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(過去ログNo.100401)

J-AIRの“変節”を追う

投稿者---551planning (2010/04/24(Sat) 20:06)

この04/01から、羽田-南紀白浜線が通年3往復に増便されました。その理由は、機材のダウンサイジング。それまでの150人乗りMD-90から、76人乗りE170に切り替えられたのです。あわせて6往復運航されている羽田-関西線にも1往復が運用開始に。羽田空港発着の機材としては、ANA大島・三宅島線で運用されている56人乗りDHC8-300(A-net)に次ぐ小型機、ジェット機としては羽田イチ小さな機体ですが、その翼にはJALグループの浮上をも懸けられているとしても過言ではないかもしれません。

そんなE170のオペレーターはジェイエア(J-AIR)。ライバル機材でもある50人乗りCRJ200を2001年から導入し、北海道から九州まで地方路線を広域展開するリージョナル航空です-が、そんなJ-AIRが04/22、本社を構える拠点空港・愛知県営名古屋空港(小牧空港)からの全面撤退方針を表明。2月の社長インタビューで、『(名古屋)空港をどのように民間で活用するか。その活用の仕方がコミューター航空であると理解している』とも発言していたのですが、JAL再建への大リストラの波を直接受ける形に。
同社は5月運航開始予定の新千歳-女満別、仙台-福岡間を含め、CRJ200を9機・E170を6機で25路線を運航していますが、うち9路線が小牧発着。具体的な路線が示されたわけではないものの、秋に4路線、来春に5路線を廃止する方針とのことで、これが現実化すると名古屋空港発着民間定期航路はなくなってしまうことから、地元では波紋が広がっています。

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実はJ-AIR、以前にも拠点空港を“棄てた”過去がある、とするのは表現が過ぎるかもしれませんが、残存するJAC2路線(宮崎・鹿児島線)が今年10月廃止方針-これが実現化すれば定期航路がなくなることとなる広島西飛行場に、かつて本社を構えていたのでした。
そもそも、広島-松山-大分間トライアングル航路でコミューター航空の嚆矢を目指しながらも資金的に行き詰った西瀬戸エアリンクの事業を、JAL系乗員養成訓練機関だったジャルフライトアカデミー(JAFA 本社長崎、現在のエアフライトジャパン)が1991年に引継いだのがJ-AIRの原型。1993/10の広島空港移転を見据え、新生広島西飛行場で本格的なコミューター路線展開を志向すべく、機材や路線を順次変更(EMB110バンディランテス2機体制から、与圧機能を持つJS31最大5機体制へ)、1996/08には路線維持のための行政補助を受けるべくJAFAから分離独立、運航名称として使っていたJ-AIRは社名となりました。

その後本社を構えた広島西を拠点に、主に北陸・中四国・九州方面の路線を展開、1999年時点で12路線(うち広島西発着6路線)を展開するまでに至りますが、2001年に転機が訪れます。
展開路線の背景には、広島県をはじめ地方空港活性化を狙う就航地の自治体による「コミューター関係地方公共団体協議会」からの運航補助があったのですが、それが2000年度で終了し同協議会も解散となることに-さくっと調べた限りに仔細は不明ですが、J-AIRの路線展開の足枷となる一方で補助頼みの構造を生むこととなり、路線そのものの収益性等を勘案しても持続的展開に結びつかなかったものと推察されます。
いっぽう、J-AIRも広島西-関空線や名古屋-新潟・高知線など、単なる対地方間路線からのボトムアップを模索、2000年度決算では補助金含みではあるものの、創業初の単年度黒字を達成するまでの体力を得ることに。それらの状況を踏まえてか、またフェアリンク設立にも少なからず刺激を受けたのか、JALグループとして国内線戦略子会社-リージョナルジェットのオペレーターとしての位置付けが与えられることとなり、2001年からCRJ200が導入されました。それまでの19人乗り小型ターボプロップ機から、航続距離も1.5倍以上と日本全国をカバーする50人乗り小型ジェット機への切替により、新たな展開を迎えることとなります。

2003/08、JS31が全機退役しCRJ200-6機体制に-あわせて進められていたのが、広島西からの順次撤退でした。西瀬戸エアリンクから移管の初期2路線(松山・大分線)は1999/03で、関西線も同時に路線休止に。出雲線や高知線など一時休止後に復活する路線もありましたが、CRJ体制後(2004年度)も残ったのは新潟・宮崎の2路線だけ。その一方で伊丹・小牧空港での拠点化が進展。CRJ体制後は伊丹が4路線、小牧が実に7路線となっていました。JAL-JAS統合を受け、JALからの移管が進められたこともあり、花巻・山形・秋田・福島など東北方面に顔を出すことが増えています。
そして2005/02、中部国際空港開港にあわせて、小型ビジネスジェット機への特化を掲げた新生「県営名古屋空港」が誕生。JALグループは一定の収益力を持つと考えた小牧発着国内路線をJ-AIRに絞り込む形で存置させることとし、J-AIRは本社を広島西から小牧に移転、最後の広島西-宮崎線をJACに移管することで完全撤退となったのでした。なお、広島西については県と市の対立構造や道路整備との兼ね合いもありその後ポジティブな展開が望めない中で、やはり先述の通りJAL破綻の波に呑まれることとなるのは因縁でしょうか。

名古屋拠点化後、更にCRJ3機を追加し、細かい便数調整を行いながら順調に運航エリアを拡大。2007年度では17路線(うち名古屋10路線・伊丹5路線)を展開、CRJ導入前の対1999年度(12路線)で提供座席数は4倍、旅客数は5倍に上っています。
その時点でもはや進退窮まりつつあったJALグループは、JAL-JAS統合で複雑さが増していたフリート構成の抜本的見直しを迫られ、2007/02にE170導入を発表するとともにJ-AIRを専門オペレーターに指定、翌年に発表した「2008-2010年度JALグループ再生中期プラン」では、路線運営移管による運営効率化を図るべく、国内線運航便数のうちJ-AIRおよびJEX(B737専門オペレータ)の比率を2007/03時点での25%から2010/03時点で41%にまで引き上げるとしていました。
2009/02、いよいよE170が運航を開始。6月開港の静岡空港にも飛んでいますが、こちらは結果的にFDAに引き継がれることとなったわけですが、そのFDAもE170オペレーターであることは浅からぬ縁、となりましょうや。順調に機材を追加しMDクラスが飛んでいた路線にも進出、冒頭で触れた通りついに2010/04から羽田にも登場することに。それは、コミューター航空から低コスト航空(ただしLCCではあらず)へと、まさしく会社の姿を変えた象徴的トピックだと言えるのではないでしょうか-その矢先の名古屋撤退案こそがその証左でもあり、いささか感情的に捉えるならば、会社の成長ではなく“変節”と言わざるを得ないのかなとも。

ただし、当事者のJ-AIRにとっても突然の話であるようなのは、E170受け入れ等を踏まえ、名古屋空港内に2010/02に念願の自社格納庫を完成させていたこと。それからしてもJAL破綻プロセスが、多分に政治的に翻弄された面を窺わせるに足ることだとは思われるのですが-報道によると、撤退方針表明の翌日、山村社長が名古屋空港の地元3市町を訪ね、事情を説明したとのこと。「この日の行脚は日航の指示ではなく、自主的な判断」〔中日記事〕、「『利用者の利便性を図るため空港設備を整備してきたので、ジェイエアとしても残念な思いがある』とも語ったという」〔毎日記事〕などから、無念さも感じ取れるところにやりきれなさも。

JAL再建の一歩とはいえ、羽田拡張を軸に、ジェイエアの次なる展開がどのようになるのか、しばし注目されます。

J-AIR11路線運休…まだ見えない次なる展開

投稿者---551planning (2010/04/29(Thu) 14:23)

04/28、JALは「再生に向けた」2010年度グループ路線便数計画をリリースしました。国内線は30路線が運休、ただしうち7路線は運航主体であるHACの出資比率引き下げによるグループ対象外化というテクニカルな話になっており、報道によると秋頃の新体制移行を見込んでいるとのことですが、こちらも紆余曲折がありそうです。
JALグループ23路線の運休路線のうち、J-AIR11路線・JAC5路線と、やはりコミューター路線が切られるカタチに。既報の通り名古屋・広島西は完全撤退、名古屋については10/31付で4路線(帯広・山形・福岡・長崎)、03/01付で2路線(秋田・松山)、そして残る3路線(新潟・高知・熊本)が03/27付で運休となります。J-AIRでは他に新千歳-山形線、関西-福岡線が10/31付で運休となります。

なお、運送共同引き受けの関係上か、運休対象路線の運送会社欄が全てJAL/J-AIRと記載されており、中部-青森、伊丹-三沢、季節運航の新千歳-徳島・出雲も運休対象となっていますが、もしかすると一時的にJ-AIR運航となる可能性も否定できないのかもしれません。
というか、『不採算路線を中心とした運休および機材のダウンサイジング等により、事業規模を約3割削減』との文言および保有機材の削減としてB747-400・A300-600の年度内退役が明記されている割に、ダウンサイジングの具体的記載はなく、8月末発表となる下期事業計画でJ-AIRの次なるステップが明確になるものと思われます。


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