決定をしているかどうかですが、

 川崎縦貫の場合、幸か不幸か都市計画決定はされていません。
 よって「法的な」シバリはありません。しかし、

 向こう5年間、川崎縦貫計画と矛盾しない計画か、対症療法的な対策しか取れないというしばりをかけてしまった。その点こそ「延期」の最大の問題点でしょう。

この問題は残ります。市としてこのような計画を立案し、「延期」とした以上は尊重するしかない。
 しかし、現実問題として川崎北部の交通状況をどう改善するのかも見えない。
 これでは5年間にわたり、延々と放置が続くことに他ならない。これはまったくもって交通や都市計画を無視した財政論だけでの話であり、公共の利を実現するという究極の行政目標を持つべき市行政当局の姿勢として極めて問題であると考えます。

 南武線を改良すればよいという意見をよく見かけますが、現地に行けば即解できるほど状況は逼迫しています。串間様が書かれるとおり、自転車などの交通機関で代替できる状況ではないのです。これはまぎれもない事実です。
 その事実すら川崎市民に伝えず、このようなアンケートを全市を対象に行えば、そりゃ中止が多くなるのは当然です。

 こういった住民の意見を採り入れる方策、PI(パブリックインボルブメント)の実施にあたっては、メリットデメリットを正確かつわかりやすく伝えなくてはならない。これは不可避なことです。しかし、川崎縦貫の今回のアンケートでは財政面ばかりを表に出し、地域課題がないがしろになっている。この現実を踏まえずしてのアンケート結果は今後の様々な公共事業の実施に禍根を残すものとなるでしょう。

 財政面から反対というのは誰でもできる。でも今の状況をどうやって救済するのか。北千葉線にしろ川崎縦貫にしろ、そのビジョンを示すのが首長なり市当局の姿勢として求められるものではないでしょうか。

 まとまりませんが。

Re:PIの典型的失敗例なのかもしれない
 投稿者---串間氏(2003/06/18 00:21:49)

 一応申し上げておきますが、私は反対派です。しかし、重要性は深く認識しています。
 とも様がお怒りのようですが、市がこのまま無策を貫くのでしたら、私も「川崎市よ、いいかげんにしろ」といわざるを得ません。なぜならば、街作りにおいて、常に後手後手に回ってきたからです。何をやるにも中途半端。そんなイメージを川崎市は市民に植え付けてきたのです。
 今回の結果は妥当と考えますが、しっかりとしたビジョンを持って現状の改善に努める義務があると考えています。
 なぜこのようなことを書いたかと言うと、現状を認識されていない方がかなり多いということです。

 スレが違うかもしれませんが、アンケートの結果をさらに深く読み取ってみます。

問8 仮に、現在この地下鉄が開通していたら、日頃、この地下鉄を利用すると思いますか

 この結果において、利用すると思うが21.8%、利用しないと思うが59.2%となっています。川崎市の人口は128万人です。
 鉄道沿線にしか利便性が発生しないのにもかかわらず、これだけいるというのはある意味脅威です。
 さらに宮前区においては38.6%の人が利用すると答えています。
 地下鉄の料金が高いということは十分認識されているはずです。それでもこれだけ多いのです。
 かなり推測が入りますが、宮前区は首都圏有数の人気路線、田園都市線が通ります。比較的財力に優れた人達が住んでいることを考慮すれば、運賃の高さはそれほど致命的な結果にはつながりにくいはずです。

問9 問8で「利用すると思う」と答えた方にお尋ねします。その利用目的と利用すると思う回数をそれぞれ1つずつ選んでください。

利用目的 1.通勤 2.通学 3.業務 4.買い物 5.その他
利用回数 1.ほぼ毎日 2.週2〜3日 3.週1日 4.その他

 利用目的のうち、通勤通学が18.3%となりました。買い物が42.0%をしめています。ちょっと心配です。
 しかし、利用回数はちょっと驚きます。ほぼ毎日が16.7%、週2〜3日が17.0%、週1日24.4%。買い物の利用に関しては、63%が週1日以上使うと出ました。
 無駄な公共事業ではないことはアンケートから読み取ることが可能でしょう。

***
 尻手黒川道路沿いは「軸」というのは大げさと私は思っています。
 しかし、田園都市線以北に関しては南武線沿線よりも人口が集積しているのです。この点は紛れもない事実です。鉄道がないのにそれだけの集積があるのです。
 以前とも様はこう書かれていました。

 この線はバイパス線でもなければニュータウン新線でもない。言ってみれば需要があるところに軌道を敷くタイプの古典的な鉄道敷設です。

 需要があるのに敷けない。これほど不幸な選択肢しか存在しないのではあまりにも沿線住民には酷ではないでしょうか。何か打つ手があればいいのですが・・・。

PIに関連して
 投稿者---和寒氏(2003/06/18 06:57:28) http://www.geocities.jp/history_of_rail/

 串間様御例示の問8ですが、クロスセクションをとってみるとさらに興味深い傾向がうかがえます。

 「利用すると思う」という回答者は、市平均21.8%、宮前区で38.6%、麻生区で30.4%、多摩区で14.6%、川崎区で14.0%。

 「利用すると思う」という回答者のうち、「推進」48.1%、「延期」35.3%、「中止」7.0%。
 「利用しないと思う」という回答者のうち、「推進」4.6%、「延期」40.2%、「中止」47.9%。

 こうして並べてみると、川縦は将来の利用者によって支持され、将来利用する見込みのない方々に支持されていない、それは居住している区によってかなりの程度分類できる、というごく単純な利害対立になっていることが見てとれます。
 川崎区民・多摩区民など既存の鉄道線により永年に渡って受益している方々の意見と、交通渋滞という障壁に囲まれた宮前区民など川縦沿線住民の意見を、対等に比較考量していいのか。市政のバランスはどこに軸を据えるべきなのか、その選択として「延期」が妥当なのか。
 また、「延期」回答のニュアンスが賛否どちらに傾いているのか読みとれないという苦しさはあるとしても、川縦沿線ではなく将来利用する見込みのない方々においても、必ずしも完全否定されているわけではない、という回答結果をどう読みとるべきか。

 このアンケート調査をPI(Public Involvement)ととらえるならば、回答者はかなり真面目に答えていると読みとれるし、さらに次の段階に進むべきであるように思われてなりません。
 例えば、川縦を利用する見込みのない方々にまで、ある程度の比率で賛意が潜在していると見るならば、CVM(Contingent Valuation Method:仮想評価法:例1 例2)を用いて「利用せざる川縦への支払意志」を計測してみるとか。
 何故そのように考えるかというと、次の回答結果を見たからです。

例1 http://homepage1.nifty.com/anise/home/cvm.html
例2 
http://homepage1.nifty.com/anise/papers/sum_SEEPS01.pdf

<問>予定どおり地下鉄事業を進めるべきとする理由
 1)鉄道混雑・道路渋滞緩和 40.4%
 2)時間短縮・定時性確保  27.4%
 3)景気対策からも必要   16.4%

<問>地下鉄を建設する場合の財源調達方法
 1)道路・公園等の整備や学校・保育所・特別養護老人ホーム等の建設など投資的な経費を切り詰める 30.5%
 2)その他 27.4%
 3)福祉・医療・教育など聖域なく市民サービスのあり方をさらに見直す 25.2%
 4)固定資産税や市民税の引き上げを含めた新たな財源を調達する 15.0%

 「推進」回答者の回答という留保条件はつくとしても、「景気対策」が有意な推進理由として出てくるだけでも驚きといえるでしょう。また交通状況改善が福祉等よりもプライオリティが高いという切迫した状況が読めると同時に、いわゆる「痛みに耐える」覚悟さえ示されている回答ともいえます。
 それでもなお「延期」とは、やはり納得しがたいものがあります。特に将来の川縦利用者にとっては、なおさら切実でしょう。

Re:PIの典型的失敗例なのかもしれない
 投稿者---かまにし氏(2003/06/18 09:01:34)

 かまにしです。

★アンケート結果の分析について★

 この結果において、利用すると思うが21.8%、利用しないと思うが59.2%となっています。川崎市の人口は128万人です。
 鉄道沿線にしか利便性が発生しないのにもかかわらず、これだけいるというのはある意味脅威です。
 さらに宮前区においては38.6%の人が利用すると答えています。
 地下鉄の料金が高いということは十分認識されているはずです。それでもこれだけ多いのです。

 この数字だけを見て、「鉄道沿線にしか利便性が発生しないにもかかわらず、これだけいるというのは脅威」と言ってしまうのは、少し早計な気もします。

 このアンケートが、128万人の川崎市民のランダムサンプリングによってきちんと抽出されたと仮定し、1日あたりの利用者数を非常に大雑把に計算すると、(「週に2〜3回利用する人」の数は÷2、「週に1回程度」の数には÷7、で重みづけ)

○「毎日利用する人」の数  128万人×21.8%×16.7%  46,600人
○「週に2〜3回利用する人」の数  128万人×21.8%×17.0% ÷2≒ 23,718人
○「週に1回程度」の数  128万人×21.8%×24.4% ÷7≒ 9,727人

 以上の3つの値を合計すると80,045人となり、この人たちが行き・帰りともに川崎縦貫高速鉄道を使うと考えると、1日あたりののべ乗車人数は160,090人となります。あまり良い比較対象ではないかもしれませんが、川崎縦貫高速鉄道と同程度である総延長32kmの相鉄線が1日平均で約64万人運んでいますから、この数字だけを見れば決してすごいとはいえない気もします。

 もちろん利用者は川崎市民だけではないですし、ここで「利用しない」と答えた層も、実際にできてみると…というのはよくあるので、実際の利用者はもう少し多い(1日20〜30万人程度)とは思われます。

 以上、非常に大雑把にアンケート調査から1日の利用者を簡単に計算してみました。おそらく本来ならば、パーソントリップ調査などのデータを用いて需要予測をやるのが筋なのでしょうが…。

★本当に鉄道沿線にしか便益が発生しないのか?★

 「鉄道沿線にしか便益が発生しない」と書かれていますが、個人的には「本当にそうなのか?」という疑問があります。551planning様のレポートにもあったように、僕も先日の川縦オフに同行させていただきましたが、そこで感じたのは、

 以上の点から考えて、バスの需要の一部が地下鉄にシフトするだけでも、大きな道路混雑の緩和が期待できると思います。であれば、便益を受けるのは鉄道沿線はもちろん、渋滞の緩和等の間接的な効果を入れれば、川崎市全体やその周辺自治体も恩恵を受けるといって過言ではないと思います。

 ただ現実には、「悲しいことに住民がみんなそう考えるわけでない」ことです。「自分は地下鉄を利用しない」と決めてかかっている人は、ヒドイ奴なら自分に関係ないから「要らない」と考えるでしょうし、良心的な人でも「作るのは良いけど、それで自分が損をする(←市民サービスが低下する)のはちょっとな…」と思うのが正直な感想でしょう。

 もちろん、民間委託によってコストを切り詰めながらも実質的なサービス水準を維持することは本当は可能なはずですが、川崎市もアンケート等で「予定通り建設する場合は市民サービスにメスを入れる」と明記しており、これを見れば誰でも「それはちょっと嫌…」と思ってしまっても致し方ないです。そこまで言われて、「いやそれでも地下鉄は必要なんだ」と思う人は、自分が受益者になる人を除けばごくまれだと思います。

 それによほどの財政危機に直面しない限り、行財政改革で職員の雇用・給与体系にメスを入れるというのは、一般的にやりづらいものみたいですよ。もちろん川崎市も行財政改革に取り組んでいるとは思いますが案外、今回の地下鉄の一件は他の政策の行財政改革によって実質的な市民サービスの低下なしに、実現可能だったり…と思う部分もあります。

 ではでは。

御返答
 投稿者---串間氏(2003/06/18 21:21:52)

和寒様
 川崎区民・多摩区民など既存の鉄道線により永年に渡って受益している方々の意見と、交通渋滞という障壁に囲まれた宮前区民など川縦沿線住民の意見を、対等に比較考量していいのか。市政のバランスはどこに軸を据えるべきなのか、その選択として「延期」が妥当なのか。
 また、「延期」回答のニュアンスが賛否どちらに傾いているのか読みとれないという苦しさはあるとしても、川縦沿線ではなく将来利用する見込みのない方々においても、必ずしも完全否定されているわけではない、という回答結果をどう読みとるべきか。

 この点が非常に問題であるといわざるを得ないでしょう。
 仮に川崎縦貫に関連のない他の所に住んでいる住民にお金を出せといえば、当然嫌という声が出るに決まっている。だからこそ、私は反対と言う。
 つまり市民アンケートといいつつも、決して川崎縦貫沿線住民と南武線沿線住民とでは相容れない。
 市政のバランスはどこに軸をすえるべきなのか。もはや私の考えることのできる範囲を超えているとしか言い様がありませんが、財政的には市民全体に問うのが自然であっても、必要性を問うのに市民全体に問うのが正しいのかどうか。

 交通状況改善が福祉等よりもプライオリティが高いという切迫した状況が読めると同時に、いわゆる「痛みに耐える」覚悟さえ示されている回答ともいえます。

 アンケートからは、意外といろいろなことが読み取れる気がしてきました。少なくとも、宮前区民の多くがその意思を示しているというのは、受け止める必要がありそうですね。

かまにし様
 この数字だけを見て、「鉄道沿線にしか利便性が発生しないにもかかわらず、これだけいるというのは脅威」と言ってしまうのは、少し早計な気もします。

 すいません。前提条件もなしに暴走した感がありました(笑)。私の悪いくせです。
 とりあえず需要予測を見ていただきたく思います。資料1のp19,p37,p43,p44を見てください。現在川崎市のWebにアクセスしにくくなっているので、見られなくても怒らないで下さい(笑)。いろいろと載っていますので、暇があれば読んでいただきたく。とりあえずローカルに保存しないとダメでしょうが。
 なお、全文を読もうという方は前にも書きましたが、ディレクトリ型に展開されていますので、すベてローカルに落としてご覧下さい。ただし、めちゃくちゃ量が多いです。

資料1 http://www.city.kawasaki.jp/82/82tetudo/home/pdf/simin-1.pdf
資料全文 
http://www.city.kawasaki.jp/82/82tetudo/home/pages/pdfkai.html

川崎市営地下鉄予測値
(通過旅客を除く)
(simin-1,p43を元に試算)
新百合ヶ丘 25,558
長沢 11,967
医大前 4,837
蔵敷 6,843
犬蔵 8,643
宮前平 32,049
野川 11,402
久末 12,881
井田 11,350
元住吉 25,098
夢見が崎 6,748
新川崎 18,022
都町 5,381
川崎 20,732
192,868
 もちろん、需要予測は決して万能であるどころか、各地で需要を下回る結果を招いており、かなり不安定な方法という認識を私はもっています。しかし、アンケートではこれのほぼ半数の数値が出ました。予想の方の数値は外部からのアクセスの数値も含んでいまし、週1日以下の利用者もいます。ですから、そう考えるとかなりの健闘、といいたいのですが、ちょっと根拠にかけますね。失礼致しました。
 かまにし様は甘く(おそらく私に対して配慮なさったのではと考えますが)見積もられていましたが、本来ならば・・・
○「毎日利用する人」の数 128万人×21.8%×16.7% ×5/7≒ 33,286人
○「週に2〜3回利用する人」の数 128万人×21.8%×17.0% ×1/3≒ 15,812人
○「週に1回程度」の数 128万人×21.8%×24.4% ×1/7≒ 9,727人

が妥当でしょうか。となると往復で117,650人。うーむ、酷い数字だ・・・。
 本来、最低でもこれぐらいは固定客がいるから健闘していると考えるべきなのでしょうが。

 川崎縦貫高速鉄道と同程度である総延長32kmの相鉄線が1日平均で約64万人運んでいますから

 いや、相鉄ぐらい安くなったら、かなり利用者が増えると思います。ただ、それは無理な話ですし。横浜市営地下鉄もそれで苦しんでいるはずです。
 ただ、確かに地下鉄を利用者だけで測るのも難しいところですし、かまにし様のおっしゃるとおりかと思います。何より周辺のバスの状況など、総合的に考えたうえで地下鉄について語る必要があるようですね。

 暴走したことをおわびしつつ、失礼致します。

Re:御返答
 投稿者---かまにし氏(2003/06/18 22:12:00)

 かまにしです。
 串間様、こちらこそ拙い分析で非常に申し訳ないです。

 かまにし様は甘く(おそらく私に対して配慮なさったのではと考えますが)見積もられていましたが、本来ならば・・・ (中略)となると往復で117,650人。うーむ、酷い数字だ・・・。
 本来、最低でもこれぐらいは固定客がいるから健闘していると考えるべきなのでしょうが。

 確かにおっしゃる通りですね。特に「毎日」というのをそのまま間に受けすぎでした…(爆)。ただ、これも他の方に指摘された点なんですが、市外の居住者や週1回未満の利用者を含んでいないことのほかに、高校生をはじめとした20歳未満のデータも含んでおらず、それをを考えるとやはり1日の平均利用者数はおそらく20万人前後といったところでしょうか。

 よく調べたら僕の方こそ大失態でした。川崎縦貫高速鉄道は全線開通時で総延長22kmの路線ですね。相鉄であればいずみの線を除いた程度の距離ということになります。もちろん、そもそも比較対象としてふさわしいかという問題もありますが…。

 とんだ早とちりで大変失礼いたしました。ではでは。

需要予測はそんなに甘いモノではない
 投稿者---とも氏(2003/06/19 12:51:43) http://town-m.vop.jp

 ともです。

●アンケート
 市の事業である以上、市民の総意を確認することは市民参加型の公共事業において必須です。これは無闇やたらな反対運動(反対のための反対)をおこさず、市民が冷静に判断することとしては必要です。

 ただ、今回特に問題であるのはPIの基本であるメリットデメリットの明示を行わず、しかも必要性を問うに際し複数要因を重ねていること。これは手法論として違和感があります。
 たとえば東京外環や恩田元石川線の例を見るまでも無く何度かのワーキングなどを行って情報認識の共有化を図ってからのアンケートが必要であり、唐突な印象を感じます。この辺は問題でありましょう。

●需要予測
 根本的に誤解がありますので厳しく書きます。

 いくらなんでも悲観的すぎます。しかも人流動をまったく考えていない。さらに通過流動(多摩〜川崎など)を含めていない。さらに新規需要創出も考えていない。その条件で数字を出すことに非常に違和感を感じます。
ましてや「妥当」というのは抵抗があります。需要予測はそんな簡単なものではありません。
 その上で、現在の26万人という予測はさほど過剰とはいえません。むしろ弱気とすらいえます(実際幅をもった需要予測を行っている)。
 川崎市のHPにある各種資料を見る限り、少なくとも予測手法は妥当であり、その前提も不思議はありません。もちろん、我々はOD表を入手して推計を行うことはできませんから、この推計の妥当性をその他の要因から判断するしかありません。

 と考えた場合、確かにアンケートからの予測は乱暴とはいえ簡易にできますが、せめて南武線の利用者数との相関や国勢調査の通勤通学流動を市区町村別データでのクロスチェックは不可避でしょう。

 需要予測に関しては確かに当り外れがあります。しかし、その予測年次を開業●年後としていたり、そもそも経済予測や人口動態の予測が幅がある以上、それをベースに予測する人流動データにはおのずと誤差や幅は考えなくてはなりません。そこを考えれば需要予測を信用しないのは結構ですが不安定であることは避けられませんのでそこは踏まえなくてはなりません。
 なにせ全数調査の国勢調査をベースにしたところで誤差が出るんです。これらの流動データ、つまりODをいかにして正確にするか、それだけで何本もの論文がかけるほどの話です。

 さて、この数字、かまにし様は少ないと仰っていますが、本当に少ないのでしょうか。
 実際、似たような条件(核都市から郊外への路線、もしくはフィーダー的な使われ方をしている路線)の各路線と川崎縦貫の輸送規模を示す人キロを比較すると、案外使われることが読み取れます。

路線名 年間利用者数 平均乗車距離 人キロ
東葉高速鉄道 37,489,000 9.8 365,397,000
千葉都市モノレール 12,843,000 4.3 71,719,000
相鉄いずみ野線 36,092,000 5.7 206,273,000
小田急多摩線 28,236,000 6.1 173,547,000
北総開発鉄道 30,187,000 13.5 406,789,000
横浜市営地下鉄 137,082,000 8.4 1,150,444,000
名鉄豊田線 17,372,000 8.9 155,560,000
愛知環状鉄道 7,414,000 11.2 83,252,000
北神急行 9,453,000 7.5 70,898,000
北大阪急行 61,995,000 4.5 279,854,000
能勢電鉄妙見線 28,199,000 6.4 180,768,000
神戸市交西神山手線 95,737,000 6.0 5,417,518,000
大阪府開発公社泉北高速鉄道 55,059,000 9.0 1,779,506,000
近鉄東大阪線 29,249,000 6.7 195,242,000
山陽電鉄本線 37,228,000 12.2 954,428,000
川崎縦貫高速鉄道(委員会試算部分)  60,955,000 4.2 256,011,000
川崎縦貫高速鉄道(委員会試算全線)  94,900,000 8.4 797,160,000
川崎縦貫高速鉄道(かまにし試算)   58,400,000 8.4 490,560,000
川崎縦貫高速鉄道(串間試算)     42,942,250 8.4 360,714,900

出典:都市交通年報(H13)

※川崎縦貫の平均乗車距離は横浜市の数字を利用。部分開業時は0.5とした。

 いかがでしょうか。

 かまにし様の試算で、人キロで見ると輸送規模的には東葉・北総開発と同程度。
 串間様の試算でも北大阪急行に近いものになります。

 つまりはさほど悲観的になる数字ではないのですよ。
 このレベルは十分多いといえると思いますが。

 ただ、比較対象の鉄道は運賃は高いし経営に問題があるではないかとお考えの方もおられましょう。しかし、収支は悪くは無い。多くは償還の問題だけなのです。
 相鉄のように大手私鉄と比較するのは先進国と途上国の経済規模を単純比較するほど無意味なこと。
 似たような条件の鉄道で比較してこそ当然かと思いますが。

 厳しい書き方ですがご容赦を。ではでは

知る者と知らざる者
 投稿者---串間氏(2003/06/20 23:41:25)

 遅れましたが、説明を頂きありがとうございます。実に明快ですね。
 ご指摘の「情報認識の共有化」ですが、これがなされていなかったこと。それはアンケートの中にも影を落としているように感じました。

 またもアンケートを読み取ってみます。

○地下鉄事業計画の周知状況と賛否(p13)

計画について

推進 延期 中止 わからない 回答数
良く知っている 24.8% 34.9% 37.1% 3.2% 1572
詳しくは知らない 15.0% 43.4% 31.3% 10.3% 4128
知らなかった 9.5% 36.5% 33.0% 21.0% 1668

 知っている人ほどはっきりとした判断を下せる傾向が読み取れますが、同時に明らかに推進派が多くいるという事実があります。状況を見れば・・・といったところでしょうか。

 さらにもう一点

○財政状況の周知状況と賛否(p15)

財政状況について

推進 延期 中止 わからない 回答数
良く知っている 19.1% 37.7% 41.2% 2.1% 1065
詳しくは知らない 17.0% 43.2% 32.6% 7.3% 3131
知らなかった 13.6% 37.8% 30.6% 17.9% 3141

 財政状況の周知状況と地下鉄事業計画の周知状況のクロスセクションがあったら相当面白かったと思いますが、市政に関心をもっている人ほど必要性を感じている、と受け取れなくもないように感じます。有意な差、というにはちょっと厳しいところかもしれませんが、財政状況を知っている人ほど地下鉄に賛成するという、ある意味ねじれとも思えるような実状が浮かび上がってきます。
 市全体で地下鉄の計画を「良く知っている」と答えた人が21.3%しかいなかった。そうした周知が図られないままに行われた結果、多くの人が財政状況の説明に目が奪われて正しい判断が下せなかったのではないか。そういった疑念が浮かんできてしまいます。半分以上の人が「良く知っている」と答えられるような状況で、本来はアンケートが行われるべきだったのではないでしょうか。
 周知がしっかりとなされずにアンケートを行ったことは、想像以上にアンケートの質を下げたように感じさせます。

アンケート調査を深度化できないものか
 投稿者---和寒氏(2003/06/24 06:32:14) http://www.geocities.jp/history_of_rail/

 今回特に問題であるのはPIの基本であるメリットデメリットの明示を行わず、しかも必要性を問うに際し複数要因を重ねていること。これは手法論として違和感があります。

 この種のアンケート調査は、回答者の意向を知るという意味において重要ですが、決定的な弱点が一つあります。それは、選択肢の水準変動に対応できない、ということです。
 例えば同じ商品を購入するにあたって、100円ならば買うけれど200円では買わない、とか。そういう意味での水準変動です。
 川崎市のアンケートの設問においては、市民負担と川縦建設(交通状況改善)がリンクされていません。川縦建設=市民負担増、という一方通行では、大抵の市民は建設に躊躇するでしょう。その意味では「延期」というモラトリアム回答が最多数というのは当然です。
 本来は、以下に記すような水準変動による市民の意向を押さえるべきです。

交通状況:改善・現状維持・悪化
市民負担:軽くなる・現状維持・重くなる

 これらを組み合わせると、「市民負担は重くなるけれど交通状況は現在よりも悪化する」という「暗黒のシナリオ」、「市民負担は軽くなる一方で交通状況は現在よりも改善される」という「バラ色のシナリオ」という、両極端かつありえそうもない組み合わせが発生します。しかし、この組み合わせによる反応を見ないと、実は回答者の真の意向が見えてこないのです。
 交通状況の改善(川縦建設)に対する川崎市民の支払意志はいかほどなのか。単純な世論調査の域を超えた、解析的に有意なアンケート調査に深度化できないものかと、思われてなりません。

2004.11.02 Update


Copyright © 1998-2004 Unlimited Liability Company 551planning. All rights reserved.
Designed for Microsoft Internet Explorer 5.0 …by Microsoft FrontPage 2002