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【検証:近未来交通地図】Special002 東アジアのハブ空港競争 〜勝者はだーれ?〜 (01/08/26) |
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香港島/九龍から西約20kmにある香港国際空港 |
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今年3月のソウル/仁川国際空港のオープンにより、成田、台北、香港、上海と東アジアのハブの地位を狙う空港が一通り出そろい、いよいよ本格的な空港セールスが始まることが予想され、事実、ソウル仁川国際空港では日本よりも着陸料が安いこと、24時間運用を目玉に明らかに関西空港、成田を意識した空港セールスを実施している。
これらの空港に関しては、滑走路の本数やスポットの数などのスペックデータ的なものでの比較は様々なところで議論され、比較もされているが、私達一般利用者にとってはそんなことよりも乗継ぎのしやすさや空港でいかに待ち時間を過ごせるか、そして「乗継ぎ寄港=ストップオーバー」が容易かという点が気になるところである。
そこで、東アジアのハブ空港競争でリードする成田、香港、ソウルの3空港をについて運良く立て続けに利用することができたので、比較をしてみたい。さらに良い例である番外としてアジア・オセアニアの主要空港であるシンガポール、シドニーの例も交えながらの比較とする。
ここでは、施設・サービス・機能的な部分から見てみることで、いまの成田の問題点を明らかにすることができるように考えた。なお、個人的な偏見も多いので御容赦を。
(左)香港国際空港のトランスファー案内表示
(右)ソウル仁川国際空港のトランスファーデスク(JAL)(とも氏提供)
1 乗継ぎの容易さ まず、前提としてターミナルの状況を整理したい。
成田はターミナルビルが2つであり、ソウル仁川、香港はターミナルビルが1つ。ただ、ボーディングブリッジ数はどこも似たりよったりで大差はない。なお、成田の場合にはターミナルビル間の自由移動は制約され、自分の乗る便が発着するターミナルのみに滞在が可能である。成田 ○(場合によっては×):同一航空会社なら
ターミナルビルが2つというハンデはあるものの、そのわりには乗継ぎは容易である。通常、一般的に乗継ぎは同一航空会社もしくは提携会社間でのものが多いが、そのような場合、成田は当該航空会社の到着エリアから乗継ぎカウンターを経て荷物検査を受けて出発エリアへと移動することになり、垂直移動のみでほとんどが完結するので極めて簡単。しかし、例えばコードシェアで接続がありうるUA-NHやAA-JLではターミナル間移動が生じるので、かなり面倒である。しかもサイン類が解りにくく、日本人ですら理解できないのであるから外国人にはなんとも使いにくいと思われる。
(余談ですが、乗継ぎの案内の多くが日本語が主体で英語が小さくなっています。需要を考えると、英語や中国語を主体にして日本語をサブにするのが適切と思うのですが )
ソウル仁川 △:大韓航空やアシアナならば◎
ソウル仁川の場合には当初から大韓航空またはアシアナのトランジットを前提としているためか、乗継ぎデスクが到着エリアにないのである。そのため、乗継ぎ客は到着エリア本館にある乗継ぎゲートにそのまま向かい、ハイジャック検査後にデスクを探すということになる。
しかも、大韓航空やアシアナは乗継ぎゲートから出発フロアに上がったすぐのところにあるが、他の航空会社では当該便の出発ゲートまで行く必要があり、なんともわかりにくく、遅延や欠航が相次いだ場合を考えると使いにくい。
しかし、サイン類の充実には目を見張るものがあり、歴史的な経緯があるからとはいえ、ハングル、漢字(正字)、英語の3言語での表示に加え、パンフレットなどは様々な言語が用意され、インフォメーションでは英語、フランス語、スペイン語、日本語、中国語、広東語が通じるとのこと。施設の不足をソフトでカバーしているといったところであろうか香港 ◎-:さすがは歴史的な乗継ぎ都市
伝統的に中継都市として歩んできた歴史からかストレスを感じさせない乗継ぎ機能を有している。
乗継ぎデスクは到着フロアのターミナルに2つ、サテライト部に1つあり、それぞれ空港出発ロビーにあるようなデスクが並んでいる。ここでは地元キャセイパシフィックだけではなく、各社もどのカウンターでも(ただし中華航空は別)受けてもらえる。乗継ぎゲートはその横に設置され、そこを通り、エスカレータに乗ればそのまま出発フロアである。
特徴的なのは案内で、全てのシートにパーソナルモニターが付いているキャセイパシフィックでは香港到着前に各モニターに乗継ぎ便のゲート、出発時間などが表示され、さらに機内放送にて乗継ぎ案内(日本の列車乗継ぎ案内みたいなものです)が行われる。
また、アライアンスごとにラウンジをまとめるなどしているので、同一アライアンスの乗継ぎは歩行距離は少ない。
また、乗継ぎ客向けにショッピングカートを用意しているのがなんとも気が効いている。番外)シンガポール ◎:乗継ぎに特化させると言う意味ではありかも
世界で最も優れた空港と評価されるシンガポールは、羽田と同様に出発と到着が分かれていない。よって、乗継ぎ客は垂直方向の移動は必要無く、到着ゲートからそのまま出発ゲートに向かうだけである。
乗継ぎデスクはターミナルビル内の各航空会社の利用スポット付近にある程度まとまって存在しており、ビル内にシャトル列車があることもあって、乗継ぎは極めて容易である。
2 サービス施設 ここではサービス施設を比較したい。
ここでいうサービス施設とは乗継ぎ時間をいかに過ごせるかという観点からのものである。乗継ぎについてはその配慮がきっちりされている航空会社間であれば良いが、そうでなければ相当な時間を過ごさなければならず、そのために空港サービス施設というものは重要である。さらには一般の出国者にとっても重要なポイントである成田 ×+:第一の出国前は◎だけど...
ハッキリ言って、不足している。
最近では空港公団(NAA)も認識しているようでショップの充実やシャワー、インターネット施設など進めてはいるものの後手に廻っている感は否めない。
成田の場合、他ではあまり見られない展開が見られる。というのは出国前のショップの充実である。
成田空港のショッピングモールは出国前のエリアに多くが存在する。そのため、トランジット客は利用できないのである。また、チェックインから出国までのわりと慌ただしい時間帯にショッピングを済ますことになり、早くゲート前に客を呼びたい航空会社にとってもあまり良いことでは無い。
とはいえ、第一ターミナルでは拡張に併せて、免税店としてヨーロッパブランドのショップが出店(第二にはすでにあり)、免税店に加えコーヒーショップや日本の土産店などまだまだではあるが充実を図っており、また、キッズルームやビジネスルーム (ビジネスクラスラウンジにおいて無線LANのサービスが受けられる)などはそこそこ充実しており今後に期待したいところである。ソウル仁川 △:そろってはいるものの
店は揃っている。食事はファーストフード(ケンタッキーやバーガーキングがそのまま出店している)に和食、焼肉、バーとなんでも揃っており充実している。また、ショッピングについても免税店は数多く、ブランド店もそれなりに揃っているものの、よく使いそうな雑誌、新聞の類いやお菓子などを販売するコンビニというかキオスク的なものがほとんど無く、ジュースですらケンタッキーやレストランの売店で買わなくてはならない上に、キムチや韓国ノリを売っているような土産物が買えないという偏った商品構成である。ビジネスルームやインターネットコーナー(さすがインターネットカフェの本場!)、キッズルームはあるがどれも狭く使い勝手は悪い。しかも、ショップが点在しているのが災いとなり、結果的にはショップめぐりで時間を潰すのは難しい。
ソウル仁川は成田とは正反対で出国前にはカフェや簡単な土産物店程度しかないため、乗客はチェックイン後すぐに出国することになる。香港 ○:なかなか充実
出国後の一角にショップ類を集め、免税店やブランドショップだけではなく本屋、おもちゃにカメラ、コンピューターショップなどなんでもある。
レストランも中華や点心飲茶はもちろん和食、イタリアン、フレンチとなんでもある(焼きたてパンの店まである)。
よって、ゆっくり買い物をしてからゲートに行くことができ、また、薬局などもあることから買い忘れたものを買うことも出来(なんと正露丸まで!!)、乗継ぎ客にとっても嬉しい配慮がされている。
ビジネスルームやキッズルームはショップと離れた場所に用意され、落ち着いた雰囲気で過ごせる。さらに、インターネットなどは各所にあるインターネットキオスクなどでも可能であり、充実度は高い。さらには 館内すべてで受けられる無線LANにより、モバイルさえ持っていればチケット種別に関係なく、空港内のどこでもネットアクセスが可能でもある。
また、サテライト部(といっても本館と一体の建物であり相互間の行き来は自由)にもショップを集め、本館部とサテライト部それぞれに免税店や各種ショップを展開するなど時間を潰すに好都合な配置になっている。
とはいえ、旅行用品などは品薄というのがマイナス。番外)シドニー ◎:痒いところに手が届くとはまさにこのこと
シドニー国際空港の場合にはなんとも痒いところに手が届く品揃えである。
土産物や免税品はもちろん、サーフショップで水着を買うことも、CDショップで最新のCD(なんと日本のものも!!)を買うこともできる。カフェテリアも充実しており、使いやすい。
この空港の場合には国内線も同様の充実度であり、同じように様々なショップがあり、さらにATMや両替所があるなど国際線乗継ぎ旅客の利便を考えたまさに痒いところに手が届くようになっている。なお、国際線から国内線に乗継ぐ場合には国際線到着ロビーにある国内線チェックインカウンターを使うと荷物を持って歩くことなくターミナル間の移動が可能であり、乗継ぎの不便さを感じさせない。
3 寄港滞泊 乗継ぎでの旅行の場合、寄港地で1泊することも多い。
この場合、大きな荷物をもって市内まで1泊だけというのはなんとも嫌なものである。
これをいかに楽にできるかがハブ空港には重要である。成田 ○:成田市内に買い物ツアーぐらい組めませんかね
空港内にレストハウスがあり滞在が可能。出国後エリアにも休憩室や仮眠室があり1泊ができる。
しかし、両者共に決してゆっくりくつろげるというほどのものではなく、今一つの感はあるが、一度入国すれば様々なホテル群に加え、イオン成田SCなどの魅力的なショッピングゾーンがある。
よって、こういったショッピングゾーンとの連携や土屋地区への様々なショップの出店次第では乗継ぎ客にとっても魅力的な空港となる。ソウル仁川 ×:市内に出るなんて夢のまた夢
空港内出国後エリアに休憩室があるが、空港周辺には乗継ぎ客専用のトランジットホテルしかなく、韓国入国後は利用不可。バスで2時間かかるソウル市内まで出向く必要がある。鉄道アクセス計画はあるよう だが、(本土と結ぶ)永宗大橋は道路専用橋であり、どのようにするのか、地下鉄1号線〜国鉄京仁線経由と地下鉄5号線経由が考えられるが、どちらにしても時間はかかりそう 。
開港したばかりであるとはいえ、もう少しなんとかならないものだろうか。
空港の周囲は山野が広がるだけであり、今後に期待したいが、今の韓国の経済状態からすると...香港 △+:市内にいかなくても十分だけど
空港に隣接して4ツ星のホテルがあり、空港と直結している。
最終目的地まで荷物を預けたままでも入国できるのでゆっくり滞在できる。
また、市内までも電車で25分であり、市内のホテルへの滞在でも遠さは感じないが、やはり不便ではある。
また、出国後エリアには休憩室程度だけであり、滞在は難しい。24時間飛行機が発着し、眠らない空港であるからこそ、そのへんの配慮が欲しいところである。番外)シンガポール ◎
この空港のすごいところは出国後エリアにちゃんとしたホテルがあり、デイユースを含め比較的安価な値段で利用できる点である。しかもプールやスパもあって、空港内ではもったいないくらいである。
また、トランジット客向けに市内ツアーを用意したりと「観光・空港立国」と揶揄されるだけのサービスを提供している。
(左)成田第1ターミナルの乗継ぎ口…こんなんなんですよね。これでホントにハブ空港って言って良いのかな??
(右)第2ターミナルの国内線ターミナル…結構閑散としてます(551planning撮影)
4 まとめ 3空港を比較すると、開港後20年で大改装に入った成田、新空港として成熟してきた香港、これからのソウル仁川といったところが実態でしょうか。
そんななかで、ソウル仁川のハブ空港機能の中途半端さには驚かされました。
開港時には香港やシンガポールをライバルにし、成田は格下とまで言われていただけに、正直、こんなものでそこまで言うのか?という印象です。ただ大きいだけではハブ空港にはならないという典型的な例といえるでしょう。
さて、このようななかで、急ピッチに改築が進む成田の変わりようが楽しみです。
Abroad Travel Photo Diary (とも様のサイト 香港の乗り物紹介ページもあります) http://www.geocities.co.jp/SilkRoad-Desert/8325/
2005.02.05 Update | |||||
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