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【検証:近未来交通地図】Special035-2
「女性専用車両」ブームへの疑問

 本投稿は、【検証:】掲示板でもお馴染みの、エル・アルコン様より当BBSに御投稿頂きました文章を中心に、読みやすく構成させて頂いたものです(なお一部文面を編集しております)。

下記内容は予告なしに変更することがありますので、予め御了承下さい。
当サイトの全文、または一部の無断転載および再配布を禁じます。


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〔女性専用車両〕阪神は「構造上の問題」をどうクリアするのか
 投稿者---エル・アルコン氏(2003/03/04 15:15:21)
 
 http://6408.teacup.com/narashinohara/bbs

─神戸市の「教訓」から何も学ばなかったのか...
 └速報・青木駅初日点描
  └導入第1週目の様子
阪神電車が女性専用車とクロスシートについての
                           大掛かりなアンケートを実施
 └Re:阪神電車が女性専用車とクロスシートについての…
  └「蟻の一穴」が広がりはじめたのか

 在阪大手私鉄では唯一導入を決めていなかった阪神も3月24日から平日朝上りの区間特急に導入することを決定しました。
 まあ自社線内完結の種別で、かつそこそこ混んでいることから実効性も見込まれる無難な選択ではありますが、実は区間特急だから発生するという厄介な問題もあります。

***
 区間特急は三宮始発で朝ラッシュ時に14分ヘッドで6本運転されています。停車駅は青木、芦屋、甲子園となっており、梅田まででは直通特急よりも所要時間が短く停車駅も少ない(直特:御影、魚崎、芦屋、西宮、尼崎)事実上の最優等列車です。

 JRや阪急に対する最大の差異点として、この区間特急は三宮始発ということが挙げられます。もっとも、3社分の着席需要で大賑わいというわけではなく、次の青木でも若干名が座れたり、芦屋の入れ替わりでそれなりに座れるといった実状もあり、座れる数だけが愛用している、という感じです。
 また、対大阪一辺倒というわけではなく、青木や芦屋の事業所への通勤、芦屋や甲子園への通学といった区間利用もそれなりにあります。

 さて、その区間特急=区特への女性専用車導入の問題点ですが、まず、導入車両の位置です。始発の三宮が階段が最後尾、青木は先頭、梅田が先頭と最後尾近くが階段位置であり、両端車両への導入は男性利用者にとって到底受け入れられません。
 また前寄り2両目から3両目は芦屋の階段位置にかかっており(最後尾が最寄りの西口もある)、芦屋川の橋梁上にホームがあり、その階段付近以外の幅が狭い芦屋駅の構造からそこを避けて並ばせることは安全上からも出来ません。
 そうした消去法から前(梅田方)から4両目に決定したのでしょうし、事実そのあたりがあくまで相対論ですが空いているのは確かですが、一方で途中駅降車客がただでさえ混みやすい車両に回るというデメリットもあります。

 ところで区特は三宮3番線の発車です。このホームは折り返し専用になっており、乗車ホームは下り新開地・姫路方面の2番線と共用の島式になっていますが、停車位置が梅田方に偏っており、唯一の階段を降りてから2両分くらい歩く構造です。
乗車側ホームは柱も立っており狭く、梅田寄りの2両分位は非常に狭いです。しかも発車パターンを見ると、折り返し区特になる急行が到着してすぐ直特が発着し、その後、区特発車のすぐ前に高速神戸行きの普通が発着します。そのため発車ホームを前寄りに進むことは下り電車の乗降客を考えるとかなり難しいです。
 実際、夕夜間の始発電車である快速急行や急行を見ても、先頭が階段の位置になる青木下車客ですら、狭い地下ホームを歩いて移動せずに、後ろ側に座ったり、車内を移動するケースが多いです。
 なお乗降ホームを入れ替えれば、と考えたくなりますが、降車ホームは実は5両分しか有効長がなく、梅田寄りの1両はドア締め切りになっているため入れ替えは不可能です。

 こうした構造と状況、また三宮終着である山陽S特急との接続時間(1分)から、後ろ寄り車両に取り敢えず乗車して車内を移動するケースは多く、西灘や大石あたりまで車内を歩く人が目立つようです。
 このとき、先頭から4両目、三宮から3両目に女性専用車が存在した場合ですが、車内の通り抜けの可否が問題になります。制度趣旨から言うと通りぬけも出来ないはずですが、構造上ホーム移動が厳しいのに、車内移動が出来ないのであれば、後ろ2両が非常に混み合い、前4両がガラガラという事態も有り得ます。

 特に着席サービスが目玉でもある区特において、同じ時間にホームにきても男性は事実上2両の座席を争うのに、女性は専用車の向こうの3両を併せた都合6両全部にアプローチ出来る、つまり青木までは6両編成の前4両が事実上の専用車となる著しい不公平が発生します。
 そして三宮のみならず青木や芦屋での着席チャンスの問題も併せると、阪神の競争力を削ぎかねません。

***
 混雑時の痴漢防止というそもそもの制度趣旨からすれば、三宮駅の構造上の問題から、車内移動による乗車率の平準化に頼らざるを得ない以上、女性「専用」車として運用は青木からとして、青木までは「優先」として車内移動を容認するといった緩和策が必要です。

神戸市の「教訓」から何も学ばなかったのか...
 投稿者---エル・アルコン氏(2003/03/06 10:50:40) http://6408.teacup.com/narashinohara/bbs

 阪神電車各駅に女性専用車の告知ポスターが貼られました。

 さて、ポスターを見てこれは問題と思ったのは、「女性専用」の除外規定です。
 幼児関係は他社並みですが、障害者関係が問題です。つまり、本人もしくは介助者のいずれかが女性でないと乗車できません。つまり、男性の障害者単独、もしくは男性の障害者に男性の介助者が付いた場合は健常な男性と同じ扱いになるのです。
 これは各方面で問題になった神戸市営地下鉄での扱いと同じであり、その神戸市ですら2月28日から男性障害者の単独乗車を認めており、かつ隣接事業者で既に問題になっていると言うことは女性専用車設定、運用上の重要な問題点として当然認識すべきことであるのにそのままというのは、阪神の障害者に対する意識の低さを指弾せざるを得ません。

 もっとも、区間特急停車駅に限って考えると、三宮、青木、芦屋、甲子園の各駅ともエレベーターはなく、エスカレーターも芦屋と甲子園の一部のみとお寒く、問題になる可能性が著しく低いのでは、という悲しい現実もあります。

速報・青木駅初日点描
 投稿者---エル・アルコン氏(2003/03/24 10:12:56) http://6408.teacup.com/narashinohara/bbs

 今日から阪神の区間特急でも女性専用車の運用がはじまりましたが、青木駅での様子を速報致します。

 改札口で係員が女性専用車設置のチラシ(既に各駅で配布されているもの)を配り、普段は無い構内放送でも対応しています。
 梅田行きホームでは梅田寄りに放送担当の係員が出ており、案内放送と発車ベル扱いをしており、専用車乗車口にはプラカードを持った係員がこれも案内に努めていました。
 普段の青木駅は改札口に1人配置であり、これらの係員は応援要員のようですが、不慣れなのか放送担当が区間特急発車後にもう一本直特の通過追い越しがあるのを失念して「急行発車します」とやってしまい、離れたところにいた乗務員が苦笑する場面もありました。
 ホームには大きなピンク色の乗車口シールが貼られており、目立つのは確かですがちょっと悪趣味です。

 私がホームに出たときは既に退避の急行が着いた後であり、行列の具合を見ますと女性専用車はこころもち少ない(専用車=各扉10人くらい、その他=12人くらい)程度で有意な差は認められない感じです。ただ、区特が到着した時、つまり三宮発車の状態を見ますと、学校休みに入り客数が少ないはずなのに、先週までは空席があった先頭車や2両目も無く、入れ替わりの空席も無く、青木での着席チャンスが消滅した格好です。女性専用車は空席が無く、立客がこころもち少ない程度。問題は後部2両で、三宮で発車間際に乗車して車内移動が出来なかったのか、明らかに混んでおり、直特に近い状態です。

 青木発車時の状態は全体的に混雑度合いが増したようで、どうも今まで急行などに逃げていた女性客が区特に流れたのでしょうか。そのせいか逆に急行の空席が目立ちましたが、これは準急同様通学客が多いこともあり、学校の新年度がはじまってから評価すべきかもしれません。
 区特の設定意義が芦屋や甲子園といった阪神が強い地区に置ける輸送力専用列車だけに、バランスが崩れたとしたらちょっと厄介です。

 見た感じでは大きな混乱も無いようですが、先に指摘した通り、女性専用車が編成後ろ寄りにあり、三宮の階段が最後部という要因から、女性専用車の後方2両の混雑が明らかに目立つのは問題です。青木、芦屋、甲子園での誘導次第では乗車率の平準化に寄与するかもしれませんが...

 なお、車両側の案内は、窓ガラスに3箇所引っ掛け式の札を下げるようになっています。また前後の車両の貫通扉にも注意があるようです。

導入第1週目の様子
 投稿者---エル・アルコン氏(2003/03/28 10:56:04) http://6408.teacup.com/narashinohara/bbs

 青木駅で見た第1週の様子をまとめてみました(通勤途上ですので、6本のうち5日間とも同一の1本しか見ていません)。

 改札での周知活動と、ホームでの放送及びプラカードは5日間ともありました。
 女性専用車の列に男性が並ぶケースがありましたが、係員からの注意はなし。ただ、到着して表示を見てその男性は他の車両に移っており、単純な見落としのようです。
 車内での横紙破りはいなかったようです。

 混雑ですが、2日目以降は前3両の混み具合は導入前と同程度に。ただ、学校休みに入っているので即断は出来ません。女性専用車の混み具合はやはり心持ち空いていますが、空席があるというほどではなく、青木発車時には立客が出てます。ホームの行列は、他が各扉12〜14人なのに、専用車は8〜10人と少ないですが、導入前から見ての青木における女性客比率からすると止む無し、というか自発的に集中している印象すらあります。なお後部2両の混雑は明らかに増加しており、芦屋、甲子園の乗り具合とも合わせて、改善すべき点なのか分散が計られたのかを判断すべき事項です。

 全体的に導入前よりも心持ちトータルの乗客数が増えた印象で、逆に青木で抜かれる急行の混雑度が若干減った印象もあり、混雑を避けて武庫川−野田を除けば比較的空いている急行を利用していた女性客が区特に流れたのでしょうか。武庫川以西では平準化に逆行しますが、武庫川以東の混雑を考えると、急行にも思わぬ余得発生となっているのかもしれません。
 余得といえば着席可能性ですが、青木まで利用の女性客が、今までの階段最寄りから女性専用車に移った部分も若干見うけられるようで、芦屋を考えると女性専用車の着席可能性はやはり高いといえます。

 特異な例としては、女子中学生(女子高生?)の集団が乗ってきた日がありました。専用車の隣の車両に並んで、そのまま隣の車両に乗ったわけですが、明らかに通常以上の乗客がその車両に集中するケースでもあり、せっかく案内係員を配しているのであれば、そういう「女性客」は専用車に誘導する配慮が必要でしょう。

***
 新学期が始まるまではこんな感じでしょうが、三宮の構造に起因する後部2両の問題を解決できれば(青木までは専用車の通り抜けを認める)、比較的スムーズな導入となっています。直特や急行の女性客を専用車に適切に誘導できれば、各種別の乗車率を平準化出来る可能性もある無難なスタートです。
 もちろん、こう言う性差による区分は、あくまで犯罪行為への緊急避難的な対応として、時間や列車を限定したうえでの特例という原則を忘れてはならず、サービスとしての性差による区分という、公共性に著しく欠ける振る舞いになってはいけないことは言うまでもありません。

阪神電車が女性専用車とクロスシートについての大掛かりなアンケートを実施
 投稿者---エル・アルコン氏(2003/05/13 18:36:51)  http://6408.teacup.com/narashinohara/bbs

 今朝、阪神青木駅で駅員が改札の内外に立ち、乗降するお客にアンケートを配っていました。
 他駅では前日からとか、やっていない駅もあるという情報もあり、また各駅駅長室(らくやんカードなどを販売している窓口ですが)でカード購入者に実施もしていたようで、相当大掛かりな模様です。

 内容は3月24日に「試験運用」が始まった女性専用車についてと、最近増備・改造が続くクロスシート車について。前者は「試験」という建前ですから利用者の意見拝聴は当然ですが、後者は珍しい試みです。クロスのロング化という流れは多いですが、ロングオンリーからクロス化を図っている阪神だけに、ここでのアンケートが何を意味するか興味深いですし、また結果がどう出るか。巷間喧しい論点だけに、こちらも興味深く、詳細な結果発表が期待されます。

 A5版表裏の1枚モノで、その場で書くのではなく、5月30日までに各駅で回収とのことで、結構書かせる気合の入ったアンケートです。もちろんその労苦に報いるためか興味を引くためか、抽選で50名に1000円の「らくやんカード」があたるそうで、ホームで見てますと、一瞥して屑物入れに捨てる人もいましたが、大半の人が目を通してカバンなどにしまっており、テーマ的にも乗客の興味を引いているようです。

 ちなみにアンケート内容ですが、前段にあたる問1〜4は利用状況についてで、問5が女性専用車。問6がクロスシートで、問7は阪神電車への意見欄、最後に個人データです。

問5-1:
阪神電車では今年3月に一部の列車で女性専用車両を試験導入しました。あなたは女性専用車両に賛成ですか、反対ですか。(1.賛成、2.反対、3.どちらともいえない)

問5-2:
問5-1で、「賛成」とお答えになった方にお伺いします。
「賛成」の主な理由をお選びください。
(1.痴漢などの迷惑行為にあわなくてすむ。2.安心して乗車できる。3.痴漢に間違われる心配がない。4.その他)

問5-3:
問5-1で、「反対」とお答えになった方にお伺いします。
「反対」の主な理由をお選びください。
(1.男女差別になる。2.他の車両が混雑する。3.普段利用している車両に乗れない。4.迷惑行為の根本解決にならない。5.女性が他の車両を使いづらくなる。6.その他)

問5-4:
女性専用車両について、どのような告知でお知りになりましたか。
(1.車内・駅構内放送。2.駅貼りポスター。3.車内ポスター。4.駅チラシ。5.その他)

問5-5:
女性専用車両の案内表示について、どのようにお感じになりますか。
(1.適切で分かりやすい。2.表示場所が分かりにくい。3.情報量が少なく分かりにくい。4.その他)

問5-6:
女性専用車両導入後、専用車両以外の車両の混雑がひどくなったと思われますか。
(1.思わない。2.思う(やむをえない)。3.思う(好ましくない)。4.わからない)

問6-1:
阪神電車の車両にはロングシート車両とクロスシート車両の2種類があります。ご利用される際、どちらがより好ましい(快適)とお感じになりますか。
(1.ロングシート車両。2.クロスシート車両。3.どちらともいえない)
※1と2にはドア回りを含む見取り図が添付。2は一方向きになっている。

問6-2:
問6-1で、そのようにお感じになる理由について、お答え下さい。

***
 なかなか突っ込んだ質問もあり、選択肢を見ると論点が浮き彫りになってきます。
 回収率等も興味ありますが、今後も、というか各社もこういうアンケートを積極的に行い、サービスにフィードバックしてもらいたいです。

Re:阪神電車が女性専用車とクロスシートについての大掛かりなアンケートを実施
 投稿者---千葉阪神氏(2003/05/15 11:46:14)

 はじめまして。
 みなさんみたいになかなか詳しい知識を持ち合わせておりませんが、よろしくお願いします。
 実は私、鉄道業界就職に失敗してしまいました。
 負け犬っぽくて悔しいですが、他業界でバリバリ活躍するべく動いているところです。

 さて、阪神電車でアンケートが行われていたということですが、採用選考のグループディスカッションのテーマもずばり「女性専用車は必要か?」という題でした(他の題もあったらしいですが)。
 もちろん社員さんの見ている観点は、議論の内容ではなく受験者の個人的能力ではあるのですが、社員さんに逆質問をしたところ社内にも様々な意見があるらしいです。ただ、私が参加したグループの結論通り、導入せざるをえないという判断らしいです。

 ここ数ヶ月、大阪に行く機会が多かったのですが、関西は女性専用車王国なんだな〜という印象を受けました。
 また、いつも満員電車通学に慣れている身からしてラッシュ時の余裕にうらやましさと会社側としてのきびしさを感じました。

「蟻の一穴」が広がりはじめたのか
 投稿者---エル・アルコン氏(2003/05/18 00:57:22) http://6408.teacup.com/narashinohara/bbs

 5月15日付の大阪朝日(夕刊)に、「女性車両『寒い』?」と題して、関西各社が相次いで導入している女性専用車が弱冷車(弱冷房車)に設定されてないことを批判しています。
 弱冷車自体が専ら女性サイドの要望で設置された経緯がありますが、老人層を中心に男性客にも受け入れられていることから、弱冷車を指定する男性客を締め出すという事態になります。また弱冷車を増やすことについては良く効いた冷房を望む声が強いこともあり難しく、終日実施の阪急京都線のみ弱冷車が複数あることから弱冷車を専用車にしているほか、同じく終日実施の神戸市も西神・山手線で弱冷車を指定しています。

 女性専用車の設定において、犯罪防止という大義名分はあるが、「女性へのサービス優遇策に過ぎないのでは」という根強い批判もあります。それを考えると、今回「弱冷車」も合わせて設定をという意見がおおっぴらに出たことは、サービスとしての女性専用車という意味合いに変質していることをうかがわせます。
 もとより「公共」交通機関である鉄道において、サービスとしての女性優遇策を対価無しに実施することは到底容認できない話です。このあたりは線引きを厳格にしないと、一部の船会社で実施されているような、優等船室廃止に伴う施設を「レディースシート」として無償で提供しているような事態に至ることも予想されます。

 弱冷車ですが、女性からの要望が多いのは事実ですが、健康状態への配慮という側面があり、男性利用者もそのサービスを享受できます。ゆえに弱冷車を専用車にした場合、男性の健康状態への配慮がなされないということになります。一方で冷房を効かせて欲しいという要求もあるわけで、はじめに女性専用者対策ありきでそのバランスを崩してまで弱冷車を増やすのは筋違いです。このあたりの問題も、障害者や老人などの弱者対策よりも女性専用車を優遇させたことで物議をかもした件と同根に見えます。

 弱者対策との優先劣後のように試行錯誤の時期と見ることも可能ですが、どうも「蟻の一穴」という言葉が脳裏をかすめています...

横浜市営地下鉄の女性専用車アンケートを巡る疑惑
 投稿者---エル・アルコン氏(2003/07/01 11:11:57)
 
 http://6408.teacup.com/narashinohara/bbs

─「限りなく“クロ”に近いグレー」ではありますが

 横浜市営地下鉄で3月から「試験導入」されている女性専用車(6両編成中の1両。平日始発から9時まで)につき、この6月末で試験期間満了でしたが、7月1日以降正式に導入することになりました。

 交通局ではアンケートを募集して、本格導入の是非を図っていました。方法としてはインターネットや備え付けのアンケート用紙による調査であり、それ自体は特段変わった事はありません。

http://www.city.yokohama.jp/me/koutuu/info/oshirase/kisha/pdf/20030627_02.pdf

***
 ところが、この決定を伝えた報道を見ると、奇怪な経緯を辿ったことが見えてきました。


 市交通局が試行期間中に駅やインターネットなどで行ったアンケートには10395人が回答。評価は賛成48%、反対47%と半々だった。男女別では女性の反対が27%に対し男性は75%を占める。反対理由としては30%が「他の車両が混雑する」を挙げた。
 同局によると、朝の混雑率は、4号車(132%)とその他の車両(147%)では大差はないという。また、地下鉄利用者を対象として各駅で新たに行った対面調査(男女640人ずつの計1280人が回答)では70%(女性81%、男性60%)が賛成したとしている。「専用車両が他車両の混雑を招いている構図はなく直接、地下鉄を利用している人たちの支持率も高い」(同局)と判断し本格導入に踏み切るという。

(文中漢数字および全角算用数字を半角算用数字に変更)
神奈川 
http://www.kanagawa-np.co.jp/news/nw03062863.html

 当初のアンケートでは賛否真っ二つであり、すんなり継続というには無理がある結果です。ところが、交通局では1280人を対象とした対面調査を期限が近い6月中旬に行って、そこで70%の支持があるとして、正式導入を決めています。この対面調査が「屋上屋」程度ならまだしも、ここまで露骨なやり方を見ると、当初のアンケートで市側の意向に沿わない結果が出たので慌てて別手段でのアンケートを試みたと見ることは、子供でもわかるような話です。

 この集計が当初アンケート+対面調査ならわかりますが、それでも賛成50%、反対43%という「僅差」です。さらに対面調査の手法についても疑義があり、男女同数の1280人への調査とのことですが、一見公平そうに見えて、当該時間帯の利用者男女比率が半々でなければ、実は不公平な調査です。また調査対象人数も各駅の利用者数に比例して割り振らないといけませんが、全32駅で合計1280人という数字からは、各駅40人で割りきれるだけに、全体の利用者数との整合も無い可能性が高いです。
 また、導入側の交通局職員に対して反対を述べる抵抗感もありますし、「お客様に、より安心してご利用いただけるよう、車内における痴漢等による迷惑行為の防止策として」と謳うことへの反対も面と向かっては言いづらい懸念もあります。

***
 この「再調査」についてはきな臭い報道もあります。


 同局が20日に締め切ったアンケート調査では、約1万件の回答のうち「賛成」が48%、「反対」が47%と拮抗(きっこう)。ところがインターネット上の匿名掲示板「2ちゃんねる」で「反対」の組織票を呼びかける書き込みが複数見つかったことなどから、改めて約1300人に対面調査した。

 その結果、「賛成」70%、「反対」11%だったことから、本格的導入が決まった。同局は「女性への迷惑行為を防止して安心して乗っていただけるよう理解してほしい」としている。

(文中漢数字および全角算用数字を半角算用数字に変更)
産経・神奈川県版 http://www.sankei.co.jp/edit/kenban/kanagawa/030628/kiji02.html

 「組織票」対応といえば聞こえは良いですが、結局は1万件のアンケートを葬り去り、「改めて」調査したと言うことです。
 とかく噂のあるネット掲示板を挙げてもっともらしく見せていますが、意中に沿わないから問い直すというのは「民主主義」の完全否定です。そもそも、政党その他を挙げるまでも無く、ある程度の「組織票」は民主主義の産物でもあり、特に横浜市議会も当然採用している議会制民主主義は「組織票」があって初めて成立するシステムです。

 今回、横浜市という行政が、極めて恣意的なアンケート調査を行い、制度を決定したということは、当初目的であった女性専用車の賛否を超越した、国民主権の根幹に関わる重大事とも言えます。
 もちろん、そうまでしなければ導入の大義が立たない女性専用車の導入についても、取り得る手段を尽くした果てといった「導入の必然性」を示して、利用者の理解を得られない限り無理といえます。

「限りなく“クロ”に近いグレー」ではありますが
 投稿者---551planning(2003/07/02 11:06:50)

  この問題、5月末に中間発表がされており賛否が拮抗、その時点でニュースにもなっていました。

中間発表 http://www.city.yokohama.jp/me/koutuu/info/oshirase/kisha/20030530_01.html
最終結果 
http://www.city.yokohama.jp/me/koutuu/info/oshirase/kisha/20030627_01.html

 もともと6月末までのアンケート期間が『集計の都合上』6/20で打ち切られ、『アンケート調査で賛否が拮抗しており、より慎重にお客様の声をお聞きするため』行われた対面調査で、『調査項目は従来のアンケートと同一と』した結果、賛成が7割になる(女性8割、男性6割)というのもなんだかなぁという気は確かにします。
 さらに、2chの複数の関連スレッドを斜め読みした中では、反対票を投じるような恣意的な表現は(無きにしも非ずなのは事実だが)然程見られず、むしろ賛否両論のやり取りの中でアンケートへの参加を積極的に呼びかけているという宣伝的役割すら負っていたと感じられました。その意味においては非利用者による意見反映が強くなったのではないかという疑問は感じる一方で、当該アンケートがいたって民主的なプロセス?に拠っていたのではと思います。

 「組織票」対応といえば聞こえは良いですが、結局は1万件のアンケートを葬り去り、「改めて」調査したと言うことです。
 とかく噂のあるネット掲示板を挙げてもっともらしく見せていますが、意中に沿わないから問い直すというのは「民主主義」の完全否定です。
 今回、横浜市という行政が、極めて恣意的なアンケート調査を行い、制度を決定したということは、当初目的であった女性専用車の賛否を超越した、国民主権の根幹に関わる重大事とも言えます。
 もちろん、そうまでしなければ導入の大義が立たない女性専用車の導入についても、取り得る手段を尽くした果てといった「導入の必然性」を示して、利用者の理解を得られない限り無理といえます。

 アンケート調査については各所で実施されているところであり、概ね導入については理解ある結果が出ているものと感じていますが、今回はネットで広く意見を求めたが故に一種の世論調査的性格を帯びてしまったというところでしょうか。その限りにおいて「導入には理解前提」という意見の存在は理解します。
 今回の場合、ちょうど2年も1軍実績のない選手がトップで選出されてしまうプロ野球のオールスターファン投票のような事態もあったが(そう見られてしまう2chもなんともはやなところがあるが…)ゆえに、横浜市の対応は後手後手に映ってしまったのは否めません。ただ利用者を対象とした対面調査でも反対意見は出ていることから、確かに手法としては疑念の残るところではあるものの、一概に恣意的なものと言い切ることもできないかと考えます。ゆえに導入に踏み切った判断は是認されるべきではないでしょうか。

 率直な意見として、当方は通勤通学時の女性専用車両の導入の是非について、痴漢をはじめとした迷惑行為問題が今なお存在するにおいては、緊急避難的措置としてあるべきと考えますし、ゆえにその運用は限定的であるべきと考えます。その意味では以前エル・アルコン様他の方々より御紹介頂いた、終日実施している神戸市営地下鉄の例などには引っ掛かりを覚えるものですが、『取り得る手段を尽くした果てといった「導入の必然性」を示して、利用者の理解を得られない限り無理』とはいささか飛躍の懸念を感じます。ただし、この「準世論調査」を横浜市および鉄道事業者、ひいては方向性に理解し支援していると思われる国土交通省が、どのように受け止めているのか…すなわち「犯罪撲滅への一過程」なのか「(女性)利用者サービス」なのかを明確に示す時が来ているのではないかと思われます。

横浜市営地下鉄の女性専用車アンケートを巡る疑惑
 投稿者---エル・アルコン氏(2003/07/01 11:11:57)
 
 http://6408.teacup.com/narashinohara/bbs

─「限りなく“クロ”に近いグレー」ではありますが

 

2004.11.14 Update


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