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京都駅にて

【検証:近未来交通地図】Special015-7
「のぞみ」シフトを検証する
(ダイヤ改正…その後)

 本投稿は、【検証:】掲示板でもお馴染みのエル・アルコン様の投稿を中心に、読みやすく構成させて頂いたものです(なお一部文面を編集しております)。

 

下記内容は予告なしに変更することがありますので、予め御了承下さい。
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backgallery京都駅にて
「東阪間片道1万円」の衝撃と疑問
 投稿者---エル・アルコン氏(2004/06/17 20:32:20)
 http://6408.teacup.com/narashinohara/bbs
─Re:「東阪間片道1万円」の衝撃と疑問
 └Re:「東阪間片道1万円」の衝撃と疑問
  └変えてほしいものです

 JR東海が「夏休み限定」と銘打って都区内もしくは横浜市内−京都、大阪、神戸の各市内の往復で2万円という商品を出してきました。

夏休み限定ひかり早特往復きっぷ http://jr-central.co.jp/service.nsf/doc/otoku_summer_t

 「ぷらっとこだま」に市内駅制度がついた感じですが、これが何と「ひかり」指定席利用というから恐れ入ります。さらに25,000円でグリーン車用も用意とあります。しかも旧盆のピークは「ぷらっと」は11,500円ですから東阪間底値になるのです。
 もちろん購入時に往復予約(3日間有効)、変更不可、席数限定と当たり前ですが制限はありますが、往路の乗り遅れは特急券部分は完全無効なのに対し、復路の乗り遅れは「ひかり」「こだま」の自由席に乗車できるといった柔軟性もあります。

 さすがに「片道1万円」はインパクトがあるのか、今朝の大阪朝日は社会面の囲み記事ながら、1面の主な記事欄の柱に立ってました。

京阪神−東京 ひかりで往復2万円 夏季限定発売(06/17朝日)http://www.asahi.com/kansai/news/OSK200406170012.html

***
 これまで「殿様商売」の陰口もあったJR東海とは思えない大盤振る舞いには信じられない感じもあるんですが、冷静に考えると、「異例」の商品ということが出来ます。

 つまり、7/20〜8/29(出発日基準)という夏休みの時期、ビジネス需要が一服とはいっても旧盆周辺を除けばまだまだ需要は多いです。そこに長距離中心の帰省、レジャー需要が加わり、指定席は黙っていても埋まるような状態で、回数券類の利用が出来ないばかりか200円高い繁忙期料金となる書入れ時に、なぜこのようなダンピングを敢えてするのでしょうか。時期が時期だけに需要喚起とはいえませんし、天下の東海道新幹線で「お試し」ということもないでしょう。
 繁忙期の東京−大阪は13,950円(エクスプレス予約なら13,200円)ですから、ざっくり3割引です。ちなみに東京−名古屋が繁忙期で10,780円ですから、東名間よりも7%安いのです。

 「ひかり」がいくら空いてるとはいえ、東名間で客が乗り、名阪間が空席という状態よりも収入が落ちる商品を売るのはなぜでしょう。
 考えられることは、結局、なんだかんだと言っても首都圏−関西圏の人員の数字を残したいということです。
 商品の特性から、先に「激安」客で埋まり、あふれた客は700円安い自由席に回るわけです。おそらく「ひかり」を敢えて選択していた客層ですから、「のぞみ」に変更することは無いでしょうし、中間駅など「ひかり」しか使えない客層がワリを食う可能性が高いです。
 もしくは、東名間先着の「ひかり」を愛用していた層もワリを食うでしょうが、こちらも回数券でもエクスプレス予約でもこの商品より高いわけで、名古屋以西での入れ替り利用の収入まで失うことを考えると、経営的に大丈夫かと考えたくなります。

 ***
 JR西日本のリリースを見ると、方向性は鮮明です。

この夏におトクな新幹線商品 http://www.westjr.co.jp/news/newslist/article/040616b.html

 要は、「のぞみ早特」を拡大して、山陰、四国、北九州、福岡からの設定をはじめています。
 山陽地区での「早特」効果は明白で、朝の上り「のぞみ」は山陽直通の混雑が著しいのですが、それをさらに展開することで航空機に押されていたエリアでのシェア奪還に出たということでしょう。

 東阪間の展開もそれと同じと見ることが出来ますが、やや複雑です。
 山陽、山陰、四国、九州からの東海道直通は、航空機優位の状態での「反攻」なんですが、東阪間のそれは、まがいなりにも優位を保っている区間での話です。
 特に、「のぞみ」効果でシェアの回復といっているにもかかわらず、単に「乗客数」を取りに来ただけの感もある商品が出ることを見ると、発表の「輸送人キロ」は区間利用の伸びで東阪間の減少をカバーしているという感じで、実態の数字は実は悪いのではないか、とも勘ぐりたくなります。

***
 ところで、JR東海のサイトには、「空席に関する電話等でのお問い合わせには応じかねます。ご了承ください。」とあり、どのくらいの割当があるか、一切分からないような仕掛けのようです。
 ここまで大々的に出しておいて、実は早朝深夜と日中のガラガラの便だけで、後はおしるし程度とか、そこも含めてごく少数とか、初期の航空業界の「割引」のような商品だったりすると、利用者の不信感を招くだけに終わるわけで、この利用者にとって見れば「おいしい」商品、蓋を開けてからが楽しみです。

Re:「東阪間片道1万円」の衝撃と疑問
 投稿者---かまにし氏(2004/06/17 21:46:28)

 かまにしです。
 確かに「東阪間片道1万円」はすごい商品です。ついに「あのJR東海も本気になったか」という感想は、僕もエル・アルコンさんと共通しています。

 ただ、僕は今回の施策は純粋に「飛行機からのシェア奪還に乗り出した」と見て良いのではないかと考えます。僕自身は、つい最近まで東海道新幹線の輸送力不足が指摘されていた状況において、JR東海はこれまで東阪間でのパイが最も多く、かつ最も需要の価格弾力性の低い(運賃の値上げに対する需要の減少率が低い)ビジネスマンに絞って商売をしていていたと考えます。しかし一方では、水面下で少子高齢化の進展などによって東阪間の移動ニーズは多様化していたにも関わらず、それらのニーズを汲み取ろうとはしなかったし、あえてする必要もなかったのかもしれません。言葉はきついかもしれませんが、要は「客を選んでいた」わけですから、おっしゃる通り「殿様商売」に他ならないわけです。
 しかし、そのちょうどそんな最中に航空運賃やバス事業の規制緩和、羽田空港の機能拡張などの要因が加わったこともあって、上記のビジネスマン以外の多様化したニーズはその大半が飛行機やバスに流れた、それがここ最近までの趨勢ではないかと、僕は考えます。

 上記に加えて、日本経済の低迷、とりわけ関西全体の経済的な地盤沈下なども加わり、おそらく前述のような価格設定で利用するビジネスマンのパイそのものが減少していると思われ、さらに「ひかり中心」から「のぞみ中心」にダイヤが切り替わったことも併せて、JR東海もこれまで東阪間の需要で新幹線が得意としなかったセグメントのシェアを拡大させる戦略に切り替えたと考えるのが自然ではないかと思われます。

 ここで、一つ興味深い研究がネット上で公開されていました(既に学会で発表された論文であり、ネット上に公開されていることから、紹介しても問題はないものと思われるので以下にリンクを貼っておきます)。

都市間交通における割引運賃に関する研究 (佐藤雅史・寺部慎太郎・家田仁・水口昌彦 第27回 土木計画学研究発表会(春大会)発表論文 2003)
http://www.infra.kochi-tech.ac.jp/terabe/res/ip2003-disfare.pdf

 こちらの研究では、東阪間かどうかは分かりませんが、新幹線と飛行機が競合する都市間輸送について、セグメントごとにその効果を需要の価格弾力性の観点から分析しています。同時に、新幹線と飛行機の選択モデルを構築し、運賃とシェアと収入の関係を分析も行なっています。参考までにどうぞ。

 ではでは。

Re:「東阪間片道1万円」の衝撃と疑問
 投稿者---あかみ(2004/06/17 23:50:33)

 あかみです。

 私もこのニュースには驚きました。
 青春18+375Mで2600+510+α≒3500円、4列シート夜行高速バスで4500円、3列シート昼行バスで6500円で8〜9時間かかることを思うと、ひかり号は本数が少ないとはいえ前者3つよりは圧倒的な本数および輸送量を誇る手段であり、それで所要時間も4時間は切れて10,000円ならば、ひかり号を利用する意味も大きいものとなってきます。

 現在の東海道新幹線では圧倒的多くの本数がのぞみ号であることを考えると、今回のJR-Cの判断は「のぞみが速いから特別」なのではなく、「ひかりが遅いから特別」だという判断へのシフトの第1歩と考えたいところです。
 というのは、現状で乗り放題系(ナイスミディパスやJapanRailPass)の割引きっぷではのぞみ号には(自由席さえも!!)乗車できないという状況があり、現状では東海道新幹線は事実上利用が困難といわざるを得ない状況です。特にJapanRailPassの場合は事情をよく知らない外国人が主な利用者と思われ、彼らに「のぞみ号には乗れない」ことを納得させるのは困難かと思われます。これらの状況は改善が求められるものだと思います。

#昔から「こだま号は遅いから特別」という考え方は一部のツアー扱い乗車券に見られていたので、それがだんだんとひかり号へとシフトしていくと考えるのは自然だと思います。

変えてほしいものです
 投稿者---World's Uniquest Railway Enthusiast(2004/06/18 01:22:46)

 WUREです。部分的なコメントですが。

あかみ様
 というのは、現状で乗り放題系(ナイスミディパスやJapanRailPass)の割引きっぷではのぞみ号には(自由席さえも!!)乗車できないという状況があり、現状では東海道新幹線は事実上利用が困難といわざるを得ない状況です。特にJapanRailPassの場合は事情をよく知らない外国人が主な利用者と思われ、彼らに「のぞみ号には乗れない」ことを納得させるのは困難かと思われます。これらの状況は改善が求められるものだと思います。

 このあたりの話、当の外国出身の日本型ファンはどう考えてるのかと思い、1年ほど前からRomで参加している[jtrain]というヤフーのメーリングリストの過去ログを見てみたら、やはり結構な議論をやっていました。主な問題点は本数減で、グリーン車のパスが手ごろな値段で使えるために、グリーン席の供給減なども問題にされていたようですが・・・。
 私自身は、JapanRailPassでのぞみが利用できない点に関しては問題とは思いますが、(RJ誌で誰かが騒いでいたような感じでの)全くもって異常とも思っていないという微妙な立場にあります。というのも、(使って見てわかったのですが)代表的な鉄道パスであるユーレイル・パスなどでも、利用不可能な列車や、パス所有者向けの特別料金を設定し、ややこしいチケットの購入を要求する列車が近年増えてきたなどの事情があるからです。乗り放題系のパスの受難は世界的なものでしょうか。
 とはいえ、営業戦略的にJapanRailPassののぞみ全排除というのは余り上手いやり方とはいえないような気がします。ヨーロッパなどでやられているように、席限定でパス所有者チケットを販売し、追加料金を払う事で利用できるようにするというのが賢いのでは?と思います。世界一親切な英語の車内放送もしているのだから、積極的に利用促進を図ったほうが良いと思うのですが。

 ところで、現場サイドではどうなっているのでしょう。ネットなどを見る限り、交通に強い外国人の考えている事はなんとなく理解できるのですが、あまり知らない方の場合どう考えているのかは気になるところ。青春18切符を使った旅行術の英語サイトなどはあって、そのせいかもしれませんが、ほとんど日本語も出来ないのに鈍行で京都から富士山を見に往復したという猛者に出会った事があります。

WURE

公式データを見ると
 投稿者---エル・アルコン氏(2004/03/10 17:52:41)http://6408.teacup.com/narashinohara/bbs

 さて、国土交通省航空局の15年10-12月期の航空輸送サービスにかかる情報公開と、JR東海の16年3月期第三四半期業績が出揃いました。

航空輸送サービスにかかる情報公開  http://www.mlit.go.jp/kisha/kisha04/12/120301_.html
JR東海 平成16年3月期第三四半期業績  http://jr-central.co.jp/info.nsf/…

 まず航空側ですが、輸送人員は東京−伊丹・関空の合計で前年同月比103.1%となっておりますが、7-9月期との比較では99.8%と、14年10-12月期と15年1-3月期で94.6%になって以来の前期比のマイナスを記録しています。前年同月比比較では1-3月期からの3四半期連続で107%前後という高い伸びだったこともあり、伸びてはいるが鈍化した感があります。

まき返した新幹線、粘る航空の拮抗は続く
 投稿者---エル・アルコン氏(2004/06/14 20:30:36)http://6408.teacup.com/narashinohara/bbs

 航空とJR東海の平成15年度の数字が出揃いました。

航空輸送サービスに係る情報公開(平成15年度)  http://www.mlit.go.jp/kisha/kisha04/12/120601_.html
JR東海 平成16年3月期業績  http://jr-central.co.jp/info.nsf/…

 結論から言うと、第四四半期に入り航空が息切れを起こした格好であり、輸送人員は前年同期比で97.86%と久々のマイナス成長になっています。もともと第四四半期は第三四半期に比べて数字が落ちる傾向があるのですが(平成14年度は97%、平成15年度は92%)、その減り幅が深度化しています。
 通期で見ても上期の前年同期比107.46%に対し、下期は100.51%となり、合計103.88%ではありますが、今期の動向が非常に気になるところです。

〔東海道新幹線〕ICカード化で「エクスプレス・カード」起死回生となるか
 投稿者---551planning(2003/12/10 20:25:56)
─「エクスプレス・カード」起死回生の為に求められる物
└JR-C、みどりの窓口一般クレジットカード開放へ
 └カード戦略やぶにらみ

 思わずなるほど!と膝を打ちました…ちょっと大袈裟かな?

「エクスプレス・カード」起死回生の為に求められる物
 投稿者---TAKA氏(2003/12/14 21:59:13)

 管理人様今晩は 遅レスで申し訳有りませんが連携のある記事が有りましたので書き込ませて頂きます。
 記事は12月8日号の日経ビジネスの「ホテル・エアラインランキング」の「ビジネスパーソン向けアンケート<のぞみ増発で変わる東京大阪間競争>」です(上記アンケートは日経ビジネスがメールマガジンで告知しインターネットで回答してもらったとの事。有効回答384件と少々回答数が少ないのが気になりますが・・・)。
 以下の私のコメントは上記記事を元に書き込んでいます。

JR-C、みどりの窓口一般クレジットカード開放へ
 投稿者---551planning(2003/12/15 23:46:27)

 自己レスです。

カード戦略やぶにらみ
 投稿者---エル・アルコン氏(2004/01/06 16:12:46)http://6408.teacup.com/narashinohara/bbs

 そうこうしている間にSuicaとICOCAの共通化が夏にも実現しそうです。

2004.11.14 Update

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