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【検証:近未来交通地図】  特別リポート2007-1101
疾走!宇部興産専用道路〜日本最長の“私道”を往く〜
伊佐IC付近
(2007/11/07)
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 山口県の港湾工業都市・宇部と内陸都市・美祢の間約30kmを結ぶ日本最長の私道=宇部興産専用道路。多くの自動車関連法規が適用外となり、日本離れしたダブルストレーラが疾走する姿がごく一部の方?には知られています(「線路のない踏切」の存在は比較的知られているかも)。ただし、中国自動車道との一部区間並走に代表されるように、外から見ましたという話はあるものの、さすがに一般車通行禁止とあって中から見たという話はあまり聞かなかったところ、このたび観光バスで走り抜ける上、トレーラ見学までさせてくれるというツアーが開催されることに!

産業観光モニターツアー〜「CSR」がまちを創る〜 http://www.csr-tourism.jp/

 半月程前にたまたま実施を知った当方、矢も盾もたまらず、弾丸旅程にて参加しました…ツアー全体の詳細は彷徨録に譲るとして、ここでは宇部興産専用道路にスポットをあてることとします。

【検証:】管理者彷徨録&ときたまなぐりがき 「秋吉石灰岩コンビナートを巡る」参加記 http://blog.ken-show.net/?eid=726450


■専用道路の成立背景

まずは宇部興産専用道路の成立過程をさらっとまでに…宇部興産は19世紀末の宇部の海底炭田(沖ノ山炭鉱)採掘を端に、採炭機械用から拡大した機械製造、有限な石炭に代わり次世代を睨んだセメント製造と化学工業の4つの柱を戦前期に順次展開。戦後には美祢の伊佐地区で石灰石採掘を開始し、日本の高度経済成長をセメントをはじめとした各種資材供給で支えました。美祢と宇部の間は国鉄美祢線〜宇部線で石灰石専用列車が昼夜に渡りピストン輸送、国鉄再建法に基づく1981年4月の運賃分類化でも幹線指定されているほどの盛況でした。
しかし1960年代後半以降の国鉄のスト頻発と度重なる運賃値上げを受け、宇部興産は石灰石輸送の効率化を検討。長大ベルトコンベア導入の話もあったそうです(ちなみに秩父セメント(現太平洋セメント)が1983年、秩父〜日高間約23kmに長距離ベルトコンベア「Yルート」を設置)が、石灰石輸送だけでない可能性から最終的に専用道路建設を決定。総工費約250億円、自社の持つ資材及び技術を投入して、1972年以降順次開通。1977年にいわゆる「宇部・美祢高速道路」が全線開通、1982年には興産大橋が完成しています。なお、JR化後も続けられていた専用列車輸送は1998年に廃止となっています。

全線の状況や「線路のない踏切」については、当方も従前より拝見していた下記サイトがそれぞれ詳しいですので、是非併せて御覧の程。

tunnel web 宇部・美祢高速道路 http://www.tunnelweb.jp/kikaku/kosan/kosan-road1.html
Half Zero 宇部興産専用道路 http://halfzero.sakura.ne.jp/road/ubemine.htm

■伊佐から宇部へ

今回のツアーは「秋吉石灰岩コンビナートを巡る」と題し、地元の“産業観光エスコーター”のガイドにより、初日に秋吉台を巡り、2日目に宇部興産伊佐セメント工場と宇部港、宇部マテリアルズ宇部工場などを見学するもの。この移動で専用道路を走破するとともに、トレーラ基地見学が組まれていたわけですが、当方は時間的制約のためこの2日目のみピンポイント参加しました。

まずは伊佐セメント工場見学。事務所で副所長によるビデオ等での解説がなされ、バスで伊佐川を隔てた構内へ。美祢線美祢駅から伸びる専用線は、現在では中国電力三隅石炭火力発電所への排煙脱硫用石灰石発送/フライアッシュ(セメント原料となる石炭灰)受入専用貨物列車が1日1便行き交うのみだそうで。さて、構内に入るといきなり現れました!ダブルストレーラ。主な役目は、伊佐からは石灰石およびセメントの半製品クリンカーを、宇部からはクリンカー生成のためのロータリーキルン駆動燃料である石炭をそれぞれ輸送するもの。丁度クリンカーを積み込んでいるところのようでした。

特大車に注意!積み込み中
1日1往復残る専用貨物列車奥は宇部マテリアルズ美祢工場

『トレーラ最優先です』との副所長氏からの言葉通り、構内を行き交うトレーラを横目に、隣接する伊佐鉱山を見下ろす高台へ。階段掘りといわれるまさに威容を見下ろせば、60tクラスの超大型ダンプやショベルカーが縦横無尽に走り回り、ココは日本かと感嘆! ちなみに鉱区と工場内を行き来する車両については、鉱区から出る際に必ず洗浄し、砂塵が舞わないように配慮。地域との共生のひとつです。

伊佐鉱区の露天掘り60tダンプが駆ける 左脇中央の4WDが豆粒のよう
構内専用?のフルトレーラ車がシャワーを浴びるダブルストレーラも水浴び

一旦工場を離れ、伊佐の町並みを散策し昼食を取った後、いよいよ専用道路走破へ! バスはR435を中国道美祢IC方面に走り、その手前で高架橋を潜るとおもむろに左折。「一般車進入禁止」との看板があり、築堤を上れば専用道路につながります。左折して遮断棒のある小屋で通行証チェックを受け、いよいよ専用道路へ…ちなみに右方は宇部マテリアル美祢工場を挟んで伊佐セメント工場となることから、正確に言えば1km弱は走っていないことになります。

いよいよ専用道路へ一般車通行禁止の遮断棒
ダブルストレーラが雁行30m追い抜き注意!

道路は概ね片側2車線、ただし伊佐からすぐの伊佐隧道は片側1車線の対面通行となっています。隧道の前後ではしばらく左手を中国自動車道が並走、その後乗り越えてさらに南下してゆきます。専用道路もトレーラ優先、専用道路合流時にすぐ横をうなりを上げて走り去ってゆきましたが、そう飛ばすわけではありません。左側車線を50km/h前後での走行、バスもしばらく雁行していると、普通のダンプやトレーラがばんばん抜いてゆき、『(我々も)抜いていいですよ』とは、興産OBでもあり、専用道路通行ライセンスも持っていたというエスコーター氏。そう、規格外のダブルストレーラだけでなく、“一般車”もかなり頻繁に走行しています。

伊佐隧道伊佐側入口対向車線ながら余裕のある広さ
山間を駆ける中国自動車道を見下ろして

その後も峪筋をゆるやかに走りますが、最小曲線半径400m、最急縦断勾配3%とだけあってダテじゃありません。中央分離帯は適宜植栽されており、しっかり手が入っていることを感じさせます。エスコーター氏によれば、保守費用として毎年3億円ほどが投入されているとのことで、路面は昨今の高速道路よりはくすんで見えるものの、一般車の走行も何ら問題ないレベルと感じました。
中央分離帯には時折「69 白椎の木」といったようなキロポストらしき標識が。その他の速度制限標識などはいたって普通、最高は70km/hのようです。一般道との接続点である船木IC手前には「出口500m」という案内標識もありました。

迫力の疾走ところどころにキロポスト
船木ICまで500m側道も堂々の船木IC

1994年に開かれた広島アジア大会の際には自転車ロードレース会場として一部区間を提供。数日間通行をストップするなど宇部興産グループを挙げての協力体制だったそうですが、折角だからということで、競技開催に合わせ「宇部興産専用道路」と大書した看板を沿道に設置…も『皆さん記憶あります?自転車競技ってあまりテレビとか扱わなかったんですよね』と苦笑いのエスコーター氏。と、船木ICを通過時に、その看板が確かにちらと見えました。
船木ICのすぐ先でR2を潜り、山陽新幹線を通り越して更に南下。次いで山陽自動車道を潜り山陽本線を跨いで平地へ。周辺に人家が多く見られるようになってきました。『朝は7時半くらいから、夜は19時頃まで。夜間は周辺環境との兼ね合いで通行していません。夜もできる限り早めに仕事を終わらせるようにしています』とのこと。

写真失敗ですが看板高架区間終了
一般道との交差区間周防灘が見えた

R190との交点にもIC機能が持たされていました。以前【検証:】で現在整備中の宇部湾岸線との接続で宇部興産専用道路の一部区間買収という話を取り上げたのですが、このIC付近から長門長沢駅横で小野田線を跨いで高架区間が終わるところあたりまでの片側2車線分を譲り受けてロングランプにする方針のようですね…ただそうなるとロングランプ区間が終日通行可能となり、周辺住民から懸念が出ていると山口県議会でも触れられています。
その後は埋立地の中を一直線に走る臨港道路といった感じに。途中に信号機付きの交差点があり、左手には遮断棒があるということで一般道との交点なのでしょう。更にまっすぐ進み、左手奥に興産大橋の威容、正面に周防灘に浮かぶ船舶がはっきり見えてくると「宇部・美祢高速道路」としてはまもなく終点、右手にトレーラ基地が広がりました。

■トレーラ基地で圧巻! 締めは興産大橋

宇部興産専用道路の主役はなんといっても長大トレーラ。西沖地区・石灰石センターの一角にある、宇部興産セメントサービスの事務所で担当者氏から話を伺いました。ちなみに同社はトレーラの整備・点検のほか、専用道路のゲート管理やパトロール等の運行管理を担当。黄色灯を頭に載せた白いバンのパトロールカーを指して『いわば宇部興産道路の憲兵ですな。スピード違反とかしたら厳しいですよ〜』と到着前にエスコーター氏がこっそり。

キロポスト業務割り振りボード

現在は米ケンワース・三菱ふそう・いすゞの3社がぞれぞれほぼ均一に計37台のダブルストレーラが活躍しているとのこと。1日10往復をこなし、年間走行距離は20万kmにも及びます。約8年サイクルで車両更新となるそうで。専用道路開通時に国内メーカーに打診したところ約7000万円で導入、しかし輸入車だと約5000万で済んだので一時期は輸入車比率が高くなったものの、国内メーカーも価格競争に負けじとついてきたことからのメーカー選定となっているのだとか。ちなみに最大35t×3連のトリプルストレーラも在籍していたものの、運用効率が思わしくなく2000年頃までに退役、現在は40t×2連が中心だとか。

さて、専用道路走行中に見かけた2桁数字表示はやはりキロポストで、故障発生時の連絡などで使うとのこと。51から75まで振られていますが、これはトリプスストレーラのタイヤが50輪だったところからのものだそうで(なおダブルストレーラは34輪)。トレーラはすべて無線で運行管理されており、どの車が何をしているのか、何を積んでいるのかなど詳細がモニタで確認できるようになっています。専用道路成立要因として多種の資材運搬の要がありましたが、ISO14001環境マネジメントシステム認定を受けていることもあり、トレーラがその日の行き返りに別の荷物を積むことはできなくなっているそうで、需給調整に応じて担当の運搬資材が充てられ、変更の際にはトレーラ内の洗浄等きっちり管理がなされているとのこと。
一方、実際は専用道路走行車両の過半を占めるその他のダンプやトラック等についての管理は、運行協力会社に運転手の顔写真つき資料の提出を求めた上で許可証を発行、ゲートで確認で行っている由。

一通り説明を受けた後は、実際にトレーラを見学。我々を待っていたのはボンネットタイプが特徴のケンワース車。やはり間近で見ると…圧巻。
トレーラの上下にある開口部の動作を実演してもらった後は、「じゃ運転席に座ってみたい方!」…全員が座りましたねぇ。当方も身体を縮めて運転席へ。なかなかの見晴らしでございました。『クラクション鳴らしてみて』といわれた参加者の方が、ハンドルではなく左手上の天井から下がる紐を引っ張ると、“ブァ〜ッ!”というアメ車らしい警笛音が! 腹に響きました。

見学の間も横をびゅんびゅんトレーラが行き交いますが、小回りはなかなか効く様子も。ちなみに担当運転手は、運行会社2社に所属する100人ほどが1台につき数人のチームを組んでいるそうで、現在はすべて男性とのことですが、『大型免許を持っていれば(=運転経験があれば)、女性でも扱いはラクな車ですよ』と。一般車での許可証発給者には女性も活躍されているそうです。

運転“台”へ運転席からの見晴らし

ケンワースケンワース
ふそういすゞ

トレーラ基地見学の後は、西沖地区とグループ本拠の沖の山地区とを結ぶ興産大橋を渡ります。周防灘を跨ぐ全長1020mのトラス橋は、民間企業が自力で架けた橋としては日本最大(ちなみに1965年開通の東洋大橋(マツダ工場間専用橋)は560m)。遠目から見てもなかなか迫力ありますが、勾配もけっこうあります。左手には厚東川河口に架かる仮称・新厚東川橋のダブルデッキが小さく見え、右手には周防灘と遠く九州が望まれました。

興産大橋へなかなか急な斜路
厚東川河口興産発祥の地へ

橋を渡りきって石炭の山や化学プラントが見えてくると左にカーブ。いよいよ専用道路部分も終わりに。直線状の部分でまず“踏切”が出現、そこから一般道が並走。専用道路部が斜め右に入る部分で一般道とのクロスにまた“踏切”が…ここが「線路のない踏切」です。エスコーター氏も触れてはいたのですが、バス車内からの撮影はなかなか厳しいものがありました。バスは踏切クロス部手前をそのまま左手に進み、次の行程である宇部港を車内から見学となり、宇部興産道路走破は終了と相成りました。

「線路のない踏切」専用道路側も遮断機で塞がれている


■産業観光への期待

ツアー全体の感想も彷徨録に譲りますが、いやはや貴重な体験をさせてもらいました。本企画は実施前から第1回「産業観光まちづくり大賞」特別賞を受賞、参加ツアーは国土交通省「ニューツーリズム創出・流通促進事業」に採択されるなど、地域をはじめ各方面から注目されているプロジェクト。参加ツアーは11月中にあと2回催行予定とのことですが、当方当初参加予定であった3回目は7日時点で最少催行に満たない申し込みだったとか…実は参加回も山口県外からは当方のみ。告知不足が原因かと思われますが、モニターツアーをベースに今後の展開を検討してゆくとのことなので、願わくばもう一度参加してみたいと思いますが…。


宇部マテリアルズ宇部工場から見た興産大橋

【参考】
『ボトムアップ型の成長を目指して』:宇部地域の現状と課題(2007/04 政投銀中国支店)
循環型社会の未来を支えるセメント工場 宇部興産宇部セメント工場伊佐セメント工場(社団法人セメント協会)

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2007.11.17 Update

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