【検証:】過去ログSpecial

【検証:近未来交通地図】Special018
しまなみ夢幻
(2003/05/02)

 本投稿は、【検証:】掲示板でもお馴染みの、エル・アルコン様より当BBSに御投稿頂きました文章を、読みやすく構成させて頂いたものです(なお一部文面を編集しております)。

 なお、【検証:】では掲示板投稿に限らず広く皆様からの御意見・レポート等を御紹介致します。自分ではホームページを持っていないけれど、意見が結構纏まっている…という貴方、各種ご相談に応じますのでお気軽に管理人までどうぞ!

下記内容は予告なしに変更することがありますので、予め御了承下さい。
当サイトの全文、または一部の無断転載および再配布を禁じます。



2004.11.14 Update

 今年の連休は曜日の配列が悪いうえに、雨まで祟った前半戦の緑の日とメーデーに挟まれた30日、広島帰省の機を活かしてしまなみ海道などの西瀬戸早回りに出かけてきました。

■ キララエクスプレス (2003/05/02 01:08:30)

 まずスタートはしまなみ海道の起点となる尾道から。松山への「キララエクスプレス」です。因島や大三島、また今治系統は多いんですが、対岸愛媛の県都松山までを結ぶのは尾道、福山から各2往復だけとささやかです。尾道発午前便となる9時20分のバスに乗るため9時頃に桟橋側のR2に面した乗り場に立つと、乗車券を購入するようにという掲示が。駅舎側のしまなみ交流館の一角にある乗車券販売所で3600円の乗車券を購入しましたが、時刻表では「予約」とあるのにどうも自由席のようです。停留所には途中の赤崎、瀬戸田PAまでは下車時に支払うようにとあり、定員把握のための予約ということでしょうか。
 乗車券販売所の位置も悪く、駅を出て正面のロータリーは市営や中国バスの近距離バスで、乗車券購入が必要な中長距離バス(広島、しまなみ関係、大阪)はR2の反対側やロータリーと反対のR2と動線がそっぽを向いています。駅前と桟橋地区を改修して公園仕立てにしたのは良く、バスターミナルとしまなみ交流館、船客ターミナルは立派ですが、ただこの一点だけが問題です。

 発車5分前にオレンジ一色の塗装が派手な本四バスが登場。乗り場で待つのは4人と、GWとはいえ平日、しかも朝方まで大雨だったせいか冴えないスタートです。乗り場で見送る顔も何人かおり、次の9時半の今治行きを待つようで、「キララ」が停まる生口島でも観光名所の耕三寺、そして大三島や伯方島などに停まる今治行きと違い、事実上松山直行というバスは案外と使い勝手が悪いようです。
 尾道から因島までは本四バスのほか、尾道市営と因の島バス、大三島から今治へはせとうちバスが路線を持っており、今治線が中国バス、トモテツバス、本四バス、しまなみバス、せとうちバスの5社共同となっているのに、伊予鉄を入れた6社共同に踏み切れなかったということでしょうが、島巡りこそしまなみ海道の華なのに、うっかり降りたら次が無い「キララ」の異質さが際立ちます。実際、両端からの因島や大三島までの便はそこそこ乗っており、それなりに人口集積のある島々の需要も取れない直行便の存在意義は希薄と言えます。

 R2からR184、当地で言うところの「桜土手」に入り、新市街の真ん中にある新尾道駅へ。事情を知らない人に意味が無いとか言われる新幹線専用駅ですが、事実上市街地がネコの額のような旧市街ではなく千光寺などのある丘陵の後ろ側の新市街に広がっており、R2尾道バイパスにも近い駅周辺は交通の拠点としても賑わってます。
 新尾道駅で2人乗せて6人になり、これが今日の全乗客でした。向島と因島大橋の本線BS、生口島の赤崎と瀬戸田PAで乗車を扱いますが、そこから松山へ向かう客がどれだけいるのか。ちょっと戻って尾道バイパスに入り、すぐ西瀬戸尾道ICで西瀬戸道(しまなみ海道)に入ります。モニュメントが並び、「しまなみ海道」の石碑が建ってますが、すぐの尾道大橋出入口で流出するクルマの多いこと。しまなみ側の新尾道大橋よりも料金が安いこともありますが、向島自体の流動が多いうえにしまなみの向島ICが少し手戻りだけに止む無しです。

 昭和43年完成の尾道大橋の脇に出来た新尾道大橋を皮切りに橋巡りです。同じような斜長橋でも30年の歳月は大きく、良く見ると構造がかなり違うのも興味深いです。
 造船の街でもある向島は市街地も大きく、後背地の山には柑橘類の果樹園という瀬戸内の光景。因島大橋を渡って因島に入ると因島北IC。ここと因島南ICはハーフICで、北からは北IC、南からは南ICが出入口になりますが、南の土生に行くのに北で降りろというのも不便で、「因島にご用の方は、因島北で降りて下さい」という注意喚起の掲示がいくつもあります。
 ただ親切なのはICの分岐部分に、出口車線と本線にそれぞれ島の名前が書いてあること。因島北なら出口が因島、本線が生口島となっています。

 生口橋を渡って10時前に生口島北ICへ。西瀬戸道はここでいったん途切れ、生口島南側を行くR317へ。因島へのローカルフェリーの桟橋である赤崎に停まりますが、ここが本四バスの島内ローカルとの結節点らしいですが、桟橋の因島へのフェリーの掲示に、「橋より安い<半額>200円」とあるのはなんともはや。フェリーよりも高くては使われないという批判がありますが、最終の来島大橋に並行する下田水(しただみ)−今治のフェリーも値下げで橋の半額を謳って応戦しており、商売とはいえ、こうした「地元」からの泥仕合ともいえる事態を容認することは、地元への恩恵という架橋の意義を問われかねない事態です。

 山腹に西瀬戸道の工事が見える海辺の細道を進み、10分ちょっとで生口島南ICに。県境の多々羅大橋を越えて大三島に入ると愛媛県。大三島橋で塩で有名な伯方島、伯方・大島大橋で大島と島を縫いますがただ通り抜け。大島北ICから再び未成区間で、10分ほどの下道を通り、大島南ICから最後の来島大橋に。眼下に下田水港を見て、三連吊橋の来島大橋(来島第一〜第三)に入ります。主塔が6基続く様は圧巻ですが、全部足しても明石大橋と然程変わらない長さですから、明石大橋を見慣れた目にはやや物足りない感じです。ちなみにこの西瀬戸道、基本的には対面通行で、4車線規格で作った橋の区間を追い越し区間にしています。

 しまなみ海道の区間は小一時間で通過。今治ICからのルートが海沿いのR196、山を行くR317、そして今治小松道路から松山道かと気になってましたがR196ルートと判明。眺めはいいですが細かいカーブが続く気の抜けない道で、今治から松山まで1時間という冗漫さも不人気の原因でしょうか。
 北条市街をバイパスした後は4車線区間が断続的に現れる山間の道。そして11時44分、定時にJR松山駅前着。私はここで降りましたが、松山市駅に向かう客は半分程度。そういえば車内にトイレはありましたが、2時間半の休憩無しの行程は乗務員にはちょっときついかもしれません。

■ 瀬戸内海汽船 (2003/05/02 01:08:30)

 松山でとんぼ返りの予定でしたが、広島へのフェリーが3月29日にダイヤ改正しており、予定の便が15分繰り上がっており、観光港へのアクセスを考えると間に合わないことが判明。おかげで松山の路面電車を堪能してきました。
 松山市駅から伊予鉄高浜線で高浜へ。終点高浜で松山観光港へのシャトルバスが接続しており、通しきっぷが買えますが、わずか2分の乗車なのに150円のバス代の割引は一切無し。ただでさえ港が遠い松山の印象を悪くしています。
 道すがら、梅津寺駅の海沿いの柵には今もハンカチがいくつも結ばれてますが、この由来を知る人も今や少ないでしょうね、一世を風靡しましたが。そしてシャトルバスに乗り継ぎですが、かつては改札を出ないでバス乗り場へ行けましたが、いまは改札経由になっており、シームレス体験という意味からは後退です。

 松山観光港も改装されており見違えるようになっています。各社別のカウンター式の売り場が並んでますが、日に数本しか出ない関西汽船やダイヤモンドフェリーが平等に1ブースを占めているのでちょっと冗漫です。
 エントランス正面の乗り場は広島へのスーパージェット、門司へのシーマックス、別府へのソレイユが占め、フェリーは2階通路を歩かされます。案内表示にフェリーにレストランにウェディングというのはなんともなごった煮ですが、明るく奇麗な施設、結婚式などの貸しホールもやっているようです。
 通路は建屋から外れてしまいますが、それでも関西汽船などは2階通路から直接ボーディングゲートで乗れますが、広島行きはいったん地上に降りて、そこからタラップで2階にとややこしい行程で、なんとか上下方向の自由が聞くゲートが用意できないのでしょうか。

 ちなみに松山から広島へ、フェリーは呉経由で66.2kmを2時間40分、2500円。スーパージェットは呉寄港便が1時間17分、ノンストップが1時間8分でお値段はなんと5800円と強気の商売です。
 同じ超高速艇でも門司へのシーマックスが173.3kmを2時間半で7500円に比べると、この区間にライバルがいないだけに(高速バスも撤退に追い込まれた)受け入れざるを得ないとはいえやりきれないものがあります。スーパージェットは論外としても、フェリーも高めですし、どうも瀬戸内海汽船と石崎汽船の術中にはまっています。実際、かつての水中翼船時代の4000円強から大幅な値上げですが()、所要時間の短縮は心持ち程度で、内装と快適さ(水中翼船は騒音、振動とも凄かった)だけで値上げを強いられた格好です。

※【訂正】松山−広島航路の水中翼船の運賃を「4000円強」と書きましたが、スーパージェット置き換え直前で4950円、20年くらい前でも4800円でした。また、フェリーの1等廃止は01年7月でした。(エル・アルコン)

 14時5分の便は瀬戸内海汽船の「四万十川」。座席は前方に2+3+3+3+3+2の配置で2列席が5列、他が4列の68席にあとは正面のソファー11席。残るは中央のソファーと両舷に10人入れるかといった桟敷と意外と収容力が小さいです。どうも後方のオープンデッキのベンチと桟敷(畳敷きの小上がりがある)も定員に入ってるようですが、ちょっとなんだかの世界。おまけに座席も2人席と中央寄りの3人席がリクライニングで、他はリクライニング無しとチグハグです。2階に定員20人の1等席がありましたが、昨年7月から授乳室およびレディースシートとなっており、後者としては混雑時に開放するようで、今日は開放してませんでしたが、1等のモノクラス化&レディースシート化は神戸−高松のジャンボフェリーもそうであり、男性としてはやりきれません。

 船内、売店と軽食コーナーがありますがささやか。便によっては軽食コーナーすらない船もあるようで、「クルーズフェリー」と謳う割にはお粗末。まあ気乗りがしないメニューしかないのも事実で、桟橋の売店で買って乗るのが正解です。発泡酒が250円とは目を疑いますし(桟橋ならおつまみも買える値段です)。
 多島海とはいえ、このエリアは意外と島が無く、見えてきた島はもう上蒲刈島。左には倉橋島ともう呉市と地続きの島嶼です。下蒲刈島と本土を結ぶ安芸灘大橋を遠く見て、いよいよ音戸瀬戸を通過しますが、ただでさえ狭いのに、呉へ向かっては右に直角カーブとあって、電車で言う「ノッチオフ」状態で最徐行。平清盛が砂州を切り開いた海峡といわれますが、ほんと狭いです。両岸を結ぶ音戸大橋が頭上を塞いでおり、これが呉、広島港への重要航路とは思えません。

 日新製鋼の製鉄所、そして海上自衛隊の基地、IHIの造船所と呉らしい風景を見ながら呉に入港。30人程度の船客のうち10人程度が下船しましたが、乗船があったのは意外。まあ宇品まで45分で600円ならまずまずですし、スーパージェットの1730円も22分ですから考えます。クレアラインが呉駅−センターを40分で700円ですし。
 呉の寄港時間はものの2〜3分でした。そして呉線沿線と江田島に挟まれた水域を進み、宇品港へ。港外で江田島航路のフェリーを抜きましたが、なぜかこっちは船首から着岸できるのにも関らず、船尾を付けるために港内でターンしたため遅れました。

 桟橋は一番東側の10番乗り場ですが、これも真新しいターミナルが旧ターミナルの西側に建ったため遠いの何の。江田島など広島湾内航路と高速艇がメインというのをありありとうかがわせる配置ですが、松山と違い屋根こそありますが吹きさらしの通路で、途中途切れた部分もあります。
 船が1本後になって時間も無いのでターミナル観察どころか通り抜けとなりましたが、出ると正面が2面3線の広電乗り場です。正面は広島駅直行の5系統乗り場で、紙屋町経由の1、3系統は前後を迂回して別ホームです。確かに松山から新幹線連絡であればこの配置は理に適ってますが、広島中心街へのアプローチとしてはやや難あり。もっともフェリーからだとターミナルに入らずに外からアプローチしたほうが良さそうでした。

■ かぐや姫号 (2003/05/02 01:08:30)

 広島では広電巡りをして最後は芸陽バスの「かぐや姫号」です。
 外は横の市民球場がCD戦開始直前とあって賑わい、中は通勤ラッシュで賑わう広島バスセンターでバスを待ちます。さすがに平日夕刻、中長距離系統よりも近距離系統が混み合ってますが、目立ったのは高速四号線経由の各系統。五月ヶ丘、A-CITY、三菱団地とどれも立客が目立ちますし、大塚駅で各方面に分かれるとはいえ、次を待つ列も長く、ちょうど座れなかったら次を待つ三宮駅ターミナルの急行64系統のような感じです。アストラムは見てませんが、バスの賑わいを見ると「嫌な予感」がします。

 待機場や出口の信号の関係があり、発車スロットが2〜3分ヘッドで決まっており、時間が来ると乗り場の青信号が点いてバスが一斉に出ていきます。18時45分の「かぐや姫号」はお馴染みのアニメ風かぐや姫のイラスト入りの専用車。センターで14人乗せて出発です。
 八丁堀で2人、駅で5人の21人が竹原地区へ向かう訳で、まずまずという感じ。矢賀から高速1号線(安芸府中道路・ぬくしなバイパス)を飛ばして広島東ICから山陽道に入ります。

 セノハチで名高い山陽線も勾配区間ですが、山陽道も負けず劣らずの勾配区間。志和を過ぎると西条の市街地が眼下に広がっており、上った高度は高いようです。
 広島空港最寄りの河内ICで降り、空港直結の道と外れてR432へ。すぐの河内IC停留所から全停留所にとまりますが(乗降自由)、人気の無い山中にある停留所なんか、誰が使うのかな。
 とはいえR2と交差する新庄を過ぎ、集落が見えてくるとぼちぼち降車が出てきました。結局8人が5停留所で降り、4分早着の19時57分に着いた竹原駅での降車は10人。その先フェリー桟橋方面へも3人乗り通しましたが、大崎上島か四国(今治・波方)でしょうか。この系統は竹原港に入り、大崎上島と波方航路に接続してますし、本数は少ないですが竹原フェリー経由忠海、須波行きの便は大久野島や瀬戸田(生口島)航路の接続と、都市間バスに加えて航路連絡というか暮れた素顔もあります。
 この系統は「三原やっさ号」と違い市内線さながらにバスカードが使えるのも特徴で、ご老体が手馴れたさまでカードを扱うなど、定着した路線という印象でした。


補遺・割高感が強い広島−松山間移動
 投稿者---エル・アルコン氏(2003/05/05 00:29:59)
 
 http://6408.teacup.com/narashinohara/bbs

 中四国の雄都とも言える広島と松山ですが、直結する交通機関が船しかないというのも異色です。以前はコミューター路線の航空機があり、しまなみ海道開通直後には高速バスもあったのですが、今では航路のみになっています。

 ただ、直線距離で70km弱にすぎない同区間における問題として、所要時間もさることながら、そのコストパフォーマンスが非常に悪いことがあります。
 そのアウトラインは本編でも書いた通りですが、過去20年で時間的向上が全く無い、というか時刻表上では2分遅くなっているにも関らず、率にして20%以上、金額で1000円の値上げは恐れ入ります。
 94年頃にそれまでの水中翼船から超高速艇のスーパージェットに置き換わった時の値上げ(4950円→5800円)が大きいのですが、時間短縮無しでこの値上げというのはほかにあまり例が無い話です。
 その時に設置された「スーパーシート」はさすがに+1000円となると利用がはかばかしくなかったのか、01年の改定で500円に値下げされています。
 この5800円はあくまで航路のみであり、松山側のアクセス500〜550円、広島側のアクセス150円を足すと6500円程度と、鉄道であれば200kmクラスの新幹線の実勢価格よりも高いコストとなっています。

 では「普通便」であるフェリーはどうかというと、この間に三津浜行きを松山観光港までに短縮されるなどの「後退」があるものの、運賃は1950円から2170円、そして2500円と値上げされており、こちらはトータル25%以上の値上げです。
 競合輸送機関に客を取られて、というには、まあ高速艇が対大阪などで空路や岡山経由に取られて、ということは可能でしょうが、理由としては弱く、航空やバスの撤退という現実と合わせると、独占がなせるわざという感じです。

***
 以前あった航空機ですが、松山から広島西まで20分、7300円であり、都心部アクセスでは松山空港の方が観光港より近く、西飛行場と宇品では広島駅には宇品が近く、紙屋町には西飛行場が近いという感じで互角です。
 このあたり、かつての運賃では本数の少なさもあり(2往復)、コストパフォーマンスが高くないようですが、6000円程度に戦略的に設定できていれば真っ向勝負が可能だったような気がします。



Copyright © 1998-2004 Unlimited Liability Company 551planning. All rights reserved.
Designed for Microsoft Internet Explorer 5.0 …by Microsoft FrontPage 2002