tw
top
都市圏近距離直行バス

トップページ企画一覧特別リポート一覧>551planningリポート20

鳥原バス停の時刻表

新潟「高速バス通勤」体験 ~高速BS実見録から~

日本国内における“高速バス通勤”の先進事例として、新潟圏がよく挙げられます。北陸道を中心とする県内高速バスの発達に伴い、新潟近郊での通勤通学需要を着実に掴んでいるということなのですが、意外とネットベースでは現状があまり把握できないような…P&BRとか、朝ラッシュ時の発着状況は凄いよとかは耳にするものの、さてどんなものなのだろうと思っていました。
が、なかなか縁がないというか、正直実見する機会を作らずにいた(ってあくまで当方の勝手ではありますが)ところ、急遽平日に新潟泊の用事ができたことから、この機会を逃してなるものかと、ほんの触り程度ながら駆け足で見て参りましたのでその感想をば。

なお行程は下記の通りです(時間は実績値)。
 ・12/12(水) 新潟駅前06:10(高田行)06:48巻・潟東BS06:52(東三条発)07:03鳥原BS07:27(長岡発)08:05新潟駅前


■早朝から流動あり

まだ闇に包まれた早朝の新潟駅万代口。行き交う人もまばらながら、駅前のバスターミナルには所在なげに佇む人が10人ほど。06:05、始発の新潟大学行き路線バスにその殆どが乗車すると、またもやタクシーが行き交う程度の静かな状況に。
すると、白地にNマーク緑線の県内高速車が登場。早朝からご苦労様な誘導員の笛に従いながらの、新潟駅前BTの最大の特徴であるバック入線もさっと決まって早速乗車。いつの間にか集まった乗客は5人。
高速バスはこの後信濃川を挟んだ市街地を縫うように走ります。古町と市役所前で1人ずつを拾い、県庁BTに立ち寄った後、新潟バイパスの女池IC、北陸道・磐越道・日本海東北道が交わる手前の中央IC両バス停を通り、移転ほやほやの新潟市民病院の威容を左手に眺めながら、新潟中央ICよりいよいよ高速道路入り。

ようやく薄明かりとなってきた中、さすがに北陸道はトラックを中心に交通量多し。先程潜った新潟バイパスと交差すると新潟西ICのロングランプが寄り添い、更に交通量が増えました。と、鳥原(とっぱら)BSに停車、1人下車し3人乗車。バス停付近には5~6人が佇んでいて、バス手前にバンが停車し作業服姿の方をピックアップしてゆく姿も…ホントはアウトですが。さてバスは左手に上越新幹線の高架を望みながら更に南下、黒埼PAを過ぎると周囲は完全な穀倉地帯に。改めて米処を実感しつつ、バスは10分ほど走って巻潟東ICへ。側道に入るとバス停停車、当方含め2人が下車、ここで4人が乗車と、朝イチ新潟発ながら細かい流動があることに驚きました。

  • photo:巻・潟東BS
  • 巻・潟東BS
    下り線(長岡方面行)のりば
  • 巻・潟東BS
    階段部には雪覆い
  • 巻・潟東BS
    乗客は静かにバスを待つ
  • 巻・潟東BS
    ラッシュ時を中心に本数は多い
  • 巻・潟東BS
    上り線(新潟方面行)のりば

■供給が追いつかない駐車場 = 巻・潟東BS

巻・潟東(まき・かたひがし)BSは旧巻町・旧潟東村の境目に位置し、南北に貫く北陸道の上り線(長岡方面)の東方は農地、下り線(新潟方面)の西方は、東西斜めに走る県道沿いに小集落が点在しているといった風景。


大きな地図で見る

下り線バス停先に第1・第3、上り線バス停先に第2駐車場が設置され、屋根つきの駐輪場も完備。それでも足らず徒歩10分以上先のインター入口交差点付近に第4・第5駐車場も整備され、合計200台以上が止められる規模に…整備経緯は上掲の調査報告書に詳しいですが、1978年のBS開業から第1駐車場整備にまで6年を要しています。

地図中央下部付近、ICの取り付け先部に
バス停、両側に第1~第3駐車場
第4・第5駐車場は地図中央上部付近、
IC入口交差点付近となり、かなり遠い

ただし第4・第5駐車場は離れている上、旧巻町時代は第1・第3駐車場が有料(2005年当時月額2625円)だったこともありバス停付近の違法駐車が絶えなかった様子、警告看板があちこちに建てられています。
2005/10の新潟市広域合併に伴い全面無料化されたことから一時的に落ち着いたとの話もありますが、現西蒲区としては新潟市の南の玄関口としても機能整備を検討している由。この日は6時台の訪問でしたが、確かに路上駐車はなかったものの、第1~第3駐車場は6割以上の埋まりよう、といったところでしたね。

巻・潟東BS巻・潟東BS巻・潟東BS
巻・潟東BS巻・潟東BS巻・潟東BS

さすが豪雪地帯だけあって、BSへの階段は完全覆いがなされています…と、入って驚いたのは階段にずらっと並ぶ利用者。薄暗い中、じっとバスの到着を待っています。バス停には待合室もありますが手狭、野晒しで待つには辛過ぎるということで、格好の寒さしのぎの場所となっている様子…あまり居心地はよくないのですが。
ちなみに待合室にはにいがたバスiリアルタイム情報の表示板があり、まさに雁行している様子が確認できるのですが、日常利用者にとってはお構いなしといったところ?

しばらくして新潟交通の東三条駅始発便が到着、15人ほどとなった利用者を飲み込んでゆきます。窓側がほとんど埋まった状態にて発車となりました…このあたり、多様なルートで途中BS需要もこなしている様子が伺えます。
北陸道を10分ほど戻って今度は鳥原BSで降車、相互利用可能なこの区間は¥310。

  • photo:鳥原BS
  • 鳥原BS
    BS自体はオーソドックス
  • 鳥原BS
    続々と乗り込む乗客
  • 鳥原BS
    マイカーも続々集結
  • 鳥原BS
    新潟方面へは100本以上!
  • 鳥原BS
    長岡方面の需要も少なくない

■画竜点睛?な専用駐車場 = 鳥原BS

鳥原(とっぱら)BSは旧黒埼町に位置し、南北に貫く北陸道の上り線(長岡方面)の東方は上越新幹線の高架の先にまとまった集落、下り線(新潟方面)の西方は、農地が広がっているといった風景。


大きな地図で見る

1985年、下り線(新潟方面)バス停先に100台規模で駐車場を整備も、更に需要が高まり路上駐車によるトラブルも発生したことから、2005年に駐車400台・駐輪365台という大規模拡充がなされています。巻・潟東BSのそれより立派で、公衆トイレも大きく綺麗。小さなロータリーも設けられ、西区・南区のコミュニティバス(区バス)が発着しています。ただ何だか無機質というか、特長のないというか、使い勝手的には?というか…。

地図中央部、上下に走る北陸道の左手の
田園地帯に大きな駐車場が整備されている
バス停至近下方がロータリー、その傍には
駐輪場の庇が並ぶ

そのコミュバスと新潟交通の路線バスが県道を通っていったものの早朝ゆえか乗客僅少。路線バスはロータリーに入らず絡むバス停も駐車場至近にはなし。
そもそも、駐車場がどーんとあるものの「鳥原BS」を示す看板類は駐車場出入口に1つくらい…上り線乗り場に至ってはかなり地味。ただし乗り場入り口傍にドリンク自販機があるのは大きなポイントでしょう。丁度柏崎行新潟交通便を見送りましたが、ここでも3人が乗車、かつ未だ作業服姿の方がいるなど出入りは激しそう。

鳥原BS鳥原BS鳥原BS
鳥原BS鳥原BS鳥原BS

7時を過ぎ、駐車場には続々とクルマが到着、下り線バス停にぱらぱらと人が向かってゆきます。ここでも階段部の列、巻・潟東BSよりも長く伸びています。下り線と違って待合室で待つ人はやはりなし。実見がてらバス2本を見送りましたがどれも既に利用者多く、鳥原乗車は原則ほぼ補助席着席といった感じになっています。自然と乗車限度が判るのかうまい具合に乗り込む列がぴたっと停まり、次のバスまでまた待機という態は馴れっこゆえなのかもしれませんが、馴れない身には直前でお預けを食らわされると苦行にも思われてなりません。

で、当方も雁行でやってきた長岡からと思しき越後交通便に乗車…時刻表上では5分弱の遅れ。見事に正座席は満席で、既に補助席も3席ほど使われている状態。補助席が埋まった完全定員で出発です

  • photo:高速バス通勤
  • 鳥原BS
    巻・潟東BS出発時は未だ余裕
  • 鳥原BS
    BS待合室にはバス現在地表示
  • 鳥原BS
    鳥原BSでは「乗車渋滞」も
  • 鳥原BS
    市街は路線バスががっちりと
  • 鳥原BS
    朝ラッシュの新潟駅前BT

■「静か」な高速バス通勤

後方の補助席にスポッと収まってしまうと、あまり身動きも出来ません。払暁の頃と比べて更に増えた交通量ながらも流れは順調で新潟中央ICを流出…と、さすがにここからは渋滞と信号に阻まれます。
中央ICバス停でスポーツバックを抱えた高校生らしき2人が下車、ただし後部着席のため、補助席乗客は立ち上がって通路を譲ります。空いた席には補助席乗客が移って発車。走行中も停車中も乗客は一様に静かで、目を閉じてもうひと寝入りの方、新聞や雑誌、英語教材等とにらめっこする方、イヤホンでラジオや音楽などを聞く方とさまざま…音漏れしてきたラジオからは聞こえるほどに、タイミング良く交通情報。長岡市内で渋滞があるものの、新潟市内では目立った混雑はさほどない様子。

女池ICバス停では前方の数人が降車、また補助席が減ります。そして県庁東バス停で全体の1/4が降車、がんセンター前でも数人が降車し、補助席着席がなくなりました。市役所前バス停には時刻表上で10分強の延着。出勤然とした男女多くが降車し、車内はざっと1/3ほどの乗りにまで減ります。

鳥原BS鳥原BS鳥原BS
鳥原BS鳥原BS鳥原BS

数人が降りた古町付近は交通量こそ多いものの比較的流れており、行き交う路線バスもスムーズに。一部便は「モーニングライナー」と称し、これまで乗換が必要だった郊外から市中心部の先にある学校町方面へダイレクトで結ぶ便が2006/12から運行されている由。萬代橋を渡り万代BC前で数人を降ろせば、時刻表上で15分の延着にて新潟駅前着。最後までの乗車客は8名、出張然の用務客を中心に駅の中へ消えてゆきました。

正直「補助席通勤」が快適か?と問われるとなかなか難しいところもありますが、着席前提の上ある程度時間が読め、その上鳥原BS~新潟市内間¥310と来れば、流行らないわけがないというのを実感したのでした。

鳥原BS

需要を支える「必要十分」なサービス ●

巻・潟東BSを発着するバスは県内線新潟行だけで7路線平日99便(うち7時台13便)、鳥原BSに至っては9路線平日113便(うち7時台15便)。鳥原BSについては新潟発一部便が通過措置を採っているのですが、どうも以遠乗車客席確保の(「鳥原需要」で席が埋まってしまうことを避ける)ためのもののようで。
このほか三条・燕BSを含め県外7路線が発着しており、3BSでの県外路線乗降ニーズも少なくない様子(当日夕方の東京池袋行では鳥原BSで1人乗車)。日本でも有数の高需要を誇る高速道路上BSといっていいでしょう。

それでいてその設備は簡素というのが率直な感想です。拡充整備されたばかりの鳥原BSにしても、高速BS施設そのものには手が加えられておらず、駐車場側にしても待合所や自動販売機等の付加価値設備はなし。しかも無料駐車場ゆえ常に人の目があるというわけでもなく、利便性や安全面でもどうなのか、夜間帯の状況が気になりました。
ただこのあたり、広場や公園整備も念頭にしているという巻・潟東BS拡充において、「なによりもまずは駐車場設備拡充が先決」といったような利用者側の声も一部あるようなので、実情として結局のところは必要十分な施設であるのがベターなのかもしれませんが…(ちなみに前掲リンクにおいて、車椅子対応トイレ整備における質疑の際に『バス乗り場まで車椅子で上がる設備につきましては、バス会社の設備となりますので、それらの会社へ要望することとなります』との回答が市職員からなされているところが興味深いですね)。

あと、新潟圏のバスサービスとして忘れてはならないのが、運行情報提供「にいがたバス-i」にて高速バス路線リアルタイム位置情報を2002年より提供している点。ただし高速BS設置されたモニタが活用されているかというと微妙…これも実際には手持ちの携帯電話でも通信料負担のみで確認可能なところでかなりのアクセス数を伸ばしており、「次のバスがどこにいるか」を自分自身で必要に応じて確かめられるので足りるとも考えられますが…。

 

新潟市は2007/06にオムニバスタウン指定を受け、市内路線バスを中心に基幹バス等の再編やサービス向上策が展開されてゆくこととなります。高速バスについても、BSを軸とした各区バスとの連携が図られてゆくものと思われますが、高速バス通勤路線の老舗として、陳腐化が否めない高速道路上施設の改修等、利便性向上への取り組みにも期待したいなと感じた次第です。


ご意見は【検証:】常設板までお気軽に!

上に戻る▲

アクセス解析

Valid XHTML 1.0 Transitional

正当なCSSです!



copyright © 1998- Unlimited Liability Company 551planning All rights reserved.

テンプレートのpondt