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【検証:近未来交通地図】特別リポートNo.015-2 東京モーターショー2004見聞録 (2004.11/03) 下記内容は予告なしに変更することがありますので、予め御了承下さい。 当サイトの全文、または一部の無断転載および再配布を禁じます。 |
東京モーターショー、乗用車・商用車の総合ショーに(日経05/18)http://www.nikkei.co.jp/news/…
「ゆったりモーターショー」は今年限りに
第39回東京モーターショー−乗用車・二輪車−(2005年)会期延長と第40回東京モーターショー(2007年)以降の開催形態の変更について
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先般投稿の通り、分離開催となり3度目、そして商用車部門では最後の単独開催となる第38回東京モーターショー―働くくるまと福祉車両―が幕張メッセで開幕、一般公開初日の3日に行って参りました。
前2回との大きな相違点は福祉車輌が前面に出された点。前回(2002年第36回)も福祉車両の展示は目立っていましたが、そのときはある意味初回(2000年第34回)の「働くクルマ!!」一辺倒から最新乗用車の福祉車両仕様をこぞって出すことで乗用車部門との差を埋める意が強く感じられた気がしました。その後の動向を踏まえ、さて今回そのあたりどうかな…と、さらに今年は10月に東京ビックサイトでは第31回国際福祉機器展(HCR2004)、ポートメッセなごやでは第11回ITS世界会議が開催、また5月にはアクトシティ浜松で第10回高齢者・障害者のモビリティと交通に関する国際会議(TRANSED2004)開催と類似展示会も多く、当方は浜松と名古屋の一般向け企画を覗きましたが、それらとの差はどうかというところも楽しみにしつつ向かったのでした。
HCR2004 http://www.hcr.or.jp/
第11回ITS世界会議 http://www.itswc2004.jp/japanese/index.html
TRANSED2004 http://transed.jp/jp/tenzikai-jp/
毎度お馴染み幕張本郷からシャトルバスに乗車、スムーズに会場前まで運ばれます。を、到着したのは13時前だったのですが、たまたまなのか帰路につかれる方が目に付きますね。会場内は昼食時とあって入口周辺のカフェテリアに人だかりができています。
まずは福祉車両がテーマであることに敬意を表して、というわけでもないのですが、シンポジウム会場に直行します。開催期間中10本のシンポが行われる中、当方が参加したのは「バリアフリー社会の実現と私たちのあるべき姿」〜福祉車両・交通バリアフリーからみた日本の未来〜というもの。会場はざっと500席くらいあったのでしょうか、6割方埋まるなど、盛況と考えていい感じでした(なにぶんシンポ会場が展示場と離れており、再入場手続(といっても蛍光塗料を手に塗られるもの)などが必要で気軽にふらっと立ち寄れる感じでもない)。
パネリスト・コーディネーターは男性のみ6名、顔触れを見て頂ければ判るとおり、某氏がちょいと脱線気味?ながら『バリアフリー実現の意義やユニバーサルデザインの本質、これからのクルマ社会、交通バリアフリーがどうあるべきかなどを探った』(byオフィシャルサイトモーターショーニュース)のでした…なにぶん広範なテーマながら1時間半では短く、高齢者ドライバーの急増問題や、福祉車両用駐車スペース利用での処罰問題(不届者への処罰規定がないのは日本くらいとのコト)等の具体例も示されたものの、日本人の障害者に対する意識の改革を、というまさに重い課題の指摘で留まってしまったのが勿体無かった気がしました。
ちなみに、ニュースでは『会場には若いカップルや家族連れなどが多数来場、福祉車両への関心が一段と高まっていることを物語っていた』とありますが、否定はしませんけどまぁねぇ…という感じでしたよ。ただ男性主体とか、壮年層主体とかの偏りはなく老若男女程良く?の参加だったことは確かですけどね。
シンポが終わりいざ展示場へ。シンポ会場向かいの東ホールから中央、西ホールへ抜けました。東ホールに入るとまずはスリーダイヤが目に飛び込んできます。自動車・ふそう横並びですが、特にふそうは展示車両をトラック3台に絞り、双方ともに品質改善への取り組みを報告するスペースを広く取っていました…といってもだだっ広い休憩所という感じも否めず、寂寥感?を強める感じです。
対照的に復活後持続する勢いを感じさせるのが隣に陣取ったのは日産+UD。丁度イベント時かナマ歌が響いており、正直ちょと煩くて敬遠。前回は広くドリンクサービスのアルコンサルティングラウンジを設けていたのですが、今回はだいぶ規模縮小した様子。その代わり展示車両は確実に増えていたのではないかなと。ただしバス関連では日産シビリアンとUDスペースアローで前回と変わらず。シビリアンは車体ブースのほうでも複数台展示されており、フルモデルチェンジして丸5年、街中でも良く見掛ける存在になりました。スペースアローはこちらもすっかりお馴染みとなった西日本車体工業ボディですね。
日産ディーゼル工業 http://www.nissandiesel.co.jp 三菱自動車 http://mitsubishi-motors.co.jp/ いすゞ自動車 http://www.isuzu.co.jp |
誤解を恐れずに述べると、バリアフリー対策として乗降口を低く設定している車種の多くが、現実的には車椅子単独での昇降は難しい。これでは片手落ちです。(パンフレットより)
小さなスペースながらかなりの注目を集めていたのがクセニッツ。フォルクスワーゲンベースにオーストリア・クセニッツ社ボディを架装したこのクルマ、昨年春から運行されている「金沢ふらっとバス」ですでに知られている。残念ながら車内乗車見学はできなかったが、外から見ても分かる小さなボディにめいいっぱい取られた客席スペースは、オーダーメイド方式で様々なシートアレンジが可能。更には独自のエアサスシステム・驚異の後部接地差3cmで車椅子利用者単独乗降をも可能にしている。「21世紀のバスを本気で考える。その答えが、今ここに」(パンフレットより)…このクルマに詰まった「夢と希望」は限りなく大きい事をひしひしと感じさせてくれた。
Kutsenits japan グリーンベル・モーター http://www.vw-audi.ne.jp/kanazawa
多くの来場者の関心を集めていた、テーマ性を明確にしたトヨタ・日野・ダイハツ3社共同ブース。
日野自動車からは4車種。こちらも人気の観光バス「セレガR」・大型ノンステップ路線バス「ブルーリボンシティ」・各地のコミュニティバスで採用されている中型ノンステップ路線仕様「レインボー」・武蔵野市「ムーバス」に採用され、それがコミュニティバスの火付け役「リエッセ」。その「リエッセ」ではたまたま中扉ステップリフトの操作デモが行なわれていた。簡単そうに見えたが、これもやはり実際の使用例を見ないとなんとも…という感じが。このクラスでのノンステップ車は国内ではまだまだのようであり、残念ではある。
さて、今回当方が最も注目していたのが、トヨタが提案する新世代公共交通システム・IMTS(Intelligent Multimode Transit System)。幹線部では専用道路上で隊列自動無人走行、支線部は一般道を走るドライバー運行の通常バスとして、軌道系交通の定時性・高速性と路線バスの経済性・柔軟性を追求するもの。バス自体、また運転席等も突飛なものではなく、「車両として量産バスを使用するため、車両コストが低」い上、専用道の運行にはAHS(Advanced Cruise‐Assist Highway System=走行支援道路システム)による無線指示と車間調整システムで「レールや電力設備が不要なため、建設コストも低い」(パンフレットより)といういいことづくめ。車両自体もCNGエンジンやノンステップと昨今の潮流を汲み入れたもので、本社内に試験施設をもって研究が続けられているという…うーん、乗ってみたい!
また、ITS(Intelligent Transport System)を取り入れたTIME(TOYOTA Intelligent Mobility Enhancement)ではバスロケーションシステム(TIME-b)を商品化。GPSを活用した路線・車両管理でインテリジェントバス停に待ち時間・バス位置・到着予測などをリアルタイムで表示させるほか、電話での音声情報で利用者への対応も可能にし、デマンド機能での経路変更対応などもローコストで実現したという。
傍にウェルキャブシリーズの一般車両改造車が多数展示されていたこともあってか多くの来場者が流れてきており、またプレゼンターの説明に熱心に耳を傾けている人も多く、傍目には地味とも思えるものが注目を集めており、今後の動向を期待したいところ。
東京モーターショー出展3社共同ページ http://www.toyota.co.jp/thd2000/
日野自動車 http://www.hino.co.jp
トヨタ自動車 http://www.toyota.co.jp
すでに各種報道されている通り、今回のポイントは「環境・福祉・IT技術」に集約されているといっていい。その中でのバス車両は「CNGエンジン・低床化・小型化」という技術的革新が求められている事が分かる。しかしIT技術を取り入れるなどといったバス運行そのもののシステム提案が少なかったのは残念、言い替えれば、平成大不況と世界的自動車メーカー再編余波でその余裕がないのか…その分さすがというべきかトヨタの施策が余計目立つ格好となった。
またかつてはきらびやかな未来的フォルムのコンセプトカーがバス専門誌を飾ってくれたものだが、今回は各社とも現実的。モーターショー自体がバブリーチックな眼で見られていたこともあって「現実回帰」が却って多少寂しくも思われるが…。商業者部門が独立、一般車との差別化で果たして例年のような入場者数は…との危惧もあろうが、本来のコンベンションの姿である各社のコンセプトが明確になっていた点は大いに評価できるのでは。来場者も家族連れで楽しむ姿が多かったし、関係者も積極的に来場者との間に立って奮戦していたのが印象的だった。「はたらくクルマの祭典」…各社には今後とも我々に親しむクルマ造り・オープンな企業であることを期待したい。
東京モーターショー公式HP http://www.motorshow.or.jp/
2004.11.01 Update | ||
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